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20 他国の王族の名
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ヤバス様はバニャ様のことを知って、これから自分の家がどうなるかわからないといった恐怖で、部屋に閉じこもってしまっていた。
バニャ様の動きは魔道士の人が見張ってくれているから、噂を流したのはバニャ様でもない。
だから、新聞記者に馬鹿な噂を流したのはパオラさんしかいないと断定して、私たちはパオラさんの部屋へと向かった。
すると、彼女は部屋の中に入れてくれたのはいいものの、荷造りの真っ最中だった。
「あなた、新聞記者に嘘の噂を流したわね?」
「……何の話ですか?」
パオラさんは荷造りする手は止めずに聞き返してきた。
「屋敷の外に新聞記者が来ているのよ」
「そんなこと知りません。バニャ様の件なんじゃないですか」
「バニャ様の件は嘘じゃないわよ?」
私は嘘の噂としか言っていない。
それなのに反応したのだから、彼女は怪しい。
バニャ様の件は国際指名手配なんだから、新聞記者が知らないはずはないんだから。
「バニャ様の件じゃないというのであれば、私は知りません」
「本当に?」
「ええ。どうして私を疑うんですか?」
「私の浮気を疑っているのは、あなたしかいないのよ」
「そんなことはありません! ヤバス様だって疑っていますよ!」
パオラさんは私とヤバス様の昨日のやり取りを知らないようで、そう訴えてきた。
「ヤバス様に後で確認はするけれど、どうしてヤバス様がそんな嘘をつく必要があるの?」
「それは、何かあるんじゃないですか。もしくはどこかへ行ってしまったバニャ様が噂を流したんじゃないですか? 私に聞かれても知りません!」
パオラさんは自分が関与していないと言い張るつもりらしい。
でも、彼女はやっていることが甘かった。
「昨日、あなたが実家に連絡を入れていたと使用人から聞いたけれど、その時にどんな内容を書いたの?」
「そ、それは、今日、家に帰るという連絡です」
「それだけ?」
「そうです」
「まあ、どちらでも良いけど、すぐにどこから流れたかはわかると思うわよ」
私の言葉を聞いたパオラさんは、よほど自信があるのか笑顔で答える。
「私ではありませんから大丈夫です」
「そう。わかったわ。あなたじゃないようだから伝えておいてあげるけれど」
「何でしょうか」
鬱陶しそうにパオラさんが聞いてくるので、ディード様を見る。
すると、ディード様は被っていたフードを脱ぎ、パオラさんに笑顔で挨拶する。
「先日もご挨拶させていただきました。ディードと申します。姓はエレンです」
「ディード・エレン?」
パオラさんは一度聞き返したあと、聞き覚えのある名前だと思ったのか少しだけ考える素振りを見せた。
けれど、何も思い浮かばなかったようで、ディード様に話の先を促す。
「一体、何が言いたいんですか?」
「シアさん、他国の王族の名ってそんなに知られていないものなのですか?」
「新聞を読まなければわからないかもしれません。授業では習いませんので」
眉尻を下げて尋ねてきたディード様に苦笑して答えると、彼はうーんと唸る。
「では、新聞記者の方なら僕のことはわかりますよね?」
「さすがにそれはわかると思います」
「なら、彼らに証明してもらいましょう」
ディード様は爽やかな笑顔を見せると、パオラさんに話しかける。
「あなたは実家に帰られるのですよね?」
「そうですけど」
「では、お見送りいたしましょう。それから、先日、あなたはシアさんの浮気相手は僕だとシアさんに言っていましたが、それは間違いないですね?」
「間違いありません。というか、そうなんじゃないんですか?」
「いいえ。違いますよ。では、お見送りしますので、帰る準備が整ったら呼んでください」
そう言って、ディード様は私たちを促して、パオラさんの部屋を出た。
「噂を流したのは、彼女の実家なのでしょうね」
「はい。彼女のお母様がVIP客にここだけの話として、今日の午前中に話をしたようですわ」
噂の出どころを調べてくれていたミラさんがディード様に答える。
「となると、パオラさんにはこの屋敷の敷地内から出てもらってから話をしましょう。ここに居座られると、不敬罪で捕まえるにしても、シアさんに迷惑がかかりますから」
ディード様は笑みを消して言った。
バニャ様の動きは魔道士の人が見張ってくれているから、噂を流したのはバニャ様でもない。
だから、新聞記者に馬鹿な噂を流したのはパオラさんしかいないと断定して、私たちはパオラさんの部屋へと向かった。
すると、彼女は部屋の中に入れてくれたのはいいものの、荷造りの真っ最中だった。
「あなた、新聞記者に嘘の噂を流したわね?」
「……何の話ですか?」
パオラさんは荷造りする手は止めずに聞き返してきた。
「屋敷の外に新聞記者が来ているのよ」
「そんなこと知りません。バニャ様の件なんじゃないですか」
「バニャ様の件は嘘じゃないわよ?」
私は嘘の噂としか言っていない。
それなのに反応したのだから、彼女は怪しい。
バニャ様の件は国際指名手配なんだから、新聞記者が知らないはずはないんだから。
「バニャ様の件じゃないというのであれば、私は知りません」
「本当に?」
「ええ。どうして私を疑うんですか?」
「私の浮気を疑っているのは、あなたしかいないのよ」
「そんなことはありません! ヤバス様だって疑っていますよ!」
パオラさんは私とヤバス様の昨日のやり取りを知らないようで、そう訴えてきた。
「ヤバス様に後で確認はするけれど、どうしてヤバス様がそんな嘘をつく必要があるの?」
「それは、何かあるんじゃないですか。もしくはどこかへ行ってしまったバニャ様が噂を流したんじゃないですか? 私に聞かれても知りません!」
パオラさんは自分が関与していないと言い張るつもりらしい。
でも、彼女はやっていることが甘かった。
「昨日、あなたが実家に連絡を入れていたと使用人から聞いたけれど、その時にどんな内容を書いたの?」
「そ、それは、今日、家に帰るという連絡です」
「それだけ?」
「そうです」
「まあ、どちらでも良いけど、すぐにどこから流れたかはわかると思うわよ」
私の言葉を聞いたパオラさんは、よほど自信があるのか笑顔で答える。
「私ではありませんから大丈夫です」
「そう。わかったわ。あなたじゃないようだから伝えておいてあげるけれど」
「何でしょうか」
鬱陶しそうにパオラさんが聞いてくるので、ディード様を見る。
すると、ディード様は被っていたフードを脱ぎ、パオラさんに笑顔で挨拶する。
「先日もご挨拶させていただきました。ディードと申します。姓はエレンです」
「ディード・エレン?」
パオラさんは一度聞き返したあと、聞き覚えのある名前だと思ったのか少しだけ考える素振りを見せた。
けれど、何も思い浮かばなかったようで、ディード様に話の先を促す。
「一体、何が言いたいんですか?」
「シアさん、他国の王族の名ってそんなに知られていないものなのですか?」
「新聞を読まなければわからないかもしれません。授業では習いませんので」
眉尻を下げて尋ねてきたディード様に苦笑して答えると、彼はうーんと唸る。
「では、新聞記者の方なら僕のことはわかりますよね?」
「さすがにそれはわかると思います」
「なら、彼らに証明してもらいましょう」
ディード様は爽やかな笑顔を見せると、パオラさんに話しかける。
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「そうですけど」
「では、お見送りいたしましょう。それから、先日、あなたはシアさんの浮気相手は僕だとシアさんに言っていましたが、それは間違いないですね?」
「間違いありません。というか、そうなんじゃないんですか?」
「いいえ。違いますよ。では、お見送りしますので、帰る準備が整ったら呼んでください」
そう言って、ディード様は私たちを促して、パオラさんの部屋を出た。
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「はい。彼女のお母様がVIP客にここだけの話として、今日の午前中に話をしたようですわ」
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「となると、パオラさんにはこの屋敷の敷地内から出てもらってから話をしましょう。ここに居座られると、不敬罪で捕まえるにしても、シアさんに迷惑がかかりますから」
ディード様は笑みを消して言った。
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