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クズーズざまぁ編+番外編

第54話 寝室での話

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 しばらく待っているとシャワーを浴びてこられたのか、髪が濡れた状態でアレク殿下が寝室に入ってきた。
 タオルを持っておられたから受け取って、髪の毛を拭いてあげると、少しだけ照れくさそうな顔をして私を見てきたので、まだ言えていなかった言葉を伝える。

「おかえりなさいませ。それから、先程はありがとうございました」
「当然の事をしたまでだ」

 濡れてしまったタオルを持って廊下に出ると、すぐにメイドがやって来て、タオルを受け取ってくれたので礼を言ってから、また部屋に戻ると、アレク殿下が私の手を引いて、ベッドの方に連れて行ってくれる。
 
「お話を聞きたいんですけれど…」
「わかってるよ。別に話はベッドの上でも出来るだろう?」
「出来ますけれど、眠ってしまいそうなんです」
「眠れないようにしてあげるから心配しなくていい」

 にこりと笑ったアレク殿下がすごく意地悪だったので、軽く睨んでから答える。

「眠る時は眠りますから」
「そうだな。疲れ切って眠ってしまうんだよな」
「……っ! 意地悪な事を言わないで下さい!」
「意地悪な事は言っていないだろう?」

 アレク殿下が私に甘いせいで、かなり私の性格も変わってきてしまっている。
 昔は人にからかわれても、大きな反応をするタイプではなかった。

 それなのに、アレク殿下の言葉についつい反応してしまう。

 こんな事で動揺してしまう様じゃ、王太子妃として失格だと言われてしまいそうだから、しっかりしないといけないわ。

 もちろん、アレク殿下もわきまえていらっしゃるから、人前でこんな意地悪な話はしないけれど…。

「あの、クズーズ殿下はどうやってここまで入ってこれたんですか?」

 平静を装いながら尋ねると、アレク殿下は答えてくれる。

「父上と母上に会いに来たという言い訳をして中に入ったはいいが、どうやら兄上は腕の立つ護衛を雇ったみたいだ。城内に入ってからは要所要所にいた騎士がやられてる。兄上が歩いているのを見たというメイドに聞くと、神経質そうな顔をした男と歩いていたらしい。どうして、こんな所にいるのかと気になったので、つい顔を見ようとすると、男は兄上に話しかけて、彼女から顔を背けたようだった。俺が来た時にはそんな男は見当たらなかったから、兄上が目的の部屋の近くに来たところで、その男だけ先に出て行ったんだろう」
「あの…、城内の騎士達は命に別状はないんでしょうか?」
「まあな。だが、もう二度と城内の警備にはつけないだろう。気の毒だけどな」

 アレク殿下は私の頭を優しく撫でた後、ベッドに座り、私を引き寄せると彼の太ももの上にのせて、お腹に両腕をまわして抱きしめる形を取ってから話を続ける。

「兄上はエイナ嬢の事で何か知っている様子だったな…」
「そんな感じでしたね…。まさか、クズーズ殿下がエイナを誘拐したわけじゃないですわよね?」
「最初に行方不明になった時には兄上は関わっていないと思うが、その後の事はわからないな。親衛隊の事件の被害女性の1人が怪しい動きをしていたから彼女が関わっている可能性はあるが、話を聞いても何も知らないと言いはるんだ」
「被害女性にあまり厳しい尋問みたいな事はしたくありませんし、エイナに関してそこまでする必要もないと思いますわ」
「ただ、兄上は切り札の様に言ってきていたがな」

 アレク殿下はおろしている私の髪の毛の右側の一部を手に取り私の耳にかけると、あらわになった首筋に優しくキスをした。

 ああ、このパターンは…。

「眠りたいか?」
「……少しくらいなら大丈夫です」

 そう言いつつも、絶対に少しくらいにならない事はわかっている。
 だから、話題を変える。

「クズーズ殿下はどうして私にこだわるんでしょうか…」
「俺が兄上の立場ならこだわるかもしれないから、気持ちは分からないでもない」
「どういう事ですか?」

 見上げると、アレク殿下は顔を近付けてきて言う。

「エリナが可愛いから」
「なっ! からかわないで下さい!」
「からかってなんかない」
「からかっ……、んっ…」

 その後の言葉はアレク殿下に唇をふさがれてしまい、言葉にならなかった。

 結局は次の日の朝、早くに起きて、アレク殿下と改めて、クズーズ殿下の話をする事になったのだった。

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