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17.5 (マーニャside)
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「怒っていらっしゃいますよね?」
馬車の中で沈黙に耐えきれなくなったマーニャが尋ねると、彼女の向かいに座っているレイジは冷たい目を彼女に向けた。
(ビトイの時はここまで怒っていなかったのにどうしてよ。もしかして2回目だから? でも、手紙のやり取りの件に関しては、ちゃんと隠さずに伝えていたのに! まあ、手紙の内容は教えてなかったけど)
心の中で不満を言いながらも、マーニャはそんな気持ちを押し隠し、申し訳無さげな表情を作る。
「本当にごめんなさい。アザレアにちょっと意地悪したくなっただけで、本気じゃないわ。わたしにはあなたしかいないもの…」
「その言葉は誰にでも言ってるのか?」
「どうして、そんな事を言うの!? 私には本当にあなただけで…」
「主人とは上手くいっていません」
突然のレイジの言葉に、マーニャは何も言えなくなった。
そんな彼女の事は気にせずに、レイジは言葉を続ける。
「君の実家の方から連絡があった。ショー様が、アザレアに君との手紙のやり取りの内容を話してくれているんだそうだ」
「………そんな!」
(アザレアの奴! 知らないふりをしていたのに知ってたのね…!)
マーニャは何とか平静を装って続ける。
「誤解です。何を聞かれたかはわかりませんが、それは、ショー様を試すために書いている嘘で、本心ではありません」
「嘘をついていいのか?」
「……はい?」
「君の書いた返事が嘘だったとする。では聞くが、公爵令息への手紙に嘘を書いてもいいのか?」
「そ…それは…、その…、あの、違うんです…」
「何が違うんだ?」
レイジは鼻で笑うと、足を組み、胸の前で腕を組んだ後、蔑むような目でマーニャを見つめる。
男性にこんな目を向けられた事のなかったマーニャにとっては、かなりの屈辱だった。
怒りの感情が表に出そうになるのを必死にこらえる。
(感情に左右されちゃ駄目。あくまでも、私は幸せでいないといけないのよ。私以外の人間が不幸だから楽しいだけ。私が不幸になったら、アザレアが不幸でも、全く楽しくないわ)
「嘘が必要な時だってあります! 私の誘惑に負けずに、アザレアを選ぶのであれば、それが本当の愛ですから」
「本当の愛? 政略結婚なのにか?」
「政略結婚にだって愛は生まれます! レイジ様だって、私の事を愛してくれたのでしょう?」
「そうだな、過去形だけどな」
「……過去形? どういう事ですか?」
震える声でマーニャが問い返すと、レイジは小さく息を吐いてから答える。
「馬車の中で話す内容でもないだろう。家に帰ってからゆっくり話そう。僕だって鬼じゃない。君が路頭に迷わない様に色々と考えてはいる」
「…だからっ、どういう事なんですか!? 今すぐ言ってください!」
「そのままの意味だよ」
「……そのままの意味?」
(まさか…、嘘でしょう? だって、前回は簡単に許してくれたじゃないの! 大体、そんなに気になるなら、手紙のやり取りだって許さなければ良かったじゃないの!)
マーニャは思った事は口に出さずに懇願する。
「お願いします! 離婚だけはやめて下さい! それに、すぐに離婚をしたら世間体が良くないといったのはあなたじゃないですか!」
「そうだな。でも、それを決めたのは父上だ。僕ももう子供じゃない。自分の好きな様に決めたいんだ」
「嫌です! 別れたくなんかありません!」
マーニャは馬車の中で立ち上がり、よろめいたふりをして、彼に抱きつこうとしたけれど、腕をしっかりとおさえられて、席に戻された。
「どうして、僕との離婚をそんなに嫌がるんだ?」
「私は本当にレイジ様の事が…!」
「それなら、演技でも手紙のやり取りなんて、夫の前で続けないだろう? お互いにバレないように手紙まで焼いてるんだから。ただ、内容をショー様がアザレアに話しているとは、君も知らなかった様だし詰めが甘かったな」
(何なのよ! この話は内密にって書いておいたのに! 口の軽い男ね! 何のために返事を書き終えたら手紙を燃やすという約束をしたのかわかっていないのかしら!?)
マーニャは怒りをおさえ、レイジに頭を下げる。
「この様な事は二度としません。お願いです! どうか、離婚だけはやめて下さい…!」
「……詳しい話は家でしよう。ただ、これだけは言っておく。離婚は決定事項だ」
レイジの言葉を聞いたマーニャは、一瞬、目の前が真っ暗になった気がした。
※時系列で進めたいので、本編に戻り、数話先でマーニャsideのこの続きを書きます。
馬車の中で沈黙に耐えきれなくなったマーニャが尋ねると、彼女の向かいに座っているレイジは冷たい目を彼女に向けた。
(ビトイの時はここまで怒っていなかったのにどうしてよ。もしかして2回目だから? でも、手紙のやり取りの件に関しては、ちゃんと隠さずに伝えていたのに! まあ、手紙の内容は教えてなかったけど)
心の中で不満を言いながらも、マーニャはそんな気持ちを押し隠し、申し訳無さげな表情を作る。
「本当にごめんなさい。アザレアにちょっと意地悪したくなっただけで、本気じゃないわ。わたしにはあなたしかいないもの…」
「その言葉は誰にでも言ってるのか?」
「どうして、そんな事を言うの!? 私には本当にあなただけで…」
「主人とは上手くいっていません」
突然のレイジの言葉に、マーニャは何も言えなくなった。
そんな彼女の事は気にせずに、レイジは言葉を続ける。
「君の実家の方から連絡があった。ショー様が、アザレアに君との手紙のやり取りの内容を話してくれているんだそうだ」
「………そんな!」
(アザレアの奴! 知らないふりをしていたのに知ってたのね…!)
マーニャは何とか平静を装って続ける。
「誤解です。何を聞かれたかはわかりませんが、それは、ショー様を試すために書いている嘘で、本心ではありません」
「嘘をついていいのか?」
「……はい?」
「君の書いた返事が嘘だったとする。では聞くが、公爵令息への手紙に嘘を書いてもいいのか?」
「そ…それは…、その…、あの、違うんです…」
「何が違うんだ?」
レイジは鼻で笑うと、足を組み、胸の前で腕を組んだ後、蔑むような目でマーニャを見つめる。
男性にこんな目を向けられた事のなかったマーニャにとっては、かなりの屈辱だった。
怒りの感情が表に出そうになるのを必死にこらえる。
(感情に左右されちゃ駄目。あくまでも、私は幸せでいないといけないのよ。私以外の人間が不幸だから楽しいだけ。私が不幸になったら、アザレアが不幸でも、全く楽しくないわ)
「嘘が必要な時だってあります! 私の誘惑に負けずに、アザレアを選ぶのであれば、それが本当の愛ですから」
「本当の愛? 政略結婚なのにか?」
「政略結婚にだって愛は生まれます! レイジ様だって、私の事を愛してくれたのでしょう?」
「そうだな、過去形だけどな」
「……過去形? どういう事ですか?」
震える声でマーニャが問い返すと、レイジは小さく息を吐いてから答える。
「馬車の中で話す内容でもないだろう。家に帰ってからゆっくり話そう。僕だって鬼じゃない。君が路頭に迷わない様に色々と考えてはいる」
「…だからっ、どういう事なんですか!? 今すぐ言ってください!」
「そのままの意味だよ」
「……そのままの意味?」
(まさか…、嘘でしょう? だって、前回は簡単に許してくれたじゃないの! 大体、そんなに気になるなら、手紙のやり取りだって許さなければ良かったじゃないの!)
マーニャは思った事は口に出さずに懇願する。
「お願いします! 離婚だけはやめて下さい! それに、すぐに離婚をしたら世間体が良くないといったのはあなたじゃないですか!」
「そうだな。でも、それを決めたのは父上だ。僕ももう子供じゃない。自分の好きな様に決めたいんだ」
「嫌です! 別れたくなんかありません!」
マーニャは馬車の中で立ち上がり、よろめいたふりをして、彼に抱きつこうとしたけれど、腕をしっかりとおさえられて、席に戻された。
「どうして、僕との離婚をそんなに嫌がるんだ?」
「私は本当にレイジ様の事が…!」
「それなら、演技でも手紙のやり取りなんて、夫の前で続けないだろう? お互いにバレないように手紙まで焼いてるんだから。ただ、内容をショー様がアザレアに話しているとは、君も知らなかった様だし詰めが甘かったな」
(何なのよ! この話は内密にって書いておいたのに! 口の軽い男ね! 何のために返事を書き終えたら手紙を燃やすという約束をしたのかわかっていないのかしら!?)
マーニャは怒りをおさえ、レイジに頭を下げる。
「この様な事は二度としません。お願いです! どうか、離婚だけはやめて下さい…!」
「……詳しい話は家でしよう。ただ、これだけは言っておく。離婚は決定事項だ」
レイジの言葉を聞いたマーニャは、一瞬、目の前が真っ暗になった気がした。
※時系列で進めたいので、本編に戻り、数話先でマーニャsideのこの続きを書きます。
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