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7 魔道士協会
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いつまでもこの人たちの相手を真面目にしていられないので私が歩きだすと、バニャ様が私の背中に叫ぶ。
「離婚するというのなら、こちらにも考えがあるわよ! あなたの弟は若くして伯爵になったんだから、まだまだ信用がないわ。私が噂を流せば、ローラン伯爵家がどうなるのかわかっているのでしょうね?」
バニャ様が何を言おうとしているのかがわかって、私はまた足を止めることになった。
筆頭公爵家と若き伯爵では社交界では相手にならない。
このことについては、私もわかっていたはずだった。
でも、まさか、そこまでして離婚を嫌がるとは思っていなかった。
「弟が可愛いのなら、姉のあなたが我慢しなさい」
バニャ様は逡巡している私を見て勝ち誇った顔をすると、パオラさんとヤバス様に命令する。
「あなたたち、シアさんのことは気にしなくていいわよ。子作りは続けなさい」
「そういうわけにはいきません」
ヤバス様は笑顔で手を差し出してくる。
「シア、良かったら一緒に風呂に入らないか、今まで入ったことはなかっただろう?」
「良くないので入りません」
冷たく応えてから、これ以上ヤバス様に話しかけられたくなかったのと、用事もあったので、私はその場を立ち去った。
今すぐは無理でも、いつかは必ず必要になる離婚届の用紙をもらいにいくため、役所に向かう馬車の中で考えた。
ロイに迷惑をかけないためには、私がバニャ様にとって価値のない人間にならなければならない。
ヤバス様を好きだという貴族の女性は、今までにいたことは確かだ。
だから、ストレートの髪を持つ女性で、彼と結婚したいと思う女性を探すことに決めた。
*****
「シア、おはよう。今日も君は美しいね。愛しているよ」
髪がストレートになってから二日が経った。
ヤバス様は笑顔で私に愛を囁くようになったので、本当に迷惑だった。
パオラさんは浮気現場が見つかったあの日から、この家に住んでいて、バニャ様と仲良くしながら至れり尽くせりの生活を送っている。
バニャ様は私の髪の毛がストレートになっても、私への態度が軟化するわけではなく、逆に嫌がらせが酷くなった。
食べ物の中にどこからか持ってきたのか、くせ毛の長い髪が何本も入っていた時はゾッとした。
私がそれを見て固まっていると、バニャ様は言った。
「それを食べれば、また前の髪質に戻るかもしれないわ」
そんなわけがない。
髪の毛を昔のものに戻せば、バニャ様も大人しくなるだろうし、ヤバス様もまた私を嫌いになってくれるかもしれない。
そう思った私は、数日分の仕事を片付けてから、マジルカ王国に向かった。
前にもらっていた紹介状を持って魔道士協会に行き、ディード様に会いたいと告げると、黒のローブを着た受付の女性はなぜか目を丸くした。
「……ディード様ですか。今日、こちらにいらっしゃっているか確認いたします」
急遽、来ることに決めたため、ディード様に連絡を入れていなかった。
だから、今日、来られていない場合は、こちらに来られる日を確認して改めて伺おうと思っていると、受付の女性が私の背後を見て、座っていた椅子から立ち上がった。
「王太子殿下、お客様がお見えです」
「ああ、シアさん。思ったよりもいらっしゃるのが早かったですね」
振り返ると、古ぼけた分厚い本を何冊も抱えたディード様が笑顔で私に近寄ってきた。
その時、急に私の頭の中に思い浮かんだのは、マジルカ王国の王太子殿下の名前だった。
「お、お、王太子殿下?」
「すみません。正体を知ったら訪ねてきにくいかと思って、僕の正体を気づかれないように魔法をかけさせてもらっていました」
マジルカ王国の王太子である、ディード・エレン様はそう言って苦笑した。
「離婚するというのなら、こちらにも考えがあるわよ! あなたの弟は若くして伯爵になったんだから、まだまだ信用がないわ。私が噂を流せば、ローラン伯爵家がどうなるのかわかっているのでしょうね?」
バニャ様が何を言おうとしているのかがわかって、私はまた足を止めることになった。
筆頭公爵家と若き伯爵では社交界では相手にならない。
このことについては、私もわかっていたはずだった。
でも、まさか、そこまでして離婚を嫌がるとは思っていなかった。
「弟が可愛いのなら、姉のあなたが我慢しなさい」
バニャ様は逡巡している私を見て勝ち誇った顔をすると、パオラさんとヤバス様に命令する。
「あなたたち、シアさんのことは気にしなくていいわよ。子作りは続けなさい」
「そういうわけにはいきません」
ヤバス様は笑顔で手を差し出してくる。
「シア、良かったら一緒に風呂に入らないか、今まで入ったことはなかっただろう?」
「良くないので入りません」
冷たく応えてから、これ以上ヤバス様に話しかけられたくなかったのと、用事もあったので、私はその場を立ち去った。
今すぐは無理でも、いつかは必ず必要になる離婚届の用紙をもらいにいくため、役所に向かう馬車の中で考えた。
ロイに迷惑をかけないためには、私がバニャ様にとって価値のない人間にならなければならない。
ヤバス様を好きだという貴族の女性は、今までにいたことは確かだ。
だから、ストレートの髪を持つ女性で、彼と結婚したいと思う女性を探すことに決めた。
*****
「シア、おはよう。今日も君は美しいね。愛しているよ」
髪がストレートになってから二日が経った。
ヤバス様は笑顔で私に愛を囁くようになったので、本当に迷惑だった。
パオラさんは浮気現場が見つかったあの日から、この家に住んでいて、バニャ様と仲良くしながら至れり尽くせりの生活を送っている。
バニャ様は私の髪の毛がストレートになっても、私への態度が軟化するわけではなく、逆に嫌がらせが酷くなった。
食べ物の中にどこからか持ってきたのか、くせ毛の長い髪が何本も入っていた時はゾッとした。
私がそれを見て固まっていると、バニャ様は言った。
「それを食べれば、また前の髪質に戻るかもしれないわ」
そんなわけがない。
髪の毛を昔のものに戻せば、バニャ様も大人しくなるだろうし、ヤバス様もまた私を嫌いになってくれるかもしれない。
そう思った私は、数日分の仕事を片付けてから、マジルカ王国に向かった。
前にもらっていた紹介状を持って魔道士協会に行き、ディード様に会いたいと告げると、黒のローブを着た受付の女性はなぜか目を丸くした。
「……ディード様ですか。今日、こちらにいらっしゃっているか確認いたします」
急遽、来ることに決めたため、ディード様に連絡を入れていなかった。
だから、今日、来られていない場合は、こちらに来られる日を確認して改めて伺おうと思っていると、受付の女性が私の背後を見て、座っていた椅子から立ち上がった。
「王太子殿下、お客様がお見えです」
「ああ、シアさん。思ったよりもいらっしゃるのが早かったですね」
振り返ると、古ぼけた分厚い本を何冊も抱えたディード様が笑顔で私に近寄ってきた。
その時、急に私の頭の中に思い浮かんだのは、マジルカ王国の王太子殿下の名前だった。
「お、お、王太子殿下?」
「すみません。正体を知ったら訪ねてきにくいかと思って、僕の正体を気づかれないように魔法をかけさせてもらっていました」
マジルカ王国の王太子である、ディード・エレン様はそう言って苦笑した。
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