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「へ、平民ですって!? それじゃあ、私はどうなるんですか!? 伯爵夫人にはなれないという事ですか…!?」
「ショーが平民なら、君が伯爵夫人になれるわけないよね? 少し考えたらわかるだろ?」
「私はショー様が公爵令息で、最終的には伯爵の爵位をもらえると聞いたから嫁ぐ事にしただけで…!」
お姉様がハンス様に向かって叫ぶと、ハンス様は首を傾げて尋ねる。
「レイジから聞いたけど、ショーとの婚約の際、君は契約書の文面を見る事なくサインしたって聞いたけど?」
「そ、それは…っ!」
お姉様は焦った顔をした後、開き直った様子を見せる。
「それがどうかされましたか?」
「ショーと婚約する時、君がサインした書類には婚約についてだけでなく、未来の事についても書いてあった」
「……未来の事?」
「そうだよ。そこに書かれていた内容を簡単に言うと、ショーの婚約者になり、いずれは結婚する事。そして、結婚後の離婚についてはブロット公爵が認めた場合以外は認めない。どちらかが浮気をした場合は、離婚ではなく罰を与える」
「ば、罰!?」
お姉様とショー様の声が揃ったので、ハンス様が笑う。
「2人共、相性が良さそうだね。良かった、良かった」
「良くなんかありませんよ!」
ショー様がハンス様に叫んだ後、トーリ様を指差して続ける。
「僕が平民になるなら、トーリだって平民ですよね!?」
「何で? トーリには爵位を授けるよ」
ハンス様は笑いながら答えてトーリ様を見る。
「トーリ、教えてあげたら?」
「……はい」
トーリ様はわたしの方を見て、わたしが落ち着いたかどうかを確認した後、言葉を続ける。
「もうすぐ、身分を隠して他国に留学しておられる王太子殿下が戻ってこられるんだ。で、今、俺達が通っている学園に来られるそうだから、俺は彼の側近の1人になる予定だ。だから、王城にそう遠くない、この屋敷にお兄様の許可を受けて、このまま住むつもりだ」
「そんな…! どうして僕だけ!」
「ショー、僕だって鬼じゃない。心配しなくても大丈夫だよ。爵位はなくても住む所は用意してあるから」
「……?」
ショー様は不思議そうな表情で笑顔のハンス様を見たので、ハンス様は口を開く。
「ショーを使用人として雇いたいという家が現れたんだよ。もちろん、雑用なんて出来ないと伝えたけど、それでもかまわないと。自分の娘が酷い目に合わされた分、その分を返せれば良いと言ってくれてさ。順番待ちになってるよ。良かったね、ショー、君は人気者だよ。あ、いや、その前に、アザレア嬢」
ハンス様はわたしの方を見て続ける。
「ショーは君に乱暴な真似をしたし、それ以上の事をしようとした。君はどうしたい?」
「……」
(ショー様は今まで自分が傷付けた女性の家の使用人として働かされる事になる。きっと、一般の使用人が出来ればやりたくない仕事ばかり押し付けられるのでしょうね…。今は言っておられないけれど、口答えなど反抗的な態度を見せれば、罰を与えるとも聞いているわ。きっと、お姉様も婚約者として付いていく事になるのでしょうね…。お姉様には行くところがないんだもの。わたしにしてみれば、それで十分なんだけど…)
意見を求められるとは思っていなかったので困惑していると、トーリ様がわたしの腕を優しく撫でながら言う。
「今すぐには思い浮かばないよな」
「……はい。ただ、今、言えるのは、もう、お姉様ともショー様とも二度とお会いしたくない。それだけです」
(罰を与えても、きっと改心なんてしない。それなら、常に監視された場所で暮らして欲しい。二度とわたしに近づけないようにしてほしい…)
すると、お姉様が叫ぶ。
「アザレア、あなた、本気で言ってるの!? 私はあなたの姉なのよ!?」
「……もう、姉だとは思わないことにします」
「何ですって!?」
「あなたは私の姉ではありません。たとえ、血が繋がっていようとも、今、この瞬間から、あなたの事を姉とは思わないことにしました」
「アザレア、あなた、何を言ってるのかわかってるの!?」
「私を殺そうとしたくせに…」
睨むと、姉だった人は、さすがに怯んだ様子だったけれど、すぐにいつもの調子を取り戻す。
「あなたがお願いをきいてくれないから、ついカッとなっただけよ! ただの冗談だったのよ!」
「そんな言葉を信じるわけがないでしょう」
「どうしてそんな意地悪な事を言うのよ! このままじゃ、私はどうなるのかわからないのよ!?」
「自分の身に返ってきただけじゃないですか! 殺されそうになったと、警察に届け出てほしいんですか!?」
そう叫び返した時だった。
「ちょっとそれはやめてくれない? マーニャさんの身柄、わたくしが欲しいのだけど?」
そう言って、部屋に入ってたのは、金色のウェーブのかかったふわふわの髪に、青色の瞳。
ピンク色のドレスに身を包んだ、わたし達の住んでいる国の第一王女殿下だった。
慌てて、その場にいた全員が跪くと、王女殿下はころころと笑う。
「ハンスもトーリも、いとこなんだから、そこまで畏まらなくてもいいわよ。それからアザレアさんも」
まさか、わたしの事を王女殿下が知っているとは思わなかったので、思わず顔を上げると、王女殿下は微笑んで答えを教えてくれる。
「レイジが教えてくれたのよ。ふふ。あなたの事は本当の妹みたいで可愛かったと言ってたわ。それから、マーニャさんと言ったわね?」
王女殿下はすぐ近くで跪いて頭を下げていた、わたしの姉だった人に話しかける。
「……はい」
恐る恐る、顔を上げたその人に、王女殿下は明るい笑顔で続ける。
「レイジと離婚してくれてありがとう」
「……はい?」
「わたくしとハンス達はいとこなのだけれど、ハンスはレイジと仲が良かったのよね」
「父親同士が仲が良かったのと年が近かったので自然に…ですね」
「そう。でもね、そのおかげで、わたくしはレイジを知れたのよ!」
ハンス様の言葉にぱちんと手を合わせて王女殿下は目を輝かせて続ける。
「ずっと彼の事を好きだったんだけど、彼にはマーニャさんという婚約者がいたし、マーニャさんの事が好きだったから言い出せなかった。彼が結婚した時は胸が張り裂けそうだったわ…。だけど、あなたは離婚してくれたの! 本当にありがとう!」
「え…?」
「普通の人なら、レイジと絶対に別れたりしないわ。だけど、あなたは別れてくれた。その御礼に、レイジとわたくしが幸せになるところをずっと見守っていてほしいと思っているの」
「――!?」
王女殿下の言葉を聞いた、わたしの姉だった人は目を見開いて声にならない声を上げた。
※残り1話になります。(それ以外に、オサヤやビトイについては本編完結後に1話だけ短いですが書きます)
「ショーが平民なら、君が伯爵夫人になれるわけないよね? 少し考えたらわかるだろ?」
「私はショー様が公爵令息で、最終的には伯爵の爵位をもらえると聞いたから嫁ぐ事にしただけで…!」
お姉様がハンス様に向かって叫ぶと、ハンス様は首を傾げて尋ねる。
「レイジから聞いたけど、ショーとの婚約の際、君は契約書の文面を見る事なくサインしたって聞いたけど?」
「そ、それは…っ!」
お姉様は焦った顔をした後、開き直った様子を見せる。
「それがどうかされましたか?」
「ショーと婚約する時、君がサインした書類には婚約についてだけでなく、未来の事についても書いてあった」
「……未来の事?」
「そうだよ。そこに書かれていた内容を簡単に言うと、ショーの婚約者になり、いずれは結婚する事。そして、結婚後の離婚についてはブロット公爵が認めた場合以外は認めない。どちらかが浮気をした場合は、離婚ではなく罰を与える」
「ば、罰!?」
お姉様とショー様の声が揃ったので、ハンス様が笑う。
「2人共、相性が良さそうだね。良かった、良かった」
「良くなんかありませんよ!」
ショー様がハンス様に叫んだ後、トーリ様を指差して続ける。
「僕が平民になるなら、トーリだって平民ですよね!?」
「何で? トーリには爵位を授けるよ」
ハンス様は笑いながら答えてトーリ様を見る。
「トーリ、教えてあげたら?」
「……はい」
トーリ様はわたしの方を見て、わたしが落ち着いたかどうかを確認した後、言葉を続ける。
「もうすぐ、身分を隠して他国に留学しておられる王太子殿下が戻ってこられるんだ。で、今、俺達が通っている学園に来られるそうだから、俺は彼の側近の1人になる予定だ。だから、王城にそう遠くない、この屋敷にお兄様の許可を受けて、このまま住むつもりだ」
「そんな…! どうして僕だけ!」
「ショー、僕だって鬼じゃない。心配しなくても大丈夫だよ。爵位はなくても住む所は用意してあるから」
「……?」
ショー様は不思議そうな表情で笑顔のハンス様を見たので、ハンス様は口を開く。
「ショーを使用人として雇いたいという家が現れたんだよ。もちろん、雑用なんて出来ないと伝えたけど、それでもかまわないと。自分の娘が酷い目に合わされた分、その分を返せれば良いと言ってくれてさ。順番待ちになってるよ。良かったね、ショー、君は人気者だよ。あ、いや、その前に、アザレア嬢」
ハンス様はわたしの方を見て続ける。
「ショーは君に乱暴な真似をしたし、それ以上の事をしようとした。君はどうしたい?」
「……」
(ショー様は今まで自分が傷付けた女性の家の使用人として働かされる事になる。きっと、一般の使用人が出来ればやりたくない仕事ばかり押し付けられるのでしょうね…。今は言っておられないけれど、口答えなど反抗的な態度を見せれば、罰を与えるとも聞いているわ。きっと、お姉様も婚約者として付いていく事になるのでしょうね…。お姉様には行くところがないんだもの。わたしにしてみれば、それで十分なんだけど…)
意見を求められるとは思っていなかったので困惑していると、トーリ様がわたしの腕を優しく撫でながら言う。
「今すぐには思い浮かばないよな」
「……はい。ただ、今、言えるのは、もう、お姉様ともショー様とも二度とお会いしたくない。それだけです」
(罰を与えても、きっと改心なんてしない。それなら、常に監視された場所で暮らして欲しい。二度とわたしに近づけないようにしてほしい…)
すると、お姉様が叫ぶ。
「アザレア、あなた、本気で言ってるの!? 私はあなたの姉なのよ!?」
「……もう、姉だとは思わないことにします」
「何ですって!?」
「あなたは私の姉ではありません。たとえ、血が繋がっていようとも、今、この瞬間から、あなたの事を姉とは思わないことにしました」
「アザレア、あなた、何を言ってるのかわかってるの!?」
「私を殺そうとしたくせに…」
睨むと、姉だった人は、さすがに怯んだ様子だったけれど、すぐにいつもの調子を取り戻す。
「あなたがお願いをきいてくれないから、ついカッとなっただけよ! ただの冗談だったのよ!」
「そんな言葉を信じるわけがないでしょう」
「どうしてそんな意地悪な事を言うのよ! このままじゃ、私はどうなるのかわからないのよ!?」
「自分の身に返ってきただけじゃないですか! 殺されそうになったと、警察に届け出てほしいんですか!?」
そう叫び返した時だった。
「ちょっとそれはやめてくれない? マーニャさんの身柄、わたくしが欲しいのだけど?」
そう言って、部屋に入ってたのは、金色のウェーブのかかったふわふわの髪に、青色の瞳。
ピンク色のドレスに身を包んだ、わたし達の住んでいる国の第一王女殿下だった。
慌てて、その場にいた全員が跪くと、王女殿下はころころと笑う。
「ハンスもトーリも、いとこなんだから、そこまで畏まらなくてもいいわよ。それからアザレアさんも」
まさか、わたしの事を王女殿下が知っているとは思わなかったので、思わず顔を上げると、王女殿下は微笑んで答えを教えてくれる。
「レイジが教えてくれたのよ。ふふ。あなたの事は本当の妹みたいで可愛かったと言ってたわ。それから、マーニャさんと言ったわね?」
王女殿下はすぐ近くで跪いて頭を下げていた、わたしの姉だった人に話しかける。
「……はい」
恐る恐る、顔を上げたその人に、王女殿下は明るい笑顔で続ける。
「レイジと離婚してくれてありがとう」
「……はい?」
「わたくしとハンス達はいとこなのだけれど、ハンスはレイジと仲が良かったのよね」
「父親同士が仲が良かったのと年が近かったので自然に…ですね」
「そう。でもね、そのおかげで、わたくしはレイジを知れたのよ!」
ハンス様の言葉にぱちんと手を合わせて王女殿下は目を輝かせて続ける。
「ずっと彼の事を好きだったんだけど、彼にはマーニャさんという婚約者がいたし、マーニャさんの事が好きだったから言い出せなかった。彼が結婚した時は胸が張り裂けそうだったわ…。だけど、あなたは離婚してくれたの! 本当にありがとう!」
「え…?」
「普通の人なら、レイジと絶対に別れたりしないわ。だけど、あなたは別れてくれた。その御礼に、レイジとわたくしが幸せになるところをずっと見守っていてほしいと思っているの」
「――!?」
王女殿下の言葉を聞いた、わたしの姉だった人は目を見開いて声にならない声を上げた。
※残り1話になります。(それ以外に、オサヤやビトイについては本編完結後に1話だけ短いですが書きます)
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