冷徹女王の中身はモノグサ少女でした ~魔女に呪われ国を奪われた私ですが、復讐とか面倒なのでのんびりセカンドライフを目指します~

日之影ソラ

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「ありえない! ありえないわ! 私のほうがずっと優れているのよ! あんな女よりもずっと……レント殿下ならきっとわかってくるはず」

 月下会の部屋は、実質的に彼女専用の空間だ。
 許可なく誰も入っては来ない。
 夜分遅い時間であっても、誰も文句を言わない。
 彼女にとって理想の城である。
 彼女は学園では優れた生徒を演じている。
 皆が彼女に期待し、信頼している。
 故に誰も、思いもしないだろう。
 この部屋で、彼女が何をしているのか。

「ふふ、ふふふっ……リベル……いいえ、悪い魔女さん。私の王子様を奪おうなんて許さないわ」

 彼女の手元には、リベルについての報告書が作成されつつあった。
 すでに彼女は知っているのだ。
 リベルが魔女であることを。
 そう、彼女こそが、セミラミスと手を組んだ売国者である。

「やっぱりあなただったのね」
「――!」

 そこへ現れた人物に、フレーリアは驚愕する。

「リベル……さん?」
「こんばんは。今夜は月が綺麗ね」

  ◇◇◇

 私は見逃さなかった。
 レントが私のことを褒めた時、彼女の表情がわずかに歪んだことを。
 レントの眼も見逃さなかった。
 揺れることのない彼女の魂が、一瞬だけ揺らいだことを。

 かまかけは成功したらしい。
 お陰で、バッチリな現場を押さえることができた。

「セミラミスと繋がっているのはあなたね」
「どうしてあなたがここに?」
「見張っていたのよ。あなたが彼女と通じている証拠を取り出す瞬間を」
 
 フレーリアは視線を下げる。
 手元に握るのは、完成手前のリベルに関する資料。
 だが、それはありえない。
 なぜなら彼女の情報など、知っているのはごく一部の人間だけだからだ。

「ずっと疑問ではあったのよ。会長だからって、生徒全員分の資料を作る必要があるのか。簡単なものならさておき、そこまで細かな資料なんて学園生活に不必要よ」
「疑っていたのですね……最初から」
「ええ、私に接触してきた時から」
「あれはうかつでした。つい声をかけてしまったのですよ」
「私がレントと仲良くしていたから?」
「――!」

 そう、彼女は最初から知っていたのだ。
 おそらくセミラミスから受け取った情報に、私がレントの指示で動いていることも記載されていた。
 どうやら厳密な正体までは、知られていないようだけど。
 彼女が私を魔女だと言った瞬間に、疑問は確信へと変わった。

「ふふっ、さすがは人外の魔女さんですね。私の考えなんてお見通しですか」
「ええ、わかりやすかったわよ。あなたはレントのことになると、途端に人間らしくなったから」
「不愉快ですね。先ほどから呼び捨てで、まるで親しいような」
「親しいのよ。事実ね」
「ふざけないで!」

 彼女は声を荒げる。
 およそ普段は見せない激昂に、思わず圧倒されかける。

「あの方は誰にでも優しいの! 勘違いさせてしまうほど! あなたが特別なんかじゃないわ。特別になるのはこの私! 私しかいないのよ!」
「……それが、セミラミスに協力した理由かしら?」
「……ふふっ、ええ」

 二人の出会いは、彼女がレントに恋をした翌日だった。
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