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23 一つの嘘
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パオラさんが出て行ってから、新聞記者には現在、バニャ様は屋敷内にはいないこと。
違法の魔道具を持っていたせいで魔道士協会が取り調べをしようとしたところ、バニャ様が逃げたので指名手配されたという説明をした。
ディード様がいるからか、今日のところはその話だけで新聞記者たちは大人しく帰ってくれた。
新聞記者が帰る際に、ディード様が何人かの記者と話をしていたけれど、何を話していたかはミラさんと話をしていたため聞こえなかった。
「シア様、ヤバス様との離婚は少しでも早めにしたほうがよろしいかと思いますわ」
「そうですね。もう一度、お願いしに行こうと思います」
ミラさんに促され、ディード様と合流して、ヤバス様の部屋へ向かうことにした。
廊下ですれ違う使用人たちが不安そうにしているので、ヤバス様は不敬罪には問われないけれど、バニャ様は魔道士協会の人に捕まることになるだろうと伝えると浮かない表情になった。
魔道士協会にはマジルカ王国では逮捕権が与えられているため、こちらの警察に捕まったあとは、魔道士協会に引き渡されるので、必然的にバニャ様はマジルカ王国に送られる。
使用人たちには罪はないし、今のところ、ヤバス様が捕まるということはないでしょうから、使用人たちの紹介状をヤバス様にお願いする、もしくは執事にお願いしてヤバス様の名前で書いてもらったほうが良いのかもしれない。
「紹介状を用意するから心配しないで」
紹介状を書いて暇を出してあげないと、彼女たちが新しい働き口を見つけるのは難しくなる。
執事には紹介状の用意をするように伝え、執事の分は私が書くと伝えた。
それにしても、ヤバス様が部屋から出てこない理由がわからなかった。
バニャ様は自ら逃げたことで罪を自白したようなものだけれど、それだけでエビン公爵家が没落するとは思えない。
それなのに、どうしてここまで怯えているのかしら。
ヤバス様の部屋の扉をノックして話しかける。
「ヤバス様、開けてください!」
「嫌だ。僕を捕まえるつもりなんだろう? それに、離婚届も書きたくない」
「ヤバス様にはパオラさんもいらっしゃいますし、私にこだわる必要はないでしょう」
「こんな状態になった以上、君と離婚なんてしたら、僕の立場はもっと悪くなるじゃないか」
「もう十分悪いと思いますわ。あなたとパオラさんの話も新聞記者にしてしまいましたから」
しれっと伝えてみると、ヤバス様が部屋の扉を開けた。
「シア、君は今、なんて言ったんだ?」
「ヤバス様とパオラさんが愛人関係であることを新聞記者に伝えたと申しましたが?」
「そ、そんな!」
ヤバス様は真っ青な表情になって頭を抱えた。
「どうしよう。このままじゃ僕は! 何て言い訳したらいいんだ! シア、頼む。助けてくれないか!」
「意味がわかりません。何から助けると言うのです?」
愛人を持つことは貴族の間では禁止行為ではない。
だから、怯えるほどではないと思う。
バニャ様が何かもっと悪いことでもしていたのかしら。
訝しんでいると、後ろに立っていたディード様が「あ」と声を上げたので振り返る。
「シアさん。今、王族を追っている記者の方からの情報を、先程、門の前にいた記者の方から連絡をいただいたのですが」
「いつですか?」
「今です。封をすれば僕にすぐに届くようになっている封筒をお渡ししていたんですよ。で、その手紙に書いてあったのですが、レティカ王国の第二王女殿下がこちらに向かっているそうですよ。一体、何の用事なんですかね」
「第二王女殿下が?」
「うわああああ」
私がディード様に聞き返したと同時に、ヤバス様が両耳を押さえて叫んだ。
「どういうことなんでしょうか」
「見てください」
ディード様に手紙を手渡されたので、内容を確認してみる。
そこには、ヤバス様に愛人がいるという情報が流れるとすぐに、第二王女殿下が動き出したと書かれていた。
「まさか、ヤバス様は第二王女殿下とも関係があったということでしょうか」
「その可能性が高いです。シアさんがストレートヘアになる前に、妻とは別れるつもりなんだとか言って、第二王女殿下を誑かしたのかもしれませんよ。ヤバスさんの中では遊びだったんでしょうけど、お相手はそうじゃなかったのかもしれません」
「もし、それが本当でしたら、私の離婚も裁判で勝ち取れそうですね」
「第二王女殿下が証言してくださるなら、絶対に勝てるでしょうね」
笑顔で言うと、ディード様も笑顔を返してくれた。
第二王女殿下がいらしたら、どんな修羅場になるかはわからない。
ヤバス様が第二王女殿下に手を出したことをバニャ様は知っていたのかしら。
それに、もしかしたら、ヤバス様の浮気相手はパオラさんと第二王女殿下だけではないのかもしれない。
今のうちに言えることは言っておきましょう。
「ヤバス様、裁判に持ち込んでも結果は一緒です。今のうちに離婚届にサインをお願い致します。そうすれば、一つの嘘は本当になりますわよ?」
私の言葉を聞いたヤバス様は頭を抱えたまま、涙目で私を見つめた。
違法の魔道具を持っていたせいで魔道士協会が取り調べをしようとしたところ、バニャ様が逃げたので指名手配されたという説明をした。
ディード様がいるからか、今日のところはその話だけで新聞記者たちは大人しく帰ってくれた。
新聞記者が帰る際に、ディード様が何人かの記者と話をしていたけれど、何を話していたかはミラさんと話をしていたため聞こえなかった。
「シア様、ヤバス様との離婚は少しでも早めにしたほうがよろしいかと思いますわ」
「そうですね。もう一度、お願いしに行こうと思います」
ミラさんに促され、ディード様と合流して、ヤバス様の部屋へ向かうことにした。
廊下ですれ違う使用人たちが不安そうにしているので、ヤバス様は不敬罪には問われないけれど、バニャ様は魔道士協会の人に捕まることになるだろうと伝えると浮かない表情になった。
魔道士協会にはマジルカ王国では逮捕権が与えられているため、こちらの警察に捕まったあとは、魔道士協会に引き渡されるので、必然的にバニャ様はマジルカ王国に送られる。
使用人たちには罪はないし、今のところ、ヤバス様が捕まるということはないでしょうから、使用人たちの紹介状をヤバス様にお願いする、もしくは執事にお願いしてヤバス様の名前で書いてもらったほうが良いのかもしれない。
「紹介状を用意するから心配しないで」
紹介状を書いて暇を出してあげないと、彼女たちが新しい働き口を見つけるのは難しくなる。
執事には紹介状の用意をするように伝え、執事の分は私が書くと伝えた。
それにしても、ヤバス様が部屋から出てこない理由がわからなかった。
バニャ様は自ら逃げたことで罪を自白したようなものだけれど、それだけでエビン公爵家が没落するとは思えない。
それなのに、どうしてここまで怯えているのかしら。
ヤバス様の部屋の扉をノックして話しかける。
「ヤバス様、開けてください!」
「嫌だ。僕を捕まえるつもりなんだろう? それに、離婚届も書きたくない」
「ヤバス様にはパオラさんもいらっしゃいますし、私にこだわる必要はないでしょう」
「こんな状態になった以上、君と離婚なんてしたら、僕の立場はもっと悪くなるじゃないか」
「もう十分悪いと思いますわ。あなたとパオラさんの話も新聞記者にしてしまいましたから」
しれっと伝えてみると、ヤバス様が部屋の扉を開けた。
「シア、君は今、なんて言ったんだ?」
「ヤバス様とパオラさんが愛人関係であることを新聞記者に伝えたと申しましたが?」
「そ、そんな!」
ヤバス様は真っ青な表情になって頭を抱えた。
「どうしよう。このままじゃ僕は! 何て言い訳したらいいんだ! シア、頼む。助けてくれないか!」
「意味がわかりません。何から助けると言うのです?」
愛人を持つことは貴族の間では禁止行為ではない。
だから、怯えるほどではないと思う。
バニャ様が何かもっと悪いことでもしていたのかしら。
訝しんでいると、後ろに立っていたディード様が「あ」と声を上げたので振り返る。
「シアさん。今、王族を追っている記者の方からの情報を、先程、門の前にいた記者の方から連絡をいただいたのですが」
「いつですか?」
「今です。封をすれば僕にすぐに届くようになっている封筒をお渡ししていたんですよ。で、その手紙に書いてあったのですが、レティカ王国の第二王女殿下がこちらに向かっているそうですよ。一体、何の用事なんですかね」
「第二王女殿下が?」
「うわああああ」
私がディード様に聞き返したと同時に、ヤバス様が両耳を押さえて叫んだ。
「どういうことなんでしょうか」
「見てください」
ディード様に手紙を手渡されたので、内容を確認してみる。
そこには、ヤバス様に愛人がいるという情報が流れるとすぐに、第二王女殿下が動き出したと書かれていた。
「まさか、ヤバス様は第二王女殿下とも関係があったということでしょうか」
「その可能性が高いです。シアさんがストレートヘアになる前に、妻とは別れるつもりなんだとか言って、第二王女殿下を誑かしたのかもしれませんよ。ヤバスさんの中では遊びだったんでしょうけど、お相手はそうじゃなかったのかもしれません」
「もし、それが本当でしたら、私の離婚も裁判で勝ち取れそうですね」
「第二王女殿下が証言してくださるなら、絶対に勝てるでしょうね」
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ヤバス様が第二王女殿下に手を出したことをバニャ様は知っていたのかしら。
それに、もしかしたら、ヤバス様の浮気相手はパオラさんと第二王女殿下だけではないのかもしれない。
今のうちに言えることは言っておきましょう。
「ヤバス様、裁判に持ち込んでも結果は一緒です。今のうちに離婚届にサインをお願い致します。そうすれば、一つの嘘は本当になりますわよ?」
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