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エイナざまぁ編
第51話 エイナの悲鳴 (エイナside)
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馬車に乗せられてから数日後、私は、とある屋敷の前で馬車から降ろされた。
目の前には木造の小さな一軒家があって、突風に吹かれたら今にも倒壊してしまうんじゃないかと思うくらいにボロボロだった。
「お前は今日からここで住むんだ」
「……どういう事?」
「お前には、ある人の相手をしてもらう」
私を攫った男、ティービーというらしいのだけど、ティービーはにやりと笑って答えた後、私の腕を掴んで引きずる様にして家に向かって歩いていく。
「相手をしてもらうってどういう事なの!?」
「大丈夫だ。相手といっても女性だから貞操の危険はない」
ティービーはカラカラと笑った。
何がおかしいのかわからないわ。
女性相手に何をしたら良いのよ。
文句を言っても無駄だった。
抵抗もむなしく、私は見張りを付けられて、この家に軟禁状態になった。
新しい場所にやって来て2日後。
ティービーが私のいる家に訪ねてきた。
「客を連れてきたぞ。お前を探している奴らがいるせいで、バレないように彼女を連れてくるのに手間取った。エイナ、良かったな。お前は家族に探してもらってるみたいだぞ」
「家族って…、誰が私を探してくれているの?」
「お前の両親だけじゃなく、双子の姉も気にしているようだ。それにこの国の王家にも探されている。さすがにお前を見捨てるわけにはいかないんだろう」
両親はまだしも、私をこんな目に合わせたエリナまで私を探しているというの?
絶対にお礼なんて言わないから!
「あ、そうだ。お前の元婚約者も探しているみたいだぞ」
「元婚約者? アレク殿下の事…?」
「いや、クズーズ殿下? の方だよ」
「クズーズ殿下が…?」
何だか嫌な予感がした。
クズーズ殿下は私の事を今では良く思っていないはずだもの…。
そして次の日、私の元に一人の女性がやって来た。
どうしたら良いかわからないので、私はリビングのソファーに座ったままで彼女を迎えた。
見た事のある様な顔だったので、まじまじと見つめていると、女性は私を睨みながら聞いてくる。
「私の事を覚えていますか?」
「……見覚えはあるんだけど、誰だかわからないわ」
「そうでしょうね…」
若い女性は大きく息を吐いた後、自分の名前を名乗った。
その名前を聞いて思い出した。
私の親衛隊が顔に傷を付けた女性の一人だったから。
「ご、ごめんなさい。あなたの顔に傷がなかったからわからなくて…」
「エリナ様のお知り合いに傷を治せる方がいらしたので治していただいたんです」
「良かったわね…!」
笑顔で言うと、ナミという女性が叫んだ。
「良くなんかないわ! もちろん治していただいた事には感謝しているわ。だけど、それはエリナ様に対してであなたにではない!」
「私は何もしていないわ!」
やったのは親衛隊の人達で、私は何もしていないのに、どうして私が悪い事になるの!?
エリナが何か言ったの!?
「反省しているならまだしも、何もしていないと思う事が許せないのよ!」
女性はそう叫ぶと、後ろを振り返った。
すると、玄関の方から人相の悪い大柄な中年の男性が入ってきた。
手にはナイフが握られていて、私と目が合うとにやりと笑みを浮かべて、大股で近寄ってくる。
嘘でしょう?
まさか、私を殺すつもりなの!?
「た、た、助けて…! 殺さないで…!」
ソファーから立ち上がって懇願すると、ナミが笑った。
「殺しはしないわ。私と同じ目に合ってもらうだけよ。さっさとやってちょうだい!」
ナミがそう言うと、男は私の顎を掴んで言う。
「もったいないが仕事なんだ。その可愛い顔に傷をつけさせてもらう」
「え…?」
恐怖で体が凍りついたその時、頬に痛みが走った。
「いやあぁぁっ!」
私はどこで道を間違えてしまったの…?
次話で「エイナざまぁ編」はラストになり、番外編をはさみつつ「クズーズざまぁ編」に移ります。
目の前には木造の小さな一軒家があって、突風に吹かれたら今にも倒壊してしまうんじゃないかと思うくらいにボロボロだった。
「お前は今日からここで住むんだ」
「……どういう事?」
「お前には、ある人の相手をしてもらう」
私を攫った男、ティービーというらしいのだけど、ティービーはにやりと笑って答えた後、私の腕を掴んで引きずる様にして家に向かって歩いていく。
「相手をしてもらうってどういう事なの!?」
「大丈夫だ。相手といっても女性だから貞操の危険はない」
ティービーはカラカラと笑った。
何がおかしいのかわからないわ。
女性相手に何をしたら良いのよ。
文句を言っても無駄だった。
抵抗もむなしく、私は見張りを付けられて、この家に軟禁状態になった。
新しい場所にやって来て2日後。
ティービーが私のいる家に訪ねてきた。
「客を連れてきたぞ。お前を探している奴らがいるせいで、バレないように彼女を連れてくるのに手間取った。エイナ、良かったな。お前は家族に探してもらってるみたいだぞ」
「家族って…、誰が私を探してくれているの?」
「お前の両親だけじゃなく、双子の姉も気にしているようだ。それにこの国の王家にも探されている。さすがにお前を見捨てるわけにはいかないんだろう」
両親はまだしも、私をこんな目に合わせたエリナまで私を探しているというの?
絶対にお礼なんて言わないから!
「あ、そうだ。お前の元婚約者も探しているみたいだぞ」
「元婚約者? アレク殿下の事…?」
「いや、クズーズ殿下? の方だよ」
「クズーズ殿下が…?」
何だか嫌な予感がした。
クズーズ殿下は私の事を今では良く思っていないはずだもの…。
そして次の日、私の元に一人の女性がやって来た。
どうしたら良いかわからないので、私はリビングのソファーに座ったままで彼女を迎えた。
見た事のある様な顔だったので、まじまじと見つめていると、女性は私を睨みながら聞いてくる。
「私の事を覚えていますか?」
「……見覚えはあるんだけど、誰だかわからないわ」
「そうでしょうね…」
若い女性は大きく息を吐いた後、自分の名前を名乗った。
その名前を聞いて思い出した。
私の親衛隊が顔に傷を付けた女性の一人だったから。
「ご、ごめんなさい。あなたの顔に傷がなかったからわからなくて…」
「エリナ様のお知り合いに傷を治せる方がいらしたので治していただいたんです」
「良かったわね…!」
笑顔で言うと、ナミという女性が叫んだ。
「良くなんかないわ! もちろん治していただいた事には感謝しているわ。だけど、それはエリナ様に対してであなたにではない!」
「私は何もしていないわ!」
やったのは親衛隊の人達で、私は何もしていないのに、どうして私が悪い事になるの!?
エリナが何か言ったの!?
「反省しているならまだしも、何もしていないと思う事が許せないのよ!」
女性はそう叫ぶと、後ろを振り返った。
すると、玄関の方から人相の悪い大柄な中年の男性が入ってきた。
手にはナイフが握られていて、私と目が合うとにやりと笑みを浮かべて、大股で近寄ってくる。
嘘でしょう?
まさか、私を殺すつもりなの!?
「た、た、助けて…! 殺さないで…!」
ソファーから立ち上がって懇願すると、ナミが笑った。
「殺しはしないわ。私と同じ目に合ってもらうだけよ。さっさとやってちょうだい!」
ナミがそう言うと、男は私の顎を掴んで言う。
「もったいないが仕事なんだ。その可愛い顔に傷をつけさせてもらう」
「え…?」
恐怖で体が凍りついたその時、頬に痛みが走った。
「いやあぁぁっ!」
私はどこで道を間違えてしまったの…?
次話で「エイナざまぁ編」はラストになり、番外編をはさみつつ「クズーズざまぁ編」に移ります。
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