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12.5  自分に自信がある令嬢は、今日も自惚れる

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 アビーのせいでポメラは家に閉じこもっていなければならなくなった。アビーに近づかなければ良いだけなのに、外に出すと何をするかわからないと言って、お父様が家から出ることを許してくれなくなったのだ。暇つぶしにゼッシュ様に会いに来てもらおうと思って連絡しても、どこかへ出かけているらしくてポメラには会いに来てくれない。
 もしかして、他に女ができたとかじゃないでしょうね。ポメラ以上に良い女性なんて他にはいないのに目移りするなんて信じられない! 
 それに国王陛下も国王陛下だわ! ポメラの魅力に気づかないだけでなく、あんな酷いことを言うなんて! ポメラがこんな状態になっていることが、私を馬鹿にしていた人たちにバレたら大変よ!
 どうにかして、今の状況を打破しなくちゃ! といっても、ポメラに癒やしの力が芽生えるとか、そんな奇跡みたいなことは起こらないでしょうし、一体、どうすれば良いのかしら。

 部屋にいても暇だから庭園を散歩しに行こうと思い、通り道であるお父様の執務室の前を歩く。ポメラの家の扉は薄いから、大きな声を出せば廊下まで聞こえてくる。だから、お父様の興奮した声が聞こえてきた。

「アビゲイル嬢が来てくれるなら、虫を何とかすれば農作物を復活させることができるかもしれない! 毒も浄化できるという噂だから雑菌も綺麗にしてくれるだろう」
「良かったですね、旦那様! しかも、アビゲイル様と一緒にオブラン王国の王太子殿下もいらっしゃるそうです。何とかお近づきになりたいものですね!」

 お父様の側近の声も弾んでいる。そういえば最近、虫に農作物が荒らされているって問題になっていて、お父様が頭を抱えていたわね。気持ち悪いから考えないようにしていたけれど、オブラン王国の王太子殿下が来ているのなら虫のことを考えてもいいわ。

「お父様! ポメラが王太子殿下のお相手をしようと思います!」

 ノックもせずに扉を開けて執務室の中に入ると、お父様は困った顔になる。

「ポメラ、ノックをしなさいと何度言ったらわかるんだ。それに、お前はアビゲイル嬢に近づくなと言われているだろう。国王陛下に知られてしまったら、お前は国外追放されてしまうんだぞ」
「大丈夫よ、お父様。ポメラはアビーに近づくんじゃないの。王太子殿下に近づくんですから!」
「王太子殿下とアビゲイル嬢は一緒にいるんだぞ。そんなことは無理だ」
「だから、何とかして王太子殿下をポメラの所に連れてきてください。そうしてくれれば、後はポメラが何とかしますから!」
「何とかって……、どうするつもりなんだ?」

 難しい顔をしているお父様に微笑みかける。

「最近のゼッシュ様はポメラにふさわしくないと思うんです。ブライトン家にはポメラしか子供がいません。ゼッシュ様に跡継ぎになってもらう予定でしたが、王太子殿下に跡継ぎになってもらうのはいかがでしょう?」

 なんて良い提案なのかしらと思ったのに、お父様と側近はポメラのことを信じられないものを見ているような目で見ている。
 ポメラには無理だと思っているのかしら。それとも王太子が子爵になるなんて無理だとでも? そんなの愛があれば大丈夫よ。

「安心してください、お父様。ポメラの可愛さで王太子殿下が自ら子爵になりたいと言い出すようにしてみせます。ゼッシュ様もシドロフェス殿下もポメラに夢中なんです。このポメラに落ちない若い男性なんて、世界に一握りくらいしかいませんわ!」

 この時のポメラはわかっていなかった。サーキス殿下がその一握りの男性であることを――
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