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6.5② (マーニャside)
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ビトイが騎士に連れて行かれ、先程、助けを求めた男性に介抱のお礼を言ってから離れると、マーニャは今日はもう屋敷に帰る事に決めた。
(せっかく楽しんでいたのに、ビトイのせいで台無しだわ)
マーニャがふぅとため息を吐くと、近くにいた男性達は、先程の件でマーニャが怯えているのだと勘違いし、自分のパートナーをそっちのけにして、彼女に話しかけてきた。
「大丈夫ですか?」
「もし、よろしければ屋敷までお送りしましょうか? 旦那様がいらっしゃらなくて不安でしょう?」
(そうよ。私は人妻なのよ? それなのに話しかけてくるなんて、本当に馬鹿よね。他の女性が悔しがる顔を見るのも楽しいけれど、もう飽きてきちゃった。やっぱり、アザレアのショックを受けている顔が一番ね。今回はビトイの件でまさか倒れるまでとは思わなかったから、ショックを受けている顔が見れなくて残念。倒れるだなんて精神的に弱すぎるのよ。そのせいで、実家から縁を切るとまで言われちゃったから実家には帰れない。どうしたら、アザレアのショックを受けている顔が見れるのかしら)
そんな事を目を伏せて考えた後、ゆっくりと目を開き、話しかけてきた男性達に微笑みかける。
「ありがとうございます。大丈夫ですから、お気になさらないで。パートナーの方を優先してあげてください」
マーニャは笑顔を作り、今度こそ会場を後にしようとしたのだが、そんな彼女の耳に、名も知らぬ令嬢達の話し声が届いた。
「先程、連れて行かれた方って、ノーマン卿じゃありませんでしたか? 浮気癖があるという話は本当なのかもしれませんね。婚約破棄になってから、そんなに時間が経ってもおりませんのに、嫌がる女性に手を出そうとされていたんでしょう?」
この令嬢達はビトイが誰に手を出そうとしていたかは知らなかった。
なぜなら、パーティーの主催者が口止めしたからだ。
ビトイと揉めていたのが自分だと知られていない事がわかって、さすがのマーニャも、これ以上、夫の機嫌を損ねたくはなかったので、ホッと胸をなでおろした。
今、夫に捨てられてしまえば、自分は行くところがなくなってしまうからだ。
「そういえば、ノーマン卿の元婚約者の方には、もう、婚約者が見つかったらしいわ」
「え!? そうなの!? 今度はお幸せになれるといいわね。でも、どんな方なのかしら」
その会話を耳にしたマーニャは足を止め、彼女達の近くの壁に、休憩するふりをして寄りかかり話を聞こうとする。
「それが…」
相手の名前は小声で話していた為、マーニャの耳には届かなかった。
「まあ! それはそれで大変じゃない!?」
「でしょう? でも、噂は噂にしかすぎないし…。こんな事を話しているのを聞かれたら怒られてしまうわね」
そこで、2人の令嬢は話題を変えてしまった為、マーニャは大きく息を吐いて壁から離れた。
(アザレアに婚約者が!? そんなの聞いていないわ。どうせ、ろくな人じゃないんでしょうけれど…。もしまた、アザレアが好きになる様な男性なら、私が近付いてあげないと。だって、ビトイみたいに浮気をする男だったら駄目だものね? 私がしっかり見極めてあげないといけないわ)
マーニャは、声を上げて笑い出したい気持ちになったが、何とかこらえて歩き出し、会場を後にしたのだった。
(せっかく楽しんでいたのに、ビトイのせいで台無しだわ)
マーニャがふぅとため息を吐くと、近くにいた男性達は、先程の件でマーニャが怯えているのだと勘違いし、自分のパートナーをそっちのけにして、彼女に話しかけてきた。
「大丈夫ですか?」
「もし、よろしければ屋敷までお送りしましょうか? 旦那様がいらっしゃらなくて不安でしょう?」
(そうよ。私は人妻なのよ? それなのに話しかけてくるなんて、本当に馬鹿よね。他の女性が悔しがる顔を見るのも楽しいけれど、もう飽きてきちゃった。やっぱり、アザレアのショックを受けている顔が一番ね。今回はビトイの件でまさか倒れるまでとは思わなかったから、ショックを受けている顔が見れなくて残念。倒れるだなんて精神的に弱すぎるのよ。そのせいで、実家から縁を切るとまで言われちゃったから実家には帰れない。どうしたら、アザレアのショックを受けている顔が見れるのかしら)
そんな事を目を伏せて考えた後、ゆっくりと目を開き、話しかけてきた男性達に微笑みかける。
「ありがとうございます。大丈夫ですから、お気になさらないで。パートナーの方を優先してあげてください」
マーニャは笑顔を作り、今度こそ会場を後にしようとしたのだが、そんな彼女の耳に、名も知らぬ令嬢達の話し声が届いた。
「先程、連れて行かれた方って、ノーマン卿じゃありませんでしたか? 浮気癖があるという話は本当なのかもしれませんね。婚約破棄になってから、そんなに時間が経ってもおりませんのに、嫌がる女性に手を出そうとされていたんでしょう?」
この令嬢達はビトイが誰に手を出そうとしていたかは知らなかった。
なぜなら、パーティーの主催者が口止めしたからだ。
ビトイと揉めていたのが自分だと知られていない事がわかって、さすがのマーニャも、これ以上、夫の機嫌を損ねたくはなかったので、ホッと胸をなでおろした。
今、夫に捨てられてしまえば、自分は行くところがなくなってしまうからだ。
「そういえば、ノーマン卿の元婚約者の方には、もう、婚約者が見つかったらしいわ」
「え!? そうなの!? 今度はお幸せになれるといいわね。でも、どんな方なのかしら」
その会話を耳にしたマーニャは足を止め、彼女達の近くの壁に、休憩するふりをして寄りかかり話を聞こうとする。
「それが…」
相手の名前は小声で話していた為、マーニャの耳には届かなかった。
「まあ! それはそれで大変じゃない!?」
「でしょう? でも、噂は噂にしかすぎないし…。こんな事を話しているのを聞かれたら怒られてしまうわね」
そこで、2人の令嬢は話題を変えてしまった為、マーニャは大きく息を吐いて壁から離れた。
(アザレアに婚約者が!? そんなの聞いていないわ。どうせ、ろくな人じゃないんでしょうけれど…。もしまた、アザレアが好きになる様な男性なら、私が近付いてあげないと。だって、ビトイみたいに浮気をする男だったら駄目だものね? 私がしっかり見極めてあげないといけないわ)
マーニャは、声を上げて笑い出したい気持ちになったが、何とかこらえて歩き出し、会場を後にしたのだった。
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