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第7話 ほっこりする
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「貴族っていうのは、性格の悪い奴らばっかりなのか? 甘やかされて育ってるからワガママだとか、そんなんか?」
アリスについての話を終えると、哲平は苦虫を噛み潰したような顔をして言った。
外見は全然違うのに仕草や口調が一緒だから、哲平と呼ぶことに全く違和感がないのがすごいわね。
本当ならば、イッシュバルド卿、もしくは、彼の名前はイグス・イッシュバルドだから、イグス様と呼ばなくちゃいけないんだけど、そう呼ぶ気になれない。
「貴族の全部が全部が悪いわけじゃないわよ。だって、アリス自身は悪い子じゃなかったし、アリスの両親だってそう悪い人じゃなかったわ。娘に関して鈍感なだけで愛してないわけじゃない」
ムキになって言い返すと、哲平は無言で肩をすくめた。
「何よ、文句あるの?」
「別に。お前が無事に環境に馴染んでて良かったよ」
「それはどうも。それにしても哲平も転生してたのね」
言ってから、冷めてしまった薄い緑のお茶を飲んで、その味に、つい声を上げる。
「これ、緑茶っぽい!」
「だろ? これ、異国から取り寄せてるらしい。ものすごく高いらしいぞ」
「じゃあ、頻繁には飲めないってことね」
「この家では飲めるけどな」
なんだかんだと哲平も、この家での生活に慣れている様な感じがしたので聞いてみる。
「あんたがその人の身体の中に入ったのっていつ?」
「あんまりはっきりとは覚えてねぇんだけど、20日くらい前かな」
「は、20日前?!」
「なんだよ、お前は違うのか?」
私の驚きように、哲平も冷めたお茶を飲んでから聞き返してくる。
「私、そこまで長くはないわよ」
「マジか。つーか、その割には自由気ままにやってそうだな」
「うるさいわね。嘆いたってどうしようもないんだから、好きな様に生きさせてもらってるだけよ」
テーブルに身を乗り出して腕を伸ばし、哲平の頬をつねると、哲平は私の手首をつかんで叫ぶ。
「いってぇな! お前、その子の敵討ちするつもりだろうけど、身体の持ち主の評判を悪くするなよ?」
「あんたの方は大丈夫なの? 公爵家ってめちゃくちゃ偉いんじゃないの? 中身がアホで大丈夫?」
「うるさい。お前も性格が持ち主と正反対だろ。なんで、そんな子に転生したんだよ」
「たぶん、一番考えられるのは名前が同じって事だけど、もしかしたら彼女の体で、嫌な奴らにやり返させたかったのかも」
私だからやり返そうと思うのであって、普通に性格の良い子が彼女の中に入ったら、アリスの無念ははらせないかもしれないから。
頬をつねるのをやめて、椅子に座りなおしてから答えると、哲平は確認してくる。
「ああ、今のお前もありすだっけか」
「そう、アリス・キュレル子爵令嬢よ」
お茶を飲んで口の中を潤し、カップをソーサーに戻してから頷いた。
「一応、今の俺の自己紹介をしておくけど、イッシュバルド公爵の後妻の息子で、次期公爵とは血は繋がってない弟。名前はなんとか」
哲平が首を傾げるので、私は眉をひそめる。
「なんとか、って何よ?!」
「いや、覚えてねぇわけじゃねぇけど、その名前で呼ばれても返事する気にならねぇんだよ」
「何よそれ…。今のあんたの名前はイグスって名前でしょ?」
「そうだ。で、腹が立つ事に、こいつは元々は女好きなんだよ。どうやら女に刺されて人生が終わってる」
「最悪じゃない」
「だから、そんな奴の名前で呼ばれたくなくて、呼び方は家の中では無理やり変えさせてる」
「なんて呼んでもらってるの?」
先程、哲平が私に兄を紹介したいからとメイドにお兄さんを呼んでもらう様に頼んだ時に、お茶を入れ直してもらったから、あったかいお茶を一口すする。
個人の好みはあるだろうけど、やっぱり、私にとって緑茶はホッとする。
アリスの舌の好みにあって良かった。
ほっこりしながら、もう一口、と口に含んだところで、
「テツ」
と哲平から軽い口調で答えられて、私は飲んでいた高いお茶をふきだしそうになった。
「――っ! 昔のあだ名そのままじゃないの!」
「うるせぇな。別にいいだろ。哲平って名前は呼びにくいらしい。だからテツにしてもらった」
「じゃあ、私も哲平を呼ぶ時はテツって呼んだ方がいいの?」
「2人の時や事情を知ってる人間だけの時は哲平でいい」
「わかったわ」
哲平の言葉に頷いた時だった。
バルコニーと屋敷を隔てている扉が叩かれて、哲平が返事を返すと、芸能人かと思うくらい、とびきり美形なお兄さんが部屋に入ってきた。
「お待たせしてすみません」
長身痩躯のイケメンは、私を見て軽く頭を下げた。
「て、哲平…、じゃない。テツ…、この人は…?」
「俺のこの国での兄さんだよ」
哲平は謎のイケメンを指差して答えた。
アリスについての話を終えると、哲平は苦虫を噛み潰したような顔をして言った。
外見は全然違うのに仕草や口調が一緒だから、哲平と呼ぶことに全く違和感がないのがすごいわね。
本当ならば、イッシュバルド卿、もしくは、彼の名前はイグス・イッシュバルドだから、イグス様と呼ばなくちゃいけないんだけど、そう呼ぶ気になれない。
「貴族の全部が全部が悪いわけじゃないわよ。だって、アリス自身は悪い子じゃなかったし、アリスの両親だってそう悪い人じゃなかったわ。娘に関して鈍感なだけで愛してないわけじゃない」
ムキになって言い返すと、哲平は無言で肩をすくめた。
「何よ、文句あるの?」
「別に。お前が無事に環境に馴染んでて良かったよ」
「それはどうも。それにしても哲平も転生してたのね」
言ってから、冷めてしまった薄い緑のお茶を飲んで、その味に、つい声を上げる。
「これ、緑茶っぽい!」
「だろ? これ、異国から取り寄せてるらしい。ものすごく高いらしいぞ」
「じゃあ、頻繁には飲めないってことね」
「この家では飲めるけどな」
なんだかんだと哲平も、この家での生活に慣れている様な感じがしたので聞いてみる。
「あんたがその人の身体の中に入ったのっていつ?」
「あんまりはっきりとは覚えてねぇんだけど、20日くらい前かな」
「は、20日前?!」
「なんだよ、お前は違うのか?」
私の驚きように、哲平も冷めたお茶を飲んでから聞き返してくる。
「私、そこまで長くはないわよ」
「マジか。つーか、その割には自由気ままにやってそうだな」
「うるさいわね。嘆いたってどうしようもないんだから、好きな様に生きさせてもらってるだけよ」
テーブルに身を乗り出して腕を伸ばし、哲平の頬をつねると、哲平は私の手首をつかんで叫ぶ。
「いってぇな! お前、その子の敵討ちするつもりだろうけど、身体の持ち主の評判を悪くするなよ?」
「あんたの方は大丈夫なの? 公爵家ってめちゃくちゃ偉いんじゃないの? 中身がアホで大丈夫?」
「うるさい。お前も性格が持ち主と正反対だろ。なんで、そんな子に転生したんだよ」
「たぶん、一番考えられるのは名前が同じって事だけど、もしかしたら彼女の体で、嫌な奴らにやり返させたかったのかも」
私だからやり返そうと思うのであって、普通に性格の良い子が彼女の中に入ったら、アリスの無念ははらせないかもしれないから。
頬をつねるのをやめて、椅子に座りなおしてから答えると、哲平は確認してくる。
「ああ、今のお前もありすだっけか」
「そう、アリス・キュレル子爵令嬢よ」
お茶を飲んで口の中を潤し、カップをソーサーに戻してから頷いた。
「一応、今の俺の自己紹介をしておくけど、イッシュバルド公爵の後妻の息子で、次期公爵とは血は繋がってない弟。名前はなんとか」
哲平が首を傾げるので、私は眉をひそめる。
「なんとか、って何よ?!」
「いや、覚えてねぇわけじゃねぇけど、その名前で呼ばれても返事する気にならねぇんだよ」
「何よそれ…。今のあんたの名前はイグスって名前でしょ?」
「そうだ。で、腹が立つ事に、こいつは元々は女好きなんだよ。どうやら女に刺されて人生が終わってる」
「最悪じゃない」
「だから、そんな奴の名前で呼ばれたくなくて、呼び方は家の中では無理やり変えさせてる」
「なんて呼んでもらってるの?」
先程、哲平が私に兄を紹介したいからとメイドにお兄さんを呼んでもらう様に頼んだ時に、お茶を入れ直してもらったから、あったかいお茶を一口すする。
個人の好みはあるだろうけど、やっぱり、私にとって緑茶はホッとする。
アリスの舌の好みにあって良かった。
ほっこりしながら、もう一口、と口に含んだところで、
「テツ」
と哲平から軽い口調で答えられて、私は飲んでいた高いお茶をふきだしそうになった。
「――っ! 昔のあだ名そのままじゃないの!」
「うるせぇな。別にいいだろ。哲平って名前は呼びにくいらしい。だからテツにしてもらった」
「じゃあ、私も哲平を呼ぶ時はテツって呼んだ方がいいの?」
「2人の時や事情を知ってる人間だけの時は哲平でいい」
「わかったわ」
哲平の言葉に頷いた時だった。
バルコニーと屋敷を隔てている扉が叩かれて、哲平が返事を返すと、芸能人かと思うくらい、とびきり美形なお兄さんが部屋に入ってきた。
「お待たせしてすみません」
長身痩躯のイケメンは、私を見て軽く頭を下げた。
「て、哲平…、じゃない。テツ…、この人は…?」
「俺のこの国での兄さんだよ」
哲平は謎のイケメンを指差して答えた。
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