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6.5 ① (ビトイside)
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両親に叱られた事もあったが、自分自身もアザレアに婚約破棄されたくなかったビトイは、あの時の行動について、かなり後悔していた。
(久しぶりにマーニャに会って、僕に向かって笑いかけてくれたというだけで舞い上がってしまった。周りに人がいるって事もわかってた。人がいるから理性が保てると思っていたのに…)
ビトイはあの時の事を思う。
その日のマーニャはやけにボディタッチが多かった。
だから、夫がいなくて寂しいんだと自分に慰めてくれ言っているんじゃないかと勘違いしてしまったのだ。
今まではアザレアに申し訳ないという気持ちもあったから制御できていた気持ちが、そのボディタッチにより制御できなくなってしまった。
(本当に馬鹿だった。許してもらえるまで、何度でも謝りに行こう)
そう思っていたビトイだったが、突然、やって来たクボン侯爵から、アザレアとの婚約破棄を認めさせられる事になった。
ビトイは嫌がったが、認めなければ莫大な慰謝料をマーニャの夫から請求させると脅された。
金額について、ビトイの父、ノーマン伯爵は抗議したが、クボン侯爵家の名に傷が付く分だと言われた。
そして、婚約破棄を認めれば、慰謝料は請求しないと言われたノーマン伯爵は婚約破棄の書類にサインした。
浮気相手がマーニャだった事を口外しないとの誓約書も書かされた。
婚約破棄の理由は、ビトイには浮気癖があり、結婚しても浮気するのでアザレアを幸せにできないから、という、間違ってはいないが、世間に伝えるには苦しい理由になった。
その日から、ビトイはあまり外出しなくなった。
家で仕事をしていれば良かっただけという事もあり、特に困らなかったが、ビトイはこんな事になっても、まだマーニャの事が忘れられなかった。
アザレアへの罪悪感という足枷がなくなった分、彼の恋心は、より強くなった。
ある日、知り合いの夜会に誘われていたのを思い出し、後ろ指を指されるのは覚悟で、その夜会に出席した。
マーニャはパーティーが大好きだから、この夜会にも足を運んでいるだろうと思ったのだ。
そして、ビトイの考えた通り、マーニャはいた。
彼女の元へ次から次へと男性が近寄っていき、途切れる様子はない。
彼女と少しでも長く話をしようとしているが、大体は、パートナーの女性に怒られて去っていく感じだった。
紫色のイブニングドレスを着た彼女は、彼にとって女神のように見えた。
「マーニャ!」
人を押しのけて近寄っていくと、ビトイに気が付いたマーニャは顔を歪めた。
「私に近づかないでちょうだい」
「そんな事を言わないでくれよ」
マーニャは大きくため息を吐いた後、会場の隅を指差す。
「少しくらいなら話をしてあげるわ」
マーニャはビトイと共に会場の隅に移動すると問いかけてきた。
「一体何なの? もう私には近付かないでくれる? あなたはアザレアと婚約破棄になったんでしょ?」
「そ、それはそうかもしれない。だけど、僕だけ何もかも失うなんておかしくないか!? 君だって」
「私も悪いって言いたいの? 人に責任を押し付けようとするのはやめてよ」
マーニャは悲しそうな顔を作ると首を横に振って言う。
「アザレアを悲しませる様な人は嫌いよ。ああ、可哀想なアザレア…」
「そ、そんな…っ! だって」
「あなた、私の事が好きだったの? そうだとして、それならどうして、アザレアの婚約者でいたの?」
「わかってたんだよ! 君が僕に振り向かない事くらい! だけど、アザレアの婚約者でいれば、少なくとも、君に近付きやすいし、興味を持ってもらえる…。それだけでいいと思ったんだ…」
「……そう。でも、ごめんね。これ以上の関係は無理よ。あの時のキスは、あなたへのサヨナラのキスだと思って?」
「そ、そんな、マーニャ!」
ビトイがマーニャの腕をつかもうとした瞬間、マーニャが叫んだ。
「きゃーっ!! 誰か! ノーマン卿が私に乱暴を!!」
「違う! 何を言い出すんだ、マーニャ!?」
「誰か! 助けてください!」
マーニャが近くにいた男性に助けを求めた。
それと共に、騎士が近付いてくる。
「何があったんですか!?」
「ノーマン卿が! 私に関係を迫ってきて!!」
マーニャは体を震わせながら、やって来た騎士に涙目になって訴える。
すると、騎士は怒りの表情になって、ビトイの腕を捕まえた。
「こっちに来てもらおう」
「そ…、そんな、僕は何もしていない!! マーニャ! マーニャ!!」
騎士に連れて行かれる際、何度もビトイはマーニャの名を呼んだが、彼女からの反応はなかった。
両手で顔を覆い、泣き真似をしながらビトイが連れられていく姿を指の隙間で見ながら、マーニャが笑いをこらえそうになっている事など、周りの人間が気付く事もなかった。
※次はマーニャの話になります。
(久しぶりにマーニャに会って、僕に向かって笑いかけてくれたというだけで舞い上がってしまった。周りに人がいるって事もわかってた。人がいるから理性が保てると思っていたのに…)
ビトイはあの時の事を思う。
その日のマーニャはやけにボディタッチが多かった。
だから、夫がいなくて寂しいんだと自分に慰めてくれ言っているんじゃないかと勘違いしてしまったのだ。
今まではアザレアに申し訳ないという気持ちもあったから制御できていた気持ちが、そのボディタッチにより制御できなくなってしまった。
(本当に馬鹿だった。許してもらえるまで、何度でも謝りに行こう)
そう思っていたビトイだったが、突然、やって来たクボン侯爵から、アザレアとの婚約破棄を認めさせられる事になった。
ビトイは嫌がったが、認めなければ莫大な慰謝料をマーニャの夫から請求させると脅された。
金額について、ビトイの父、ノーマン伯爵は抗議したが、クボン侯爵家の名に傷が付く分だと言われた。
そして、婚約破棄を認めれば、慰謝料は請求しないと言われたノーマン伯爵は婚約破棄の書類にサインした。
浮気相手がマーニャだった事を口外しないとの誓約書も書かされた。
婚約破棄の理由は、ビトイには浮気癖があり、結婚しても浮気するのでアザレアを幸せにできないから、という、間違ってはいないが、世間に伝えるには苦しい理由になった。
その日から、ビトイはあまり外出しなくなった。
家で仕事をしていれば良かっただけという事もあり、特に困らなかったが、ビトイはこんな事になっても、まだマーニャの事が忘れられなかった。
アザレアへの罪悪感という足枷がなくなった分、彼の恋心は、より強くなった。
ある日、知り合いの夜会に誘われていたのを思い出し、後ろ指を指されるのは覚悟で、その夜会に出席した。
マーニャはパーティーが大好きだから、この夜会にも足を運んでいるだろうと思ったのだ。
そして、ビトイの考えた通り、マーニャはいた。
彼女の元へ次から次へと男性が近寄っていき、途切れる様子はない。
彼女と少しでも長く話をしようとしているが、大体は、パートナーの女性に怒られて去っていく感じだった。
紫色のイブニングドレスを着た彼女は、彼にとって女神のように見えた。
「マーニャ!」
人を押しのけて近寄っていくと、ビトイに気が付いたマーニャは顔を歪めた。
「私に近づかないでちょうだい」
「そんな事を言わないでくれよ」
マーニャは大きくため息を吐いた後、会場の隅を指差す。
「少しくらいなら話をしてあげるわ」
マーニャはビトイと共に会場の隅に移動すると問いかけてきた。
「一体何なの? もう私には近付かないでくれる? あなたはアザレアと婚約破棄になったんでしょ?」
「そ、それはそうかもしれない。だけど、僕だけ何もかも失うなんておかしくないか!? 君だって」
「私も悪いって言いたいの? 人に責任を押し付けようとするのはやめてよ」
マーニャは悲しそうな顔を作ると首を横に振って言う。
「アザレアを悲しませる様な人は嫌いよ。ああ、可哀想なアザレア…」
「そ、そんな…っ! だって」
「あなた、私の事が好きだったの? そうだとして、それならどうして、アザレアの婚約者でいたの?」
「わかってたんだよ! 君が僕に振り向かない事くらい! だけど、アザレアの婚約者でいれば、少なくとも、君に近付きやすいし、興味を持ってもらえる…。それだけでいいと思ったんだ…」
「……そう。でも、ごめんね。これ以上の関係は無理よ。あの時のキスは、あなたへのサヨナラのキスだと思って?」
「そ、そんな、マーニャ!」
ビトイがマーニャの腕をつかもうとした瞬間、マーニャが叫んだ。
「きゃーっ!! 誰か! ノーマン卿が私に乱暴を!!」
「違う! 何を言い出すんだ、マーニャ!?」
「誰か! 助けてください!」
マーニャが近くにいた男性に助けを求めた。
それと共に、騎士が近付いてくる。
「何があったんですか!?」
「ノーマン卿が! 私に関係を迫ってきて!!」
マーニャは体を震わせながら、やって来た騎士に涙目になって訴える。
すると、騎士は怒りの表情になって、ビトイの腕を捕まえた。
「こっちに来てもらおう」
「そ…、そんな、僕は何もしていない!! マーニャ! マーニャ!!」
騎士に連れて行かれる際、何度もビトイはマーニャの名を呼んだが、彼女からの反応はなかった。
両手で顔を覆い、泣き真似をしながらビトイが連れられていく姿を指の隙間で見ながら、マーニャが笑いをこらえそうになっている事など、周りの人間が気付く事もなかった。
※次はマーニャの話になります。
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