10 / 45
6.5② (マーニャside)
しおりを挟む
ビトイが騎士に連れて行かれ、先程、助けを求めた男性に介抱のお礼を言ってから離れると、マーニャは今日はもう屋敷に帰る事に決めた。
(せっかく楽しんでいたのに、ビトイのせいで台無しだわ)
マーニャがふぅとため息を吐くと、近くにいた男性達は、先程の件でマーニャが怯えているのだと勘違いし、自分のパートナーをそっちのけにして、彼女に話しかけてきた。
「大丈夫ですか?」
「もし、よろしければ屋敷までお送りしましょうか? 旦那様がいらっしゃらなくて不安でしょう?」
(そうよ。私は人妻なのよ? それなのに話しかけてくるなんて、本当に馬鹿よね。他の女性が悔しがる顔を見るのも楽しいけれど、もう飽きてきちゃった。やっぱり、アザレアのショックを受けている顔が一番ね。今回はビトイの件でまさか倒れるまでとは思わなかったから、ショックを受けている顔が見れなくて残念。倒れるだなんて精神的に弱すぎるのよ。そのせいで、実家から縁を切るとまで言われちゃったから実家には帰れない。どうしたら、アザレアのショックを受けている顔が見れるのかしら)
そんな事を目を伏せて考えた後、ゆっくりと目を開き、話しかけてきた男性達に微笑みかける。
「ありがとうございます。大丈夫ですから、お気になさらないで。パートナーの方を優先してあげてください」
マーニャは笑顔を作り、今度こそ会場を後にしようとしたのだが、そんな彼女の耳に、名も知らぬ令嬢達の話し声が届いた。
「先程、連れて行かれた方って、ノーマン卿じゃありませんでしたか? 浮気癖があるという話は本当なのかもしれませんね。婚約破棄になってから、そんなに時間が経ってもおりませんのに、嫌がる女性に手を出そうとされていたんでしょう?」
この令嬢達はビトイが誰に手を出そうとしていたかは知らなかった。
なぜなら、パーティーの主催者が口止めしたからだ。
ビトイと揉めていたのが自分だと知られていない事がわかって、さすがのマーニャも、これ以上、夫の機嫌を損ねたくはなかったので、ホッと胸をなでおろした。
今、夫に捨てられてしまえば、自分は行くところがなくなってしまうからだ。
「そういえば、ノーマン卿の元婚約者の方には、もう、婚約者が見つかったらしいわ」
「え!? そうなの!? 今度はお幸せになれるといいわね。でも、どんな方なのかしら」
その会話を耳にしたマーニャは足を止め、彼女達の近くの壁に、休憩するふりをして寄りかかり話を聞こうとする。
「それが…」
相手の名前は小声で話していた為、マーニャの耳には届かなかった。
「まあ! それはそれで大変じゃない!?」
「でしょう? でも、噂は噂にしかすぎないし…。こんな事を話しているのを聞かれたら怒られてしまうわね」
そこで、2人の令嬢は話題を変えてしまった為、マーニャは大きく息を吐いて壁から離れた。
(アザレアに婚約者が!? そんなの聞いていないわ。どうせ、ろくな人じゃないんでしょうけれど…。もしまた、アザレアが好きになる様な男性なら、私が近付いてあげないと。だって、ビトイみたいに浮気をする男だったら駄目だものね? 私がしっかり見極めてあげないといけないわ)
マーニャは、声を上げて笑い出したい気持ちになったが、何とかこらえて歩き出し、会場を後にしたのだった。
(せっかく楽しんでいたのに、ビトイのせいで台無しだわ)
マーニャがふぅとため息を吐くと、近くにいた男性達は、先程の件でマーニャが怯えているのだと勘違いし、自分のパートナーをそっちのけにして、彼女に話しかけてきた。
「大丈夫ですか?」
「もし、よろしければ屋敷までお送りしましょうか? 旦那様がいらっしゃらなくて不安でしょう?」
(そうよ。私は人妻なのよ? それなのに話しかけてくるなんて、本当に馬鹿よね。他の女性が悔しがる顔を見るのも楽しいけれど、もう飽きてきちゃった。やっぱり、アザレアのショックを受けている顔が一番ね。今回はビトイの件でまさか倒れるまでとは思わなかったから、ショックを受けている顔が見れなくて残念。倒れるだなんて精神的に弱すぎるのよ。そのせいで、実家から縁を切るとまで言われちゃったから実家には帰れない。どうしたら、アザレアのショックを受けている顔が見れるのかしら)
そんな事を目を伏せて考えた後、ゆっくりと目を開き、話しかけてきた男性達に微笑みかける。
「ありがとうございます。大丈夫ですから、お気になさらないで。パートナーの方を優先してあげてください」
マーニャは笑顔を作り、今度こそ会場を後にしようとしたのだが、そんな彼女の耳に、名も知らぬ令嬢達の話し声が届いた。
「先程、連れて行かれた方って、ノーマン卿じゃありませんでしたか? 浮気癖があるという話は本当なのかもしれませんね。婚約破棄になってから、そんなに時間が経ってもおりませんのに、嫌がる女性に手を出そうとされていたんでしょう?」
この令嬢達はビトイが誰に手を出そうとしていたかは知らなかった。
なぜなら、パーティーの主催者が口止めしたからだ。
ビトイと揉めていたのが自分だと知られていない事がわかって、さすがのマーニャも、これ以上、夫の機嫌を損ねたくはなかったので、ホッと胸をなでおろした。
今、夫に捨てられてしまえば、自分は行くところがなくなってしまうからだ。
「そういえば、ノーマン卿の元婚約者の方には、もう、婚約者が見つかったらしいわ」
「え!? そうなの!? 今度はお幸せになれるといいわね。でも、どんな方なのかしら」
その会話を耳にしたマーニャは足を止め、彼女達の近くの壁に、休憩するふりをして寄りかかり話を聞こうとする。
「それが…」
相手の名前は小声で話していた為、マーニャの耳には届かなかった。
「まあ! それはそれで大変じゃない!?」
「でしょう? でも、噂は噂にしかすぎないし…。こんな事を話しているのを聞かれたら怒られてしまうわね」
そこで、2人の令嬢は話題を変えてしまった為、マーニャは大きく息を吐いて壁から離れた。
(アザレアに婚約者が!? そんなの聞いていないわ。どうせ、ろくな人じゃないんでしょうけれど…。もしまた、アザレアが好きになる様な男性なら、私が近付いてあげないと。だって、ビトイみたいに浮気をする男だったら駄目だものね? 私がしっかり見極めてあげないといけないわ)
マーニャは、声を上げて笑い出したい気持ちになったが、何とかこらえて歩き出し、会場を後にしたのだった。
65
お気に入りに追加
3,861
あなたにおすすめの小説

【完結】幼い頃から婚約を誓っていた伯爵に婚約破棄されましたが、数年後に驚くべき事実が発覚したので会いに行こうと思います
菊池 快晴
恋愛
令嬢メアリーは、幼い頃から将来を誓い合ったゼイン伯爵に婚約破棄される。
その隣には見知らぬ女性が立っていた。
二人は傍から見ても仲睦まじいカップルだった。
両家の挨拶を終えて、幸せな結婚前パーティで、その出来事は起こった。
メアリーは彼との出会いを思い返しながら打ちひしがれる。
数年後、心の傷がようやく癒えた頃、メアリーの前に、謎の女性が現れる。
彼女の口から発せられた言葉は、ゼインのとんでもない事実だった――。
※ハッピーエンド&純愛
他サイトでも掲載しております。
あなたの愛が正しいわ
来須みかん
恋愛
旧題:あなたの愛が正しいわ~夫が私の悪口を言っていたので理想の妻になってあげたのに、どうしてそんな顔をするの?~
夫と一緒に訪れた夜会で、夫が男友達に私の悪口を言っているのを聞いてしまった。そのことをきっかけに、私は夫の理想の妻になることを決める。それまで夫を心の底から愛して尽くしていたけど、それがうっとうしかったそうだ。夫に付きまとうのをやめた私は、生まれ変わったように清々しい気分になっていた。
一方、夫は妻の変化に戸惑い、誤解があったことに気がつき、自分の今までの酷い態度を謝ったが、妻は美しい笑みを浮かべてこういった。
「いいえ、間違っていたのは私のほう。あなたの愛が正しいわ」
お二人共、どうぞお幸せに……もう二度と勘違いはしませんから
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【もう私は必要ありませんよね?】
私には2人の幼なじみがいる。一人は美しくて親切な伯爵令嬢。もう一人は笑顔が素敵で穏やかな伯爵令息。
その一方、私は貴族とは名ばかりのしがない男爵家出身だった。けれど2人は身分差に関係なく私に優しく接してくれるとても大切な存在であり、私は密かに彼に恋していた。
ある日のこと。病弱だった父が亡くなり、家を手放さなければならない
自体に陥る。幼い弟は父の知り合いに引き取られることになったが、私は住む場所を失ってしまう。
そんな矢先、幼なじみの彼に「一生、面倒をみてあげるから家においで」と声をかけられた。まるで夢のような誘いに、私は喜んで彼の元へ身を寄せることになったのだが――
※ 他サイトでも投稿中
途中まで鬱展開続きます(注意)

私の婚約者はちょろいのか、バカなのか、やさしいのか
れもんぴーる
恋愛
エミリアの婚約者ヨハンは、最近幼馴染の令嬢との逢瀬が忙しい。
婚約者との顔合わせよりも幼馴染とのデートを優先するヨハン。それなら婚約を解消してほしいのだけれど、応じてくれない。
両親に相談しても分かってもらえず、家を出てエミリアは自分の夢に向かって進み始める。
バカなのか、優しいのかわからない婚約者を見放して新たな生活を始める令嬢のお話です。
*今回感想欄を閉じます(*´▽`*)。感想への返信でぺろって言いたくて仕方が無くなるので・・・。初めて魔法も竜も転生も出てこないお話を書きました。寛大な心でお読みください!m(__)m
あなたの姿をもう追う事はありません
彩華(あやはな)
恋愛
幼馴染で二つ年上のカイルと婚約していたわたしは、彼のために頑張っていた。
王立学園に先に入ってカイルは最初は手紙をくれていたのに、次第に少なくなっていった。二年になってからはまったくこなくなる。でも、信じていた。だから、わたしはわたしなりに頑張っていた。
なのに、彼は恋人を作っていた。わたしは婚約を解消したがらない悪役令嬢?どう言うこと?
わたしはカイルの姿を見て追っていく。
ずっと、ずっと・・・。
でも、もういいのかもしれない。

[完結]君に好きだと伝えたい〜婚約破棄?そうですか、貴方に愛を返せない私のせいですね〜
日向はび
恋愛
表情は動かず、愛の言葉は囁けない。そんな呪いをかけられた伯爵令嬢の元に愛する人から婚約破棄の手紙がとどく。さらに彼は腹違いの妹と恋をしているという。絶望しながらも、全ては自分の責任と別れを決意した令嬢は愛するひとに別れを告げるために彼の家へ訪れる。そこで煌めくナイフの切っ先を目にした彼女は、愛する人を守るためその身をナイフの前に曝け出すのだった。

婚約者の不倫相手は妹で?
岡暁舟
恋愛
公爵令嬢マリーの婚約者は第一王子のエルヴィンであった。しかし、エルヴィンが本当に愛していたのはマリーの妹であるアンナで…。一方、マリーは幼馴染のアランと親しくなり…。

真実の愛を見つけた婚約者(殿下)を尊敬申し上げます、婚約破棄致しましょう
さこの
恋愛
「真実の愛を見つけた」
殿下にそう告げられる
「応援いたします」
だって真実の愛ですのよ?
見つける方が奇跡です!
婚約破棄の書類ご用意いたします。
わたくしはお先にサインをしました、殿下こちらにフルネームでお書き下さいね。
さぁ早く!わたくしは真実の愛の前では霞んでしまうような存在…身を引きます!
なぜ婚約破棄後の元婚約者殿が、こんなに美しく写るのか…
私の真実の愛とは誠の愛であったのか…
気の迷いであったのでは…
葛藤するが、すでに時遅し…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる