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第1話 最悪の初夜
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今日は伯爵令嬢である私、ラノア・ナンルーの結婚式だった。
相手は伯爵位を持つビューホ・トライト様だ。
彼の家は私の実家の財力と権力を狙い、私の家は私を家から少しでも早くに追い出したかったという理由で決まった結婚であり、私とビューホ様の間に愛などはない。
トライト家は私を嫁に迎えるというのに「結婚式は挙げるので、手配をしておいてくれ」と言っただけで、何も動こうとはしなかった。
結婚式の段取りも私が手配したし、費用は全てナンルー家が出した。
どうしてそんな事が出来たのかというと、家のお金の管理は私がしていたという事と、私が出ていくのであれば多少はお金をかけても良いという許可がお父様から下りたからだ。
政略結婚に愛がないなんて事はつきものだし、ビューホ様の評判は貴族の間でも良くなかったから、姉にはもっと良い人に嫁がせたかったという事もあるのでしょうね。
女子しかいない学園に通っていた私は、19歳になった今でも初恋というものをした事がない。
それくらい男性と関わる事がなかった。
両親は私の事をナンルー家の恥だと言って、デビュタントもさせてもらえなかったから。
だから、恋に夢を見ていた事は確かだ。
けれど、友人の恋人との破局や婚約者が碌な人間じゃなかったりと、全てが上手くいくものでもないと実感した私は、恋愛結婚ではなく、政略結婚でも良いと思った。
相性が合えば、お互いに思い合えるはずだと思っていた。
こんな私でも必要としてくれる誰かはいるのだと信じたかった。
私より3つ年上のビューホ様は金色のサラサラの髪に碧色の瞳をもつ美丈夫で、私の方はダークブラウンの髪に同じ色の瞳、目は大きい方だけれど少しだけ吊り目のせいで冷たい印象を受けてしまう見た目だ。
結婚式でも愛想笑いが上手く出来ず、笑顔が引きつっていたと思う。
参列していた私の家族は花嫁姿の私を見て、なぜかクスクスと笑っていて、他の参列者が不思議そうにしていたので、とても嫌な気持ちになった。
誓いのキスもなく式を終えた、その日の夜、私の夫になったビューホ様は、寝室に入った私にこう言った。
「俺には小さい頃から思い合っている平民のフィナという人がいる。俺とフィナの間に君が入る隙はない。彼女の事は母上も気に入っているんだ。だから君はお飾りの妻だ。特に何もしなくていい。それから、フィナを君の侍女にするから」
ちょっと待って。
初日からこんな話を聞かされるの?
愛している人がいたのに私と結婚したの?
相手が平民だから結婚できないという理由で?
それにどうして、愛人を私の侍女にしようとするの?
意味がわからない…。
とにかく言わなければいけない事は言うべきだと思って口を開く。
「…侍女の件はお断りします」
「……は?」
「どうして、ビューホ様の好きな人を私の侍女にするんでしょうか? ビューホ様のお傍に置いておけば良いのではないでしょうか」
言い返した事が気に食わなかったのか、ビューホ様は顔を真っ赤にして叫ぶ。
「そんな事をしたら世間体的に良くないだろう!」
「お言葉を返すようですが、伯爵夫人に平民を侍女として付けるのは世間体的に良いのですか? それなら、新婚当初から愛人を連れ込んでいる旦那様でよろしいのでは? 私の評判も多少は落ちるかもしれませんが、私には一応、友人もおりますし、友人から社交界には正しい話を流してもらいますので」
「た、正しい話だと!?」
「もちろんです。嘘をつく必要はありませんから」
目を伏せて小さく息を吐いてから続ける。
「で、あなたのお好きな方はどちらにいらっしゃるのでしょう? 初夜の晩は言われずとも、その方にお譲りいたします。 私の眠る場所は用意してくださっていますわよね?」
「そ、そんな態度で良いと思ってるのか!? 君が家族から疎まれているのは知っているんだぞ!」
「そうかもしれませんが、ナンルー家のお金を管理していたのは私です。ですから、ここから追い出すと仰るのなら、ナンルー家からこちらに嫁入りする為に用意した持参金は一銭もあなたの手に入らないという事は理解していただけますか?」
持参金は私が用意して私の銀行口座に預けてある。
だから、ビューホ様は持参金のお金を自由に使う事が出来ない。
お金目当てのビューホ様は焦った様な顔をした。
ああ、またやってしまったわ。
こんな性格だから、両親にも姉にも嫌われていたというのに…。
その時、寝室の扉が叩かれ、返事も返していないのに扉が開いたと思うと、白いベビードール姿の女性が中に入ってきた。
この人、どこからそんな格好で歩いてきたのかしら?
「話は終わりましたか? わたし、平民だから礼儀作法がわからなくて、本当にごめんなさい!」
金色のストレートの長い髪にエメラルドグリーンの瞳を持った小麦色の肌の幼い顔立ちの少女は、オドオドしながら私とビューホ様を見た。
可愛らしいし、男性がころりと落ちるのもわかる気がする。
女性の私から見ても可愛いもの。
初日からこんな事になるだなんて思ってもいなかったけれど、実家にいるよりかはまだマシだと思う事にするしかない。
何かと私と姉を比べては両親はうるさかったから。
今のこの状態なら、私は蔑まれる事はなく、相手にされないだけだもの。
無視が辛いというのは赤の他人に無視された時は当てはまらないと私は思っている。
……戸籍上は夫婦だから赤の他人ではないけれど、気持ちは赤の他人だから良いわよね。
「あの、お飾りの妻に関しては承知致しましたが、お飾りの妻の役割を果たす報酬をいただけませんでしょうか?」
「金にがめつい女だな。好きな様に使うが良い。だけど、無駄遣いはするなよ」
「もちろんですわ」
一礼した後、愛人であるフィナさんは瞳をうるませて背の高い私を見上げて聞いてくる。
「本当にわたしを認めて下さるんですか?」
「あなた達は愛し合っているんでしょう?」
「……はい」
「なら、人の恋路の邪魔は出来ないわ」
苦笑してから答えると、フィナさんは申し訳無さそうな顔をする。
「本当にごめんなさい。そのかわり頑張って元気な子供を生みますから育てて下さいね?」
「………」
この件に関しては返答が出来なかった。
ビューホ様はフィナさんとの子供を世間的には私との子供として発表するつもりなんだわ…。
子供に罪はないけれど、どうしたら良いの?
私が育てるべきなの?
私に名前だけの夫と愛人の子を育てられるだろうか…。
パニックになっていると、ビューホ様が言う。
「君は何も考えなくていいし、何もしないでくれ! ただ、お飾りの妻を演じるだけでいいんだ。それから、早く出て行ってくれ! 今日は待ちわびた夜なんだよ!」
「…承知いたしました」
「ごめんなさい……」
フィナさんは私に頭を下げると、ビューホ様に近付いていく。
すると、ビューホ様は彼女を引き寄せ、私に見せつけるようにキスをすると、そのまま彼女を抱き上げベッドに押し倒し、私の方に振り返った。
「見たいのなら見ててもいいんだぞ?」
「駄目よ、やめて」
ビューホ様の言葉を聞いたフィナさんがいやいやとばかりに首を横に振る。
こんなの見ていられないわ。
黙って部屋を出ると、廊下に立っていたメイドと目があった。
メイドは悲しそうな顔をして俯いた後、顔を上げて小さな声で言う。
「お部屋にご案内致します」
「……ありがとう」
こうして、私とビューホ様の初夜の晩は、私にとっては最悪で、ビューホ様にとっては最高の夜となったのだった。
相手は伯爵位を持つビューホ・トライト様だ。
彼の家は私の実家の財力と権力を狙い、私の家は私を家から少しでも早くに追い出したかったという理由で決まった結婚であり、私とビューホ様の間に愛などはない。
トライト家は私を嫁に迎えるというのに「結婚式は挙げるので、手配をしておいてくれ」と言っただけで、何も動こうとはしなかった。
結婚式の段取りも私が手配したし、費用は全てナンルー家が出した。
どうしてそんな事が出来たのかというと、家のお金の管理は私がしていたという事と、私が出ていくのであれば多少はお金をかけても良いという許可がお父様から下りたからだ。
政略結婚に愛がないなんて事はつきものだし、ビューホ様の評判は貴族の間でも良くなかったから、姉にはもっと良い人に嫁がせたかったという事もあるのでしょうね。
女子しかいない学園に通っていた私は、19歳になった今でも初恋というものをした事がない。
それくらい男性と関わる事がなかった。
両親は私の事をナンルー家の恥だと言って、デビュタントもさせてもらえなかったから。
だから、恋に夢を見ていた事は確かだ。
けれど、友人の恋人との破局や婚約者が碌な人間じゃなかったりと、全てが上手くいくものでもないと実感した私は、恋愛結婚ではなく、政略結婚でも良いと思った。
相性が合えば、お互いに思い合えるはずだと思っていた。
こんな私でも必要としてくれる誰かはいるのだと信じたかった。
私より3つ年上のビューホ様は金色のサラサラの髪に碧色の瞳をもつ美丈夫で、私の方はダークブラウンの髪に同じ色の瞳、目は大きい方だけれど少しだけ吊り目のせいで冷たい印象を受けてしまう見た目だ。
結婚式でも愛想笑いが上手く出来ず、笑顔が引きつっていたと思う。
参列していた私の家族は花嫁姿の私を見て、なぜかクスクスと笑っていて、他の参列者が不思議そうにしていたので、とても嫌な気持ちになった。
誓いのキスもなく式を終えた、その日の夜、私の夫になったビューホ様は、寝室に入った私にこう言った。
「俺には小さい頃から思い合っている平民のフィナという人がいる。俺とフィナの間に君が入る隙はない。彼女の事は母上も気に入っているんだ。だから君はお飾りの妻だ。特に何もしなくていい。それから、フィナを君の侍女にするから」
ちょっと待って。
初日からこんな話を聞かされるの?
愛している人がいたのに私と結婚したの?
相手が平民だから結婚できないという理由で?
それにどうして、愛人を私の侍女にしようとするの?
意味がわからない…。
とにかく言わなければいけない事は言うべきだと思って口を開く。
「…侍女の件はお断りします」
「……は?」
「どうして、ビューホ様の好きな人を私の侍女にするんでしょうか? ビューホ様のお傍に置いておけば良いのではないでしょうか」
言い返した事が気に食わなかったのか、ビューホ様は顔を真っ赤にして叫ぶ。
「そんな事をしたら世間体的に良くないだろう!」
「お言葉を返すようですが、伯爵夫人に平民を侍女として付けるのは世間体的に良いのですか? それなら、新婚当初から愛人を連れ込んでいる旦那様でよろしいのでは? 私の評判も多少は落ちるかもしれませんが、私には一応、友人もおりますし、友人から社交界には正しい話を流してもらいますので」
「た、正しい話だと!?」
「もちろんです。嘘をつく必要はありませんから」
目を伏せて小さく息を吐いてから続ける。
「で、あなたのお好きな方はどちらにいらっしゃるのでしょう? 初夜の晩は言われずとも、その方にお譲りいたします。 私の眠る場所は用意してくださっていますわよね?」
「そ、そんな態度で良いと思ってるのか!? 君が家族から疎まれているのは知っているんだぞ!」
「そうかもしれませんが、ナンルー家のお金を管理していたのは私です。ですから、ここから追い出すと仰るのなら、ナンルー家からこちらに嫁入りする為に用意した持参金は一銭もあなたの手に入らないという事は理解していただけますか?」
持参金は私が用意して私の銀行口座に預けてある。
だから、ビューホ様は持参金のお金を自由に使う事が出来ない。
お金目当てのビューホ様は焦った様な顔をした。
ああ、またやってしまったわ。
こんな性格だから、両親にも姉にも嫌われていたというのに…。
その時、寝室の扉が叩かれ、返事も返していないのに扉が開いたと思うと、白いベビードール姿の女性が中に入ってきた。
この人、どこからそんな格好で歩いてきたのかしら?
「話は終わりましたか? わたし、平民だから礼儀作法がわからなくて、本当にごめんなさい!」
金色のストレートの長い髪にエメラルドグリーンの瞳を持った小麦色の肌の幼い顔立ちの少女は、オドオドしながら私とビューホ様を見た。
可愛らしいし、男性がころりと落ちるのもわかる気がする。
女性の私から見ても可愛いもの。
初日からこんな事になるだなんて思ってもいなかったけれど、実家にいるよりかはまだマシだと思う事にするしかない。
何かと私と姉を比べては両親はうるさかったから。
今のこの状態なら、私は蔑まれる事はなく、相手にされないだけだもの。
無視が辛いというのは赤の他人に無視された時は当てはまらないと私は思っている。
……戸籍上は夫婦だから赤の他人ではないけれど、気持ちは赤の他人だから良いわよね。
「あの、お飾りの妻に関しては承知致しましたが、お飾りの妻の役割を果たす報酬をいただけませんでしょうか?」
「金にがめつい女だな。好きな様に使うが良い。だけど、無駄遣いはするなよ」
「もちろんですわ」
一礼した後、愛人であるフィナさんは瞳をうるませて背の高い私を見上げて聞いてくる。
「本当にわたしを認めて下さるんですか?」
「あなた達は愛し合っているんでしょう?」
「……はい」
「なら、人の恋路の邪魔は出来ないわ」
苦笑してから答えると、フィナさんは申し訳無さそうな顔をする。
「本当にごめんなさい。そのかわり頑張って元気な子供を生みますから育てて下さいね?」
「………」
この件に関しては返答が出来なかった。
ビューホ様はフィナさんとの子供を世間的には私との子供として発表するつもりなんだわ…。
子供に罪はないけれど、どうしたら良いの?
私が育てるべきなの?
私に名前だけの夫と愛人の子を育てられるだろうか…。
パニックになっていると、ビューホ様が言う。
「君は何も考えなくていいし、何もしないでくれ! ただ、お飾りの妻を演じるだけでいいんだ。それから、早く出て行ってくれ! 今日は待ちわびた夜なんだよ!」
「…承知いたしました」
「ごめんなさい……」
フィナさんは私に頭を下げると、ビューホ様に近付いていく。
すると、ビューホ様は彼女を引き寄せ、私に見せつけるようにキスをすると、そのまま彼女を抱き上げベッドに押し倒し、私の方に振り返った。
「見たいのなら見ててもいいんだぞ?」
「駄目よ、やめて」
ビューホ様の言葉を聞いたフィナさんがいやいやとばかりに首を横に振る。
こんなの見ていられないわ。
黙って部屋を出ると、廊下に立っていたメイドと目があった。
メイドは悲しそうな顔をして俯いた後、顔を上げて小さな声で言う。
「お部屋にご案内致します」
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こうして、私とビューホ様の初夜の晩は、私にとっては最悪で、ビューホ様にとっては最高の夜となったのだった。
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