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お姉様がトーリ様にアプローチを開始したというのは、トーリ様やショー様から聞くだけではなく、ブロット公爵からも定期的に連絡があったので知っていた。
ブロット公爵は、今の段階ではお姉様の行動に対して何も気にしていないふりをして油断をさせている状態で、お姉様に何をしても自分は許されるのだと、思い込ませる事にされた。
そして、わたしの家にわざわざ連絡をくださるのは、ショー様がわたしに嘘を教えてくるかもしれないので、事実を教えてくれる為だった。
どうして、今になって、ショー様の事でブロット公爵が動き出したのかというと、憶測でしかないけれど、クボン候爵に背中を押された事と、彼が物事の善悪を判断できる様な年齢になったという事もあり、ちょうど良い時期に、お姉様の事件が起こったからじゃないかと思われた。
今までは幼い子供だからと目をつぶってきたのもある。
なぜなら、親が未成年の子供を見捨てるのは、この国では禁止されているから。
子供を見捨てるのは、本来ならどこの国でも駄目な事なんでしょうけれど、子供を道具としか見ていない親は平気で捨てる。
自分の命や家柄を守るために。
ブロット公爵がそれをしなかったのは、ショー様が愛に飢えていると感じたからで、突き放すことにより、彼の心がもっと壊れるかもしれないと思ったのではないかと思われる。
これについては、トーリ様の考えで、ブロット公爵本人から聞いたわけではないので、実際にどうかはわからない。
今、現在も17歳だし、まだまだ未熟という考え方の人もいるかもしれないけれど、もう考え方が直らないと判断した事と、何より、トーリ様達のお兄様の事もあった。
ショー様は毎朝、学園のある日はわたしの所に来て話しかけてきた。
「アザレア、昨日はトーリとマーニャが2人で食事をしてたよ」
「そうですか…」
「マーニャがトーリにデザートを食べさせようとしてた。トーリは嬉しそうな顔をしてたよ。あ、トーリは絶対にそんな事があったなんて絶対に口にしないと思うよ。浮気してると思われたら困るからね」
ショー様はわたしに同情するふりをして、悲しそうな顔をしているけれど、声が明るい。
(本気で気の毒だなんて思っていないわね…)
「アザレア、僕にしておいた方がいいんじゃないか? 今なら、まだ間に合うよ」
「……」
(暴力をふるう人の方が良いと言うだなんて、やっぱりおかしいわ。今更、わたしがなびくとでも思ってるのかしら…。それに、彼の言葉は嘘だってわかってる)
ブロット公爵からの連絡では、トーリ様はお姉様との接触を避けて、食事はダイニングルームではとっておらず、自室で食べているとの事で、その時間帯はお姉様はショー様達と食事をしているので、一緒に食事をしているなんて事はない。
けれど、わたしがそれを知っている事を知られてはならない。
今は、ショー様の機嫌を損ねず、お姉様も含めて、自分の思う通りに物事が進んでいると思わせなければならない。
そう思って、嘘でも聞きたくもない話を聞き続けた。
そして、夜会までは、あと何日と指折り数えながら過ごした日々も、終わる日がきた。
夜会の当日、わたしの家まで迎えに来てくれたトーリ様が心配そうな顔で聞いてくる。
「大丈夫か?」
「……はい」
「どうしても無理だと思ったら、計画を中断してもいい。大事なのは君だから」
「……ありがとうございます」
(大事だなんて、誤解してしまいそうな言葉だわ)
この何日間は、トーリ様はわたしが不安にならないようにか、放課後は毎日、家まで送ってくださるようになった。
ショー様をわたしに全く近付けさせない様にするという案もあったけれど、それではショー様達がわたしの心が揺れていると実感できないのではないかと思ったから、わざと接近させる事を決めたのはわたしだった。
それなのに、わたしの心が辛くないか心配してくれたみたいだった。
(でも、わたしは大丈夫。負けたりなんかしない)
今日のわたしのドレスはワインレッド色のイブニングドレスで、今まで着た事のない色のドレスだった。
わたしが変わった事をお姉様に見せつける意味合いで、この色を選んだ。
気を引き締めたわたしを見て、トーリ様が促してくる。
「行こうか」
「はい」
トーリ様の手を取り、わたしにとっての戦場に向かうことにした。
ブロット公爵は、今の段階ではお姉様の行動に対して何も気にしていないふりをして油断をさせている状態で、お姉様に何をしても自分は許されるのだと、思い込ませる事にされた。
そして、わたしの家にわざわざ連絡をくださるのは、ショー様がわたしに嘘を教えてくるかもしれないので、事実を教えてくれる為だった。
どうして、今になって、ショー様の事でブロット公爵が動き出したのかというと、憶測でしかないけれど、クボン候爵に背中を押された事と、彼が物事の善悪を判断できる様な年齢になったという事もあり、ちょうど良い時期に、お姉様の事件が起こったからじゃないかと思われた。
今までは幼い子供だからと目をつぶってきたのもある。
なぜなら、親が未成年の子供を見捨てるのは、この国では禁止されているから。
子供を見捨てるのは、本来ならどこの国でも駄目な事なんでしょうけれど、子供を道具としか見ていない親は平気で捨てる。
自分の命や家柄を守るために。
ブロット公爵がそれをしなかったのは、ショー様が愛に飢えていると感じたからで、突き放すことにより、彼の心がもっと壊れるかもしれないと思ったのではないかと思われる。
これについては、トーリ様の考えで、ブロット公爵本人から聞いたわけではないので、実際にどうかはわからない。
今、現在も17歳だし、まだまだ未熟という考え方の人もいるかもしれないけれど、もう考え方が直らないと判断した事と、何より、トーリ様達のお兄様の事もあった。
ショー様は毎朝、学園のある日はわたしの所に来て話しかけてきた。
「アザレア、昨日はトーリとマーニャが2人で食事をしてたよ」
「そうですか…」
「マーニャがトーリにデザートを食べさせようとしてた。トーリは嬉しそうな顔をしてたよ。あ、トーリは絶対にそんな事があったなんて絶対に口にしないと思うよ。浮気してると思われたら困るからね」
ショー様はわたしに同情するふりをして、悲しそうな顔をしているけれど、声が明るい。
(本気で気の毒だなんて思っていないわね…)
「アザレア、僕にしておいた方がいいんじゃないか? 今なら、まだ間に合うよ」
「……」
(暴力をふるう人の方が良いと言うだなんて、やっぱりおかしいわ。今更、わたしがなびくとでも思ってるのかしら…。それに、彼の言葉は嘘だってわかってる)
ブロット公爵からの連絡では、トーリ様はお姉様との接触を避けて、食事はダイニングルームではとっておらず、自室で食べているとの事で、その時間帯はお姉様はショー様達と食事をしているので、一緒に食事をしているなんて事はない。
けれど、わたしがそれを知っている事を知られてはならない。
今は、ショー様の機嫌を損ねず、お姉様も含めて、自分の思う通りに物事が進んでいると思わせなければならない。
そう思って、嘘でも聞きたくもない話を聞き続けた。
そして、夜会までは、あと何日と指折り数えながら過ごした日々も、終わる日がきた。
夜会の当日、わたしの家まで迎えに来てくれたトーリ様が心配そうな顔で聞いてくる。
「大丈夫か?」
「……はい」
「どうしても無理だと思ったら、計画を中断してもいい。大事なのは君だから」
「……ありがとうございます」
(大事だなんて、誤解してしまいそうな言葉だわ)
この何日間は、トーリ様はわたしが不安にならないようにか、放課後は毎日、家まで送ってくださるようになった。
ショー様をわたしに全く近付けさせない様にするという案もあったけれど、それではショー様達がわたしの心が揺れていると実感できないのではないかと思ったから、わざと接近させる事を決めたのはわたしだった。
それなのに、わたしの心が辛くないか心配してくれたみたいだった。
(でも、わたしは大丈夫。負けたりなんかしない)
今日のわたしのドレスはワインレッド色のイブニングドレスで、今まで着た事のない色のドレスだった。
わたしが変わった事をお姉様に見せつける意味合いで、この色を選んだ。
気を引き締めたわたしを見て、トーリ様が促してくる。
「行こうか」
「はい」
トーリ様の手を取り、わたしにとっての戦場に向かうことにした。
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