上 下
42 / 51
エイナざまぁ編

第48話 監禁部屋 1 (エイナside )

しおりを挟む
 気が付くとわたしは、冷たくて硬いベッドの上に寝かされていた。

 身を起こしてみると、私のいる場所は窓のない石造りの小さな部屋だった。

 窓がないからか天井には簡素なランタンがたくさん吊り下げられていた。

 ランタンのおかげで部屋の中は明るいので、状況を確認してみる事にする。

 部屋の中にはベッドと簡易トイレしかなくて、見た事はないけれど刑務所の個室はこんなところなのかもしれないと思った。
 体は拘束されているわけではないので、ゆっくりと鉄の扉に近付く。

 扉の取っ手をつかんで押したり引いたりしてみたけれど、鍵がかかっているようで扉は開かなかった。

 扉には小さなのぞき窓があって、背がそんなに高くない私だと背伸びして何とか向こうが見えるくらい。
 といっても、ほとんど見えなくて、部屋の外に廊下があるという事くらいしかわからなかった。

 一体、今の私はどういう状況なの!?

 記憶があるのは、あの気持ち悪い男と出会って、食事をしようと誘われたから、スキを見て逃げようと思って付いていって、レストランに入ったところまでは覚えている。

 もしかして、飲み物か食べ物に何か盛られたのかしら?

 毒じゃなくて良かったわ。
 でも、あの男の目的は一体何なの!?
 クララの兄だと言っていたけれど、クララってあのクララよね?
 彼女にお兄さんがいたなんて話を聞いた事がないわ!

 もしかして可愛い私に何か乱暴な事をしようとしているの?
 野蛮だわ!
 嫁入り前なのに傷をつけられてしまったらどうしよう!

 しばらくベッドの上に座って1人で考えていると、足音が近付いてきたので、ベッドから立ち上がって身構える。

 するとのぞき窓から、あの男が中を見ている事がわかった。

 気持ち悪くてしょうがないわ。
 本当は話しかけたくなんかないけれど、私をどうするつもりなのか確認しなくちゃいけないから聞いてみる。

「私をどうするつもりなの!?」

 声を掛けても、男は何も言わずに去っていこうとする。

 どういう事!?
 私はどうなるの!?

 不安にかられて扉に近寄って叫ぶ。

「待って! 何が目的なのかだけ教えてよ!」

 扉を叩いて少し待ったけれど答えは返ってこない。

 諦めてベッドに戻ろうとした時だった。

 足音が近付いてきて扉の前で止まった。
 そして、言葉が放たれた。

「お前をどうするかを決めるのは俺じゃない」
「それって、どういう事…?」
「さあな。本人達が来たら聞いてみればいい」

 そう答えた後、男はそれ以上は何も言わずに去っていった。

 そして、それからはかなり長い間閉じ込められていた。
 窓もないから今が朝なのか夜なのかもわからない。

 食事は扉についている食事用の小窓から出してもらえるけれど、お風呂も入れていないし、鏡もないから今の私がどんな顔をしているかもわからない。

 肌がボロボロだったりしたらどうしよう。

 こんな事なら逃げなければ良かった。
 順調にいっていたのに、どこで間違ったの!?

 エリナやシシリー様は何をしているのよ!
 どうして助けに来てくれないの!?
 
 ここから出たら、絶対に文句を言ってやるわ!

 そんな事を考えていたら、複数の足音が近付いてくるのがわかった。

 もしかして、助けが来たの!?

 明るい気持ちで、扉の方を見つめていると、ガチャガチャと音がして解錠された事がわかった。

 やったわ!
 やっと出られるのよ!
 誰が助けに来てくれたの?
 遅かったわねと文句を言いたいけれど、まずは褒めてあげないと!

 ガチャリという音がしてゆっくりと扉が開かれた。

 ベッドから立ち上がり、笑顔で相手を迎えようとしたけれど、入ってきた相手を見て、私の笑みは一瞬にして消えた。

 なぜなら、中に入ってきたのはボロボロの服を着た、まるで浮浪者かと思うくらい汚らしい老夫婦だったからだ。
 2人は私と目が合うと、同時に口を開いた。

「絶対に許さない」

 許さないって何なの!?
 というか、この人達は一体誰なの!?

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

旦那様、離縁の申し出承りますわ

ブラウン
恋愛
「すまない、私はクララと生涯を共に生きていきたい。離縁してくれ」 大富豪 伯爵令嬢のケイトリン。 領地が災害に遭い、若くして侯爵当主なったロイドを幼少の頃より思いを寄せていたケイトリン。ロイド様を助けるため、性急な結婚を敢行。その為、旦那様は平民の女性に癒しを求めてしまった。この国はルメニエール信仰。一夫一妻。婚姻前の男女の行為禁止、婚姻中の不貞行為禁止の厳しい規律がある。旦那様は平民の女性と結婚したいがため、ケイトリンンに離縁を申し出てきた。 旦那様を愛しているがため、旦那様の領地のために、身を粉にして働いてきたケイトリン。 その後、階段から足を踏み外し、前世の記憶を思い出した私。 離縁に応じましょう!未練なし!どうぞ愛する方と結婚し末永くお幸せに! *女性軽視の言葉が一部あります(すみません)

私が死んで満足ですか?

マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。 ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。 全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。 書籍化にともない本編を引き下げいたしました

最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません

abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。 後宮はいつでも女の戦いが絶えない。 安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。 「どうして、この人を愛していたのかしら?」 ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。 それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!? 「あの人に興味はありません。勝手になさい!」

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。

五月ふう
恋愛
 リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。 「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」  今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。 「そう……。」  マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。    明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。  リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。 「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」  ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。 「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」 「ちっ……」  ポールは顔をしかめて舌打ちをした。   「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」  ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。 だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。 二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。 「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

婚約者が病弱な妹に恋をしたので、私は家を出ます。どうか、探さないでください。

待鳥園子
恋愛
婚約者が病弱な妹を見掛けて一目惚れし、私と婚約者を交換できないかと両親に聞いたらしい。 妹は清楚で可愛くて、しかも性格も良くて素直で可愛い。私が男でも、私よりもあの子が良いと、きっと思ってしまうはず。 ……これは、二人は悪くない。仕方ないこと。 けど、二人の邪魔者になるくらいなら、私が家出します! 自覚のない純粋培養貴族令嬢が腹黒策士な護衛騎士に囚われて何があっても抜け出せないほどに溺愛される話。

余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました

結城芙由奈 
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】 私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。 2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます *「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています ※2023年8月 書籍化

彼女にも愛する人がいた

まるまる⭐️
恋愛
既に冷たくなった王妃を見つけたのは、彼女に食事を運んで来た侍女だった。 「宮廷医の見立てでは、王妃様の死因は餓死。然も彼が言うには、王妃様は亡くなってから既に2、3日は経過しているだろうとの事でした」 そう宰相から報告を受けた俺は、自分の耳を疑った。 餓死だと? この王宮で?  彼女は俺の従兄妹で隣国ジルハイムの王女だ。 俺の背中を嫌な汗が流れた。 では、亡くなってから今日まで、彼女がいない事に誰も気付きもしなかったと言うのか…? そんな馬鹿な…。信じられなかった。 だがそんな俺を他所に宰相は更に告げる。 「亡くなった王妃様は陛下の子を懐妊されておりました」と…。 彼女がこの国へ嫁いで来て2年。漸く子が出来た事をこんな形で知るなんて…。 俺はその報告に愕然とした。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。