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「私の願いはただ一つ、レント殿下の寵愛を受けることです。それ以外はどうでもいい」
「……」
セミラミスの恐ろしさを痛感する。
彼女は根っからの魔女だ。
フレーリアさんに芽生えた恋心を上手く利用して、レントに執着する怪人を作り上げてしまった。
今から思えば、彼女に国を奪われたのも必然だったのかもしれない。
他人を動かすという点において、彼女ほど優れた存在はいないだろう。
まさに人心掌握のスペシャリストだ。
ただ……。
「レントの気を引くために国を裏切るのは、やりすぎよ」
「関係ありません。私が裏切ったなど、証拠は残らない。代わりにあなたが罰を受ける。あなたは魔女なのですよ? さぁ、すぐにでも大衆に晒して、悪しき魔女として罰を受けてください」
「その証拠を使って、かしら?」
「はい」
「魔女の手を借りて調べた情報に信憑性なんて生まれない。何より、失念していませんか?」
どんな証拠を手に入れようと、皆が信じなければ意味がない。
重要なのは内容よりも、誰が示すかだ。
今の彼女の発言なら、皆が彼女を信じるだろう。
ならば簡単だ。
彼女の信頼を、落とせばいい。
例えば、彼の手を借りて。
「まさか……」
「私一人で来るわけないでしょう? 当然、一緒よ」
ルイスの魔法で隠れていたレントが姿を見せる。
背後には怯えたルイスも一緒だ。
「ふ、フレーリアさんがこんなに恐ろしい人だったなんて……」
「残念だよ。フレーリア」
「レント殿下……聞いてしまったのですね」
「ああ。悪いが全て聞いた。その上で、俺は言うべきなのだろう」
さて、彼女にとってそれは、もっとも痛い言葉だろう。
食らいなさい。
「俺は君に、何の感情も抱いていない。君を選ぶことなど、永遠にない」
「――!」
それは、それだけは言ってほしくなかった。
彼女は初めて、笑顔の仮面を剥がす。
絶望と、悲しみに染まった表情は、見ているこちらも苦しくなる。
けれど正しい。
彼女の悪事を正すためには、この一言が必要だった。
「ふ、ふふ、ふふははははははははははははは!」
「ひぃ! 壊れました!」
「わかっていましたわ! あなたはそういう人だから、あの魔女の手を借りた。もう少しだったのに……ああ、残念。手に入らないのなら……!」
「――!」
フレーリアさんはどこからかナイフを取り出し、レントに襲い掛かる。
手に入らないなら殺して永遠を共に。
なんてことを考えるのは、最初から予想していた。
「無駄よ」
私は指先から空気の弾を発射し、彼女のナイフを弾いた。
「あなたは! あなたさえいなければ!」
「逆恨みにもほどがあるわね。あなたの気持ちは一方通行なのよ。いつまで経っても……」
自分のことしか考えていない。
そんな人間に、誰かの心を掴むことなんてできない。
「……」
セミラミスの恐ろしさを痛感する。
彼女は根っからの魔女だ。
フレーリアさんに芽生えた恋心を上手く利用して、レントに執着する怪人を作り上げてしまった。
今から思えば、彼女に国を奪われたのも必然だったのかもしれない。
他人を動かすという点において、彼女ほど優れた存在はいないだろう。
まさに人心掌握のスペシャリストだ。
ただ……。
「レントの気を引くために国を裏切るのは、やりすぎよ」
「関係ありません。私が裏切ったなど、証拠は残らない。代わりにあなたが罰を受ける。あなたは魔女なのですよ? さぁ、すぐにでも大衆に晒して、悪しき魔女として罰を受けてください」
「その証拠を使って、かしら?」
「はい」
「魔女の手を借りて調べた情報に信憑性なんて生まれない。何より、失念していませんか?」
どんな証拠を手に入れようと、皆が信じなければ意味がない。
重要なのは内容よりも、誰が示すかだ。
今の彼女の発言なら、皆が彼女を信じるだろう。
ならば簡単だ。
彼女の信頼を、落とせばいい。
例えば、彼の手を借りて。
「まさか……」
「私一人で来るわけないでしょう? 当然、一緒よ」
ルイスの魔法で隠れていたレントが姿を見せる。
背後には怯えたルイスも一緒だ。
「ふ、フレーリアさんがこんなに恐ろしい人だったなんて……」
「残念だよ。フレーリア」
「レント殿下……聞いてしまったのですね」
「ああ。悪いが全て聞いた。その上で、俺は言うべきなのだろう」
さて、彼女にとってそれは、もっとも痛い言葉だろう。
食らいなさい。
「俺は君に、何の感情も抱いていない。君を選ぶことなど、永遠にない」
「――!」
それは、それだけは言ってほしくなかった。
彼女は初めて、笑顔の仮面を剥がす。
絶望と、悲しみに染まった表情は、見ているこちらも苦しくなる。
けれど正しい。
彼女の悪事を正すためには、この一言が必要だった。
「ふ、ふふ、ふふははははははははははははは!」
「ひぃ! 壊れました!」
「わかっていましたわ! あなたはそういう人だから、あの魔女の手を借りた。もう少しだったのに……ああ、残念。手に入らないのなら……!」
「――!」
フレーリアさんはどこからかナイフを取り出し、レントに襲い掛かる。
手に入らないなら殺して永遠を共に。
なんてことを考えるのは、最初から予想していた。
「無駄よ」
私は指先から空気の弾を発射し、彼女のナイフを弾いた。
「あなたは! あなたさえいなければ!」
「逆恨みにもほどがあるわね。あなたの気持ちは一方通行なのよ。いつまで経っても……」
自分のことしか考えていない。
そんな人間に、誰かの心を掴むことなんてできない。
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