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11 こんな王太子はお断り
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お兄様とお姉様は帰ってきた私がまた、ペリオド王国に戻ると聞いて、お父様に抗議してくれました。
でも、お父様の判断は変わらずでした。
娘だからといって甘い顔をしたと思われることが嫌なのでしょう。
心無い人達は私が帰りたいがために賊を雇ったと言っているそうです。
でも、お父様も言われっぱなしではありませんでした。
今回は私の身に何か起きた場合、問答無用で攻め込むこと、その場での対応がどんなものであっても罪に問わないという条件を同盟国からの取り付けることができたからです。
王太子殿下との婚約もどうせ破棄になるでしょうしね。
そして、私はペリオド王国に戻り、王太子殿下と仮契約をしました。
一定期間が過ぎれば、王太子殿下と婚約しますが、何か問題が起きれば婚約の話は無しになります。
ペリオド王国の両陛下は私に媚びへつらってきますが、王太子殿下は相変わらずでした。
「王太子殿下、この書類、あなたのサインがありますが、どうして承認されたのでしょう」
「え」
今まで王太子殿下は執務室で仕事をしていると思っていたのですが、仕事をしているふりをしているだけだとわかりました。
書類の内容を全く確認せぬままに、承諾のサインをしていたのです。
今回も無条件で宰相の給金を上げようとしていたので、私が止めに入りました。
「書類一つ一つに目を通すなんて時間をかけてられないよ。遊ぶ時間がなくなっちゃうじゃないか!」
「今は仕事の時間です。遊びの時間は別にとってあるではないですか!」
王太子殿下は21歳です。
まだ、若いといえば若いですが、仕事よりも遊びを優先して良い年齢ではありません。
「遊びたいのであれば、仕事を終わらせてからです」
「セリスティア、君はちょっと厳しすぎないか?」
「いいえ。今までが甘かったのです。私はよそ者でしたから、口出ししてはいけないと思い、遠慮していましたが、今回の婚約の話は王太子殿下からのお願いということで、私にも口出しする権限が与えられているのです」
「そうだとしたって、口出ししすぎじゃないか。そんなにピリピリしていたら生きることに疲れるよ?」
「生きているから疲れるんです。死んでしまえば、そんな感情を持つことはできません」
睨みつけて言うと、王太子殿下はヘラヘラした笑みを消して頷きます。
「わかったよ! 言う通りにすればいいんだろ! ああ、君なんか婚約者にするんじゃなかった」
「今からでも遅くはありませんわよ。あなたが王太子の権利を放棄すれば、この婚約はなしにできます。あなたが王太子殿下だから、私とあなたは婚約しているんです」
国のためには多少の犠牲が必要なことはわかります。
でも、こんな人と結婚したくはありません。
逃げ道を探した結果、次の国王を今の王太子殿下ではなく、まともな人物に任せるように持っていこうという話になりました。
ペリアド王国の人間ではありませんが、世界的に有名な勇者の一族がいて、現勇者は見た目も性格も良いということで、多くの人に愛されています。
その人であればペリアド王国の国民達も新国王として認めてくれるのではないかという話になったのです。
現在、国民投票をするために水面下で動いている状況ですので、両陛下も王太子殿下もそのことを知りません。
国民が現在の王太子殿下であるソーエン殿下を選ぶことがあれば大変なことになりますが、マゼケキ様の件で、国民の王家の信頼は薄れています。
逆に勇者の末裔は大人気ですから、ソーエン殿下が偉そうにしていられるのも今のうちだけですね。
「こっちだって、セリスの国に守ってもらう必要がなければ、セリスとの婚約はしていない! 僕が君を好きだなんて誤解しないでくれよな! 僕は自分が一番好きなんだ」
「自分を好きだと思うことは悪いことではありませんが、そんな宣言は必要ありません。ご心配いただかなくても私はあなたに興味はありませんから。とにかく、このお話は却下とさせていただきます」
「……セインサーが君のことを頭が固いと言っていたけど本当だな」
「ソーエン殿下」
「な、何だよ!? 僕が言ったんじゃないぞ! セインサーが言ったんだ! 悪いのは僕じゃない!」
「頭が固いという言葉で怒るつもりはありません。ですが、舐めた態度を取るようでしたら、それ相応の対応をしますと、セインサーに伝えてください。お二人は仲がよろしいようですから伝えられますよね?」
「しょ、承知いたしましたぁ!」
ソーエン殿下が叫ぶ声を聞いたあとに部屋を出ると、廊下で待っていたレイディスが話しかけてきます。
「何かあったのか」
「ふざけたことを言っていましたから、言い返しただけよ」
「何があったのか気になるが、話があるから先に言っていいか」
「どうぞ」
「マゼケキが階段から落ちた。重体だそうだ」
「え?」
一応、相手は王子なので殿下という敬称はつけなくてはなりません。
本来なら注意すべきところですが、驚きのほうが勝ってしまいました。
どんなことが起きたのか、私の執務室に戻ってから詳しい話を聞くことにしたのでした。
でも、お父様の判断は変わらずでした。
娘だからといって甘い顔をしたと思われることが嫌なのでしょう。
心無い人達は私が帰りたいがために賊を雇ったと言っているそうです。
でも、お父様も言われっぱなしではありませんでした。
今回は私の身に何か起きた場合、問答無用で攻め込むこと、その場での対応がどんなものであっても罪に問わないという条件を同盟国からの取り付けることができたからです。
王太子殿下との婚約もどうせ破棄になるでしょうしね。
そして、私はペリオド王国に戻り、王太子殿下と仮契約をしました。
一定期間が過ぎれば、王太子殿下と婚約しますが、何か問題が起きれば婚約の話は無しになります。
ペリオド王国の両陛下は私に媚びへつらってきますが、王太子殿下は相変わらずでした。
「王太子殿下、この書類、あなたのサインがありますが、どうして承認されたのでしょう」
「え」
今まで王太子殿下は執務室で仕事をしていると思っていたのですが、仕事をしているふりをしているだけだとわかりました。
書類の内容を全く確認せぬままに、承諾のサインをしていたのです。
今回も無条件で宰相の給金を上げようとしていたので、私が止めに入りました。
「書類一つ一つに目を通すなんて時間をかけてられないよ。遊ぶ時間がなくなっちゃうじゃないか!」
「今は仕事の時間です。遊びの時間は別にとってあるではないですか!」
王太子殿下は21歳です。
まだ、若いといえば若いですが、仕事よりも遊びを優先して良い年齢ではありません。
「遊びたいのであれば、仕事を終わらせてからです」
「セリスティア、君はちょっと厳しすぎないか?」
「いいえ。今までが甘かったのです。私はよそ者でしたから、口出ししてはいけないと思い、遠慮していましたが、今回の婚約の話は王太子殿下からのお願いということで、私にも口出しする権限が与えられているのです」
「そうだとしたって、口出ししすぎじゃないか。そんなにピリピリしていたら生きることに疲れるよ?」
「生きているから疲れるんです。死んでしまえば、そんな感情を持つことはできません」
睨みつけて言うと、王太子殿下はヘラヘラした笑みを消して頷きます。
「わかったよ! 言う通りにすればいいんだろ! ああ、君なんか婚約者にするんじゃなかった」
「今からでも遅くはありませんわよ。あなたが王太子の権利を放棄すれば、この婚約はなしにできます。あなたが王太子殿下だから、私とあなたは婚約しているんです」
国のためには多少の犠牲が必要なことはわかります。
でも、こんな人と結婚したくはありません。
逃げ道を探した結果、次の国王を今の王太子殿下ではなく、まともな人物に任せるように持っていこうという話になりました。
ペリアド王国の人間ではありませんが、世界的に有名な勇者の一族がいて、現勇者は見た目も性格も良いということで、多くの人に愛されています。
その人であればペリアド王国の国民達も新国王として認めてくれるのではないかという話になったのです。
現在、国民投票をするために水面下で動いている状況ですので、両陛下も王太子殿下もそのことを知りません。
国民が現在の王太子殿下であるソーエン殿下を選ぶことがあれば大変なことになりますが、マゼケキ様の件で、国民の王家の信頼は薄れています。
逆に勇者の末裔は大人気ですから、ソーエン殿下が偉そうにしていられるのも今のうちだけですね。
「こっちだって、セリスの国に守ってもらう必要がなければ、セリスとの婚約はしていない! 僕が君を好きだなんて誤解しないでくれよな! 僕は自分が一番好きなんだ」
「自分を好きだと思うことは悪いことではありませんが、そんな宣言は必要ありません。ご心配いただかなくても私はあなたに興味はありませんから。とにかく、このお話は却下とさせていただきます」
「……セインサーが君のことを頭が固いと言っていたけど本当だな」
「ソーエン殿下」
「な、何だよ!? 僕が言ったんじゃないぞ! セインサーが言ったんだ! 悪いのは僕じゃない!」
「頭が固いという言葉で怒るつもりはありません。ですが、舐めた態度を取るようでしたら、それ相応の対応をしますと、セインサーに伝えてください。お二人は仲がよろしいようですから伝えられますよね?」
「しょ、承知いたしましたぁ!」
ソーエン殿下が叫ぶ声を聞いたあとに部屋を出ると、廊下で待っていたレイディスが話しかけてきます。
「何かあったのか」
「ふざけたことを言っていましたから、言い返しただけよ」
「何があったのか気になるが、話があるから先に言っていいか」
「どうぞ」
「マゼケキが階段から落ちた。重体だそうだ」
「え?」
一応、相手は王子なので殿下という敬称はつけなくてはなりません。
本来なら注意すべきところですが、驚きのほうが勝ってしまいました。
どんなことが起きたのか、私の執務室に戻ってから詳しい話を聞くことにしたのでした。
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