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第24話 伯爵令嬢にキレられる
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警戒し始めたミラベル伯爵令嬢に尋ねる。
「とにかく、ミラベル伯爵令嬢のお話はキース様に近づくな、という事でよろしいでしょうか」
屋上だから日差しを遮るものがないから、とにかく暑い。
とっとと帰りたくなってきたので、話を終わらせようとすると、ミラベル伯爵令嬢は叫ぶ。
「わかったのなら良いのです! もし、また同じ事があれば、前と同じような目に合わせますわよ!」
「前と同じような目に……とは?」
やっと何か話してくれそうなので、わざとらしくとぼけてみせると、彼女の綺麗な顔が醜く歪んだ。
こわ…。
本性が出た瞬間かしら…。
「どうやら、また痛い目に合いたいようですわね」
そう言うと、私の左右にいた騎達に目で合図をした。
すると、騎士の二人が「失礼します」と声をそろえてから、私の腕をつかんだ。
一体、何をするつもりかわからないけど、承諾もしていないのに、腕をつかまれるのは腹が立つ。
「あの、あなた方は私の腕をつかんでますけど、私は許可していませんが? 失礼しますと言えば何をしてもいいんですか?」
不機嫌そうな声を出して尋ねると、私が子爵家の娘だから、もしくはテツの婚約者だから躊躇したのか、二人の手の力が弱まったので、振り払って後ろに下がる。
走って逃げてもすぐに追いつかれるだろうし、二人がまた私の腕をつかみにくる前に、さっきみたいな事をしないようにさせなくちゃ。
「……お二人のお名前は?」
私に尋ねられた二人は判断を仰ぐように、ミラベル伯爵令嬢の方を振り返った。
「そんな事、今は関係ないでしょう!」
「ありますよ。何をされるかわからないんで保険をかけておかないと。どこのどなたに何をされたか、伝えたいないといけない相手がいますので。それとも口封じに殺します? 私を」
にこりと笑って言うと、騎士達二人の表情が強張った。
彼らは命令されればそうしないといけないんだろうけど、私に手をかけた時の代償と、ミラベル伯爵令嬢の命令に背いた時の代償と、どちらが自分達に良くないのか、瞬時に判断したんでしょうね。
さすがに、ミラベル伯爵令嬢も私を殺すつもりはないと思うけど…。
「あなたが、キース様に近付かなければ、それでいい事なのに、どうして逆らうのよ!」
「だから、今日は向こうから話しかけてきたって言ってるでしょう。それに、ノアはいいんですか?」
「彼女は…、いいんです」
「……そうですか。よろしければ、ノアは許される理由をお聞かせいただきたいわ」
なぜかミラベル伯爵令嬢の声が小さくなったので、気になって聞いてみると、彼女は下を向いて素直に答えてくれる。
「彼女は平民ですから、今はキース様と一緒に住んでいるだけですが、大人になればいつかは出ていくでしょう」
「どういう事です?」
「平民と貴族の結婚が許されるわけないでしょう! それにキース様は辺境伯令息なのよ!」
そうなのね。
貴族が望めば、平民が相手でも簡単にできるものだと思ってたわ。
その人自身が優秀であれば、平民だろうがなんだろうが良いわけじゃないのね。
だけど、キースはノアが好きだし、ノアが嫌じゃなければ結婚しちゃいそうな気がするんだけど…。
そういえば、貴族って婚約者がいて当たり前な世界っぽいけれど、キースには婚約者はいないのかしら。
それにミラベル伯爵令嬢にだって、婚約者がいてもおかしくないと思うんわよね。
なのに、どうしてこんなにキースにこだわるのかしら。
「ミラベル伯爵令嬢には婚約者がいらっしゃいませんでしたっけ?」
ミラベル伯爵令嬢は痛いところをつかれたような顔をした後、私を睨む。
「今の婚約者とは婚約解消するつもりです。そして、改めて、キース様との婚約を父にお願いするつもりですわ。だから、あなたのようにキース様の周りをウロウロする人間がいては困るんです!」
「私には婚約者がいるから、あなたにとっては無害だと思いますけど? それに、あなたがキースを好きでも、彼はあなたなんか絶対に選ばないと思いますが?」
「何ですって!?」
「キースはあなたの様な人は好きではないと思います」
意地悪ではなく素直に思った事を口に出したのがいけなかったらしい。
本人も自覚があったのか、鬼の様な表情になったかと思うと、目の前のカップを手に取り、私の目の前までやって来ると、入っていた中身のお茶らしきものを、私の顔にかけてこようとしたのだった。
「とにかく、ミラベル伯爵令嬢のお話はキース様に近づくな、という事でよろしいでしょうか」
屋上だから日差しを遮るものがないから、とにかく暑い。
とっとと帰りたくなってきたので、話を終わらせようとすると、ミラベル伯爵令嬢は叫ぶ。
「わかったのなら良いのです! もし、また同じ事があれば、前と同じような目に合わせますわよ!」
「前と同じような目に……とは?」
やっと何か話してくれそうなので、わざとらしくとぼけてみせると、彼女の綺麗な顔が醜く歪んだ。
こわ…。
本性が出た瞬間かしら…。
「どうやら、また痛い目に合いたいようですわね」
そう言うと、私の左右にいた騎達に目で合図をした。
すると、騎士の二人が「失礼します」と声をそろえてから、私の腕をつかんだ。
一体、何をするつもりかわからないけど、承諾もしていないのに、腕をつかまれるのは腹が立つ。
「あの、あなた方は私の腕をつかんでますけど、私は許可していませんが? 失礼しますと言えば何をしてもいいんですか?」
不機嫌そうな声を出して尋ねると、私が子爵家の娘だから、もしくはテツの婚約者だから躊躇したのか、二人の手の力が弱まったので、振り払って後ろに下がる。
走って逃げてもすぐに追いつかれるだろうし、二人がまた私の腕をつかみにくる前に、さっきみたいな事をしないようにさせなくちゃ。
「……お二人のお名前は?」
私に尋ねられた二人は判断を仰ぐように、ミラベル伯爵令嬢の方を振り返った。
「そんな事、今は関係ないでしょう!」
「ありますよ。何をされるかわからないんで保険をかけておかないと。どこのどなたに何をされたか、伝えたいないといけない相手がいますので。それとも口封じに殺します? 私を」
にこりと笑って言うと、騎士達二人の表情が強張った。
彼らは命令されればそうしないといけないんだろうけど、私に手をかけた時の代償と、ミラベル伯爵令嬢の命令に背いた時の代償と、どちらが自分達に良くないのか、瞬時に判断したんでしょうね。
さすがに、ミラベル伯爵令嬢も私を殺すつもりはないと思うけど…。
「あなたが、キース様に近付かなければ、それでいい事なのに、どうして逆らうのよ!」
「だから、今日は向こうから話しかけてきたって言ってるでしょう。それに、ノアはいいんですか?」
「彼女は…、いいんです」
「……そうですか。よろしければ、ノアは許される理由をお聞かせいただきたいわ」
なぜかミラベル伯爵令嬢の声が小さくなったので、気になって聞いてみると、彼女は下を向いて素直に答えてくれる。
「彼女は平民ですから、今はキース様と一緒に住んでいるだけですが、大人になればいつかは出ていくでしょう」
「どういう事です?」
「平民と貴族の結婚が許されるわけないでしょう! それにキース様は辺境伯令息なのよ!」
そうなのね。
貴族が望めば、平民が相手でも簡単にできるものだと思ってたわ。
その人自身が優秀であれば、平民だろうがなんだろうが良いわけじゃないのね。
だけど、キースはノアが好きだし、ノアが嫌じゃなければ結婚しちゃいそうな気がするんだけど…。
そういえば、貴族って婚約者がいて当たり前な世界っぽいけれど、キースには婚約者はいないのかしら。
それにミラベル伯爵令嬢にだって、婚約者がいてもおかしくないと思うんわよね。
なのに、どうしてこんなにキースにこだわるのかしら。
「ミラベル伯爵令嬢には婚約者がいらっしゃいませんでしたっけ?」
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「何ですって!?」
「キースはあなたの様な人は好きではないと思います」
意地悪ではなく素直に思った事を口に出したのがいけなかったらしい。
本人も自覚があったのか、鬼の様な表情になったかと思うと、目の前のカップを手に取り、私の目の前までやって来ると、入っていた中身のお茶らしきものを、私の顔にかけてこようとしたのだった。
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