15 / 19
第14 話 ティータイムの話し合い
しおりを挟む
「そんな事があったのか…」
イツースで落ち合ったのはいいものの、私がたくさんの荷物を抱えているのを見て驚いたジェリー様は、イツースの奥の休憩所を貸してほしいとお願いしてくださり、そこで私に何があったか話すように促してくれた。
本来ならば、ジェリー様の家で話す事を考えてくれていたらしいのだけれど、大荷物を持った既婚者を家に入れにくくなってしまったみたいだった。
世間の目というものがあるからかもしれない。
私が今日の朝の出来事を話すと、ジェリー様は難しい顔をした。
「相手は関係修復を望んでいるのか…」
「そうなんです。離婚は難しいでしょうか?」
「義母にあたる女性に命を狙われる可能性があるのなら、離婚する理由には十分な気はするが、別居すると言われてしまえばどうだろうな…」
「ビューホ様の浮気だけでは離婚できないという事ですか?」
「反省していると言っているんだろう? そして、やり直したいとも」
「……そんな感じでした」
裁判になった場合、ビューホ様がやつれていたりしようものなら、本人が反省しているのだから許してあげろとか、私の方が冷たい女性だと思う人もいるかもしれない。
チャンスをあげろと考える人がいてもおかしくはないものね。
でも、私の気持ちとしては、ビューホ様に限っては許すわけにはいかないわ。
だって、ビューホ様の感じだと、二度とそんな事をしないとは限らないもの。
それに本当に反省しているのかがわからない。
「円満離婚しないと長引く可能性があるな…」
「そんな…」
「とにかく、彼に不利な証拠を集めよう。彼が改心していない証拠がつかめれば、彼にその証拠を突きつけて言い逃れ出来ないようにさせれば、円満離婚をせざるを得ないだろうから。ただ、慰謝料は諦めないといけないけどな」
「離婚できるのであれば、多くは望みません。証拠があるかどうかはわかりませんが、証言は取れるかもしれません。それじゃあ弱いでしょうか?」
愛人は1人や2人じゃなさそうだし、私に協力してくださる人はいると思う。
その中の人に証拠になるものを持っていらっしゃったらいいんだけど。
「本命の愛人がいなくなったのなら、離婚に応じてくれる可能性はないのか?」
「それも思うんですが、もし、私の持っているお金が目当てなら、別れる事を拒むと思うんです」
「自分の家が破産しても、あなたの実家に転がり込むつもりなんだろうか」
「……そうなのかもしれません」
私の実家は、私が管理していた時は、かなり裕福だった。
その事をビューホ様も知っているでしょうし、ジェリー様が仰った事は間違っていない気がした。
「そういえば、私の実家は今はどうなっているのでしょうか…」
「……あなたは実家に戻るつもりなのか?」
「いいえ。ふと、どうなっているのか気になりまして…」
「調べてみるから、ちょっと待ってくれ」
「申し訳ございません! そういう意味ではないんです。もし、耳に入っている事があればと思っただけで…」
公爵令息だからって、全ての貴族がどうこうなんて把握してるわけないわよね…。
遠回しに調べてほしいって言っているようなもんだわ。
気をつけなくちゃ。
「気にしなくていい。どうせ、あなたを雇うのにあなたの実家の事も調べるつもりだったから」
「私がジェリー様の家に雇われると知ったら、家族は何か言ってくるかもしれません。それに関しては、ビューホ様もですが…」
「雇うと決めたのはこちら側だから、あなたは気にしなくていい」
「ですが…」
「使用人が働きやすい環境にするのも雇い主側の義務だと父上に言われたんだ。だから、本当に気にしなくていい」
「でも、まだ、雇用契約は結んでおりませんし…」
こんなやり取りを続けていると、マルルさんがやって来て、お菓子がたくさんのった大皿を私とジェリー様の間に置いてくれた。
すると、ジェリー様が目を輝かせた。
「今日の分だな?」
「そうです。ラノア様もいらっしゃいますから、今日は少しおまけしていますよ」
「ありがとう!」
「ありがとうございます」
嬉しそうなジェリー様に対して、私が申し訳なさげに頭を下げると、マルルさんは苦笑する。
「遠慮なく食べてくださいね。あと、お茶のお代わりもいれておきます」
相手が公爵令息という事もあるのか、場所を貸していただいているだけでなく、気を遣っていただいて、本当に申し訳なかった。
「とにかく、詳しい話は食べてからにしよう」
目の前に置かれたマドレーヌやドーナツなどの甘いお菓子にテンションが上がってしまっている様で、ジェリー様が話を続けられそうな状態ではなかったので、とりあえず話を中断する事になり、食べ終えた後に話を再開すると、とにかく、私の仮住まいを探そうという事になった。
さすがに、離婚もしていないし、まだ雇用契約を結んでもいないので、ジェリー様の家にお世話になるわけにはいかない。
そんな事をしたら、ビューホ様から、また不貞を疑われてしまうでしょうし…。
「隣町にセキュリティのしっかりした宿があるから、そちらを紹介しよう」
泊まる場所はトライト家に通いやすい場所をジェリー様に紹介してもらえる事になり、離婚成立後、私は正式にジェリー様の家に雇ってもらう事になった。
ミオナに関しても彼女が望むなら一緒に雇ってもらえる事になり、少しずつ前に進み始めたのだった。
イツースで落ち合ったのはいいものの、私がたくさんの荷物を抱えているのを見て驚いたジェリー様は、イツースの奥の休憩所を貸してほしいとお願いしてくださり、そこで私に何があったか話すように促してくれた。
本来ならば、ジェリー様の家で話す事を考えてくれていたらしいのだけれど、大荷物を持った既婚者を家に入れにくくなってしまったみたいだった。
世間の目というものがあるからかもしれない。
私が今日の朝の出来事を話すと、ジェリー様は難しい顔をした。
「相手は関係修復を望んでいるのか…」
「そうなんです。離婚は難しいでしょうか?」
「義母にあたる女性に命を狙われる可能性があるのなら、離婚する理由には十分な気はするが、別居すると言われてしまえばどうだろうな…」
「ビューホ様の浮気だけでは離婚できないという事ですか?」
「反省していると言っているんだろう? そして、やり直したいとも」
「……そんな感じでした」
裁判になった場合、ビューホ様がやつれていたりしようものなら、本人が反省しているのだから許してあげろとか、私の方が冷たい女性だと思う人もいるかもしれない。
チャンスをあげろと考える人がいてもおかしくはないものね。
でも、私の気持ちとしては、ビューホ様に限っては許すわけにはいかないわ。
だって、ビューホ様の感じだと、二度とそんな事をしないとは限らないもの。
それに本当に反省しているのかがわからない。
「円満離婚しないと長引く可能性があるな…」
「そんな…」
「とにかく、彼に不利な証拠を集めよう。彼が改心していない証拠がつかめれば、彼にその証拠を突きつけて言い逃れ出来ないようにさせれば、円満離婚をせざるを得ないだろうから。ただ、慰謝料は諦めないといけないけどな」
「離婚できるのであれば、多くは望みません。証拠があるかどうかはわかりませんが、証言は取れるかもしれません。それじゃあ弱いでしょうか?」
愛人は1人や2人じゃなさそうだし、私に協力してくださる人はいると思う。
その中の人に証拠になるものを持っていらっしゃったらいいんだけど。
「本命の愛人がいなくなったのなら、離婚に応じてくれる可能性はないのか?」
「それも思うんですが、もし、私の持っているお金が目当てなら、別れる事を拒むと思うんです」
「自分の家が破産しても、あなたの実家に転がり込むつもりなんだろうか」
「……そうなのかもしれません」
私の実家は、私が管理していた時は、かなり裕福だった。
その事をビューホ様も知っているでしょうし、ジェリー様が仰った事は間違っていない気がした。
「そういえば、私の実家は今はどうなっているのでしょうか…」
「……あなたは実家に戻るつもりなのか?」
「いいえ。ふと、どうなっているのか気になりまして…」
「調べてみるから、ちょっと待ってくれ」
「申し訳ございません! そういう意味ではないんです。もし、耳に入っている事があればと思っただけで…」
公爵令息だからって、全ての貴族がどうこうなんて把握してるわけないわよね…。
遠回しに調べてほしいって言っているようなもんだわ。
気をつけなくちゃ。
「気にしなくていい。どうせ、あなたを雇うのにあなたの実家の事も調べるつもりだったから」
「私がジェリー様の家に雇われると知ったら、家族は何か言ってくるかもしれません。それに関しては、ビューホ様もですが…」
「雇うと決めたのはこちら側だから、あなたは気にしなくていい」
「ですが…」
「使用人が働きやすい環境にするのも雇い主側の義務だと父上に言われたんだ。だから、本当に気にしなくていい」
「でも、まだ、雇用契約は結んでおりませんし…」
こんなやり取りを続けていると、マルルさんがやって来て、お菓子がたくさんのった大皿を私とジェリー様の間に置いてくれた。
すると、ジェリー様が目を輝かせた。
「今日の分だな?」
「そうです。ラノア様もいらっしゃいますから、今日は少しおまけしていますよ」
「ありがとう!」
「ありがとうございます」
嬉しそうなジェリー様に対して、私が申し訳なさげに頭を下げると、マルルさんは苦笑する。
「遠慮なく食べてくださいね。あと、お茶のお代わりもいれておきます」
相手が公爵令息という事もあるのか、場所を貸していただいているだけでなく、気を遣っていただいて、本当に申し訳なかった。
「とにかく、詳しい話は食べてからにしよう」
目の前に置かれたマドレーヌやドーナツなどの甘いお菓子にテンションが上がってしまっている様で、ジェリー様が話を続けられそうな状態ではなかったので、とりあえず話を中断する事になり、食べ終えた後に話を再開すると、とにかく、私の仮住まいを探そうという事になった。
さすがに、離婚もしていないし、まだ雇用契約を結んでもいないので、ジェリー様の家にお世話になるわけにはいかない。
そんな事をしたら、ビューホ様から、また不貞を疑われてしまうでしょうし…。
「隣町にセキュリティのしっかりした宿があるから、そちらを紹介しよう」
泊まる場所はトライト家に通いやすい場所をジェリー様に紹介してもらえる事になり、離婚成立後、私は正式にジェリー様の家に雇ってもらう事になった。
ミオナに関しても彼女が望むなら一緒に雇ってもらえる事になり、少しずつ前に進み始めたのだった。
36
お気に入りに追加
1,823
あなたにおすすめの小説

「君が大嫌いだ」といったあなたのその顔があまりに悲しそうなのは何故ですか?
しがわか
恋愛
エリックと婚約発表をするはずだったその日、集まった招待客の前で言われたのは思いがけないセリフだった。
「君が大嫌いだった」
そういった彼の顔はなぜかとても悲しそうだった。
哀しみにくれて帰宅した私は妹に悲嘆を打ち明ける。
けれど妹はあの日から目を覚まさないままで——。
何故彼は私を拒絶したのか。
そして妹が目覚めない理由とは。
2つの答えが重なるとき、2人はまた1つになる。

大嫌いなんて言ってごめんと今さら言われても
はなまる
恋愛
シルベスタ・オリヴィエは学園に入った日に恋に落ちる。相手はフェリオ・マーカス侯爵令息。見目麗しい彼は女生徒から大人気でいつも彼の周りにはたくさんの令嬢がいた。彼を独占しないファンクラブまで存在すると言う人気ぶりで、そんな中でシルベスタはファンクアブに入り彼を応援するがシルベスタの行いがあまりに過激だったためついにフェリオから大っ嫌いだ。俺に近づくな!と言い渡された。
だが、思わぬことでフェリオはシルベスタに助けを求めることになるが、オリヴィエ伯爵家はシルベスタを目に入れても可愛がっており彼女を泣かせた男の家になどとけんもほろろで。
フェリオの甘い誘いや言葉も時すでに遅く…
どうして別れるのかと聞かれても。お気の毒な旦那さま、まさかとは思いますが、あなたのようなクズが女性に愛されると信じていらっしゃるのですか?
石河 翠
恋愛
主人公のモニカは、既婚者にばかり声をかけるはしたない女性として有名だ。愛人稼業をしているだとか、天然の毒婦だとか、聞こえてくるのは下品な噂ばかり。社交界での評判も地に落ちている。
ある日モニカは、溺愛のあまり茶会や夜会に妻を一切参加させないことで有名な愛妻家の男性に声をかける。おしどり夫婦の愛の巣に押しかけたモニカは、そこで虐げられている女性を発見する。
彼女が愛妻家として評判の男性の奥方だと気がついたモニカは、彼女を毎日お茶に誘うようになり……。
八方塞がりな状況で抵抗する力を失っていた孤独なヒロインと、彼女に手を差し伸べ広い世界に連れ出したしたたかな年下ヒーローのお話。
ハッピーエンドです。
この作品は他サイトにも投稿しております。
扉絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID24694748)をお借りしています。

【完結】純白のウェディングドレスは二度赤く染まる
春野オカリナ
恋愛
初夏の日差しが強くなる頃、王都の書店では、ある一冊の本がずらりと並んでいた。
それは、半年前の雪の降る寒い季節に死刑となった一人の囚人の手記を本にまとめたものだった。
囚人の名は『イエニー・フラウ』
彼女は稀代の悪女として知らぬ者のいない程、有名になっていた。
その彼女の手記とあって、本は飛ぶように売れたのだ。
しかし、その内容はとても悪女のものではなかった。
人々は彼女に同情し、彼女が鉄槌を下した夫とその愛人こそが裁きを受けるべきだったと憤りを感じていた。
その手記の内容とは…

公爵令嬢の白銀の指輪
夜桜
恋愛
公爵令嬢エリザは幸せな日々を送っていたはずだった。
婚約者の伯爵ヘイズは婚約指輪をエリザに渡した。けれど、その指輪には猛毒が塗布されていたのだ。
違和感を感じたエリザ。
彼女には貴金属の目利きスキルがあった。
直ちに猛毒のことを訴えると、伯爵は全てを失うことになった。しかし、これは始まりに過ぎなかった……。
あなたの愛が正しいわ
来須みかん
恋愛
旧題:あなたの愛が正しいわ~夫が私の悪口を言っていたので理想の妻になってあげたのに、どうしてそんな顔をするの?~
夫と一緒に訪れた夜会で、夫が男友達に私の悪口を言っているのを聞いてしまった。そのことをきっかけに、私は夫の理想の妻になることを決める。それまで夫を心の底から愛して尽くしていたけど、それがうっとうしかったそうだ。夫に付きまとうのをやめた私は、生まれ変わったように清々しい気分になっていた。
一方、夫は妻の変化に戸惑い、誤解があったことに気がつき、自分の今までの酷い態度を謝ったが、妻は美しい笑みを浮かべてこういった。
「いいえ、間違っていたのは私のほう。あなたの愛が正しいわ」

「股ゆる令嬢」の幸せな白い結婚
ウサギテイマーTK
恋愛
公爵令嬢のフェミニム・インテラは、保持する特異能力のために、第一王子のアージノスと婚約していた。だが王子はフェミニムの行動を誤解し、別の少女と付き合うようになり、最終的にフェミニムとの婚約を破棄する。そしてフェミニムを、子どもを作ることが出来ない男性の元へと嫁がせるのである。それが王子とその周囲の者たちの、破滅への序章となることも知らずに。
※タイトルは下品ですが、R15範囲だと思います。完結保証。

私を運命の相手とプロポーズしておきながら、可哀そうな幼馴染の方が大切なのですね! 幼馴染と幸せにお過ごしください
迷い人
恋愛
王国の特殊爵位『フラワーズ』を頂いたその日。
アシャール王国でも美貌と名高いディディエ・オラール様から婚姻の申し込みを受けた。
断るに断れない状況での婚姻の申し込み。
仕事の邪魔はしないと言う約束のもと、私はその婚姻の申し出を承諾する。
優しい人。
貞節と名高い人。
一目惚れだと、運命の相手だと、彼は言った。
細やかな気遣いと、距離を保った愛情表現。
私も愛しております。
そう告げようとした日、彼は私にこうつげたのです。
「子を事故で亡くした幼馴染が、心をすり減らして戻ってきたんだ。 私はしばらく彼女についていてあげたい」
そう言って私の物を、つぎつぎ幼馴染に与えていく。
優しかったアナタは幻ですか?
どうぞ、幼馴染とお幸せに、請求書はそちらに回しておきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる