12 / 45
7.5 (マーニャside)
しおりを挟む
マーニャの夫であるレイジが帰ってくる日が来た。
あの一件があり、慌ててレイジの入院先に謝りに行ったマーニャだったが、「悪いと思っているのなら、僕の役に立つ事をしてくれ」と言われ、屋敷で大人しく自分が出来る範囲で彼の仕事をしたりしていた。
先日の夜会は、日頃頑張っていた自分へのご褒美だったが、名目上は夜会に出席して、社交界ではどんな事が話題になっているか情報収集するという名目だった。
(あの夜会に出席して本当に良かったわ。アザレアのの事を知れたんだもの)
夜会以外の行動制限がされていたマーニャはストレスが溜まっていた。
お茶会やショッピングなどは世間体もあり、行かないようにしていたから余計にだった。
「おかえりなさい!」
帰ってきた夫を出迎えたマーニャだったが、レイジは不機嫌そうな様子で「ただいま」と答えた後、執事に話しかける。
「屋敷の様子はどうだ?」
「……奥様以外は特に変わりはありません。あと、お仕事も少し滞り気味かもしれませんが…」
何か言いたげに執事が自分を見るのを見て、マーニャは文句を言う。
「私は一生懸命働いていたわ!」
「もちろん、そうでございますでしょう」
執事はマーニャとビトイの件をクボン候爵から聞いて知っている。
だから、他のメイド達の様に、マーニャの嘘に騙されてはおらず、主人を裏切ったマーニャに不信感がいっぱいだった。
(私が悪いんじゃないと言ってるのに…)
マーニャはため息を吐いてから執事に言う。
「私はこの家の主人の妻なのよ? その態度はないんじゃない?」
「申し訳ございませんでした」
執事が謝ると、レイジは言う。
「こんな時だけ妻と名乗るのか。まあいい」
レイジはそう言うと、自分の部屋に向かって歩いていく。
そんな彼をマーニャは追いかけて言う。
「誤解しないでください! あれは、アザレアの為に…!」
「……アザレア嬢の為?」
「アザレアは彼に盲目的になっていました。だから、現実を見せてあげようと…」
「妹の為に、自分が離婚する事になっても良いと思ったのか。よっぽどだな…」
レイジは細い目をより細くしたあと続ける。
「そういえば、アザレア嬢に婚約者が出来たそうだが、また、お前が見極めてやるのか?」
尋ねられ、マーニャは笑顔で言う。
「そうです。妹は純粋ですから、私が見極めてあげないと…」
マーニャは両手を組み合わせ祈るようにレイジに訴えると、レイジは口元に笑みを浮かべて言った。
「誰か知りたいようだな」
「もちろんです!」
笑顔で頷くと、レイジはマーニャに相手の名を教えてくれた。
(まさか、2人から選ぶ事になるだなんて…! これこそ、私がしっかり見極めてあげないと…!)
マーニャは悲しげな顔をして言う。
「それは、アザレアが心配だわ…。その婚約者の方達と連絡を取る事って出来ます…?」
「可能だが、必要か?」
「お願いします! 私が会って確かめます!」
マーニャが何度も頷くと、レイジは執事に、ブロット公爵家に連絡をつけるように指示をした。
「ありがとうございます!」
「もう、いいだろう?」
レイジは冷たく言い放ち、マーニャの返事を待たずに部屋に入っていった。
(やったわ! これで、アザレアに知られずに婚約者達に近付けるわ…)
喜んでいたマーニャだったが、この頃の彼女は
レイジがアザレア側だという事を知らなかった。
あの一件があり、慌ててレイジの入院先に謝りに行ったマーニャだったが、「悪いと思っているのなら、僕の役に立つ事をしてくれ」と言われ、屋敷で大人しく自分が出来る範囲で彼の仕事をしたりしていた。
先日の夜会は、日頃頑張っていた自分へのご褒美だったが、名目上は夜会に出席して、社交界ではどんな事が話題になっているか情報収集するという名目だった。
(あの夜会に出席して本当に良かったわ。アザレアのの事を知れたんだもの)
夜会以外の行動制限がされていたマーニャはストレスが溜まっていた。
お茶会やショッピングなどは世間体もあり、行かないようにしていたから余計にだった。
「おかえりなさい!」
帰ってきた夫を出迎えたマーニャだったが、レイジは不機嫌そうな様子で「ただいま」と答えた後、執事に話しかける。
「屋敷の様子はどうだ?」
「……奥様以外は特に変わりはありません。あと、お仕事も少し滞り気味かもしれませんが…」
何か言いたげに執事が自分を見るのを見て、マーニャは文句を言う。
「私は一生懸命働いていたわ!」
「もちろん、そうでございますでしょう」
執事はマーニャとビトイの件をクボン候爵から聞いて知っている。
だから、他のメイド達の様に、マーニャの嘘に騙されてはおらず、主人を裏切ったマーニャに不信感がいっぱいだった。
(私が悪いんじゃないと言ってるのに…)
マーニャはため息を吐いてから執事に言う。
「私はこの家の主人の妻なのよ? その態度はないんじゃない?」
「申し訳ございませんでした」
執事が謝ると、レイジは言う。
「こんな時だけ妻と名乗るのか。まあいい」
レイジはそう言うと、自分の部屋に向かって歩いていく。
そんな彼をマーニャは追いかけて言う。
「誤解しないでください! あれは、アザレアの為に…!」
「……アザレア嬢の為?」
「アザレアは彼に盲目的になっていました。だから、現実を見せてあげようと…」
「妹の為に、自分が離婚する事になっても良いと思ったのか。よっぽどだな…」
レイジは細い目をより細くしたあと続ける。
「そういえば、アザレア嬢に婚約者が出来たそうだが、また、お前が見極めてやるのか?」
尋ねられ、マーニャは笑顔で言う。
「そうです。妹は純粋ですから、私が見極めてあげないと…」
マーニャは両手を組み合わせ祈るようにレイジに訴えると、レイジは口元に笑みを浮かべて言った。
「誰か知りたいようだな」
「もちろんです!」
笑顔で頷くと、レイジはマーニャに相手の名を教えてくれた。
(まさか、2人から選ぶ事になるだなんて…! これこそ、私がしっかり見極めてあげないと…!)
マーニャは悲しげな顔をして言う。
「それは、アザレアが心配だわ…。その婚約者の方達と連絡を取る事って出来ます…?」
「可能だが、必要か?」
「お願いします! 私が会って確かめます!」
マーニャが何度も頷くと、レイジは執事に、ブロット公爵家に連絡をつけるように指示をした。
「ありがとうございます!」
「もう、いいだろう?」
レイジは冷たく言い放ち、マーニャの返事を待たずに部屋に入っていった。
(やったわ! これで、アザレアに知られずに婚約者達に近付けるわ…)
喜んでいたマーニャだったが、この頃の彼女は
レイジがアザレア側だという事を知らなかった。
70
お気に入りに追加
3,866
あなたにおすすめの小説
忘却令嬢〜そう言われましても記憶にございません〜【完】
雪乃
恋愛
ほんの一瞬、躊躇ってしまった手。
誰よりも愛していた彼女なのに傷付けてしまった。
ずっと傷付けていると理解っていたのに、振り払ってしまった。
彼女は深い碧色に絶望を映しながら微笑んだ。
※読んでくださりありがとうございます。
ゆるふわ設定です。タグをころころ変えてます。何でも許せる方向け。
あなたには、この程度のこと、だったのかもしれませんが。
ふまさ
恋愛
楽しみにしていた、パーティー。けれどその場は、信じられないほどに凍り付いていた。
でも。
愉快そうに声を上げて笑う者が、一人、いた。
公爵令嬢の辿る道
ヤマナ
恋愛
公爵令嬢エリーナ・ラナ・ユースクリフは、迎えた5度目の生に絶望した。
家族にも、付き合いのあるお友達にも、慕っていた使用人にも、思い人にも、誰からも愛されなかったエリーナは罪を犯して投獄されて凍死した。
それから生を繰り返して、その度に自業自得で凄惨な末路を迎え続けたエリーナは、やがて自分を取り巻いていたもの全てからの愛を諦めた。
これは、愛されず、しかし愛を求めて果てた少女の、その先の話。
※暇な時にちょこちょこ書いている程度なので、内容はともかく出来についてはご了承ください。
追記
六十五話以降、タイトルの頭に『※』が付いているお話は、流血表現やグロ表現がございますので、閲覧の際はお気を付けください。
【完結】幼い頃から婚約を誓っていた伯爵に婚約破棄されましたが、数年後に驚くべき事実が発覚したので会いに行こうと思います
菊池 快晴
恋愛
令嬢メアリーは、幼い頃から将来を誓い合ったゼイン伯爵に婚約破棄される。
その隣には見知らぬ女性が立っていた。
二人は傍から見ても仲睦まじいカップルだった。
両家の挨拶を終えて、幸せな結婚前パーティで、その出来事は起こった。
メアリーは彼との出会いを思い返しながら打ちひしがれる。
数年後、心の傷がようやく癒えた頃、メアリーの前に、謎の女性が現れる。
彼女の口から発せられた言葉は、ゼインのとんでもない事実だった――。
※ハッピーエンド&純愛
他サイトでも掲載しております。
側近という名の愛人はいりません。というか、そんな婚約者もいりません。
gacchi
恋愛
十歳の時にお見合いで婚約することになった侯爵家のディアナとエラルド。一人娘のディアナのところにエラルドが婿入りする予定となっていたが、エラルドは領主になるための勉強は嫌だと逃げ出してしまった。仕方なく、ディアナが女侯爵となることに。五年後、学園で久しぶりに再会したエラルドは、幼馴染の令嬢三人を連れていた。あまりの距離の近さに友人らしい付き合い方をお願いするが、一向に直す気配はない。卒業する学年になって、いい加減にしてほしいと注意したディアナに、エラルドは令嬢三人を連れて婿入りする気だと言った。
【完結】会いたいあなたはどこにもいない
野村にれ
恋愛
私の家族は反乱で殺され、私も処刑された。
そして私は家族の罪を暴いた貴族の娘として再び生まれた。
これは足りない罪を償えという意味なのか。
私の会いたいあなたはもうどこにもいないのに。
それでも償いのために生きている。
拝啓 お顔もお名前も存じ上げない婚約者様
オケラ
恋愛
15歳のユアは上流貴族のお嬢様。自然とたわむれるのが大好きな女の子で、毎日山で植物を愛でている。しかし、こうして自由に過ごせるのもあと半年だけ。16歳になると正式に結婚することが決まっている。彼女には生まれた時から婚約者がいるが、まだ一度も会ったことがない。名前も知らないのは幼き日の彼女のわがままが原因で……。半年後に結婚を控える中、彼女は山の中でとある殿方と出会い……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる