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ifストーリー(クズーズの王位継承権が剥奪された場合)
第35話 隣国の令嬢と王女の挑発
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「し、失礼じゃないですか! どうして、そんな事を言われなきゃいけないんですか!」
我に返ったエイナが叫ぶと、シシリー様はわざとらしく首を大きく傾げる。
「失礼だなんて、あなたに言われたくありませんわ。私は私の婚約者に色目を使う常識のない女性に苦情を申し上げたいだけですの」
そう言ってから、シシリー様はくるりとこちらに背を向けて、クズーズ殿下とアレク殿下に話しかける。
「申し訳ございませんが、言いたい事をエイナ様に言わせていただいても? エイナ様はクズーズ殿下の婚約者ですわよね? 気分を害さず、よほどの発言でなければ汚い言葉を発しましてもお許しいただきたいのですが」
「ああ、それはかまわない。悪い事をしたのはエイナの方だからな」
「寛大なお言葉をありがとうございます」
クズーズ殿下があっさりと認めたので、シシリー様は礼を言った後、アレク殿下の方に目を向ける。
彼が頷いたのを確認してから、シシリー様はエイナに向き直った。
今からどんな事が起こるか予想がついたので、気にはなるけれど、ミシャ様に声を掛ける。
子供に聞かせて良い話とは思えないわ。
「ミシャ様、エリナと一緒に向こうへ行きましょうか」
「駄目よ、エリナ! エリナも言いたい事はちゃんと言わないと!」
「ミシャ様…」
言いたい事は言っているんですが聞いてもらえないんです。
そう伝えたかったけれど、言い訳にしかすぎない気もしてセルディス殿下の方を見ると首を縦に振ってくれて、ミシャ様に声を掛けた。
「ミシャ、こっちへおいで。エリナ嬢は今は忙しいんだ」
「わかりましたわ! ですけど、いざとなったら、わたしはエリナを守らないといけないから近くにいます! エリナ、心配しないでね。わたしが付いているから」
「ありがとうございます、ミシャ様」
本当ならミシャ様にエイナとの言い争いなんて見てほしくないんだけど、どこかへ行く気はなさそうね…。
「頑張って!」
そう言って、ミシャ様は私の左手をぎゅっと握ったあと、セルディス殿下の方に走っていく。
ミシャ様がセルディス殿下の所へ戻ったところで、シシリー様が口を開いた。
「ところでエイナ様はご自身のお顔が自慢だとお聞きしましたわ」
「そうですけど?」
エイナはムッとした表情を隠す事なく頷く。
すると、シシリー様が笑顔で言った。
「エリナ様の方が私にはお美しく見えますけど?」
「……なんですって!?」
「好みの問題だと思いますの」
「はあ!?」
「あなたの事をこの世で一番美しいと仰る方がいてもおかしくないと思います。ですが、もう一度言いますわ。好みの問題です。私にはエリナ様の方が美しく見えますし、何より、エイナ様は心の内側のものが外面に漏れていらっしゃる時がありますわ? ほら、今のように?」
くすくすとシシリー様は笑ってから、私の方を見る。
「エリナ様は自分よりもエイナ様の方が可愛い、美しいと思われるのですか?」
「そ、それは、そうだと思います。実際に私よりもエイナの方が可愛いですから」
「では、エイナ様よりも美しかったり可愛かったりする人がこの世にはいないと思われます?」
「いいえ。比べることは失礼かもしれませんが、シシリー様とエイナでしたらシシリー様の方がお美しいと思います」
「あら、嬉しい! でも、私は自分の事よりもエリナ様の方がお美しいと思いますから、ある意味、相思相愛ですわね」
シシリー様はそう言って私の手を取って続ける。
「物心ついてくれば善悪の区別はつくはずですわ。エリナ様は常識を知っておられるのですから、同じように育ったエイナ様だって常識を知っていなければならないのに、なぜなんでしょうか?」
「先程から失礼ではありませんか!? 私にだって常識はあります!」
怒りで打ち震えていたエイナが叫ぶと、シシリー様は私の手を離し、エイナの方に向き直る。
「これは失礼いたしました。では、セルディス殿下に婚約者がいるとわかっていて色目を使うのは、あなたの中では常識だという事ですわね?」
「そ、それは、常識というか、しょうがない事だと思いますわ」
「しょうがない?」
「ええ。素敵な女性に男性が声を掛ける様に、素敵な男性に女性が声を掛けても良いと思います」
自信満々に答えたエイナに私は眉をひそめたけれど、シシリー様は笑い始めた。
「ふふふっ! ごめんなさい! まさか、そんな事を自信満々に答えるだなんて思っていなかったから」
「何がおかしいんですか!」
声を荒げるエイナに対して、シシリー様は余裕の表情で答える。
「そうですわね。仰るように素敵な女性に男性が声をかけるのはおかしい事ではないですわ。でも、それは相手や自分に婚約者なり恋人がいない場合に限られるのでは? 決まった相手がいるとわかっている状態で堂々と声を掛けるものではないのではないと思いますけれど?」
「それは! 外見が優れた人の場合はしょうがないと思います!」
「外見が優れていれば浮気や不倫をしても良いと?」
「貴族は愛人を作っています!」
「あら、あなたは愛人のポジションにおさまるのが目的の人なんですの? では、婚約者であるクズーズ殿下には他の女性がいなければなりませんのね…。お気の毒に」
明らかにシシリー様はエイナを馬鹿にしている。
そして、エイナは頭に血が上っているからか、それが挑発行為だという事もわかっていない。
「クズーズ殿下は元々は私の姉の婚約者なんです! 姉が可哀想ですから返そうと思っていたんです!」
「いらないわ。私にはアレク殿下がいるもの」
言葉を返すつもりはなかったのに、口から咄嗟に言葉が出てしまい、慌てて口をおさえると、シシリー様は笑顔で私を見た。
「エリナ様、私にしてみればそれが当たり前ですわ」
「そう、ですわよね」
少し恥ずかしい気もしたけれど、シシリー様に背中をおされて、エイナに向かって口を開く。
「私はあなたの事を可愛いとは思っているけれど、全てに劣っているとは思わない。私自身の性格だって良いわけではないけど、あなたのその性格よりかはマシだと思ってるわ。それに、その事にアレク殿下も気付いて下さってる」
「……そうだな。気付いているというよりかは君が好きだという方が正しいんだが」
アレク殿下が話しながら私に近付いてきて言った。
「あら! 愛の告白でしょうか?」
私の言葉に対してのアレク殿下の発言にシシリー様が目を輝かせた。
「そ、そんなんじゃありません!」
私が慌てて否定すると、アレク殿下が私の耳元に口を持ってきて言う。
「そのつもりだったが、今の発言は聞かなかった事にしてくれ。やはり、2人きりの時に言いたいからな」
「アレク殿下!?」
驚いて振り返ると、整った顔がすぐ近くにあって焦ってしまう。
「仲良しで羨ましいよ」
セルディス殿下は私達を見て微笑んだ後、ミシャ様の手を引き、シシリー様の横に立って言う。
「私もシシリーにそろそろかまってほしいんだけど? さっきまでエリナ嬢と仲良くしてたよね」
「セルディス殿下、お気持ちは嬉しいのですけれど、私はエリナ様と仲良くなりたいんですの。女性の友情に男性は入ってこないで下さいませ?」
「厳しいな」
「そうよ、お兄様! エリナとシシリーとミシャで仲良くするの! 男の人がレディーだけの話を聞いては駄目よ! 申し訳ございませんがアレク殿下、エリナ様をお借りしても?」
ミシャ様はアレク殿下には敬意を払っているのか、深々と頭を下げてお願いした。
その姿がすごく可愛くて、自然と頬がゆるむ。
それはアレク殿下も同じだった。
アレク殿下は微笑むと頷く。
「エリナも私よりもミシャ様にお相手してほしいようですから、もちろんです」
「ありがとうございます、アレク殿下」
ミシャ様はカーテシーをした後、セルディス殿下のところから私のところへやってくる。
「さっきまでお話を聞いていたけれど、エリナとエイナ様は本当に似ておられないんですね」
「……ミシャ様?」
何を言おうとされているのかわからなくて首を傾げると、ミシャ様は私にはにこっと微笑んだ後、口を挟むタイミングを見計らっていたエイナの方に振り返って言った。
「エイナ様って顔は可愛らしいけれど、性格はブスですよね」
その言葉を聞いたエイナだけでなく、周りにいた人間が動きを止めた。
それは皆が思っていたけれど口に出しちゃいけないと思って口にしていなかった事だわ。
だって、おとなげないと思ってしまうんだもの…!
でも、ミシャ様は子供だし良いのかしら?
皆が驚いて言葉を発せずにいると、ミシャ様は続ける。
「あなたみたいな方が妹だとエリナが可哀想です。ですから、エリナと縁を切ってあげてくれませんか?」
「な、なんですって!?」
エイナが憤慨して聞き返したと同時に、シシリー様がまたくすくすと笑い始めたため、エイナは怒りの矛先をミシャ様からシシリー様に変える。
「笑うところじゃないんですけど!?」
「ごめんなさい。ミシャ様はまだ子供ですから、大人なエイナ様は寛大なお心でお許しくださいますよね?」
「そ、それは…っ」
本当は許したくなさそうだけれど、周りの目もあるからか、エイナは周りを見回してから笑顔を作って頷く。
「もちろんです。ミシャ様は何か誤解をされているんでしょうから」
「誤解なんてしてないもん! エイナ様が意地悪な事知ってるもん!」
ミシャ様は私の手をぎゅうっと握って、エイナの方にべーっと舌を出した。
「私は意地悪なんかじゃないですよ」
笑顔を作ってエイナがミシャ様の頭を撫でようとすると、ミシャ様が空いている方の手でエイナの手をはらった。
「触らないで! あなたに触られたくない!」
「何よ! 子供のくせに生意気な!」
エイナが我を忘れてしまったのか、ミシャ様に向かって叫んだ。
エイナが怒りに任せて手を出しては大変なので、しゃがんでミシャ様を守る様に抱きしめて私が言い返す。
「いいかげんにして! ミシャ様の言う通りよ! あなたは顔は可愛いのかもしれないけれど、性格は不細工よ!」
「……エリナ、あなた、今、私に向かって不細工って言ったの…?」
「そうよ!」
「私が不細工だなんて、なんて酷い事を…!」
「間違っていないと思いますわよ?」
エイナの言葉に答えたのはシシリー様だった。
我に返ったエイナが叫ぶと、シシリー様はわざとらしく首を大きく傾げる。
「失礼だなんて、あなたに言われたくありませんわ。私は私の婚約者に色目を使う常識のない女性に苦情を申し上げたいだけですの」
そう言ってから、シシリー様はくるりとこちらに背を向けて、クズーズ殿下とアレク殿下に話しかける。
「申し訳ございませんが、言いたい事をエイナ様に言わせていただいても? エイナ様はクズーズ殿下の婚約者ですわよね? 気分を害さず、よほどの発言でなければ汚い言葉を発しましてもお許しいただきたいのですが」
「ああ、それはかまわない。悪い事をしたのはエイナの方だからな」
「寛大なお言葉をありがとうございます」
クズーズ殿下があっさりと認めたので、シシリー様は礼を言った後、アレク殿下の方に目を向ける。
彼が頷いたのを確認してから、シシリー様はエイナに向き直った。
今からどんな事が起こるか予想がついたので、気にはなるけれど、ミシャ様に声を掛ける。
子供に聞かせて良い話とは思えないわ。
「ミシャ様、エリナと一緒に向こうへ行きましょうか」
「駄目よ、エリナ! エリナも言いたい事はちゃんと言わないと!」
「ミシャ様…」
言いたい事は言っているんですが聞いてもらえないんです。
そう伝えたかったけれど、言い訳にしかすぎない気もしてセルディス殿下の方を見ると首を縦に振ってくれて、ミシャ様に声を掛けた。
「ミシャ、こっちへおいで。エリナ嬢は今は忙しいんだ」
「わかりましたわ! ですけど、いざとなったら、わたしはエリナを守らないといけないから近くにいます! エリナ、心配しないでね。わたしが付いているから」
「ありがとうございます、ミシャ様」
本当ならミシャ様にエイナとの言い争いなんて見てほしくないんだけど、どこかへ行く気はなさそうね…。
「頑張って!」
そう言って、ミシャ様は私の左手をぎゅっと握ったあと、セルディス殿下の方に走っていく。
ミシャ様がセルディス殿下の所へ戻ったところで、シシリー様が口を開いた。
「ところでエイナ様はご自身のお顔が自慢だとお聞きしましたわ」
「そうですけど?」
エイナはムッとした表情を隠す事なく頷く。
すると、シシリー様が笑顔で言った。
「エリナ様の方が私にはお美しく見えますけど?」
「……なんですって!?」
「好みの問題だと思いますの」
「はあ!?」
「あなたの事をこの世で一番美しいと仰る方がいてもおかしくないと思います。ですが、もう一度言いますわ。好みの問題です。私にはエリナ様の方が美しく見えますし、何より、エイナ様は心の内側のものが外面に漏れていらっしゃる時がありますわ? ほら、今のように?」
くすくすとシシリー様は笑ってから、私の方を見る。
「エリナ様は自分よりもエイナ様の方が可愛い、美しいと思われるのですか?」
「そ、それは、そうだと思います。実際に私よりもエイナの方が可愛いですから」
「では、エイナ様よりも美しかったり可愛かったりする人がこの世にはいないと思われます?」
「いいえ。比べることは失礼かもしれませんが、シシリー様とエイナでしたらシシリー様の方がお美しいと思います」
「あら、嬉しい! でも、私は自分の事よりもエリナ様の方がお美しいと思いますから、ある意味、相思相愛ですわね」
シシリー様はそう言って私の手を取って続ける。
「物心ついてくれば善悪の区別はつくはずですわ。エリナ様は常識を知っておられるのですから、同じように育ったエイナ様だって常識を知っていなければならないのに、なぜなんでしょうか?」
「先程から失礼ではありませんか!? 私にだって常識はあります!」
怒りで打ち震えていたエイナが叫ぶと、シシリー様は私の手を離し、エイナの方に向き直る。
「これは失礼いたしました。では、セルディス殿下に婚約者がいるとわかっていて色目を使うのは、あなたの中では常識だという事ですわね?」
「そ、それは、常識というか、しょうがない事だと思いますわ」
「しょうがない?」
「ええ。素敵な女性に男性が声を掛ける様に、素敵な男性に女性が声を掛けても良いと思います」
自信満々に答えたエイナに私は眉をひそめたけれど、シシリー様は笑い始めた。
「ふふふっ! ごめんなさい! まさか、そんな事を自信満々に答えるだなんて思っていなかったから」
「何がおかしいんですか!」
声を荒げるエイナに対して、シシリー様は余裕の表情で答える。
「そうですわね。仰るように素敵な女性に男性が声をかけるのはおかしい事ではないですわ。でも、それは相手や自分に婚約者なり恋人がいない場合に限られるのでは? 決まった相手がいるとわかっている状態で堂々と声を掛けるものではないのではないと思いますけれど?」
「それは! 外見が優れた人の場合はしょうがないと思います!」
「外見が優れていれば浮気や不倫をしても良いと?」
「貴族は愛人を作っています!」
「あら、あなたは愛人のポジションにおさまるのが目的の人なんですの? では、婚約者であるクズーズ殿下には他の女性がいなければなりませんのね…。お気の毒に」
明らかにシシリー様はエイナを馬鹿にしている。
そして、エイナは頭に血が上っているからか、それが挑発行為だという事もわかっていない。
「クズーズ殿下は元々は私の姉の婚約者なんです! 姉が可哀想ですから返そうと思っていたんです!」
「いらないわ。私にはアレク殿下がいるもの」
言葉を返すつもりはなかったのに、口から咄嗟に言葉が出てしまい、慌てて口をおさえると、シシリー様は笑顔で私を見た。
「エリナ様、私にしてみればそれが当たり前ですわ」
「そう、ですわよね」
少し恥ずかしい気もしたけれど、シシリー様に背中をおされて、エイナに向かって口を開く。
「私はあなたの事を可愛いとは思っているけれど、全てに劣っているとは思わない。私自身の性格だって良いわけではないけど、あなたのその性格よりかはマシだと思ってるわ。それに、その事にアレク殿下も気付いて下さってる」
「……そうだな。気付いているというよりかは君が好きだという方が正しいんだが」
アレク殿下が話しながら私に近付いてきて言った。
「あら! 愛の告白でしょうか?」
私の言葉に対してのアレク殿下の発言にシシリー様が目を輝かせた。
「そ、そんなんじゃありません!」
私が慌てて否定すると、アレク殿下が私の耳元に口を持ってきて言う。
「そのつもりだったが、今の発言は聞かなかった事にしてくれ。やはり、2人きりの時に言いたいからな」
「アレク殿下!?」
驚いて振り返ると、整った顔がすぐ近くにあって焦ってしまう。
「仲良しで羨ましいよ」
セルディス殿下は私達を見て微笑んだ後、ミシャ様の手を引き、シシリー様の横に立って言う。
「私もシシリーにそろそろかまってほしいんだけど? さっきまでエリナ嬢と仲良くしてたよね」
「セルディス殿下、お気持ちは嬉しいのですけれど、私はエリナ様と仲良くなりたいんですの。女性の友情に男性は入ってこないで下さいませ?」
「厳しいな」
「そうよ、お兄様! エリナとシシリーとミシャで仲良くするの! 男の人がレディーだけの話を聞いては駄目よ! 申し訳ございませんがアレク殿下、エリナ様をお借りしても?」
ミシャ様はアレク殿下には敬意を払っているのか、深々と頭を下げてお願いした。
その姿がすごく可愛くて、自然と頬がゆるむ。
それはアレク殿下も同じだった。
アレク殿下は微笑むと頷く。
「エリナも私よりもミシャ様にお相手してほしいようですから、もちろんです」
「ありがとうございます、アレク殿下」
ミシャ様はカーテシーをした後、セルディス殿下のところから私のところへやってくる。
「さっきまでお話を聞いていたけれど、エリナとエイナ様は本当に似ておられないんですね」
「……ミシャ様?」
何を言おうとされているのかわからなくて首を傾げると、ミシャ様は私にはにこっと微笑んだ後、口を挟むタイミングを見計らっていたエイナの方に振り返って言った。
「エイナ様って顔は可愛らしいけれど、性格はブスですよね」
その言葉を聞いたエイナだけでなく、周りにいた人間が動きを止めた。
それは皆が思っていたけれど口に出しちゃいけないと思って口にしていなかった事だわ。
だって、おとなげないと思ってしまうんだもの…!
でも、ミシャ様は子供だし良いのかしら?
皆が驚いて言葉を発せずにいると、ミシャ様は続ける。
「あなたみたいな方が妹だとエリナが可哀想です。ですから、エリナと縁を切ってあげてくれませんか?」
「な、なんですって!?」
エイナが憤慨して聞き返したと同時に、シシリー様がまたくすくすと笑い始めたため、エイナは怒りの矛先をミシャ様からシシリー様に変える。
「笑うところじゃないんですけど!?」
「ごめんなさい。ミシャ様はまだ子供ですから、大人なエイナ様は寛大なお心でお許しくださいますよね?」
「そ、それは…っ」
本当は許したくなさそうだけれど、周りの目もあるからか、エイナは周りを見回してから笑顔を作って頷く。
「もちろんです。ミシャ様は何か誤解をされているんでしょうから」
「誤解なんてしてないもん! エイナ様が意地悪な事知ってるもん!」
ミシャ様は私の手をぎゅうっと握って、エイナの方にべーっと舌を出した。
「私は意地悪なんかじゃないですよ」
笑顔を作ってエイナがミシャ様の頭を撫でようとすると、ミシャ様が空いている方の手でエイナの手をはらった。
「触らないで! あなたに触られたくない!」
「何よ! 子供のくせに生意気な!」
エイナが我を忘れてしまったのか、ミシャ様に向かって叫んだ。
エイナが怒りに任せて手を出しては大変なので、しゃがんでミシャ様を守る様に抱きしめて私が言い返す。
「いいかげんにして! ミシャ様の言う通りよ! あなたは顔は可愛いのかもしれないけれど、性格は不細工よ!」
「……エリナ、あなた、今、私に向かって不細工って言ったの…?」
「そうよ!」
「私が不細工だなんて、なんて酷い事を…!」
「間違っていないと思いますわよ?」
エイナの言葉に答えたのはシシリー様だった。
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