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6 嫌いになれない魔法
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「離婚だなんて、何を言ってるんだ! 駄目に決まっているだろう!」
「そうよ! あなたには生まれてきた子供の母親のふりをしてもらわないと駄目なんだから!」
ヤバス様が反対してくることにも驚いたけれど、バニャ様が発した言葉のほうが気になった。
「母親のふりというのはどういうことなのです?」
「彼女の容姿は良いけれど、家柄は良くないのよ。貴族じゃないから。だから、シアさんの子として育ててもらわないと駄目でしょう」
バニャ様が鼻で笑って答えると、パオラさんは眉根を寄せる。
「貴族って懐が狭い人たちばかりなんですね」
「なんですって?」
「だって、そうじゃないですか。人に子供を生ませようとしておいて、やっぱりいらないは酷いでしょう? しかも、子供も私が生むのに私の子供じゃないだなんて酷いじゃないですか!」
「パオラさん、私はヤバス様とは別れますから、あなたの好きなようにしてください。子供はあなたの子供として育てたら良いわ」
私の言葉を聞いたバニャ様は不服そうに舌打ちをしたけれど、パオラさんは満足そうに頷いた。
離婚届を役場にもらいにいかないといけないわ。
簡単には承諾してもらえそうにないけれど、まずは用紙を取って来ようと思った。
踵を返して、この場から離れようとすると、パオラさんから話しかけられる。
「シア様、ヤバス様とは別れてもらわなくても結構ですわ。私は妻という立場がほしいわけではないのです。何かあった時にはシア様に行っていただきたいので」
「何かあった時というのは?」
「今回行っていらした会合などです」
パオラさんは、愛人として囲ってもらうことが希望なのかもしれない。
そのほうが彼女は楽に生きれるものね。
「嫌です。私は妻ではなくなりますから、ヤバス様に関わるお仕事はいたしません」
「シア! 彼女とは別れるから、僕と一緒にいるんだ。ちゃんと可愛がってあげるから」
「嫌ですわ」
ヤバス様を睨みつけながら、お断りした。
私の豹変ぶりに驚いているのか、ヤバス様は聞いてくる。
「シア、いきなりどうしたと言うんだよ。君はあんなにも僕のことが好きだったのに」
「それは過去の話です。浮気をされてしまったからか、急にヤバス様への愛がなくなってしまったのです」
「そんな!」
ヤバス様がショックを受けたような表情を浮かべた。
それにしても一人は白のガウン姿、一人はシーツを体に巻いている。
事情を知らない人は、この光景を見てどう思うのかしら。
「シアさん、どうしてそんな勝手なことを言い出すようになったの?」
今度はバニャ様が絡んでくる。
「わかりません。ただ、浮気現場を見た瞬間、一気に冷めてしまいました」
「でも、また、ヤバスへの愛が再燃してきたでしょう?」
バニャ様は笑顔で訳のわからないことを言ってきた。
「どうして、ヤバス様への愛が再燃するのです?」
「それは、それよ。そうなるはずなのよ!」
バニャ様は何を言っているのかしら。
もしかしたら、ディード様が言っていたことと関係があるのかもしれない。
ディード様に連絡して、詳しい話を聞いてみることにしましょう。
でも、まずは離婚届よ!
そう思って歩き出す。
すると「待ってくれ!」とヤバス様に呼び止められた。
「……なんでしょうか」
足を止めて振り返り、ヤバス様に冷たい視線を送る。
すると、はだけてしまったガウンを閉じてから訴えてきた。
「今までのこと反省する! シアのことは髪の毛以外は本当に好みだったんだ!」
「そんなことを言われましても、わあ、嬉しいだなんて思えません」
なぜ、ここまで一気に冷めてしまったのだろうか。
さっきのバニャ様の様子から考えるに、ヤバス様を嫌いになれない魔法でもかけられていたとしか思えない。
「どうして、こんなことになったのよ。……が効かなくなったっていうの?」
まるで、私の考えを肯定するかのように、バニャ様が呟いた。
「そうよ! あなたには生まれてきた子供の母親のふりをしてもらわないと駄目なんだから!」
ヤバス様が反対してくることにも驚いたけれど、バニャ様が発した言葉のほうが気になった。
「母親のふりというのはどういうことなのです?」
「彼女の容姿は良いけれど、家柄は良くないのよ。貴族じゃないから。だから、シアさんの子として育ててもらわないと駄目でしょう」
バニャ様が鼻で笑って答えると、パオラさんは眉根を寄せる。
「貴族って懐が狭い人たちばかりなんですね」
「なんですって?」
「だって、そうじゃないですか。人に子供を生ませようとしておいて、やっぱりいらないは酷いでしょう? しかも、子供も私が生むのに私の子供じゃないだなんて酷いじゃないですか!」
「パオラさん、私はヤバス様とは別れますから、あなたの好きなようにしてください。子供はあなたの子供として育てたら良いわ」
私の言葉を聞いたバニャ様は不服そうに舌打ちをしたけれど、パオラさんは満足そうに頷いた。
離婚届を役場にもらいにいかないといけないわ。
簡単には承諾してもらえそうにないけれど、まずは用紙を取って来ようと思った。
踵を返して、この場から離れようとすると、パオラさんから話しかけられる。
「シア様、ヤバス様とは別れてもらわなくても結構ですわ。私は妻という立場がほしいわけではないのです。何かあった時にはシア様に行っていただきたいので」
「何かあった時というのは?」
「今回行っていらした会合などです」
パオラさんは、愛人として囲ってもらうことが希望なのかもしれない。
そのほうが彼女は楽に生きれるものね。
「嫌です。私は妻ではなくなりますから、ヤバス様に関わるお仕事はいたしません」
「シア! 彼女とは別れるから、僕と一緒にいるんだ。ちゃんと可愛がってあげるから」
「嫌ですわ」
ヤバス様を睨みつけながら、お断りした。
私の豹変ぶりに驚いているのか、ヤバス様は聞いてくる。
「シア、いきなりどうしたと言うんだよ。君はあんなにも僕のことが好きだったのに」
「それは過去の話です。浮気をされてしまったからか、急にヤバス様への愛がなくなってしまったのです」
「そんな!」
ヤバス様がショックを受けたような表情を浮かべた。
それにしても一人は白のガウン姿、一人はシーツを体に巻いている。
事情を知らない人は、この光景を見てどう思うのかしら。
「シアさん、どうしてそんな勝手なことを言い出すようになったの?」
今度はバニャ様が絡んでくる。
「わかりません。ただ、浮気現場を見た瞬間、一気に冷めてしまいました」
「でも、また、ヤバスへの愛が再燃してきたでしょう?」
バニャ様は笑顔で訳のわからないことを言ってきた。
「どうして、ヤバス様への愛が再燃するのです?」
「それは、それよ。そうなるはずなのよ!」
バニャ様は何を言っているのかしら。
もしかしたら、ディード様が言っていたことと関係があるのかもしれない。
ディード様に連絡して、詳しい話を聞いてみることにしましょう。
でも、まずは離婚届よ!
そう思って歩き出す。
すると「待ってくれ!」とヤバス様に呼び止められた。
「……なんでしょうか」
足を止めて振り返り、ヤバス様に冷たい視線を送る。
すると、はだけてしまったガウンを閉じてから訴えてきた。
「今までのこと反省する! シアのことは髪の毛以外は本当に好みだったんだ!」
「そんなことを言われましても、わあ、嬉しいだなんて思えません」
なぜ、ここまで一気に冷めてしまったのだろうか。
さっきのバニャ様の様子から考えるに、ヤバス様を嫌いになれない魔法でもかけられていたとしか思えない。
「どうして、こんなことになったのよ。……が効かなくなったっていうの?」
まるで、私の考えを肯定するかのように、バニャ様が呟いた。
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