元剣帝、再び異世界に剣を向ける ~千年後の世界で貴族に転生したので、好き勝手やってたら家を追い出されました~

日之影ソラ

文字の大きさ
上 下
8 / 26
第一部

8.絶賛活躍中です

しおりを挟む
 山岳エリア。
 アクトスの北門を出た先に、裸の山々が並んでいる。
 馬車を走らせ一時間。
 クエストを受けた俺たちは、山を登り中腹付近までたどり着いていた。

「情報だとこの辺りだが……」
「あれではないか? 他の岩と色が違うように見える」
「ホントだ! じゃあ一発かましちゃっていいかな?」
「まてユミル」
「周囲の確認が先だと思うけど?」
「シトナの言う通りだ」
「う~ シトナちゃんに負けた~」

 クエストメンバーは俺を入れて五人。
 腰に剣を装備したグレン、背中に大きなアックスを担いだリザルド。
 露出多めの服に黒いローブを纏ったユミルと、白い横笛を持っているシトナ。
 全員がそれぞれのジョブにあった装備を整え、服装が変化している。
 もちろん俺を含めて。

「右にも一つある」
「奥にもたぶんあるな」

 シトナとグレンが見つけた岩は全体的に白っぽい。
 他の転がっている岩は肌色が強くて、地面は茶色に近い。
 視認した俺は頷く。

「あれで間違いなさそうだが、どうする? ジーク」
「う~ん。まっ三体なら大丈夫だろ」
「じゃあ撃って良い?」

 ユミルが目を輝かせて聞いてきた。
 俺は小さくため息をこぼし、頷いてから答える。

「良いぞ。ただし、一体は確実に倒してくれ」
「まっかせて!」

 自信満々に前へ出るユミル。
 俺たちは一歩下がり、彼女を後ろから見守る。

「よーし」

 ユミルは両手をパンと合わせ、続けて前にかざす。
 展開された紫色の魔法陣から、バチバチと音が出てエネルギーが収束する。
 紫色の光は丸く太陽のように輝き、今にもあふれ出しそうだ。

「ブロックバスター!」

 エネルギは前方に放たれ、地と空気をえぐりとる。
 ブロックバスターは爆発系魔法の一つで、極限まで圧縮した魔力エネルギーを放ち、着弾地点に大爆発を起こす。
 直撃を受けた色違いの岩は、激しい爆発音と共に粉々に飛び散った。

「相変わらず凄い威力だな」
「全くだ」

 大爆発を眺めながら、俺とグレンはぼそりと呟いた。
 ユミルのジョブは魔法使い。
 その名の通り、魔法を操ることに長けた才能を持ち、中でも彼女は飛びぬけていた。
 悪魔とのハーフだから、というのも一つの理由だが、彼女自身の才能も大きかったのだろう。
 俺たちの中で、最大の攻撃範囲と威力を誇っている。

「うーん、やっぱり気持ちいいな~」

 若干の破壊フェチになりつつあって、少し心配ではあるが……

「主殿。今の衝撃で二体が」

 リザルドが指をさす。
 色違いの岩がのっそりと形を変えて起き上がる。
 あれが今回のターゲット。
 エレメントゴーレムと言う岩から生まれたモンスターだ。
 普段は大きな岩に擬態していて、近づくと襲ってくる。

「俺が奥をやるから、二人は右の一体を頼む」
「了解」
「承知した」
「シトナは二人を優先で援護。ユミルは次の準備だ」
「うん」
「はーい!」

 全員に指示を出し、俺は先陣を切って駆け出す。
 
「オレたちもいくぞ」
「うむ!」

 グレンとリザルドも前に出る。
 リザルドのジョブは戦士、武器は背負ったグレートアックス。
 リザードマンである彼は、人間を遥かに超える筋力と耐久力を有している。
 百キロあるグレートアックスを扱えるのも、彼がリザードマンであるため。
 故に――

「おおおー!」

 彼の一撃は、容易く岩をも砕く。
 リザルドのアックスがゴーレムの右腕を吹き飛ばした。
 その隙をついて、グレンが斬りこむ。
 彼のジョブは剣士だが、扱う獲物はただの剣ではない。
 その剣は刀と呼ばれ、鋭い斬れ味が得り。
 だが……

「っち! やっぱり硬いか」

 岩を圧縮して出来たゴーレムの身体は、斬撃が通りにくい。
 リザルドのようにパワーで砕けないから、剣士には厳しい相手だ。
 
 そこへ笛の音色が響く。
 音色はグレンの刀に【斬撃強化】を付与。

「助かる!」

 強化された刀は、ゴーレムの左腕を斬り裂く。
 音色を奏でているのは、シトナの横笛だ。
 彼女のジョブは吟遊詩人。
 音を奏でることで、味方を強化したり、敵を弱体化させたりできる支援職。
 元々笛を吹くのは上手かったけど、まさかの才能だった。
 最初は戦わせるつもりもなかったのに、今では主戦力になっている。

 シトナはさらに、ゴーレムへ【防御低下】を付与。
 攻撃はさらに通りやすくなり、二人が削っていく。
 しかし、ゴーレムは周囲の岩を吸収して再生出来てしまう。
 核となるコアを破壊しなければ、本当の意味でのダメージは与えられない。

「みんなー! 準備できたよー!」
「グレン殿」
「ああ、一旦下がるぞ」

 そこを補うのは、火力担当のユミル。
 強力な魔法ほど発動に時間がかかり、一度使うと再使用までインターバルがいる。
 彼らはそれを理解し、時間を稼いでいたに過ぎない。
 準備が整った時点で、彼らの勝ちは確定した。

「いっけー!」

 放たれる紫色のエネルギーが大爆発を起こす。
 四人の華麗な連携で、見事エレメントゴーレムを討伐した。

「主殿は?」
「お兄ちゃんならあっち」

 戦いを終え、四人の視線が俺に向けられる。
 俺は一人で戦っていたわけだが――

「――剣の雨よ」

 降り注ぐ無数の剣が、ゴーレムを削っていく。
 剣士だからゴーレムには不利とか、そういう常識は俺には通じない。
 剣の加護で生成した剣は、通常の剣よりも鋭い。
 それを雨のように降らせれば、いずれコアが露出する。

「見つけた」

 そこを斬れば、ゴーレムは簡単に倒せる。
 というような感じに、俺たちは冒険者として活躍していた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

石しか生成出来ないと追放されましたが、それでOKです!

うどん五段
ファンタジー
夏祭り中に異世界召喚に巻き込まれた、ただの一般人の桜木ユリ。 皆がそれぞれ素晴らしいスキルを持っている中、桜木の持つスキルは【石を出す程度の力】しかなく、余りにも貧相なそれは皆に笑われて城から金だけ受け取り追い出される。 この国ではもう直ぐ戦争が始まるらしい……。 召喚された3人は戦うスキルを持っていて、桜木だけが【石を出す程度の能力】……。 確かに貧相だけれど――と思っていたが、意外と強いスキルだったようで!? 「こうなったらこの国を抜け出して平和な国で就職よ!」 気合いを入れ直した桜木は、商業ギルド相手に提案し、国を出て違う場所で新生活を送る事になるのだが、辿り着いた国にて、とある家族と出会う事となる――。 ★暫く書き溜めが結構あるので、一日三回更新していきます! 応援よろしくお願いします! ★カクヨム・小説家になろう・アルファポリスで連載中です。 中国でコピーされていたので自衛です。 「天安門事件」

公爵家次男はちょっと変わりモノ? ~ここは乙女ゲームの世界だから、デブなら婚約破棄されると思っていました~

松原 透
ファンタジー
異世界に転生した俺は、婚約破棄をされるため誰も成し得なかったデブに進化する。 なぜそんな事になったのか……目が覚めると、ローバン公爵家次男のアレスという少年の姿に変わっていた。 生まれ変わったことで、異世界を満喫していた俺は冒険者に憧れる。訓練中に、魔獣に襲われていたミーアを助けることになったが……。 しかし俺は、失敗をしてしまう。責任を取らされる形で、ミーアを婚約者として迎え入れることになった。その婚約者に奇妙な違和感を感じていた。 二人である場所へと行ったことで、この異世界が乙女ゲームだったことを理解した。 婚約破棄されるためのデブとなり、陰ながらミーアを守るため奮闘する日々が始まる……はずだった。 カクヨム様 小説家になろう様でも掲載してます。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

婚約破棄された上に国外追放された聖女はチート級冒険者として生きていきます~私を追放した王国が大変なことになっている?へぇ、そうですか~

夏芽空
ファンタジー
無茶な仕事量を押し付けられる日々に、聖女マリアはすっかり嫌気が指していた。 「聖女なんてやってられないわよ!」 勢いで聖女の杖を叩きつけるが、跳ね返ってきた杖の先端がマリアの顎にクリーンヒット。 そのまま意識を失う。 意識を失ったマリアは、暗闇の中で前世の記憶を思い出した。 そのことがきっかけで、マリアは強い相手との戦いを望むようになる。 そしてさらには、チート級の力を手に入れる。 目を覚ましたマリアは、婚約者である第一王子から婚約破棄&国外追放を命じられた。 その言葉に、マリアは大歓喜。 (国外追放されれば、聖女という辛いだけの役目から解放されるわ!) そんな訳で、大はしゃぎで国を出ていくのだった。 外の世界で冒険者という存在を知ったマリアは、『強い相手と戦いたい』という前世の自分の願いを叶えるべく自らも冒険者となり、チート級の力を使って、順調にのし上がっていく。 一方、マリアを追放した王国は、その軽率な行いのせいで異常事態が発生していた……。

追放された回復術師は、なんでも『回復』できて万能でした

新緑あらた
ファンタジー
死闘の末、強敵の討伐クエストを達成した回復術師ヨシュアを待っていたのは、称賛の言葉ではなく、解雇通告だった。 「ヨシュア……てめえはクビだ」 ポーションを湯水のように使える最高位冒険者になった彼らは、今まで散々ポーションの代用品としてヨシュアを利用してきたのに、回復術師は不要だと考えて切り捨てることにしたのだ。 「ポーションの下位互換」とまで罵られて気落ちしていたヨシュアだったが、ブラックな労働をしいるあのパーティーから解放されて喜んでいる自分に気づく。 危機から救った辺境の地方領主の娘との出会いをきっかけに、彼の世界はどんどん広がっていく……。 一方、Sランク冒険者パーティーはクエストの未達成でどんどんランクを落としていく。 彼らは知らなかったのだ、ヨシュアが彼らの傷だけでなく、状態異常や武器の破損など、なんでも『回復』していたことを……。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

異世界転生した時に心を失くした私は貧民生まれです

ぐるぐる
ファンタジー
前世日本人の私は剣と魔法の世界に転生した。 転生した時に感情を欠落したのか、生まれた時から心が全く動かない。 前世の記憶を頼りに善悪等を判断。 貧民街の狭くて汚くて臭い家……家とはいえないほったて小屋に、生まれた時から住んでいる。 2人の兄と、私と、弟と母。 母親はいつも心ここにあらず、父親は所在不明。 ある日母親が死んで父親のへそくりを発見したことで、兄弟4人引っ越しを決意する。 前世の記憶と知識、魔法を駆使して少しずつでも確実にお金を貯めていく。

処理中です...