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34 「辞退させていただきますわ」
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犬小屋の中を見ようとしても、犬が怒って見せてくれなかった。
嫌がることをして嫌われたくないので、その場所は諦めて、違う場所を探すことに決める。
犬は大切なものを隠すと聞いたことがある。
もしかすると、犬小屋以外にも違う場所に何かを隠しているかもしれない。
そう思った私は、少しでも早く部屋から出て行きたがっている皇帝陛下には何も言わずに、ベッドに近づいていく。
知り合いの犬はベッドの下に物を隠したがると言っていた。
ここ最近、部屋の掃除は簡単にしかさせていないみたいだから、ベッドの下までは掃除ができていないはずだ。
「おい! 勝手に部屋の中をウロウロするな!」
「申し訳ございません」
普通に考えれば、自分のベッドに他人が近づいていくことが嫌な気持ちはわかる。
というか、私は他人じゃないじゃないの。
素直に謝ったけれど、諦めることはしない。
「どんなベッドなのか見ることも許していただけませんか? ここで寝ようだなんて思いませんわ」
「そ、それくらいなら良いだろう」
「ありがとうございます。とても良いベッドですわね」
実際、良いベッドなのかどうなのかはわからない。
大人4人くらいが横になれそうな大きなもので、白いシーツがかけられ、枕が二つ並べられているだけだ。
だけど、私が使っているベッドよりも安いものが使われているなんてことはないでしょうから、そう言ってみた。
「そうだ。寝心地が良いんだ」
「「わたしも寝たいですわ!」」
イエーヌ様とジュリエッタが声を揃える。
この二人は、今のところ仲良くやっているようだけど、お互いの本性を知ったら、険悪モードになりそうだわ。
二人共、似ているところがあるものね。
このまま、猫を被ったままでいてほしい。
皇帝陛下が二人に気を取られている間に、私はさりげなくベッドの下を見た。
一瞬だけだったから、詳しいことはわからない。
でも、いくつか、小物のようなものが落ちていることがわかった。
犬は皇帝陛下がいない間、ジーナリア様に遊んでもらっていたのかもしれない。
それで、ハンカチを持っていたのかもね。
同じような髪型でドレスを着た私を見つけて、ジーナリア様のように遊んでくれると思って寄って来たのかしら。
そういえば、犬の名前を知らないわ。
「皇帝陛下、よろしければ犬の名前を教えていただけますか」
「……シロだ」
「シロ」
私を含めた女性陣は一斉にシロのほうを見た。
見た目と同じで可愛い名前だけど、皇帝陛下の犬と考えると、安直すぎる気もする。
シロが名前を気に入ってるなら良いけど、それはシロにしかわからない。
シロは名前を呼ばれたからか、犬小屋の前で嬉しそうに尻尾を振っている。
「もう良いだろう。セリーナ、俺と一緒に寝室に行くぞ」
早く出て行けと言わんばかりに、皇帝陛下が扉を開けると、廊下には陰気で冷酷そうな顔立ちのサディールが立っていた。
「皇帝陛下、お話があるのですが」
「……なんだ」
「ここでは話せません」
「……わかった」
サディールの様子から、私たちには聞かれたくないものだと察したのか、皇帝陛下は私を見つめる。
「悪いがセリーナ、予定を明日に変更する」
「明日は風邪を引いていますので、皇帝陛下の健康のために辞退させていただきますわ」
「……意味がわからん!」
「そのままの意味ですわ。実は今も体調が良くないんですの」
「とにかく、また明日に連絡を入れる!」
ジュリエッタの作戦がどんなものなのかわからないままだったけど、とにかく、話は終わった。
サディールが皇帝陛下を呼び出さなければならない案件を作ったのはフェイク様だ。
サディールと皇帝陛下が場所を移している間に、フェイク様と通じている側近が部屋の確認をしてくれることになっている。
さあ、何が見つかるのかしらね。
嫌がることをして嫌われたくないので、その場所は諦めて、違う場所を探すことに決める。
犬は大切なものを隠すと聞いたことがある。
もしかすると、犬小屋以外にも違う場所に何かを隠しているかもしれない。
そう思った私は、少しでも早く部屋から出て行きたがっている皇帝陛下には何も言わずに、ベッドに近づいていく。
知り合いの犬はベッドの下に物を隠したがると言っていた。
ここ最近、部屋の掃除は簡単にしかさせていないみたいだから、ベッドの下までは掃除ができていないはずだ。
「おい! 勝手に部屋の中をウロウロするな!」
「申し訳ございません」
普通に考えれば、自分のベッドに他人が近づいていくことが嫌な気持ちはわかる。
というか、私は他人じゃないじゃないの。
素直に謝ったけれど、諦めることはしない。
「どんなベッドなのか見ることも許していただけませんか? ここで寝ようだなんて思いませんわ」
「そ、それくらいなら良いだろう」
「ありがとうございます。とても良いベッドですわね」
実際、良いベッドなのかどうなのかはわからない。
大人4人くらいが横になれそうな大きなもので、白いシーツがかけられ、枕が二つ並べられているだけだ。
だけど、私が使っているベッドよりも安いものが使われているなんてことはないでしょうから、そう言ってみた。
「そうだ。寝心地が良いんだ」
「「わたしも寝たいですわ!」」
イエーヌ様とジュリエッタが声を揃える。
この二人は、今のところ仲良くやっているようだけど、お互いの本性を知ったら、険悪モードになりそうだわ。
二人共、似ているところがあるものね。
このまま、猫を被ったままでいてほしい。
皇帝陛下が二人に気を取られている間に、私はさりげなくベッドの下を見た。
一瞬だけだったから、詳しいことはわからない。
でも、いくつか、小物のようなものが落ちていることがわかった。
犬は皇帝陛下がいない間、ジーナリア様に遊んでもらっていたのかもしれない。
それで、ハンカチを持っていたのかもね。
同じような髪型でドレスを着た私を見つけて、ジーナリア様のように遊んでくれると思って寄って来たのかしら。
そういえば、犬の名前を知らないわ。
「皇帝陛下、よろしければ犬の名前を教えていただけますか」
「……シロだ」
「シロ」
私を含めた女性陣は一斉にシロのほうを見た。
見た目と同じで可愛い名前だけど、皇帝陛下の犬と考えると、安直すぎる気もする。
シロが名前を気に入ってるなら良いけど、それはシロにしかわからない。
シロは名前を呼ばれたからか、犬小屋の前で嬉しそうに尻尾を振っている。
「もう良いだろう。セリーナ、俺と一緒に寝室に行くぞ」
早く出て行けと言わんばかりに、皇帝陛下が扉を開けると、廊下には陰気で冷酷そうな顔立ちのサディールが立っていた。
「皇帝陛下、お話があるのですが」
「……なんだ」
「ここでは話せません」
「……わかった」
サディールの様子から、私たちには聞かれたくないものだと察したのか、皇帝陛下は私を見つめる。
「悪いがセリーナ、予定を明日に変更する」
「明日は風邪を引いていますので、皇帝陛下の健康のために辞退させていただきますわ」
「……意味がわからん!」
「そのままの意味ですわ。実は今も体調が良くないんですの」
「とにかく、また明日に連絡を入れる!」
ジュリエッタの作戦がどんなものなのかわからないままだったけど、とにかく、話は終わった。
サディールが皇帝陛下を呼び出さなければならない案件を作ったのはフェイク様だ。
サディールと皇帝陛下が場所を移している間に、フェイク様と通じている側近が部屋の確認をしてくれることになっている。
さあ、何が見つかるのかしらね。
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