傍若無人な姉の代わりに働かされていた妹、辺境領地に左遷されたと思ったら待っていたのは王子様でした!? ~無自覚天才錬金術師の辺境街づくり~

日之影ソラ

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「優秀なお姉様なら、私よりもお仕事を任されて、頼られているのでしょうね」
「ええ、当然でしょう? 私にできないことなんてないわ。その気になればなんだってやれるのよ!」

 その気になれば……遅すぎましたね。
 私たちの職業は、才能だけでやっていけるほど簡単じゃないんです。
 毎日勉強して、試して、失敗して……そういう積み重ねが明日の自分を作っていく。
 それに気づいていれば、違った立場で再会できたかもしれない。

「なら、何の心配もいりませんね」
「ええ、ルミナの癖に私の心配なんて生意気よ」
「すみません。それじゃ、私はこれからも殿下の元で頑張りますから。お姉様も頑張ってください」
「言われるまでもないわよ!」

 お姉様は声を荒げた。
 私は怒りを通り越して、同情する。
 プライドが高いと大変だ。
 こんな時、誰かに頼ることもできない。
 弱さを見せることができない。
 今ならわかる。
 一人でも生きていけることと、一人きりで生きることはまったく違うことを。
 人はいつだって、他人と関わらずにはいられないのだと。

「……いつか、気づけるといいですね」
「何よ?」
「いいえ、何も。それでは、さようなら――お姉様」

 もしも次に会う機会があれば、また同じ質問をしよう。
 変わりありませんか?
 彼女がどう変わるのか、変わらないのか。
 期待はしていないけど、気にはしておこうと思う。
 どんなに仲が悪くとも、私にとってもっとも古く、最も近しい相手は……家族だから。

 私はお姉様の隣を通り過ぎる。
 恐怖はない。
 ただ自然と、当たり前のように歩き去った。
 私は振り返らない。
 その必要すらなかった。
 
 曲がり角を曲がる。

 二人目の遭遇だ。

「室長!」
「ルミナさん」

 次に出会ったのは、宮廷錬金術師時代の上司。
 私たち錬金術師を束ねるトップ。
 正直、この人のことはよく知らない。
 単なる上司と部下の関係でしかなかったし、必要以上に関わることもなかった。
 ただあの頃は、気づいてくれないことに少し苛立っていたっけ?
 私がお姉様の仕事を肩代わりしていることに。

 でも今は――

「あの、ありがとうございました!」
「――? 急にどうしたのかしら?」
「殿下から聞きました! 私を推薦してくれたこと! それに仕事のことも、気づいて調整してくださっていたこと!」
「――そう」

 室長は目を逸らす。

「感謝されることはないわ。私はただ、業務に支障がない範囲で調整しただけ。あなたを推薦したのも、あなたが適任だと思ったからよ」
「はい! だから、嬉しかったです!」

 殿下だけじゃなかった。
 私のことを見ていてくれた人は、ここにもいる。
 室長の推薦がなければ、私は選ばれなかったかもしれない。
 仕事の調整のおかげで、大変だったけど、ギリギリ倒れずにここまで来られた。
 今はただ、感謝を伝えたいと思う。
 それ以外の感情はない。

「……どう? 新しい職場は」
「最高の職場です! ずっとここで働きたいと思えるくらいに」
「そう、ならよかったわ」

 室長が笑う。
 初めて見る優しい笑顔だった。

「期待しているわ。これからも頑張りなさい」
「はい! 頑張ります!」

 私を選んでくれたこと、間違いだったと思われないように。
 私でよかったと、思ってもらえるように。
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