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第10話 転機の夜
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結局、私はジェリー様の家の馬車で家に帰る事になった。
なぜなら、私は遠慮したけれど、1人で帰らせるわけにいかないと言われ、2人きりではまずいからと、マチルダ様の侍女を借りようとしてくれたから。
すると、それなら自分も一緒に行くと言って、マチルダ様までもが一緒に送ってくれる事になったのだ。
馬車の中で、私の向かい側に座っているマチルダ様が話しかけてきた。
「私達のこと、驚かせてしまってごめんなさいね。ジェリーが言わないでほしいと言うものだから…。もちろん、私も同じ様に隠していたのだから同罪だという事は理解しているわ」
「いえ。最初から公爵令息だとわかっていれば、こういう状態にはならなかったと思いますので、お気になさらないで下さい。それに、薄々、気が付いていましたし…」
苦笑して首を横に振ると、ジェリー様が頭を下げてくる。
「すまなかった。ただ、俺の事は街の人もそう多くは知らないんだ。知ってるのは警察のトップやその家族とイツースの人達くらいだ」
「謝らないでくださいませ。……でも、ジェリー様は本当にイツースのお菓子が好きなんですね」
「ああ。とても優しい味がするんだ。うちの料理人ではなぜかあの味が出ないんだよな」
「お店のオリジナルの何かがあるのかもしれませんね…」
微笑して頷くと、マチルダ様が問いかけてくる。
「余計なお世話かもしれないけれど、これからどうするつもりなの?」
「……離婚に向けて動こうかと思います。ただ、新しい家を見つけてからになりますが…」
「ねえ、ラノアさん。迷惑なら断ってくれてもいいんだけれど、良かったら、ジェリーが住んでいる別邸のメイドにならない? それなら住む場所も仕事も見つかるし、食事もまかないがあるから困らないわ」
「メイド……ですか…」
「ええ。元伯爵令嬢にメイドになれというのも失礼な話かもしれないけれど…」
マチルダ様は私の反応が薄いからか、嫌がっていると取られた様で申し訳無さそうな顔をした。
「いいえ。あの、ご迷惑でないならお願いしたいです。どんな形であれ、誰かの役に立てるならと思ってきましたが、ビューホ様の役に立ちたいかといわれると、今回の事でそうは思えなくなりました」
どんな人でもいい。
お飾りの妻だとしても、私の存在が必要とされれば良いと思っていた。
でも、今回の事で気が付いた。
いくら必要とされても、それが悪い事をする助けになるのなら、それは良くない。
フィナさんだけなら我慢できたかもしれないけれど、複数の愛人がいるという不誠実な人間を幸せにする為に生きていくのは嫌だと思った。
私が離婚をして、この事を大々的にしてしまえば、目を覚ます令嬢もいるかもしれない。
きっと、他の愛人達はフィナさん以外に愛人がいると思っていないだろうから。
「フェルエン侯爵はどうされるおつもりなのでしょうか?」
「イボンヌさんのお家には婚約の解消と慰謝料を請求するでしょうね」
答えてくれたマチルダ様に尋ねる。
「トライト家に対しても慰謝料を請求されますよね?」
「……そうね」
「母上、待ってもらうようにお願いできませんか」
ジェリー様が私の考えを察してくださったのか、マチルダ様に向かって続ける。
「離婚しない間に慰謝料を請求されれば、彼女名義のお金も慰謝料にまわされてしまうかもしれません」
「……そういう事ね。わかったわ。他人が首を突っ込む事ではないのだけれど、ラノアさんを送り届けたら、フェルエン侯爵邸に戻って、その話をしましょう。それから…」
マチルダ様は私の顔を見て聞いてくる。
「もう覚悟は決まったのね?」
「はい」
力強く首を縦に振ると、マチルダ様は優しく微笑んでくれた。
ーーーーーーーーーーーー
体調不良の為、見直しも辛く短いお話になってしまい、申し訳ございません。
お詫びとしまして、ちょっとした裏話を。
ビューホの名前の由来?ですが、ビューティフォー、からビューフォーで考えたんですが、それだけではなんか違うと思いまして、アホのホにして、ビューホにしました。
お読みいただき、本当にありがとうございます!
なぜなら、私は遠慮したけれど、1人で帰らせるわけにいかないと言われ、2人きりではまずいからと、マチルダ様の侍女を借りようとしてくれたから。
すると、それなら自分も一緒に行くと言って、マチルダ様までもが一緒に送ってくれる事になったのだ。
馬車の中で、私の向かい側に座っているマチルダ様が話しかけてきた。
「私達のこと、驚かせてしまってごめんなさいね。ジェリーが言わないでほしいと言うものだから…。もちろん、私も同じ様に隠していたのだから同罪だという事は理解しているわ」
「いえ。最初から公爵令息だとわかっていれば、こういう状態にはならなかったと思いますので、お気になさらないで下さい。それに、薄々、気が付いていましたし…」
苦笑して首を横に振ると、ジェリー様が頭を下げてくる。
「すまなかった。ただ、俺の事は街の人もそう多くは知らないんだ。知ってるのは警察のトップやその家族とイツースの人達くらいだ」
「謝らないでくださいませ。……でも、ジェリー様は本当にイツースのお菓子が好きなんですね」
「ああ。とても優しい味がするんだ。うちの料理人ではなぜかあの味が出ないんだよな」
「お店のオリジナルの何かがあるのかもしれませんね…」
微笑して頷くと、マチルダ様が問いかけてくる。
「余計なお世話かもしれないけれど、これからどうするつもりなの?」
「……離婚に向けて動こうかと思います。ただ、新しい家を見つけてからになりますが…」
「ねえ、ラノアさん。迷惑なら断ってくれてもいいんだけれど、良かったら、ジェリーが住んでいる別邸のメイドにならない? それなら住む場所も仕事も見つかるし、食事もまかないがあるから困らないわ」
「メイド……ですか…」
「ええ。元伯爵令嬢にメイドになれというのも失礼な話かもしれないけれど…」
マチルダ様は私の反応が薄いからか、嫌がっていると取られた様で申し訳無さそうな顔をした。
「いいえ。あの、ご迷惑でないならお願いしたいです。どんな形であれ、誰かの役に立てるならと思ってきましたが、ビューホ様の役に立ちたいかといわれると、今回の事でそうは思えなくなりました」
どんな人でもいい。
お飾りの妻だとしても、私の存在が必要とされれば良いと思っていた。
でも、今回の事で気が付いた。
いくら必要とされても、それが悪い事をする助けになるのなら、それは良くない。
フィナさんだけなら我慢できたかもしれないけれど、複数の愛人がいるという不誠実な人間を幸せにする為に生きていくのは嫌だと思った。
私が離婚をして、この事を大々的にしてしまえば、目を覚ます令嬢もいるかもしれない。
きっと、他の愛人達はフィナさん以外に愛人がいると思っていないだろうから。
「フェルエン侯爵はどうされるおつもりなのでしょうか?」
「イボンヌさんのお家には婚約の解消と慰謝料を請求するでしょうね」
答えてくれたマチルダ様に尋ねる。
「トライト家に対しても慰謝料を請求されますよね?」
「……そうね」
「母上、待ってもらうようにお願いできませんか」
ジェリー様が私の考えを察してくださったのか、マチルダ様に向かって続ける。
「離婚しない間に慰謝料を請求されれば、彼女名義のお金も慰謝料にまわされてしまうかもしれません」
「……そういう事ね。わかったわ。他人が首を突っ込む事ではないのだけれど、ラノアさんを送り届けたら、フェルエン侯爵邸に戻って、その話をしましょう。それから…」
マチルダ様は私の顔を見て聞いてくる。
「もう覚悟は決まったのね?」
「はい」
力強く首を縦に振ると、マチルダ様は優しく微笑んでくれた。
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体調不良の為、見直しも辛く短いお話になってしまい、申し訳ございません。
お詫びとしまして、ちょっとした裏話を。
ビューホの名前の由来?ですが、ビューティフォー、からビューフォーで考えたんですが、それだけではなんか違うと思いまして、アホのホにして、ビューホにしました。
お読みいただき、本当にありがとうございます!
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