わたしの婚約者の好きな人

風見ゆうみ

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  ショー様の裏が見えたのは、あの時だけの一瞬で、その後、学園内を案内している間は、あの時見せた様な黒い感じは一切見せなかった。

 案内しながらお互いの事を話し、あの一言以外は、とても好青年だった。
 わたしと出会えて嬉しいだとか、可愛いねだとか、歯が浮くようなセリフばかりだったから、逆に胡散臭さを感じたのは、私の性格が悪いのかもしれない。

(でも、ウザいだとか、あんな事を言うって事は絶対に何かあるわよね…。とにかく、トーリ様ともお話してみなくちゃ)

 次の日、わたしは早速、朝から、トーリ様に話しかけてみる事にした。

「おはようございます、トーリ様」
「おはよう」

 トーリ様はキョロキョロと教室内を見渡した後、特に問題がなかったのか話しかけてくる。

「どうかしたのか?」

 昨日の内にお互いの挨拶は終わっているから、早速、誘ってみる事にする。

「昨日、ショー様に学園を案内したんですが、ご迷惑でなければ、トーリ様も…」

 断られるのは覚悟で聞いてみたところ、トーリ様は前髪をかきあげた後、全く、感情の見えない表情で聞いてくる。

「……ショーと2人で?」
「あ…、はい。ごめんなさい。もう、トーリ様はいらっしゃらなくて…」

 気分を害してしまったのかと思って謝ると、トーリ様は言う。

「有り難いが、学園の案内は他の人にしてもらう。けど、君と話はしたい。出来れば、ショーに知られない様に」

 トーリ様は小さな声で言うと、もう一度、教室内と出入口の扉の方を見たあと、ノートに素早く走り書きをしたかと思うと、そのページを破って、わたしに他の人に見られにくい様にか、小さく折りたたんでから差し出してきた。

「とにかく、ここから離れてくれ。ショーに見られたら面倒な事になる」

 慌てて、周りを見回し、ショー様がいない事を確認してから席に戻り、教科書を机の上に立てて、他の人にも見られない様にしてから紙を開く。

 そこにはこう書かれていた。

『ショーは俺の気に入ったものを奪うのが趣味だ。俺が君に興味を示さないふりをしないと君が狙われる。どういう事かこれだけじゃわかりにくいだろうから、詳しい話をしたい。今日の放課後、一度、帰るふりをした後、教室に戻れるか?』

 その内容を読んで呆然とした。

(まさに、関係性がわたしとお姉様と同じじゃないの! もしかして、トーリ様が無表情なのは、ショー様に感情を悟らせないため…? だから、皆に対して素っ気ない態度なの?)

 詳しいことは聞いてみないとわからない為、確実とは言えないけれど、その可能性が高いので、ショー様が教室内にいない事を、再度確認してから、もらった紙を自分のカバンの中にしまい、後ろの方の席のトーリ様の方を見ると、トーリ様は前を見るふりをして、目だけ私の方を向けたので、首を大きく縦に振ると、トーリ様は軽く手をあげた。

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