48 / 51
クズーズざまぁ編+番外編
第54話 寝室での話
しおりを挟む
しばらく待っているとシャワーを浴びてこられたのか、髪が濡れた状態でアレク殿下が寝室に入ってきた。
タオルを持っておられたから受け取って、髪の毛を拭いてあげると、少しだけ照れくさそうな顔をして私を見てきたので、まだ言えていなかった言葉を伝える。
「おかえりなさいませ。それから、先程はありがとうございました」
「当然の事をしたまでだ」
濡れてしまったタオルを持って廊下に出ると、すぐにメイドがやって来て、タオルを受け取ってくれたので礼を言ってから、また部屋に戻ると、アレク殿下が私の手を引いて、ベッドの方に連れて行ってくれる。
「お話を聞きたいんですけれど…」
「わかってるよ。別に話はベッドの上でも出来るだろう?」
「出来ますけれど、眠ってしまいそうなんです」
「眠れないようにしてあげるから心配しなくていい」
にこりと笑ったアレク殿下がすごく意地悪だったので、軽く睨んでから答える。
「眠る時は眠りますから」
「そうだな。疲れ切って眠ってしまうんだよな」
「……っ! 意地悪な事を言わないで下さい!」
「意地悪な事は言っていないだろう?」
アレク殿下が私に甘いせいで、かなり私の性格も変わってきてしまっている。
昔は人にからかわれても、大きな反応をするタイプではなかった。
それなのに、アレク殿下の言葉についつい反応してしまう。
こんな事で動揺してしまう様じゃ、王太子妃として失格だと言われてしまいそうだから、しっかりしないといけないわ。
もちろん、アレク殿下もわきまえていらっしゃるから、人前でこんな意地悪な話はしないけれど…。
「あの、クズーズ殿下はどうやってここまで入ってこれたんですか?」
平静を装いながら尋ねると、アレク殿下は答えてくれる。
「父上と母上に会いに来たという言い訳をして中に入ったはいいが、どうやら兄上は腕の立つ護衛を雇ったみたいだ。城内に入ってからは要所要所にいた騎士がやられてる。兄上が歩いているのを見たというメイドに聞くと、神経質そうな顔をした男と歩いていたらしい。どうして、こんな所にいるのかと気になったので、つい顔を見ようとすると、男は兄上に話しかけて、彼女から顔を背けたようだった。俺が来た時にはそんな男は見当たらなかったから、兄上が目的の部屋の近くに来たところで、その男だけ先に出て行ったんだろう」
「あの…、城内の騎士達は命に別状はないんでしょうか?」
「まあな。だが、もう二度と城内の警備にはつけないだろう。気の毒だけどな」
アレク殿下は私の頭を優しく撫でた後、ベッドに座り、私を引き寄せると彼の太ももの上にのせて、お腹に両腕をまわして抱きしめる形を取ってから話を続ける。
「兄上はエイナ嬢の事で何か知っている様子だったな…」
「そんな感じでしたね…。まさか、クズーズ殿下がエイナを誘拐したわけじゃないですわよね?」
「最初に行方不明になった時には兄上は関わっていないと思うが、その後の事はわからないな。親衛隊の事件の被害女性の1人が怪しい動きをしていたから彼女が関わっている可能性はあるが、話を聞いても何も知らないと言いはるんだ」
「被害女性にあまり厳しい尋問みたいな事はしたくありませんし、エイナに関してそこまでする必要もないと思いますわ」
「ただ、兄上は切り札の様に言ってきていたがな」
アレク殿下はおろしている私の髪の毛の右側の一部を手に取り私の耳にかけると、あらわになった首筋に優しくキスをした。
ああ、このパターンは…。
「眠りたいか?」
「……少しくらいなら大丈夫です」
そう言いつつも、絶対に少しくらいにならない事はわかっている。
だから、話題を変える。
「クズーズ殿下はどうして私にこだわるんでしょうか…」
「俺が兄上の立場ならこだわるかもしれないから、気持ちは分からないでもない」
「どういう事ですか?」
見上げると、アレク殿下は顔を近付けてきて言う。
「エリナが可愛いから」
「なっ! からかわないで下さい!」
「からかってなんかない」
「からかっ……、んっ…」
その後の言葉はアレク殿下に唇をふさがれてしまい、言葉にならなかった。
結局は次の日の朝、早くに起きて、アレク殿下と改めて、クズーズ殿下の話をする事になったのだった。
タオルを持っておられたから受け取って、髪の毛を拭いてあげると、少しだけ照れくさそうな顔をして私を見てきたので、まだ言えていなかった言葉を伝える。
「おかえりなさいませ。それから、先程はありがとうございました」
「当然の事をしたまでだ」
濡れてしまったタオルを持って廊下に出ると、すぐにメイドがやって来て、タオルを受け取ってくれたので礼を言ってから、また部屋に戻ると、アレク殿下が私の手を引いて、ベッドの方に連れて行ってくれる。
「お話を聞きたいんですけれど…」
「わかってるよ。別に話はベッドの上でも出来るだろう?」
「出来ますけれど、眠ってしまいそうなんです」
「眠れないようにしてあげるから心配しなくていい」
にこりと笑ったアレク殿下がすごく意地悪だったので、軽く睨んでから答える。
「眠る時は眠りますから」
「そうだな。疲れ切って眠ってしまうんだよな」
「……っ! 意地悪な事を言わないで下さい!」
「意地悪な事は言っていないだろう?」
アレク殿下が私に甘いせいで、かなり私の性格も変わってきてしまっている。
昔は人にからかわれても、大きな反応をするタイプではなかった。
それなのに、アレク殿下の言葉についつい反応してしまう。
こんな事で動揺してしまう様じゃ、王太子妃として失格だと言われてしまいそうだから、しっかりしないといけないわ。
もちろん、アレク殿下もわきまえていらっしゃるから、人前でこんな意地悪な話はしないけれど…。
「あの、クズーズ殿下はどうやってここまで入ってこれたんですか?」
平静を装いながら尋ねると、アレク殿下は答えてくれる。
「父上と母上に会いに来たという言い訳をして中に入ったはいいが、どうやら兄上は腕の立つ護衛を雇ったみたいだ。城内に入ってからは要所要所にいた騎士がやられてる。兄上が歩いているのを見たというメイドに聞くと、神経質そうな顔をした男と歩いていたらしい。どうして、こんな所にいるのかと気になったので、つい顔を見ようとすると、男は兄上に話しかけて、彼女から顔を背けたようだった。俺が来た時にはそんな男は見当たらなかったから、兄上が目的の部屋の近くに来たところで、その男だけ先に出て行ったんだろう」
「あの…、城内の騎士達は命に別状はないんでしょうか?」
「まあな。だが、もう二度と城内の警備にはつけないだろう。気の毒だけどな」
アレク殿下は私の頭を優しく撫でた後、ベッドに座り、私を引き寄せると彼の太ももの上にのせて、お腹に両腕をまわして抱きしめる形を取ってから話を続ける。
「兄上はエイナ嬢の事で何か知っている様子だったな…」
「そんな感じでしたね…。まさか、クズーズ殿下がエイナを誘拐したわけじゃないですわよね?」
「最初に行方不明になった時には兄上は関わっていないと思うが、その後の事はわからないな。親衛隊の事件の被害女性の1人が怪しい動きをしていたから彼女が関わっている可能性はあるが、話を聞いても何も知らないと言いはるんだ」
「被害女性にあまり厳しい尋問みたいな事はしたくありませんし、エイナに関してそこまでする必要もないと思いますわ」
「ただ、兄上は切り札の様に言ってきていたがな」
アレク殿下はおろしている私の髪の毛の右側の一部を手に取り私の耳にかけると、あらわになった首筋に優しくキスをした。
ああ、このパターンは…。
「眠りたいか?」
「……少しくらいなら大丈夫です」
そう言いつつも、絶対に少しくらいにならない事はわかっている。
だから、話題を変える。
「クズーズ殿下はどうして私にこだわるんでしょうか…」
「俺が兄上の立場ならこだわるかもしれないから、気持ちは分からないでもない」
「どういう事ですか?」
見上げると、アレク殿下は顔を近付けてきて言う。
「エリナが可愛いから」
「なっ! からかわないで下さい!」
「からかってなんかない」
「からかっ……、んっ…」
その後の言葉はアレク殿下に唇をふさがれてしまい、言葉にならなかった。
結局は次の日の朝、早くに起きて、アレク殿下と改めて、クズーズ殿下の話をする事になったのだった。
29
お気に入りに追加
6,735
あなたにおすすめの小説
旦那様、離縁の申し出承りますわ
ブラウン
恋愛
「すまない、私はクララと生涯を共に生きていきたい。離縁してくれ」
大富豪 伯爵令嬢のケイトリン。
領地が災害に遭い、若くして侯爵当主なったロイドを幼少の頃より思いを寄せていたケイトリン。ロイド様を助けるため、性急な結婚を敢行。その為、旦那様は平民の女性に癒しを求めてしまった。この国はルメニエール信仰。一夫一妻。婚姻前の男女の行為禁止、婚姻中の不貞行為禁止の厳しい規律がある。旦那様は平民の女性と結婚したいがため、ケイトリンンに離縁を申し出てきた。
旦那様を愛しているがため、旦那様の領地のために、身を粉にして働いてきたケイトリン。
その後、階段から足を踏み外し、前世の記憶を思い出した私。
離縁に応じましょう!未練なし!どうぞ愛する方と結婚し末永くお幸せに!
*女性軽視の言葉が一部あります(すみません)
【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」
離婚する両親のどちらと暮らすか……娘が選んだのは夫の方だった。
しゃーりん
恋愛
夫の愛人に子供ができた。夫は私と離婚して愛人と再婚したいという。
私たち夫婦には娘が1人。
愛人との再婚に娘は邪魔になるかもしれないと思い、自分と一緒に連れ出すつもりだった。
だけど娘が選んだのは夫の方だった。
失意のまま実家に戻り、再婚した私が数年後に耳にしたのは、娘が冷遇されているのではないかという話。
事実ならば娘を引き取りたいと思い、元夫の家を訪れた。
再び娘が選ぶのは父か母か?というお話です。
婚約者が病弱な妹に恋をしたので、私は家を出ます。どうか、探さないでください。
待鳥園子
恋愛
婚約者が病弱な妹を見掛けて一目惚れし、私と婚約者を交換できないかと両親に聞いたらしい。
妹は清楚で可愛くて、しかも性格も良くて素直で可愛い。私が男でも、私よりもあの子が良いと、きっと思ってしまうはず。
……これは、二人は悪くない。仕方ないこと。
けど、二人の邪魔者になるくらいなら、私が家出します!
自覚のない純粋培養貴族令嬢が腹黒策士な護衛騎士に囚われて何があっても抜け出せないほどに溺愛される話。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
妹がいなくなった
アズやっこ
恋愛
妹が突然家から居なくなった。
メイドが慌ててバタバタと騒いでいる。
お父様とお母様の泣き声が聞こえる。
「うるさくて寝ていられないわ」
妹は我が家の宝。
お父様とお母様は妹しか見えない。ドレスも宝石も妹にだけ買い与える。
妹を探しに出掛けたけど…。見つかるかしら?
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました
ある辺境伯の後悔
だましだまし
恋愛
妻セディナを愛する辺境伯ルブラン・レイナーラ。
父親似だが目元が妻によく似た長女と
目元は自分譲りだが母親似の長男。
愛する妻と妻の容姿を受け継いだ可愛い子供たちに囲まれ彼は誰よりも幸せだと思っていた。
愛しい妻が次女を産んで亡くなるまでは…。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。