気弱な令嬢ではありませんので、やられた分はやり返します

風見ゆうみ

文字の大きさ
上 下
41 / 52
第二部

第12話 転生した時の話をされる

しおりを挟む
「邪魔してええか?」
「邪魔じゃねぇよ」
「邪魔じゃないからどうぞ」
 
 私たちが頷くと、カイルは哲平の隣の椅子に座った。

「お礼が遅くなったけれど本当に助かったわ。ありがとう。カイルって学園内でかなりの影響力があるのね」

 正直に感謝の言葉を伝えた。
 すると、なぜか哲平が不機嫌そうな顔になった。

 これくらいの褒め言葉で嫉妬されても困るわ。

 カイルは哲平の様子を見て苦笑する。

「そんな睨みなや。あと、礼にはおよばんて。ただ、人に話しまくっただけやしな。で、余計な奴らに話しかけられんうちに、俺の話をしてもうてええかな?」

 周りを見回してから、小声でカイルが聞いてきた。
 私たちが頷くと、早口で彼が転生した時の話をしてくれた。

 約3年前、カイルが気が付くと、自分は見知らぬ場所にいて、大人の男女がテーブルに突っ伏していたらしい。
 けれど、すぐにその二人も起き上がって騒ぎ始めた。
 その会話を聞いて、見た目は違うけれど、中身は自分の両親だと、すぐに気が付いたんだそうだ。
 家族会議をした結果、遅効性の毒を盛られたのか、食べ進めている間に、全員毒にやられてしまったんじゃないか、という結論になったらしい。

 ダイニングルームの外を覗くと、扉の前に執事が立っていたから、何かおかしい事はなかったか、と確認した。
 執事の口からは特に何もなく、毒味をする人間が出てきてからは、誰もその部屋に出入りしなかったと教えられたのだという。

 当たり前の話だけど、そうなると毒見役の人間が怪しい、という事になる。
 殺された人たちの代わりに怒ったカイル達は、口や服に血をつけたまま、毒見役の所へ向かった。
 すると、恐怖なのか罪悪感からなのかわからないが、毒見役は彼らを見るなり泣きわめいたんだそうだ。

 真相を話させると、謎の人物から毒の入った小瓶を渡され、毒を入れないと毒見役の家族を殺す、と脅されたと吐いたらしい。

 調べ上げていくと、その謎の人物は主犯ではなく、その人物も誰かに雇われていた事がわかったそうだ。

「で、なんでミシュガン男爵達が殺される事になったのかはわかったのか?」
「それなんやけど、最初はこの国の事もなんもわからんもんやから苦労したんや。やけど、うちはおとんもおかんも共働きの営業職やったもんやから、培ったスキルで調べ上げた感じやと、たぶん、ミシュガン一家が殺されたんは、反王家派の動きを何かしら掴んだんちゃうかってことや」

 営業トークで上手く情報を引き出せたって事ね。
 それはすごいことだわ。
 でも、今はそれよりも気になる事がある。

「っていう事は、ミシュガン男爵達は反王家派に殺されたかもしれないって事?」

 物騒な話になってきたので、小声でカイルに尋ねた。

「たぶんな」
「あー、面倒な事になってきたわね。あんたに手を貸したいのは山々だけど、王家がからんでくるだなんて、スケールが大きすぎるわよ」

 まだ、カイルから何を言われた訳でもないけど、なんとなく先がわかって、ため息を吐く。
 
「何言うてんねん。テツはイッシュバルド家やろ? その婚約者やったら、その内、王家の誰かには紹介されるで。無関係なんて無理やぞ」
「というか、もう何回か会ってる」

 カイルの言葉に哲平がけろりとした顔で答える。

 冗談でしょ。
 雲の上のような存在の人間に会わないといけないなんて、めんどく、いや、恐れ多いわ。

「なんにしてもや、グローゼル家は反王家やし、黒い噂が流れてんのは確かやから、気をつけた方がええで」
「そうね」

 頷いてから顔を横に向けて、人でごった返すテーブル席の方に目をやる。
 すると、遠く離れた席だというのに、一瞬だけシエルと視線が合った気がした。
 
 向こうもだいぶ警戒してるわね。
 だけど、毒に関してはアイツが犯人じゃないはず。

「私はミシュガン男爵達の件、あの女が怪しいと思ってるんだけど」

 言ってから、手元にあった紙ナプキンに持ち歩いていたペンで、その名前を書く。
 文字はカタカナで書いて、他の人が見てもわからないようにした。

「あ、俺達が考えた奴とおんなじや。やけど、なんでそう思うん?」
「あからさまなのよね。恋心が」
「ふぅん。恋する女は怖いなあ。人の命なんて、なんとも思わんのか」

 カイルは呆れた口調で言うと、すぐに名前が書かれた紙ナプキンを四角に折り、細かく破り始める。
 そのタイミングで、私の右隣に、がちゃん、と少し乱暴な感じでトレイが置かれた。

「アリス、隣いい?」
「もちろん。用事は終わった?」

 振り向くと、キースと一緒にやって来たノアがいた。
 キースはカイルの方に行って、小声で何やら話をしている。
 
 たぶん、今日のお礼でも言ってるんだと思う。

「終わってない。けど、今は諦めるわ」
「そう」

 不服そうにしているノアの頭を撫でてやる。
 食べながらノアから話を聞くと、キースは噂を否定してくれないし、シエルもノアのことを諦めるというような発言をしたらしい。

 このまま、すんなり諦めてくれたら良いけど。
 まあ、諦めなくても、ノアはシエルには渡さないけどね。




更新が停まっており、申し訳ございません!
少しずつ、改稿していっておりますので本年もよろしくお願いいたします!
しおりを挟む
感想 118

あなたにおすすめの小説

性悪という理由で婚約破棄された嫌われ者の令嬢~心の綺麗な者しか好かれない精霊と友達になる~

黒塔真実
恋愛
公爵令嬢カリーナは幼い頃から後妻と義妹によって悪者にされ孤独に育ってきた。15歳になり入学した王立学園でも、悪知恵の働く義妹とカリーナの婚約者でありながら義妹に洗脳されている第二王子の働きにより、学園中の嫌われ者になってしまう。しかも再会した初恋の第一王子にまで軽蔑されてしまい、さらに止めの一撃のように第二王子に「性悪」を理由に婚約破棄を宣言されて……!? 恋愛&悪が報いを受ける「ざまぁ」もの!! ※※※主人公は最終的にチート能力に目覚めます※※※アルファポリスオンリー※※※皆様の応援のおかげで第14回恋愛大賞で奨励賞を頂きました。ありがとうございます※※※ すみません、すっきりざまぁ終了したのでいったん完結します→※書籍化予定部分=【本編】を引き下げます。【番外編】追加予定→ルシアン視点追加→最新のディー視点の番外編は書籍化関連のページにて、アンケートに答えると読めます!!

愛人をつくればと夫に言われたので。

まめまめ
恋愛
 "氷の宝石”と呼ばれる美しい侯爵家嫡男シルヴェスターに嫁いだメルヴィーナは3年間夫と寝室が別なことに悩んでいる。  初夜で彼女の背中の傷跡に触れた夫は、それ以降別室で寝ているのだ。  仮面夫婦として過ごす中、ついには夫の愛人が選んだ宝石を誕生日プレゼントに渡される始末。  傷つきながらも何とか気丈に振る舞う彼女に、シルヴェスターはとどめの一言を突き刺す。 「君も愛人をつくればいい。」  …ええ!もう分かりました!私だって愛人の一人や二人!  あなたのことなんてちっとも愛しておりません!  横暴で冷たい夫と結婚して以降散々な目に遭うメルヴィーナは素敵な愛人をゲットできるのか!?それとも…?なすれ違い恋愛小説です。 ※感想欄では読者様がせっかく気を遣ってネタバレ抑えてくれているのに、作者がネタバレ返信しているので閲覧注意でお願いします…

愛など初めからありませんが。

ましろ
恋愛
お金で売られるように嫁がされた。 お相手はバツイチ子持ちの伯爵32歳。 「君は子供の面倒だけ見てくれればいい」 「要するに貴方様は幸せ家族の演技をしろと仰るのですよね?ですが、子供達にその様な演技力はありますでしょうか?」 「……何を言っている?」 仕事一筋の鈍感不器用夫に嫁いだミッシェルの未来はいかに? ✻基本ゆるふわ設定。箸休め程度に楽しんでいただけると幸いです。

身代わりの私は退場します

ピコっぴ
恋愛
本物のお嬢様が帰って来た   身代わりの、偽者の私は退場します ⋯⋯さようなら、婚約者殿

【完結済】隣国でひっそりと子育てしている私のことを、執着心むき出しの初恋が追いかけてきます

鳴宮野々花@書籍2冊発売中
恋愛
 一夜の過ちだなんて思いたくない。私にとって彼とのあの夜は、人生で唯一の、最良の思い出なのだから。彼のおかげで、この子に会えた────  私、この子と生きていきますっ!!  シアーズ男爵家の末娘ティナレインは、男爵が隣国出身のメイドに手をつけてできた娘だった。ティナレインは隣国の一部の者が持つ魔力(治癒術)を微力ながら持っており、そのため男爵夫人に一層疎まれ、男爵家後継ぎの兄と、世渡り上手で気の強い姉の下で、影薄く過ごしていた。  幼いティナレインは、優しい侯爵家の子息セシルと親しくなっていくが、息子がティナレインに入れ込みすぎていることを嫌う侯爵夫人は、シアーズ男爵夫人に苦言を呈す。侯爵夫人の機嫌を損ねることが怖い義母から強く叱られ、ティナレインはセシルとの接触を禁止されてしまう。  時を経て、貴族学園で再会する二人。忘れられなかったティナへの想いが燃え上がるセシルは猛アタックするが、ティナは自分の想いを封じ込めるように、セシルを避ける。  やがてティナレインは、とある商会の成金経営者と婚約させられることとなり、学園を中退。想い合いながらも会うことすら叶わなくなった二人だが、ある夜偶然の再会を果たす。  それから数ヶ月。結婚を目前に控えたティナレインは、隣国へと逃げる決意をした。自分のお腹に宿っていることに気付いた、大切な我が子を守るために。  けれど、名を偽り可愛い我が子の子育てをしながら懸命に生きていたティナレインと、彼女を諦めきれないセシルは、ある日運命的な再会を果たし────  生まれ育った屋敷で冷遇され続けた挙げ句、最低な成金ジジイと結婚させられそうになったヒロインが、我が子を守るために全てを捨てて新しい人生を切り拓いていこうと奮闘する物語です。 ※いつもの完全オリジナルファンタジー世界の物語です。全てがファンタジーです。 ※この作品は小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。

妖精の取り替え子として平民に転落した元王女ですが、努力チートで幸せになります。

haru.
恋愛
「今ここに、17年間偽られ続けた真実を証すッ! ここにいるアクリアーナは本物の王女ではないッ! 妖精の取り替え子によって偽られた偽物だッ!」 17年間マルヴィーア王国の第二王女として生きてきた人生を否定された。王家が主催する夜会会場で、自分の婚約者と本物の王女だと名乗る少女に…… 家族とは見た目も才能も似ておらず、肩身の狭い思いをしてきたアクリアーナ。 王女から平民に身を落とす事になり、辛い人生が待ち受けていると思っていたが、王族として恥じぬように生きてきた17年間の足掻きは無駄ではなかった。 「あれ? 何だか王女でいるよりも楽しいかもしれない!」 自身の努力でチートを手に入れていたアクリアーナ。 そんな王女を秘かに想っていた騎士団の第三師団長が騎士を辞めて私を追ってきた!? アクリアーナの知らぬ所で彼女を愛し、幸せを願う者達。 王女ではなくなった筈が染み付いた王族としての秩序で困っている民を見捨てられないアクリアーナの人生は一体どうなる!? ※ ヨーロッパの伝承にある取り替え子(チェンジリング)とは違う話となっております。 異世界の創作小説として見て頂けたら嬉しいです。 (❁ᴗ͈ˬᴗ͈)⁾⁾⁾ペコ

下げ渡された婚約者

相生紗季
ファンタジー
マグナリード王家第三王子のアルフレッドは、優秀な兄と姉のおかげで、政務に干渉することなく気ままに過ごしていた。 しかしある日、第一王子である兄が言った。 「ルイーザとの婚約を破棄する」 愛する人を見つけた兄は、政治のために決められた許嫁との婚約を破棄したいらしい。 「あのルイーザが受け入れたのか?」 「代わりの婿を用意するならという条件付きで」 「代わり?」 「お前だ、アルフレッド!」 おさがりの婚約者なんて聞いてない! しかもルイーザは誰もが畏れる冷酷な侯爵令嬢。 アルフレッドが怯えながらもルイーザのもとへと訪ねると、彼女は氷のような瞳から――涙をこぼした。 「あいつは、僕たちのことなんかどうでもいいんだ」 「ふたりで見返そう――あいつから王位を奪うんだ」

妹ばかり見ている婚約者はもういりません

水谷繭
恋愛
子爵令嬢のジュスティーナは、裕福な伯爵家の令息ルドヴィクの婚約者。しかし、ルドヴィクはいつもジュスティーナではなく、彼女の妹のフェリーチェに会いに来る。 自分に対する態度とは全く違う優しい態度でフェリーチェに接するルドヴィクを見て傷つくジュスティーナだが、自分は妹のように愛らしくないし、魔法の能力も中途半端だからと諦めていた。 そんなある日、ルドヴィクが妹に婚約者の証の契約石に見立てた石を渡し、「君の方が婚約者だったらよかったのに」と言っているのを聞いてしまう。 さらに婚約解消が出来ないのは自分が嫌がっているせいだという嘘まで吐かれ、我慢の限界が来たジュスティーナは、ルドヴィクとの婚約を破棄することを決意するが……。 ◆エールありがとうございます! ◇表紙画像はGirly Drop様からお借りしました💐 ◆なろうにも載せ始めました ◇いいね押してくれた方ありがとうございます!

処理中です...