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ifストーリー(クズーズの王位継承権が剥奪された場合)
第34話 心強い味方
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セルディス殿下がエイナを呼ぶことに関して、アレク殿下達は良い顔をしていなかったみたいだけれど、主役である彼が望むのであればしょうがないという事で国王陛下は許可をされた。
そんな事をしたら、エイナが調子にのるだけだと思ったけれど、エイナにはセルディス殿下の希望ではなく、クズーズ殿下の婚約者として招待されたという形で出席させる事になった。
ここ最近、屋敷から出る事ができなかったエイナはそれはもう喜んだ。
「どうしよう! どんな服を着ていったらいいの!? セルディス殿下から一緒に国に帰ってくれだなんて言われたらどうしたらいいの!?」
きゃーっと叫びながら、エイナは両頬を押さえる。
どうしてそんな考えが思い付くのか、私にはさっぱりわからないわ。
「エイナ、セルディス殿下には婚約者がいらっしゃると言ったでしょう? 殿下を誘惑しようだなんて馬鹿な事は考えないでちょうだい」
「もう、エリナったら私に嫉妬するのはやめてくれない?」
「どうしてそんな考えになるのか私には全くわからないわ。用がないなら帰って」
エイナがわざわざ私の部屋まで訪ねてきたので、中に入れずに扉の前で冷たくあしらうと、エイナは怒り始めた。
「何よ! 自分はアレク殿下と上手くいっているからって余裕よね! でも、クズーズ殿下だって頑張ってるんだからね!」
「クズーズ殿下が頑張ってる?」
「そうよ! エリナと結婚するためにね!」
私と結婚するため?
一体、何を考えてるの!?
腹が立ったけれど落ち着いて答える。
「そんなの私の知った事ではないわ。私はアレク殿下の婚約者なのよ? クズーズ殿下との結婚なんてありえないから」
「可哀想なクズーズ殿下! エリナの為に頑張ってるのに!」
「そう思うならあなたがクズーズ殿下に尽くしてあげなさいよ!」
睨みつけて言うと、エイナは笑う。
「やだぁ! そんなに怒らないでよ! これだから顔が可愛くない人間は嫌なのよ。もしかして、ミシャ様が私に懐くかもしれないから、それが嫌なの?」
「顔が可愛い、可愛くないは個人の好みよ。言っておくけど、昔のあなたにはまだ可愛らしさを感じていたけれど、今のあなたからは一切感じられないわ。心の醜さが全面に出ているわよ」
「なんですって!?」
「ミシャ様は繊細な人よ。あなたの本性を見抜くはず。セルディス殿下に嫌われたくないのなら大人しくしてなさい」
この事については嘘ではない。
子供だからこそ敏感に感じ取る部分もあるだろうし、ミシャ様はセルディス殿下と私の様子から、エイナが良い人間ではない事を感じ取っているはず。
ミシャ様が何をされるつもりなのかはわからないけれど…。
「私の可愛さに子供の方が黙っていられないと思うけど、お父様にも大人しくしてろと言われているし、大人しくするつもりよ! だけど、話しかけられた時は知らないわよ?」
「話しかけてこられているのに無視しろだなんて言わないわ」
私が答えると、エイナは満足したのか、なぜかその場で飛び跳ねると近くにいた自分の侍女に話しかける。
「私のお小遣いはまだあったわよね? 買い物に行くわ! 着飾っていかなくちゃ!」
昔からお小遣いが渡されていたけれど、エイナは欲しいものは親衛隊から買ってもらっていたし、ドレスやアクセサリーのお金はお父様が出して下さっていた。
だから、彼女はお金を蓄えているはず。
そういえば、エイナに伝えておかないといけない事があったんだわ。
「エイナ」
「何よ」
「パーティーにはセルディス殿下の婚約者の方もいらっしゃるらしいから。伝えるのを忘れていたわ」
普通ならここで怯むところなのだろうけれど、エイナは違った。
「ちょうどいいわ。そんな婚約者より、私のほうが可愛いって事をセルディス殿下に教えてあげられるわね!」
「あなた、セルディス殿下の婚約者の女性を見た事があるの? まあいいわ、勝手になさい。ただ、失礼な真似はしないで。可愛さで勝てると言うなら失礼な態度をとったりしないで。それから失礼な言葉を絶対に発さないで」
「わかってます! 空気が読めないエリナじゃないんだから。というか、エリナは真面目すぎるのよ」
「あなたが不真面目すぎるの」
話をしても無駄なので、何か言いたげにしていたエイナを無視して、私は部屋の扉を閉めた。
そして、パーティー当日の朝に、セルディス殿下の婚約者であるシシリー様がやって来た。
パーティー会場で挨拶をするのではなく、私と事前に話がしたいと仰ってくださった為、パーティーに出席する準備をしてから、少し早いけれど私だけ先に登城した。
シシリー様はセルディス殿下がわざわざこの場所に連れてきたがる理由がわかるくらいに、それはもう美しかった。
シシリー様は焦げ茶色のウェーブのかかった長い髪に綺麗な紺色の瞳を持つ長身でスレンダーな体型の美女だった。
可愛いタイプのエイナとは比べ物にならないほど色気があって儚げで、でもどこか芯の強そうなキツめの美人にも見えた。
セルディス殿下とミシャ様に紹介してもらい、シシリー様に挨拶をすると、挨拶を返してくださり2人で話をしたいと言われた。
その為、その場にいたアレク殿下の許可を取り、城の中庭のガゼボを借りて話す事になった。
「無理にお時間を作ってもらって申し訳ございません。ですが、パーティーが始まる前に、どうしてもお話しておきたい事があったんです」
シシリー様は深々と頭をさげてくださった後、一度、言葉を区切ってから続ける。
「ミシャ様はとてもエリナ様の事をお好きみたいで、今回はミシャ様から悪者をやっつける為に協力してほしいと言われたんです」
「悪者とは…、私の、妹の事でしょうか?」
「ええ。そうかと思われます。ミシャ様はお会いされた事はないようですが、セルディス殿下に聞きましたところ、彼に色目を使っていたそうですね」
「申し訳ございませんでした」
慌てて立ち上がって頭を下げると、シシリー様も立ち上がって首を横に振る。
「あの、エリナ様を責めるつもりではないんです! あの、お願いしたい事がございまして」
「…何でしょうか?」
お互いに謝りあった後に腰を落ち着けると、シシリー様が言う。
「エイナ様は自分の容姿に自信を持っておられるという事ですわよね?」
「……そうですが」
「自分よりもチヤホヤされている人を見た事はございますでしょうか?」
「それはないかもしれません」
「では、僭越ながら私が彼女のプライドを叩き潰してさしあげてもよろしいでしょうか?」
「叩き潰す…?」
「はい」
その後、シシリー様は美しくて穏やかな笑みからは考えられない言葉を発されたのだった。
シシリー様と一緒にしばらく話をした後、パーティー会場の方に戻ると、もう始まる時間に近付いていたからか人が集まり始めていた。
今日は王家に関わる人物、もしくは外務大臣や外交官、そして、その家族しか集まっていないので、本当に少数のパーティーだ。
エイナは両親と一緒に来ていて、エイナが1人で動き回らないようにか、お母様が彼女の腕をがっしりと掴んでいた。
どうして、この年になってあんな事をされないとジッとしていられないのよ。
そんな事を思っていると、隣にいたシシリー様が微笑んで聞いてくる。
「エリナ様はお父様似ですのね。そして、エイナ様はお母様似といったところかしら?」
「外見に関してはそうだと思います」
「ご両親は素敵な方に見えますのに、どうしてエイナ様だけひねくれてしまわれたのでしょうか」
今までの時間にエイナの事を話したからか、シシリー様は右頬に手を当てて小さく息を吐かれた後、セルディス殿下の姿を見つけて笑顔になった。
セルディス殿下はパーティー様にセッティングされた大広間の奥の方に、ミシャ様とアレク殿下、そしてクズーズ殿下と一緒にいて、何か話をしているようだった。
「あの、シシリー様。セルディス殿下の所へ行かれますか?」
「そうですわね。本当はもっとエリナ様とお話したいんですけれど…。でも、動かないといけませんわね」
「では、両親にエイナをつかまえなくても良いと伝えてきた方がよろしいでしょうか?」
「お願いします。出来ればパーティーが始まる前に済ませたいですわ。だって、セルディス殿下とミシャ様の為のパーティーなのですから」
自由になったエイナが何をするかなんてわかりきっている。
けれど、わざとそれをしてほしいという事は、言葉通り、エイナを潰してしまうおつもりなのだと思った。
一体、どうされるおつもりなのかはわからないけれど、任せてくれと言われているのでお任せする事にして、私はお母様の元へ行き、エイナの腕を離させた。
その間にシシリー様はセルディス殿下達の元へ行き、これからする事をアレク殿下達にも説明しているようだった。
エイナはお母様の腕から逃れると、すぐにクズーズ殿下の元へではなく、セルディス殿下の元へ向かった。
やはり、何をやらかすか心配なので私も後を付いていく。
「セルディス殿下! お会いできて光栄です!」
「やあ、エイナ嬢。今日も元気そうだね」
「セルディス殿下のお顔が見れたからだと思いますっ!」
エイナは猫なで声で言った後、セルディス殿下を上目遣いで見上げたけれど、彼は興味がないと言わんばかりにミシャ様とシシリー様の方に顔を向けた。
ミシャ様は私と目が合うと笑顔で駆けてくる。
「エリナ! 今日はとっても可愛いわ!」
「ありがとうございます、ミシャ様も今日は一段と可愛いです」
「ありがとう!」
ミシャ様はピンクと白のレースをふんだんに使ったドレスがとても似合っていて可愛らしい。
実はエイナも似た様なドレスを着ているんだけれど、可愛さが全然違うわ。
「あ、ミシャ様ですか? はじめまして! エリナがお世話になってます、妹のエイナです!」
「はじめまして…、ミシャです」
ミシャ様はカーテシーをした後、すぐに私の後ろに隠れた。
「やだ、可愛い。照れなくて大丈夫ですよ。私はエリナよりも怖くありませんから」
「……エリナの悪口言わないで!」
「悪口なんかじゃないですわ」
ミシャ様に言い返されてエイナは苦笑して答えた。
エイナは子供が苦手なはず。
だって、子供の可愛さに自分が勝てるわけがないって事くらい、さすがにわかっているから。
「シシリー!」
ミシャ様が名前を呼ぶと、シシリー様はセルディス殿下の方をちらりと見て、彼と目が合うと微笑んでから、私とエイナの所にやって来た。
「はじめまして、エイナ様。シシリー・ロンブランと申します。セルディス殿下の婚約者ですの」
「は、はじめまして」
エイナが訝しげな顔で挨拶を返すと、シシリー様は冷たい笑みを浮かべて言った。
「あなたですのね? 私の婚約者に馴れ馴れしく声を掛けているという非常識な女性は」
シシリー様の言葉にエイナは怒りの表情になり、セルディス殿下は「私の婚約者がこれからキツイ事を言うかもしれないけどごめん」と言わんばかりに私の方を見て申し訳無さそうな顔をした。
そんな事をしたら、エイナが調子にのるだけだと思ったけれど、エイナにはセルディス殿下の希望ではなく、クズーズ殿下の婚約者として招待されたという形で出席させる事になった。
ここ最近、屋敷から出る事ができなかったエイナはそれはもう喜んだ。
「どうしよう! どんな服を着ていったらいいの!? セルディス殿下から一緒に国に帰ってくれだなんて言われたらどうしたらいいの!?」
きゃーっと叫びながら、エイナは両頬を押さえる。
どうしてそんな考えが思い付くのか、私にはさっぱりわからないわ。
「エイナ、セルディス殿下には婚約者がいらっしゃると言ったでしょう? 殿下を誘惑しようだなんて馬鹿な事は考えないでちょうだい」
「もう、エリナったら私に嫉妬するのはやめてくれない?」
「どうしてそんな考えになるのか私には全くわからないわ。用がないなら帰って」
エイナがわざわざ私の部屋まで訪ねてきたので、中に入れずに扉の前で冷たくあしらうと、エイナは怒り始めた。
「何よ! 自分はアレク殿下と上手くいっているからって余裕よね! でも、クズーズ殿下だって頑張ってるんだからね!」
「クズーズ殿下が頑張ってる?」
「そうよ! エリナと結婚するためにね!」
私と結婚するため?
一体、何を考えてるの!?
腹が立ったけれど落ち着いて答える。
「そんなの私の知った事ではないわ。私はアレク殿下の婚約者なのよ? クズーズ殿下との結婚なんてありえないから」
「可哀想なクズーズ殿下! エリナの為に頑張ってるのに!」
「そう思うならあなたがクズーズ殿下に尽くしてあげなさいよ!」
睨みつけて言うと、エイナは笑う。
「やだぁ! そんなに怒らないでよ! これだから顔が可愛くない人間は嫌なのよ。もしかして、ミシャ様が私に懐くかもしれないから、それが嫌なの?」
「顔が可愛い、可愛くないは個人の好みよ。言っておくけど、昔のあなたにはまだ可愛らしさを感じていたけれど、今のあなたからは一切感じられないわ。心の醜さが全面に出ているわよ」
「なんですって!?」
「ミシャ様は繊細な人よ。あなたの本性を見抜くはず。セルディス殿下に嫌われたくないのなら大人しくしてなさい」
この事については嘘ではない。
子供だからこそ敏感に感じ取る部分もあるだろうし、ミシャ様はセルディス殿下と私の様子から、エイナが良い人間ではない事を感じ取っているはず。
ミシャ様が何をされるつもりなのかはわからないけれど…。
「私の可愛さに子供の方が黙っていられないと思うけど、お父様にも大人しくしてろと言われているし、大人しくするつもりよ! だけど、話しかけられた時は知らないわよ?」
「話しかけてこられているのに無視しろだなんて言わないわ」
私が答えると、エイナは満足したのか、なぜかその場で飛び跳ねると近くにいた自分の侍女に話しかける。
「私のお小遣いはまだあったわよね? 買い物に行くわ! 着飾っていかなくちゃ!」
昔からお小遣いが渡されていたけれど、エイナは欲しいものは親衛隊から買ってもらっていたし、ドレスやアクセサリーのお金はお父様が出して下さっていた。
だから、彼女はお金を蓄えているはず。
そういえば、エイナに伝えておかないといけない事があったんだわ。
「エイナ」
「何よ」
「パーティーにはセルディス殿下の婚約者の方もいらっしゃるらしいから。伝えるのを忘れていたわ」
普通ならここで怯むところなのだろうけれど、エイナは違った。
「ちょうどいいわ。そんな婚約者より、私のほうが可愛いって事をセルディス殿下に教えてあげられるわね!」
「あなた、セルディス殿下の婚約者の女性を見た事があるの? まあいいわ、勝手になさい。ただ、失礼な真似はしないで。可愛さで勝てると言うなら失礼な態度をとったりしないで。それから失礼な言葉を絶対に発さないで」
「わかってます! 空気が読めないエリナじゃないんだから。というか、エリナは真面目すぎるのよ」
「あなたが不真面目すぎるの」
話をしても無駄なので、何か言いたげにしていたエイナを無視して、私は部屋の扉を閉めた。
そして、パーティー当日の朝に、セルディス殿下の婚約者であるシシリー様がやって来た。
パーティー会場で挨拶をするのではなく、私と事前に話がしたいと仰ってくださった為、パーティーに出席する準備をしてから、少し早いけれど私だけ先に登城した。
シシリー様はセルディス殿下がわざわざこの場所に連れてきたがる理由がわかるくらいに、それはもう美しかった。
シシリー様は焦げ茶色のウェーブのかかった長い髪に綺麗な紺色の瞳を持つ長身でスレンダーな体型の美女だった。
可愛いタイプのエイナとは比べ物にならないほど色気があって儚げで、でもどこか芯の強そうなキツめの美人にも見えた。
セルディス殿下とミシャ様に紹介してもらい、シシリー様に挨拶をすると、挨拶を返してくださり2人で話をしたいと言われた。
その為、その場にいたアレク殿下の許可を取り、城の中庭のガゼボを借りて話す事になった。
「無理にお時間を作ってもらって申し訳ございません。ですが、パーティーが始まる前に、どうしてもお話しておきたい事があったんです」
シシリー様は深々と頭をさげてくださった後、一度、言葉を区切ってから続ける。
「ミシャ様はとてもエリナ様の事をお好きみたいで、今回はミシャ様から悪者をやっつける為に協力してほしいと言われたんです」
「悪者とは…、私の、妹の事でしょうか?」
「ええ。そうかと思われます。ミシャ様はお会いされた事はないようですが、セルディス殿下に聞きましたところ、彼に色目を使っていたそうですね」
「申し訳ございませんでした」
慌てて立ち上がって頭を下げると、シシリー様も立ち上がって首を横に振る。
「あの、エリナ様を責めるつもりではないんです! あの、お願いしたい事がございまして」
「…何でしょうか?」
お互いに謝りあった後に腰を落ち着けると、シシリー様が言う。
「エイナ様は自分の容姿に自信を持っておられるという事ですわよね?」
「……そうですが」
「自分よりもチヤホヤされている人を見た事はございますでしょうか?」
「それはないかもしれません」
「では、僭越ながら私が彼女のプライドを叩き潰してさしあげてもよろしいでしょうか?」
「叩き潰す…?」
「はい」
その後、シシリー様は美しくて穏やかな笑みからは考えられない言葉を発されたのだった。
シシリー様と一緒にしばらく話をした後、パーティー会場の方に戻ると、もう始まる時間に近付いていたからか人が集まり始めていた。
今日は王家に関わる人物、もしくは外務大臣や外交官、そして、その家族しか集まっていないので、本当に少数のパーティーだ。
エイナは両親と一緒に来ていて、エイナが1人で動き回らないようにか、お母様が彼女の腕をがっしりと掴んでいた。
どうして、この年になってあんな事をされないとジッとしていられないのよ。
そんな事を思っていると、隣にいたシシリー様が微笑んで聞いてくる。
「エリナ様はお父様似ですのね。そして、エイナ様はお母様似といったところかしら?」
「外見に関してはそうだと思います」
「ご両親は素敵な方に見えますのに、どうしてエイナ様だけひねくれてしまわれたのでしょうか」
今までの時間にエイナの事を話したからか、シシリー様は右頬に手を当てて小さく息を吐かれた後、セルディス殿下の姿を見つけて笑顔になった。
セルディス殿下はパーティー様にセッティングされた大広間の奥の方に、ミシャ様とアレク殿下、そしてクズーズ殿下と一緒にいて、何か話をしているようだった。
「あの、シシリー様。セルディス殿下の所へ行かれますか?」
「そうですわね。本当はもっとエリナ様とお話したいんですけれど…。でも、動かないといけませんわね」
「では、両親にエイナをつかまえなくても良いと伝えてきた方がよろしいでしょうか?」
「お願いします。出来ればパーティーが始まる前に済ませたいですわ。だって、セルディス殿下とミシャ様の為のパーティーなのですから」
自由になったエイナが何をするかなんてわかりきっている。
けれど、わざとそれをしてほしいという事は、言葉通り、エイナを潰してしまうおつもりなのだと思った。
一体、どうされるおつもりなのかはわからないけれど、任せてくれと言われているのでお任せする事にして、私はお母様の元へ行き、エイナの腕を離させた。
その間にシシリー様はセルディス殿下達の元へ行き、これからする事をアレク殿下達にも説明しているようだった。
エイナはお母様の腕から逃れると、すぐにクズーズ殿下の元へではなく、セルディス殿下の元へ向かった。
やはり、何をやらかすか心配なので私も後を付いていく。
「セルディス殿下! お会いできて光栄です!」
「やあ、エイナ嬢。今日も元気そうだね」
「セルディス殿下のお顔が見れたからだと思いますっ!」
エイナは猫なで声で言った後、セルディス殿下を上目遣いで見上げたけれど、彼は興味がないと言わんばかりにミシャ様とシシリー様の方に顔を向けた。
ミシャ様は私と目が合うと笑顔で駆けてくる。
「エリナ! 今日はとっても可愛いわ!」
「ありがとうございます、ミシャ様も今日は一段と可愛いです」
「ありがとう!」
ミシャ様はピンクと白のレースをふんだんに使ったドレスがとても似合っていて可愛らしい。
実はエイナも似た様なドレスを着ているんだけれど、可愛さが全然違うわ。
「あ、ミシャ様ですか? はじめまして! エリナがお世話になってます、妹のエイナです!」
「はじめまして…、ミシャです」
ミシャ様はカーテシーをした後、すぐに私の後ろに隠れた。
「やだ、可愛い。照れなくて大丈夫ですよ。私はエリナよりも怖くありませんから」
「……エリナの悪口言わないで!」
「悪口なんかじゃないですわ」
ミシャ様に言い返されてエイナは苦笑して答えた。
エイナは子供が苦手なはず。
だって、子供の可愛さに自分が勝てるわけがないって事くらい、さすがにわかっているから。
「シシリー!」
ミシャ様が名前を呼ぶと、シシリー様はセルディス殿下の方をちらりと見て、彼と目が合うと微笑んでから、私とエイナの所にやって来た。
「はじめまして、エイナ様。シシリー・ロンブランと申します。セルディス殿下の婚約者ですの」
「は、はじめまして」
エイナが訝しげな顔で挨拶を返すと、シシリー様は冷たい笑みを浮かべて言った。
「あなたですのね? 私の婚約者に馴れ馴れしく声を掛けているという非常識な女性は」
シシリー様の言葉にエイナは怒りの表情になり、セルディス殿下は「私の婚約者がこれからキツイ事を言うかもしれないけどごめん」と言わんばかりに私の方を見て申し訳無さそうな顔をした。
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