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第二部
第23話 買い物に出かける ②
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「「えーてぃーえむ?」」
キースだけじゃなく、ノアも聞き慣れない言葉だったようで小首を傾げたから、二人に説明する。
「簡単に言うと、銀行にお金を預けたり引き出したりするでしょう。人がやるんじゃなくて機械でできるのよ」
「そうなんだ。だけど、どうしてテツくんがえーてぃーえむなの?」
「実際はある分しか引き出せないんだけど、財布みたいなものという意味合いで使われているわね。たとえば、高額なものがほしい時にテツというATMがいるから、私の懐は痛まないし値段を気にせずに買うことができるみたいな?」
ノアは日本で暮らしていた時は子供だったから、銀行なんて縁がなかったんでしょう。
ノアの両親もこの国に存在しないものをわざわざ教えたりしないわよね。
「さ、財布!? そんな! テツくんに出してもらう訳にはいかないよ!」
「ノアは細かいことは気にせずに出してもらえばいいのよ」
「お前が言うな」
哲平は私を一睨みしたあと、ノアには優しい口調で話しかける。
「いつもありすを世話してくれてるお礼もしたいし、遠慮なく言ってくれたらいいよ」
「えっ?! で、でも、私は別に世話してるつもりはないし! 仲良くしてるだけだよ」
「遠慮すんな。ありすに慣れてる分、逆に遠慮されると困る」
「ええ? そんなのでいいの?」
ノアが困った顔をして哲平と私の顔を交互に見つめるので、私は笑顔で頷く。
「遠慮しなくていいわよ」
「で、でも」
「母さんからお金は預かってきたから、ノアの分は俺が出すよ」
キースが言うと哲平が首を横に振る。
「いいって。俺がもらっている金はありすに使う分も含まれてるし、兄さんからイッシュバルドの人間なら、他の貴族に金は出させるなって言われてんだ」
「面子みたいなもんか」
「そういうことだ」
公爵家の人間が自分よりも爵位の低い人にお金を出させたりしたら、陰口をたたく人間がいるのかもしれないわね。この国の貴族社会って、なんて面倒なんだろう。
……でもまあ、会社の上司も飲み会の時に多めに出してくれてたわね。
お金を多くもらっている人が多く出すのは、この国の当たり前なんでしょうね。
その後、王都に着いた私達は買い物ではなく食事を先にすることにした。
食べたいものがあるかと聞かれると、お米が恋しいけれど、この国ではあまり流通されていない。だから、今王都で話題になっているパスタ屋に行くことに決めた。
開店時間よりも早く着いたので、すでに並んでいた人の列の後ろに並んで待っていると、二人掛けのテーブルならすぐに入れると言われたから、女子と男子と分かれて食べる事にした。
本当はノアとキースにしたほうが良かったんだろうけど、せっかくだし女子トークがしたかった。
それに哲平達とは通路をはさんだ隣だから、会話はしにくいけど、何かあれば対処はしてもらえるし良いでしょう。
席に着き、オーダーをし終えてから、なんだかんだと聞くことができていなかった、ボートワールの話を切り出す。
「そういえばノア、前にピンク髪の女にからまれてなかった?」
「ピンク髪?」
ノアは少し考えてから教室での出来事を思い出したのか、私の質問に答える。
「なんか、キースと別れろって言いに来た人がいたなぁ」
「そう、その人」
「アリスの知ってる人?」
ノアがきょとんとした顔で聞いてくるので焦る。
あら?
もしかしてノアは、アリスの婚約者を奪った相手のことをを知らないの?
「あの人、カリン・ボートワールっていうんだけど」
「カリン・ボートワール?」
私の言葉を復唱するように言ったあと、ノアは柔らかな表情を怒りのものに変えて聞き返してくる。
「あの人がそうだったの?!」
「そうよ。ノアは顔を知らなかったの?」
「名前しか知らなかったよ! 知ってたら文句を言ってると思う!」
「どうして知らないの? 学年が違うから?」
「それもあるけど、アリスが知らないふりをしていてほしいって言ったんじゃない! だから、どんな人かとか詳しく調べなかったんだよ」
え?
どういう事?
ノアの言うアリスは私じゃない。
本物のアリスだ。
なんで、アリスはそんなことを言ったの?
ホットラードやボートワールにムカつかなかったわけ?
私だったら、絶対に友達に愚痴りまくるけど、悪口を言いたくない人もいるってこと?
人によって、考え方は違うということだろうか。
キースだけじゃなく、ノアも聞き慣れない言葉だったようで小首を傾げたから、二人に説明する。
「簡単に言うと、銀行にお金を預けたり引き出したりするでしょう。人がやるんじゃなくて機械でできるのよ」
「そうなんだ。だけど、どうしてテツくんがえーてぃーえむなの?」
「実際はある分しか引き出せないんだけど、財布みたいなものという意味合いで使われているわね。たとえば、高額なものがほしい時にテツというATMがいるから、私の懐は痛まないし値段を気にせずに買うことができるみたいな?」
ノアは日本で暮らしていた時は子供だったから、銀行なんて縁がなかったんでしょう。
ノアの両親もこの国に存在しないものをわざわざ教えたりしないわよね。
「さ、財布!? そんな! テツくんに出してもらう訳にはいかないよ!」
「ノアは細かいことは気にせずに出してもらえばいいのよ」
「お前が言うな」
哲平は私を一睨みしたあと、ノアには優しい口調で話しかける。
「いつもありすを世話してくれてるお礼もしたいし、遠慮なく言ってくれたらいいよ」
「えっ?! で、でも、私は別に世話してるつもりはないし! 仲良くしてるだけだよ」
「遠慮すんな。ありすに慣れてる分、逆に遠慮されると困る」
「ええ? そんなのでいいの?」
ノアが困った顔をして哲平と私の顔を交互に見つめるので、私は笑顔で頷く。
「遠慮しなくていいわよ」
「で、でも」
「母さんからお金は預かってきたから、ノアの分は俺が出すよ」
キースが言うと哲平が首を横に振る。
「いいって。俺がもらっている金はありすに使う分も含まれてるし、兄さんからイッシュバルドの人間なら、他の貴族に金は出させるなって言われてんだ」
「面子みたいなもんか」
「そういうことだ」
公爵家の人間が自分よりも爵位の低い人にお金を出させたりしたら、陰口をたたく人間がいるのかもしれないわね。この国の貴族社会って、なんて面倒なんだろう。
……でもまあ、会社の上司も飲み会の時に多めに出してくれてたわね。
お金を多くもらっている人が多く出すのは、この国の当たり前なんでしょうね。
その後、王都に着いた私達は買い物ではなく食事を先にすることにした。
食べたいものがあるかと聞かれると、お米が恋しいけれど、この国ではあまり流通されていない。だから、今王都で話題になっているパスタ屋に行くことに決めた。
開店時間よりも早く着いたので、すでに並んでいた人の列の後ろに並んで待っていると、二人掛けのテーブルならすぐに入れると言われたから、女子と男子と分かれて食べる事にした。
本当はノアとキースにしたほうが良かったんだろうけど、せっかくだし女子トークがしたかった。
それに哲平達とは通路をはさんだ隣だから、会話はしにくいけど、何かあれば対処はしてもらえるし良いでしょう。
席に着き、オーダーをし終えてから、なんだかんだと聞くことができていなかった、ボートワールの話を切り出す。
「そういえばノア、前にピンク髪の女にからまれてなかった?」
「ピンク髪?」
ノアは少し考えてから教室での出来事を思い出したのか、私の質問に答える。
「なんか、キースと別れろって言いに来た人がいたなぁ」
「そう、その人」
「アリスの知ってる人?」
ノアがきょとんとした顔で聞いてくるので焦る。
あら?
もしかしてノアは、アリスの婚約者を奪った相手のことをを知らないの?
「あの人、カリン・ボートワールっていうんだけど」
「カリン・ボートワール?」
私の言葉を復唱するように言ったあと、ノアは柔らかな表情を怒りのものに変えて聞き返してくる。
「あの人がそうだったの?!」
「そうよ。ノアは顔を知らなかったの?」
「名前しか知らなかったよ! 知ってたら文句を言ってると思う!」
「どうして知らないの? 学年が違うから?」
「それもあるけど、アリスが知らないふりをしていてほしいって言ったんじゃない! だから、どんな人かとか詳しく調べなかったんだよ」
え?
どういう事?
ノアの言うアリスは私じゃない。
本物のアリスだ。
なんで、アリスはそんなことを言ったの?
ホットラードやボートワールにムカつかなかったわけ?
私だったら、絶対に友達に愚痴りまくるけど、悪口を言いたくない人もいるってこと?
人によって、考え方は違うということだろうか。
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