気弱な令嬢ではありませんので、やられた分はやり返します

風見ゆうみ

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第22話 伯爵令嬢に叫ばれる

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 連れてこられたのは隣の校舎の屋上にあるガゼボだった。

 キースに教えてもらわなかったら、違うガゼボで待ってたと思うし、来ないってなって帰ってるところだったわ。

 この学園の屋上は生徒に開放されているからか、まるで小さな庭園のようになっていた。  
 転落防止のためにか、手すりではなく、私の身長よりも高い白い塀に囲まれているから、残念ながら景色を眺める事は出来ない。
 屋上の中心あたりにある真っ白なガゼボは5人でお茶を飲みながら話せるくらいの大きさで、すでに中にある椅子に人が座っていて、私の座る所などなさそうだった。

 まあ、仲良くお話するつもりはないから、立ったままで全然いいんだけど。
 
 ガゼボは少し高い位置にあり、彼女達の目線に合わせるには、3段の階段をのぼらないといけない。
 今日はいいお天気で、日差しが少しキツく感じるくらいだから、日陰に入りたいところだけど、ガゼボの中はすでに人やテーブルなどでいっぱいだし、狭いところは嫌いなので階段の手前で立ち、彼女達を見上げる。
 私が立ち止まると逃げられないようにでもする為か、騎士らしき男二人が、私の左右に立った。
 二人共、背が高いしゴツいから、威圧感がある。
 学園の教室内には騎士が入る事は、よっぽどじゃない限り禁止されているけれど、屋上は良いようだった。
 
 普通の令嬢なら、ここでビビっちゃうかもしれないけど、もし、こんな所で私をどうこうしようもんなら、動かぬ証拠になっていいかもしれないし、それはそれで良しとする。
 
「ロゼ様、連れてまいりました」
「ありがとう」
 
 ミラベル伯爵令嬢は私をここまで連れてきた少女に礼を言うと、持っていたカップをソーサーに置き、私の方を見た。
 同じ制服姿なのに、やはり伯爵令嬢というだけあって、とても上品に見える。
 
 絶対、あぐらかいたりした事ないんでしょうね
 なんて、どうでも良い事を考えている場合じゃないか。

「お待たせしました。どのようなお話でしょうか」 
「あら、まずは謝罪が必要じゃなくって?」

 ミラベル伯爵令嬢はテーブルに置いていた扇を口元に当てて、私を蔑んだ目で見下ろしてくるので聞き返す。

「何の謝罪でしょう?」
「あなたが中々いらっしゃらないから、わたくし、待ちくたびれてしまいましたの」

 場所の指定をはっきりしてこなかったのは、そっちじゃないの。
 しかも、学年によって終わる時間は微妙にズレるし、遅くなったって言っても、私の授業が終わってからだと、10分くらいしか、まだ経ってないと思うんだけど…。
 まあ、お待たせしたというのであれば、謝ってはおこう。
 10分以上、待たせた事に変わりはないし。

「時間に遅れた上に、お待たせしてしまい申し訳ございませんでした。ですが、ガゼボと言いましても、いくつかありましたから途方にくれていましたの」

 別に悪かった事を謝るのは当たり前だから、謝罪はちゃんとしておくけど、そっちも悪いんだからね、という事は伝えておく。

 というか、お嬢様言葉って、こんな話し方で合ってるの?

「あら、ちゃんと確認をしなかったあなたが悪いのに、こちらのせいだとでも?」
「誘っていただけるのであれば、された側が迷わないように配慮されるのが普通ではないですか?」

 にっこり笑って答えると、ミラベル伯爵令嬢は扇で口元を隠したままでいるけど、眉間にシワが寄ったので明らかに苛立ったように見えた。

 あんまり長々と話すつもりもないので、本題を促す。

「早速で申し訳ないのですが、婚約者を待たせておりますので、ご用件を伺っても? ただ、雑談するために呼び出された訳じゃないですよね?」
「もちろんです。そうでもなければ、あなたに話しかけたりなんてしませんわ」

 ミラベル伯爵令嬢は扇を閉じて頷くと、なぜか彼女を囲んで座っていた令嬢らしき子達も頷いた。

 真似をしないと怒られるのかしら…。
 貴族社会は大変ね…。

「何かお気に障ることでもしましたっけ?」
「したに決まっているでしょう!」

 勢いよく立ち上がり、ミラベル伯爵令嬢は叫ぶ。

「何度言ったらおわかりになるの?! キース様に近付かないで!」

 私は言われた覚えがないけど、アリスは何度か言われているというわけね…。

 ミラベル伯爵令嬢はキースの事が好きで、彼と仲良くしていたアリスが気に入らなかったってとこかしら…?

 でもそれって、人をいじめていい理由にはならないわよね?
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