21 / 26
12.5 自分に自信がある令嬢は、今日も自惚れる
しおりを挟む
アビーのせいでポメラは家に閉じこもっていなければならなくなった。アビーに近づかなければ良いだけなのに、外に出すと何をするかわからないと言って、お父様が家から出ることを許してくれなくなったのだ。暇つぶしにゼッシュ様に会いに来てもらおうと思って連絡しても、どこかへ出かけているらしくてポメラには会いに来てくれない。
もしかして、他に女ができたとかじゃないでしょうね。ポメラ以上に良い女性なんて他にはいないのに目移りするなんて信じられない!
それに国王陛下も国王陛下だわ! ポメラの魅力に気づかないだけでなく、あんな酷いことを言うなんて! ポメラがこんな状態になっていることが、私を馬鹿にしていた人たちにバレたら大変よ!
どうにかして、今の状況を打破しなくちゃ! といっても、ポメラに癒やしの力が芽生えるとか、そんな奇跡みたいなことは起こらないでしょうし、一体、どうすれば良いのかしら。
部屋にいても暇だから庭園を散歩しに行こうと思い、通り道であるお父様の執務室の前を歩く。ポメラの家の扉は薄いから、大きな声を出せば廊下まで聞こえてくる。だから、お父様の興奮した声が聞こえてきた。
「アビゲイル嬢が来てくれるなら、虫を何とかすれば農作物を復活させることができるかもしれない! 毒も浄化できるという噂だから雑菌も綺麗にしてくれるだろう」
「良かったですね、旦那様! しかも、アビゲイル様と一緒にオブラン王国の王太子殿下もいらっしゃるそうです。何とかお近づきになりたいものですね!」
お父様の側近の声も弾んでいる。そういえば最近、虫に農作物が荒らされているって問題になっていて、お父様が頭を抱えていたわね。気持ち悪いから考えないようにしていたけれど、オブラン王国の王太子殿下が来ているのなら虫のことを考えてもいいわ。
「お父様! ポメラが王太子殿下のお相手をしようと思います!」
ノックもせずに扉を開けて執務室の中に入ると、お父様は困った顔になる。
「ポメラ、ノックをしなさいと何度言ったらわかるんだ。それに、お前はアビゲイル嬢に近づくなと言われているだろう。国王陛下に知られてしまったら、お前は国外追放されてしまうんだぞ」
「大丈夫よ、お父様。ポメラはアビーに近づくんじゃないの。王太子殿下に近づくんですから!」
「王太子殿下とアビゲイル嬢は一緒にいるんだぞ。そんなことは無理だ」
「だから、何とかして王太子殿下をポメラの所に連れてきてください。そうしてくれれば、後はポメラが何とかしますから!」
「何とかって……、どうするつもりなんだ?」
難しい顔をしているお父様に微笑みかける。
「最近のゼッシュ様はポメラにふさわしくないと思うんです。ブライトン家にはポメラしか子供がいません。ゼッシュ様に跡継ぎになってもらう予定でしたが、王太子殿下に跡継ぎになってもらうのはいかがでしょう?」
なんて良い提案なのかしらと思ったのに、お父様と側近はポメラのことを信じられないものを見ているような目で見ている。
ポメラには無理だと思っているのかしら。それとも王太子が子爵になるなんて無理だとでも? そんなの愛があれば大丈夫よ。
「安心してください、お父様。ポメラの可愛さで王太子殿下が自ら子爵になりたいと言い出すようにしてみせます。ゼッシュ様もシドロフェス殿下もポメラに夢中なんです。このポメラに落ちない若い男性なんて、世界に一握りくらいしかいませんわ!」
この時のポメラはわかっていなかった。サーキス殿下がその一握りの男性であることを――
もしかして、他に女ができたとかじゃないでしょうね。ポメラ以上に良い女性なんて他にはいないのに目移りするなんて信じられない!
それに国王陛下も国王陛下だわ! ポメラの魅力に気づかないだけでなく、あんな酷いことを言うなんて! ポメラがこんな状態になっていることが、私を馬鹿にしていた人たちにバレたら大変よ!
どうにかして、今の状況を打破しなくちゃ! といっても、ポメラに癒やしの力が芽生えるとか、そんな奇跡みたいなことは起こらないでしょうし、一体、どうすれば良いのかしら。
部屋にいても暇だから庭園を散歩しに行こうと思い、通り道であるお父様の執務室の前を歩く。ポメラの家の扉は薄いから、大きな声を出せば廊下まで聞こえてくる。だから、お父様の興奮した声が聞こえてきた。
「アビゲイル嬢が来てくれるなら、虫を何とかすれば農作物を復活させることができるかもしれない! 毒も浄化できるという噂だから雑菌も綺麗にしてくれるだろう」
「良かったですね、旦那様! しかも、アビゲイル様と一緒にオブラン王国の王太子殿下もいらっしゃるそうです。何とかお近づきになりたいものですね!」
お父様の側近の声も弾んでいる。そういえば最近、虫に農作物が荒らされているって問題になっていて、お父様が頭を抱えていたわね。気持ち悪いから考えないようにしていたけれど、オブラン王国の王太子殿下が来ているのなら虫のことを考えてもいいわ。
「お父様! ポメラが王太子殿下のお相手をしようと思います!」
ノックもせずに扉を開けて執務室の中に入ると、お父様は困った顔になる。
「ポメラ、ノックをしなさいと何度言ったらわかるんだ。それに、お前はアビゲイル嬢に近づくなと言われているだろう。国王陛下に知られてしまったら、お前は国外追放されてしまうんだぞ」
「大丈夫よ、お父様。ポメラはアビーに近づくんじゃないの。王太子殿下に近づくんですから!」
「王太子殿下とアビゲイル嬢は一緒にいるんだぞ。そんなことは無理だ」
「だから、何とかして王太子殿下をポメラの所に連れてきてください。そうしてくれれば、後はポメラが何とかしますから!」
「何とかって……、どうするつもりなんだ?」
難しい顔をしているお父様に微笑みかける。
「最近のゼッシュ様はポメラにふさわしくないと思うんです。ブライトン家にはポメラしか子供がいません。ゼッシュ様に跡継ぎになってもらう予定でしたが、王太子殿下に跡継ぎになってもらうのはいかがでしょう?」
なんて良い提案なのかしらと思ったのに、お父様と側近はポメラのことを信じられないものを見ているような目で見ている。
ポメラには無理だと思っているのかしら。それとも王太子が子爵になるなんて無理だとでも? そんなの愛があれば大丈夫よ。
「安心してください、お父様。ポメラの可愛さで王太子殿下が自ら子爵になりたいと言い出すようにしてみせます。ゼッシュ様もシドロフェス殿下もポメラに夢中なんです。このポメラに落ちない若い男性なんて、世界に一握りくらいしかいませんわ!」
この時のポメラはわかっていなかった。サーキス殿下がその一握りの男性であることを――
677
お気に入りに追加
2,399
あなたにおすすめの小説
婚約者に妹を紹介したら、美人な妹の方と婚約したかったと言われたので、譲ってあげることにいたしました
奏音 美都
恋愛
「こちら、妹のマリアンヌですわ」
妹を紹介した途端、私のご婚約者であるジェイコブ様の顔つきが変わったのを感じました。
「マリアンヌですわ。どうぞよろしくお願いいたします、お義兄様」
「ど、どうも……」
ジェイコブ様が瞳を大きくし、マリアンヌに見惚れています。ジェイコブ様が私をチラッと見て、おっしゃいました。
「リリーにこんな美しい妹がいたなんて、知らなかったよ。婚約するなら妹君の方としたかったなぁ、なんて……」
「分かりましたわ」
こうして私のご婚約者は、妹のご婚約者となったのでした。
毒家族から逃亡、のち側妃
チャイムン
恋愛
四歳下の妹ばかり可愛がる両親に「あなたにかけるお金はないから働きなさい」
十二歳で告げられたベルナデットは、自立と家族からの脱却を夢見る。
まずは王立学院に奨学生として入学して、文官を目指す。
夢は自分で叶えなきゃ。
ところが妹への縁談話がきっかけで、バシュロ第一王子が動き出す。
私を「ウザイ」と言った婚約者。ならば、婚約破棄しましょう。
夢草 蝶
恋愛
子爵令嬢のエレインにはライという婚約者がいる。
しかし、ライからは疎んじられ、その取り巻きの少女たちからは嫌がらせを受ける日々。
心がすり減っていくエレインは、ある日思った。
──もう、いいのではないでしょうか。
とうとう限界を迎えたエレインは、とある決心をする。
初対面の婚約者に『ブス』と言われた令嬢です。
甘寧
恋愛
「お前は抱けるブスだな」
「はぁぁぁぁ!!??」
親の決めた婚約者と初めての顔合わせで第一声で言われた言葉。
そうですかそうですか、私は抱けるブスなんですね……
って!!こんな奴が婚約者なんて冗談じゃない!!
お父様!!こいつと結婚しろと言うならば私は家を出ます!!
え?結納金貰っちゃった?
それじゃあ、仕方ありません。あちらから婚約を破棄したいと言わせましょう。
※4時間ほどで書き上げたものなので、頭空っぽにして読んでください。
「お前を妻だと思ったことはない」と言ってくる旦那様と離婚した私は、幼馴染の侯爵から溺愛されています。
木山楽斗
恋愛
第二王女のエリームは、かつて王家と敵対していたオルバディオン公爵家に嫁がされた。
因縁を解消するための結婚であったが、現当主であるジグールは彼女のことを冷遇した。長きに渡る因縁は、簡単に解消できるものではなかったのである。
そんな暮らしは、エリームにとって息苦しいものだった。それを重く見た彼女の兄アルベルドと幼馴染カルディアスは、二人の結婚を解消させることを決意する。
彼らの働きかけによって、エリームは苦しい生活から解放されるのだった。
晴れて自由の身になったエリームに、一人の男性が婚約を申し込んできた。
それは、彼女の幼馴染であるカルディアスである。彼は以前からエリームに好意を寄せていたようなのだ。
幼い頃から彼の人となりを知っているエリームは、喜んでその婚約を受け入れた。二人は、晴れて夫婦となったのである。
二度目の結婚を果たしたエリームは、以前とは異なる生活を送っていた。
カルディアスは以前の夫とは違い、彼女のことを愛して尊重してくれたのである。
こうして、エリームは幸せな生活を送るのだった。
追放された悪役令嬢は辺境にて隠し子を養育する
3ツ月 葵(ミツヅキ アオイ)
恋愛
婚約者である王太子からの突然の断罪!
それは自分の婚約者を奪おうとする義妹に嫉妬してイジメをしていたエステルを糾弾するものだった。
しかしこれは義妹に仕組まれた罠であったのだ。
味方のいないエステルは理不尽にも王城の敷地の端にある粗末な離れへと幽閉される。
「あぁ……。私は一生涯ここから出ることは叶わず、この場所で独り朽ち果ててしまうのね」
エステルは絶望の中で高い塀からのぞく狭い空を見上げた。
そこでの生活も数ヵ月が経って落ち着いてきた頃に突然の来訪者が。
「お姉様。ここから出してさし上げましょうか? そのかわり……」
義妹はエステルに悪魔の様な契約を押し付けようとしてくるのであった。
どうやら婚約者が私と婚約したくなかったようなので婚約解消させて頂きます。後、うちを金蔓にしようとした事はゆるしません
しげむろ ゆうき
恋愛
ある日、婚約者アルバン様が私の事を悪く言ってる場面に遭遇してしまい、ショックで落ち込んでしまう。
しかもアルバン様が悪口を言っている時に側にいたのは、美しき銀狼、又は冷酷な牙とあだ名が付けられ恐れられている、この国の第三王子ランドール・ウルフイット様だったのだ。
だから、問い詰めようにもきっと関わってくるであろう第三王子が怖くて、私は誰にも相談できずにいたのだがなぜか第三王子が……。
○○sideあり
全20話
姉の所為で全てを失いそうです。だから、その前に全て終わらせようと思います。もちろん断罪ショーで。
しげむろ ゆうき
恋愛
姉の策略により、なんでも私の所為にされてしまう。そしてみんなからどんどんと信用を失っていくが、唯一、私が得意としてるもので信じてくれなかった人達と姉を断罪する話。
全12話
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる