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5 離婚してください
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「ちょっとなんて恰好なの! ヤバス! あなた、服くらい着て出てきなさい!」
バニャ様が両手で顔を覆って叫んだ。
「申し訳ございません! でも、母上だって覗くのはどうかと思いますよ!」
ヤバス様は慌てて部屋の奥に戻っていき、ガウンを羽織って戻ってきた。
「一体、何があったんです?」
そう言って、ヤバス様の後ろから、シーツで体を隠しながら現れたのは顔見知りの女性だった。
仕事で関わり合いのあるテンプ商会という大きな商店の娘だ。
彼女の父が経営している商店は日用品から珍しいものまで多くの商品を取り揃えている。
彼女が、店の商品を売りつけるために、よくこの屋敷に出入りしているのは知っていた。
でも、ヤバス様とここまでの関係になるくらいに近しい関係だとは思っていなかった。
「あら? そこにいらっしゃるのは……」
金色のストレートの長い髪を揺らして小首を傾げたテンプ商会の女性、たしか、パオラさんという名前だったか。
彼女は青色の瞳を私に向けて叫ぶ。
「大変です、ヤバス様! 奥様が戻られてますよ! しかも髪がストレートになっています!」
「ん? 何をって……、ま、まさか、シアなのか?」
ヤバス様は目を見開いて、私を見つめた。
そして、なぜか体を震わせながら近付いていくる。
「なんて美しいんだ」
ヤバス様は喜びで打ち震えているようだった。
髪の毛がストレートになったというだけで、そんなに感動するものなの?
わたしだって感動したのは確かだけれど、ここまでじゃなかった。
ヤバス様に、こんなにも喜んでもらえているのに、なぜだか私はちっとも嬉しくない。
そんな私の様子などおかまいなしに、ヤバス様は笑顔で話しかけてくる。
「シア、僕のために変わってくれたんだな。母上、これで跡継ぎの問題はなくなりましたよ!」
「何を言っているの! シアさんは魔法で髪の毛をストレートにしてもらったのよ! だから、生まれてくる子供は醜い髪の毛になるに決まっているじゃないの!」
「僕に似れば大丈夫ですよ」
ヤバス様は今までに見せたことのないような幸せそうな表情を浮かべて、私に手を差し出してくる。
「今までは悪かったよ。これからは一緒に眠って、一緒に子供を作ろう」
「ちょっと待ってください! わたしはどうなるんですか!?」
パオラさんが食ってかかると、ヤバス様は肩をすくめた。
「君にはもう用はないかな」
「なんですって!」
「待ちなさい、ヤバス! 子供は彼女に生んでもらわないと駄目よ!」
バニャ様がヤバス様に叫ぶと、パオラさんが同意する。
「そうです! わたしは初めてをあなたに捧げたんですよ! それに、公爵家で贅沢な暮らしができると聞いたから身を売ったのに捨てるなんて許せません!」
パオラさんがヤバス様に詰め寄っている間に、バニャ様の怒りの矛先は私に変わる。
「あなたが余計なことをするからいけないのよ! 髪の毛を戻してもらいなさい!」
なぜかしら。
ヤバス様に対して、急に冷めてしまった。
私にはヤバス様しかいないと思っていた。
それは、ヤバス様には私しかいないと思っていたからというのもある。
でも、ヤバス様は私だけじゃなかった。
他の女性と体の関係を持った。
しかも、私がいない間、ずっとだと言う。
信じられないし気持ち悪い。
深呼吸してから口を開く。
「あの、ヤバス様」
「ん? どうかしたのか?」
パオラさんに睨まれているというのに、ヤバス様は笑顔でこちらに顔を向けた。
「離婚してください」
「「「えっ」」」
ヤバス様だけでなく、パオラさんとバニャ様までもが聞き返してきた。
だから、もう一度言う。
「申し訳ございませんが、離婚していただけないでしょうか」
バニャ様が両手で顔を覆って叫んだ。
「申し訳ございません! でも、母上だって覗くのはどうかと思いますよ!」
ヤバス様は慌てて部屋の奥に戻っていき、ガウンを羽織って戻ってきた。
「一体、何があったんです?」
そう言って、ヤバス様の後ろから、シーツで体を隠しながら現れたのは顔見知りの女性だった。
仕事で関わり合いのあるテンプ商会という大きな商店の娘だ。
彼女の父が経営している商店は日用品から珍しいものまで多くの商品を取り揃えている。
彼女が、店の商品を売りつけるために、よくこの屋敷に出入りしているのは知っていた。
でも、ヤバス様とここまでの関係になるくらいに近しい関係だとは思っていなかった。
「あら? そこにいらっしゃるのは……」
金色のストレートの長い髪を揺らして小首を傾げたテンプ商会の女性、たしか、パオラさんという名前だったか。
彼女は青色の瞳を私に向けて叫ぶ。
「大変です、ヤバス様! 奥様が戻られてますよ! しかも髪がストレートになっています!」
「ん? 何をって……、ま、まさか、シアなのか?」
ヤバス様は目を見開いて、私を見つめた。
そして、なぜか体を震わせながら近付いていくる。
「なんて美しいんだ」
ヤバス様は喜びで打ち震えているようだった。
髪の毛がストレートになったというだけで、そんなに感動するものなの?
わたしだって感動したのは確かだけれど、ここまでじゃなかった。
ヤバス様に、こんなにも喜んでもらえているのに、なぜだか私はちっとも嬉しくない。
そんな私の様子などおかまいなしに、ヤバス様は笑顔で話しかけてくる。
「シア、僕のために変わってくれたんだな。母上、これで跡継ぎの問題はなくなりましたよ!」
「何を言っているの! シアさんは魔法で髪の毛をストレートにしてもらったのよ! だから、生まれてくる子供は醜い髪の毛になるに決まっているじゃないの!」
「僕に似れば大丈夫ですよ」
ヤバス様は今までに見せたことのないような幸せそうな表情を浮かべて、私に手を差し出してくる。
「今までは悪かったよ。これからは一緒に眠って、一緒に子供を作ろう」
「ちょっと待ってください! わたしはどうなるんですか!?」
パオラさんが食ってかかると、ヤバス様は肩をすくめた。
「君にはもう用はないかな」
「なんですって!」
「待ちなさい、ヤバス! 子供は彼女に生んでもらわないと駄目よ!」
バニャ様がヤバス様に叫ぶと、パオラさんが同意する。
「そうです! わたしは初めてをあなたに捧げたんですよ! それに、公爵家で贅沢な暮らしができると聞いたから身を売ったのに捨てるなんて許せません!」
パオラさんがヤバス様に詰め寄っている間に、バニャ様の怒りの矛先は私に変わる。
「あなたが余計なことをするからいけないのよ! 髪の毛を戻してもらいなさい!」
なぜかしら。
ヤバス様に対して、急に冷めてしまった。
私にはヤバス様しかいないと思っていた。
それは、ヤバス様には私しかいないと思っていたからというのもある。
でも、ヤバス様は私だけじゃなかった。
他の女性と体の関係を持った。
しかも、私がいない間、ずっとだと言う。
信じられないし気持ち悪い。
深呼吸してから口を開く。
「あの、ヤバス様」
「ん? どうかしたのか?」
パオラさんに睨まれているというのに、ヤバス様は笑顔でこちらに顔を向けた。
「離婚してください」
「「「えっ」」」
ヤバス様だけでなく、パオラさんとバニャ様までもが聞き返してきた。
だから、もう一度言う。
「申し訳ございませんが、離婚していただけないでしょうか」
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