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思わず、喜びの声を上げてしまいそうになったけれど、そこはなんとかこらえる事が出来た。
(まだ、完璧じゃない。気を抜くにはまだ早すぎるわ。だってまだ、お姉様がまだ別れてもいないんだもの。お義兄様にこれからどう動くつもりなのか確認しなくちゃ…)
「両思いってのはどういう事だ?」
トーリ様が眉を寄せてショー様に尋ねると、笑いながら答える。
「そのまんまの意味だよ。あ、トーリ、人払いをさせて教室の扉を閉めてくれよ。いい子ちゃんのふりはもう疲れたんだ」
「……お前の言う事は聞きたくない」
「拗ねるなよ。もしかして、初恋だったのか?」
「答える必要はない」
トーリ様が感情を見せない表情で答えると、ショー様は面白くなさそうにする。
「なんか拍子抜けだな。もっと悔しそうな顔をするかと思ったのに」
その言葉を聞いて焦ったけれど、顔には出さずに、ただ、トーリ様に視線を向ける。
トーリ様は焦った様子もなく、鼻で笑う。
「お前にだけはそんな姿を見せたくない」
「そうか。そういう事かよ。それなら、見せたくなくても見せざるを得ないようにしてやるよ」
ショー様はそう言って、教室を出ていこうとしたので、慌てて、引き止めるふりをする。
「待ってください、ショー様!」
「うるさい! 付きまとわれるのは嫌いなんだ。おい、行くぞ」
ショー様はわたしに叫んだ後、トーリ様に向かって声を掛ける。
(トーリ様とショー様の2人で同じ馬車に乗って帰るのよね? 大丈夫なのかしら?)
ショー様が先に教室を出ていくと、トーリ様が私がいる方向に身体を向けて、小さな声で言う。
「単純馬鹿で助かったな」
「……」
頷いていいものか迷っていると、トーリ様は言う。
「俺も帰るよ。あと、今度のパーティーの話について、また連絡する。気を付けて帰れよ」
「トーリ様もお気をつけて」
あまり待たせると、ショー様が戻ってくる可能性があるからか、トーリ様は早足で教室を出ていった。
(そうなのよね。今度のオブライエン伯爵家のパーティーには、わたし達だけでなく、お姉様もお義兄様と一緒に出席するから、しっかり、打ち合わせをしなくちゃ。まずは、両思いだという2人が、お義兄様の前でどんな感じになるのかは見ものね。思った以上に冷静になれているのは、奪われる婚約者が、わたしにとって好きな人ではないからかもしれないわ)
あまり、遅く教室を出るのも不自然なので、鍵締めは警備員さんがしてくれる事もあり、わたしは急いで教室を出て、馬車の乗降場に向かった。
その日から、ショー様は人に聞こえない様に、わたしの悪口を言ったり、軽くだけれど叩いてきたりと暴力をふるうようになってきた。
トーリ様に相談したところ、今までの婚約者がされてきた様な仕打ちをわたしもされているという事だった。
トーリ様は、身の危険もあるから、そろそろ目が覚めたふりをしても良いと言ってくれたので、パーティーでの様子を見て考える事にした。
パーティー当日。
迎えに来てくれたのは、トーリ様だけで、内心、ホッとした。
薄い赤色のドレスに身を包んだわたしを見たトーリ様は優しい目になって言う。
「綺麗だよ」
「……! ありがとうございます。トーリ様も素敵です」
社交辞令だとわかっていても照れてしまうくらいに、黒の燕尾服姿のトーリ様は素敵だった。
(こんな人に綺麗だと言われたら、胸がときめいてもおかしくないわよね?)
慌てて、そんな場合ではないと、頭を切り替える。
2人きりになる事なんて、ここ最近はなかったから、聞けずにいた事を聞いてみる。
「今日は上手くいくと思いますか?」
「いかせないと駄目だというのもあるな」
「お義兄様に聞きますと、トーリ様からの手紙や贈り物については大して心を動かされていない様ですが、ショー様からの連絡は特に喜んでいるようです。お義兄様の方からも、さりげなく、私がショー様を好きだと話していただいているので余計でしょうね」
「今のところは上手くいってる。あとは、僕と君が不仲だという様に思わせないと」
「そうですね。私達が上手くいっているとわかれば、計画が上手くいかなくなる恐れがあります」
わたしの言葉を聞いたトーリ様はため息を吐く。
「好きなフリと仲良くないフリか…」
「巻き込んでしまって申し訳ございません」
「俺は巻き込まれたわけじゃない。君が巻き込まれたんだ」
それを聞いて、クボン候爵は前から、ショー様を大人しくさせる案をブロット公爵と共に考えていたんじゃないかと思った。
その時、馬車が停まり、わたしとトーリ様は仲が良くないフリを開始する事にした。
(まだ、完璧じゃない。気を抜くにはまだ早すぎるわ。だってまだ、お姉様がまだ別れてもいないんだもの。お義兄様にこれからどう動くつもりなのか確認しなくちゃ…)
「両思いってのはどういう事だ?」
トーリ様が眉を寄せてショー様に尋ねると、笑いながら答える。
「そのまんまの意味だよ。あ、トーリ、人払いをさせて教室の扉を閉めてくれよ。いい子ちゃんのふりはもう疲れたんだ」
「……お前の言う事は聞きたくない」
「拗ねるなよ。もしかして、初恋だったのか?」
「答える必要はない」
トーリ様が感情を見せない表情で答えると、ショー様は面白くなさそうにする。
「なんか拍子抜けだな。もっと悔しそうな顔をするかと思ったのに」
その言葉を聞いて焦ったけれど、顔には出さずに、ただ、トーリ様に視線を向ける。
トーリ様は焦った様子もなく、鼻で笑う。
「お前にだけはそんな姿を見せたくない」
「そうか。そういう事かよ。それなら、見せたくなくても見せざるを得ないようにしてやるよ」
ショー様はそう言って、教室を出ていこうとしたので、慌てて、引き止めるふりをする。
「待ってください、ショー様!」
「うるさい! 付きまとわれるのは嫌いなんだ。おい、行くぞ」
ショー様はわたしに叫んだ後、トーリ様に向かって声を掛ける。
(トーリ様とショー様の2人で同じ馬車に乗って帰るのよね? 大丈夫なのかしら?)
ショー様が先に教室を出ていくと、トーリ様が私がいる方向に身体を向けて、小さな声で言う。
「単純馬鹿で助かったな」
「……」
頷いていいものか迷っていると、トーリ様は言う。
「俺も帰るよ。あと、今度のパーティーの話について、また連絡する。気を付けて帰れよ」
「トーリ様もお気をつけて」
あまり待たせると、ショー様が戻ってくる可能性があるからか、トーリ様は早足で教室を出ていった。
(そうなのよね。今度のオブライエン伯爵家のパーティーには、わたし達だけでなく、お姉様もお義兄様と一緒に出席するから、しっかり、打ち合わせをしなくちゃ。まずは、両思いだという2人が、お義兄様の前でどんな感じになるのかは見ものね。思った以上に冷静になれているのは、奪われる婚約者が、わたしにとって好きな人ではないからかもしれないわ)
あまり、遅く教室を出るのも不自然なので、鍵締めは警備員さんがしてくれる事もあり、わたしは急いで教室を出て、馬車の乗降場に向かった。
その日から、ショー様は人に聞こえない様に、わたしの悪口を言ったり、軽くだけれど叩いてきたりと暴力をふるうようになってきた。
トーリ様に相談したところ、今までの婚約者がされてきた様な仕打ちをわたしもされているという事だった。
トーリ様は、身の危険もあるから、そろそろ目が覚めたふりをしても良いと言ってくれたので、パーティーでの様子を見て考える事にした。
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「……! ありがとうございます。トーリ様も素敵です」
社交辞令だとわかっていても照れてしまうくらいに、黒の燕尾服姿のトーリ様は素敵だった。
(こんな人に綺麗だと言われたら、胸がときめいてもおかしくないわよね?)
慌てて、そんな場合ではないと、頭を切り替える。
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「今日は上手くいくと思いますか?」
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それを聞いて、クボン候爵は前から、ショー様を大人しくさせる案をブロット公爵と共に考えていたんじゃないかと思った。
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