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エイナざまぁ編
第44話 波乱のパーティー(エイナside)
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ダイニングルームから勝手に自分の部屋に帰った次の日、一晩寝て気分が良くなっていた私は、シシリー様の所へ行って、ここは大人の対応として昨日の事を謝っておいた。
私は悪くないけれど、勝手に帰ってしまった事はさすがに良くないわよね。
シシリー様は何か言いたげな顔をしていたけれど、謝罪は受け入れてくれた。
そして、この日から私も心を入れ替えたふりをして、メイドから恋人を奪うのは止めたの。
だって、他にやる事が出来たから。
そんな馬鹿な事をやっている場合じゃなくて、それよりもお金を貯めないといけない事に気が付いたの。
調べたら、国境を越えるには許可証がいるみたいなんだけれど、私の許可証はシシリー様が持っているらしいから、素直に返して下さいと言っても無駄だと思った。
だけど、私は家に帰りたいの。
お父様とお母様は私を喜んで迎え入れてくれるはずだから、国に帰ればなんとかなるわ!
昔みたいに幸せな生活が送れるはず。
その為にはお金が必要なの。
お金を渡せば密入国させてくれる人がいると知って、私はそのお金を貯める事にした。
ただ、それが今の私にしてみれば結構な額なのよね。
それに関しては、捕まったら大変な事になるから、色々と段取りする為に必要なお金だと思うからしょうがないと思う。
公爵家時代ではすぐに払えちゃう金額なのに、ここにやって来た時の私は無一文に近かったし、侍女のお給金だってそう高くない。
だから普通なら諦めてしまうはず。
でも、私は諦めないわ。
さすがのシシリー様だって、私がお金を貯めて逃げるだなんて、そこまで頭がまわらないはず。
だって、あの人は私には何もできないと思っているんだから。
私がいなくなって困る姿をこの目で見れないのは残念だけど、どうせ困っている事はわかるからそれで満足よ。
そんなある日、シシリー様から招待状をもらった。
「…これは?」
「我が家で開くパーティーなの。既婚者か婚約者、もしくは結婚予定の恋人同士のペアでしか参加できないパーティーなのだけれど、エイナはどうかしら? あなたには婚約者がいないから無理かしらね?」
「そ、それは…」
婚約者がいないという事が私の今一番の困りごとだった。
私くらいの年頃の女性の貴族は婚約者がいるし、私だって2年後までに結婚できなかったら、この国ではいきおくれ扱いされてしまう。
エリナに先を越されているだけでも悔しいのに、シシリー様にまで先を越されたら腹が立つわ。
私も早く婚約者を見つけなくちゃ。
ああ、といっても、ここから逃げ出すんじゃ、この国で婚約者を見つけても無駄ね。
それとも、一緒に逃げてくれる人を探せばいいのかしら?
「エイナ、聞いている?」
「……聞いてます!」
とにかく、仮の婚約者を見つければいいのよね?
それでパーティーに出席して、そこでより良い男性を選ぶのも良いかもしれないわ。
どうせ何もしなくても向こうから寄ってきてくれるから、パーティーはパトロンを見つけるのにはとても良いから出席しておかなくちゃ。
そうして、私はとりあえず、仮の婚約者を探す事にしたんだけど、それが全然上手くいかなかった。
休みの日を使って、目星をつけた貴族の男性の所にパートナーになってほしいとお願いしたけれど、全部断られてしまった。
こんな事は今までになかったから、本当にショックだった。
そして、パーティーの日になっても、結局、パートナーを見つける事は出来なかった。
でも、パーティーはこの家でやるんだから、受付は私の知り合いのはずだし、お願いしていれてもらおうと思ったら、受付の2人に断られた。
「申し訳ございません、エイナ様。この会場の中には男女ペアの方でないと入れない事になっています」
顔見知りの男性の使用人は申し訳無さそうな顔で私に言った。
「パートナーが見つからなかったんだからしょうがないじゃないの! どうして私が中に入れないの!? どうしてそんな意地悪するんですか!?」
「ち、違います! 今回の夜会は男女ペアの既婚者、未婚の場合は将来を誓いあった男女しか招待されていないのです!」
「私には招待状が来ています!」
「ですが、将来を誓いあった相手と出席をお願いしますと書かれていますよね?」
招待状を見せると、気の強そうなメイドがそう聞いてきた。
そんな事くらいわかってるわよ!
だけど、私は今日のパーティーに出席しなくちゃいけないの!
パーティーといえば私が主役になる場なんだから!
「そ、それはしょうがないじゃない! 私に見合う男性が近くにいないんだもの!」
「でしたら、本日は欠席されたらよろしいかと…」
「そんな! せっかくのパーティーなのよ!? 素敵な男性との出会いの場じゃないの!」
「ですから、このパーティーは出会いの場ではございません」
ああ、本当に話が通じないメイドね!
頭にきてしまって、メイドに詰め寄ると、今にも泣き出しそうな表情になった。
ちょっと!
そんな事くらいで泣かないでよ!
私が泣かせたみたいじゃないの!
これくらいで泣く方がおかしいのに!
「もう、そこで止めとけよ。それ以上騒ぐ様だったら騎士を呼ぶけど? 周りを見てみたらわかるだろ。受付が出来なくて皆、迷惑してるんだ。元公爵家だか何だか知らないが、元公爵家らしい立ち居振る舞いをしろよ」
「う、うるさいのよ!」
私の前に現れたアッシュは、いつもよりもとてもカッコ良かった。
正直、タイプだったから一瞬だけ胸が高鳴ったけれど、私に対する態度が酷すぎて頭にきた。
何か言い返そうとしたけれど、ふと頭に思い浮かんだ事があった。
あ、そうだわ。
アッシュにパートナーになってもらえばいいんだわ!
「じゃあ、あなたがパートナーになってよ! 私と結婚させてあげるわ!」
「いらねぇ…」
アッシュがなぜか嫌そうな顔になった。
おかしいでしょう?
私と結婚できるなんて光栄な事なのよ!?
それにアッシュは魔道士っていう、魔法の存在する世界でも数少ない職業の人間らしいし、特別な私の相手にはぴったりだわ。
何より、彼は転移魔法が使えると聞いた。
なら、彼と結婚すれば、苦労せずにお父様達の元に帰れるんじゃない!?
なんて思ったのに…!
アッシュって本当に女性を見る目がないわね!
「どうしてよ!? この私と結婚できるのよ!?」
「お前と結婚して何のメリットがあんの? 好きでも何でもないのに」
「どうして、あなたは私の事を好きにならないの!? それに、おかしいじゃない! 皆、私の事は好きだけれど、パーティーには一緒に出席できないって!」
「普通の貴族はそうだろうな」
アッシュは小さく息を吐いてから、私を蔑んだ目で見て続ける。
「男性使用人の多くは貴族じゃないし、貴族だったとしても、お前に恋に落ちてるのはせいぜい子爵家までだ。伯爵家以上となると、年頃の人間には婚約者、もしくは妻がいるから、他の女性を選ぼうものなら大変な事になる」
「私だって伯爵令嬢なのよ!?」
「他国のだろ? この国ではあまり意味がない。となると、賢い人間は顔だけしか能がない女性を婚約者や妻に選ぶはずがない。お前は一生懸命、この国の貴族にアピールしていたみたいだが、そんな事をしなくても最初から諦めるべきだったんだよ」
そんな…!
どうしてよ、おかしいじゃない!
今まではこんな事にはならなかった。
たとえ、私の評判が悪くても、私の可愛さで何とかなっていたのに…。
「何の騒ぎかしら?」
今一番聞きたくなかった声が聞こえて振り返ると、そこにはシシリー様がセルディス殿下と一緒に立っていた。
アッシュにはリリアナ様がいる。
周りも男女ペアばかり。
どうして、私がこんな惨めな気持ちにならないといけないのよ!?
私は悪くないけれど、勝手に帰ってしまった事はさすがに良くないわよね。
シシリー様は何か言いたげな顔をしていたけれど、謝罪は受け入れてくれた。
そして、この日から私も心を入れ替えたふりをして、メイドから恋人を奪うのは止めたの。
だって、他にやる事が出来たから。
そんな馬鹿な事をやっている場合じゃなくて、それよりもお金を貯めないといけない事に気が付いたの。
調べたら、国境を越えるには許可証がいるみたいなんだけれど、私の許可証はシシリー様が持っているらしいから、素直に返して下さいと言っても無駄だと思った。
だけど、私は家に帰りたいの。
お父様とお母様は私を喜んで迎え入れてくれるはずだから、国に帰ればなんとかなるわ!
昔みたいに幸せな生活が送れるはず。
その為にはお金が必要なの。
お金を渡せば密入国させてくれる人がいると知って、私はそのお金を貯める事にした。
ただ、それが今の私にしてみれば結構な額なのよね。
それに関しては、捕まったら大変な事になるから、色々と段取りする為に必要なお金だと思うからしょうがないと思う。
公爵家時代ではすぐに払えちゃう金額なのに、ここにやって来た時の私は無一文に近かったし、侍女のお給金だってそう高くない。
だから普通なら諦めてしまうはず。
でも、私は諦めないわ。
さすがのシシリー様だって、私がお金を貯めて逃げるだなんて、そこまで頭がまわらないはず。
だって、あの人は私には何もできないと思っているんだから。
私がいなくなって困る姿をこの目で見れないのは残念だけど、どうせ困っている事はわかるからそれで満足よ。
そんなある日、シシリー様から招待状をもらった。
「…これは?」
「我が家で開くパーティーなの。既婚者か婚約者、もしくは結婚予定の恋人同士のペアでしか参加できないパーティーなのだけれど、エイナはどうかしら? あなたには婚約者がいないから無理かしらね?」
「そ、それは…」
婚約者がいないという事が私の今一番の困りごとだった。
私くらいの年頃の女性の貴族は婚約者がいるし、私だって2年後までに結婚できなかったら、この国ではいきおくれ扱いされてしまう。
エリナに先を越されているだけでも悔しいのに、シシリー様にまで先を越されたら腹が立つわ。
私も早く婚約者を見つけなくちゃ。
ああ、といっても、ここから逃げ出すんじゃ、この国で婚約者を見つけても無駄ね。
それとも、一緒に逃げてくれる人を探せばいいのかしら?
「エイナ、聞いている?」
「……聞いてます!」
とにかく、仮の婚約者を見つければいいのよね?
それでパーティーに出席して、そこでより良い男性を選ぶのも良いかもしれないわ。
どうせ何もしなくても向こうから寄ってきてくれるから、パーティーはパトロンを見つけるのにはとても良いから出席しておかなくちゃ。
そうして、私はとりあえず、仮の婚約者を探す事にしたんだけど、それが全然上手くいかなかった。
休みの日を使って、目星をつけた貴族の男性の所にパートナーになってほしいとお願いしたけれど、全部断られてしまった。
こんな事は今までになかったから、本当にショックだった。
そして、パーティーの日になっても、結局、パートナーを見つける事は出来なかった。
でも、パーティーはこの家でやるんだから、受付は私の知り合いのはずだし、お願いしていれてもらおうと思ったら、受付の2人に断られた。
「申し訳ございません、エイナ様。この会場の中には男女ペアの方でないと入れない事になっています」
顔見知りの男性の使用人は申し訳無さそうな顔で私に言った。
「パートナーが見つからなかったんだからしょうがないじゃないの! どうして私が中に入れないの!? どうしてそんな意地悪するんですか!?」
「ち、違います! 今回の夜会は男女ペアの既婚者、未婚の場合は将来を誓いあった男女しか招待されていないのです!」
「私には招待状が来ています!」
「ですが、将来を誓いあった相手と出席をお願いしますと書かれていますよね?」
招待状を見せると、気の強そうなメイドがそう聞いてきた。
そんな事くらいわかってるわよ!
だけど、私は今日のパーティーに出席しなくちゃいけないの!
パーティーといえば私が主役になる場なんだから!
「そ、それはしょうがないじゃない! 私に見合う男性が近くにいないんだもの!」
「でしたら、本日は欠席されたらよろしいかと…」
「そんな! せっかくのパーティーなのよ!? 素敵な男性との出会いの場じゃないの!」
「ですから、このパーティーは出会いの場ではございません」
ああ、本当に話が通じないメイドね!
頭にきてしまって、メイドに詰め寄ると、今にも泣き出しそうな表情になった。
ちょっと!
そんな事くらいで泣かないでよ!
私が泣かせたみたいじゃないの!
これくらいで泣く方がおかしいのに!
「もう、そこで止めとけよ。それ以上騒ぐ様だったら騎士を呼ぶけど? 周りを見てみたらわかるだろ。受付が出来なくて皆、迷惑してるんだ。元公爵家だか何だか知らないが、元公爵家らしい立ち居振る舞いをしろよ」
「う、うるさいのよ!」
私の前に現れたアッシュは、いつもよりもとてもカッコ良かった。
正直、タイプだったから一瞬だけ胸が高鳴ったけれど、私に対する態度が酷すぎて頭にきた。
何か言い返そうとしたけれど、ふと頭に思い浮かんだ事があった。
あ、そうだわ。
アッシュにパートナーになってもらえばいいんだわ!
「じゃあ、あなたがパートナーになってよ! 私と結婚させてあげるわ!」
「いらねぇ…」
アッシュがなぜか嫌そうな顔になった。
おかしいでしょう?
私と結婚できるなんて光栄な事なのよ!?
それにアッシュは魔道士っていう、魔法の存在する世界でも数少ない職業の人間らしいし、特別な私の相手にはぴったりだわ。
何より、彼は転移魔法が使えると聞いた。
なら、彼と結婚すれば、苦労せずにお父様達の元に帰れるんじゃない!?
なんて思ったのに…!
アッシュって本当に女性を見る目がないわね!
「どうしてよ!? この私と結婚できるのよ!?」
「お前と結婚して何のメリットがあんの? 好きでも何でもないのに」
「どうして、あなたは私の事を好きにならないの!? それに、おかしいじゃない! 皆、私の事は好きだけれど、パーティーには一緒に出席できないって!」
「普通の貴族はそうだろうな」
アッシュは小さく息を吐いてから、私を蔑んだ目で見て続ける。
「男性使用人の多くは貴族じゃないし、貴族だったとしても、お前に恋に落ちてるのはせいぜい子爵家までだ。伯爵家以上となると、年頃の人間には婚約者、もしくは妻がいるから、他の女性を選ぼうものなら大変な事になる」
「私だって伯爵令嬢なのよ!?」
「他国のだろ? この国ではあまり意味がない。となると、賢い人間は顔だけしか能がない女性を婚約者や妻に選ぶはずがない。お前は一生懸命、この国の貴族にアピールしていたみたいだが、そんな事をしなくても最初から諦めるべきだったんだよ」
そんな…!
どうしてよ、おかしいじゃない!
今まではこんな事にはならなかった。
たとえ、私の評判が悪くても、私の可愛さで何とかなっていたのに…。
「何の騒ぎかしら?」
今一番聞きたくなかった声が聞こえて振り返ると、そこにはシシリー様がセルディス殿下と一緒に立っていた。
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