冷徹女王の中身はモノグサ少女でした ~魔女に呪われ国を奪われた私ですが、復讐とか面倒なのでのんびりセカンドライフを目指します~

日之影ソラ

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 フレーリア・エリーシュは天才である。
 王国内政を担う大臣の一角を任されたエリーシュ公爵家の長女として生まれた彼女は、物心つく以前から頭角を現していた。
 一才になる前から言語を理解し、物事の理解を始めていた。
 勉学は努力ではなく、空気のようにあって当然。
 彼女はあらゆる分野の知識、技術をあっという間に身につけてしまう。
 
 学園に通う生徒たちの頂点。
 月下会の会長になることは必然だった。
 本来ならば会長を支える役員数名が存在し、彼らがあってこそ運営は成立する。
 しかし彼女には不要だった。
 不必要、足手まといでしかなかったのだ。
 なんでも完璧に熟す彼女にとって、他人の助けなど邪魔でしかなかった。
 故に彼女は孤高の存在としてあり続ける。

 そんな彼女に欠点あるとすれば、他人を信用していないこと。
 他者は自身よりも劣っている。
 故に関わる必要も、仲良くする価値などない。
 だから彼女には、およそ友人と呼べる存在はいなかった。
 それを悲しいとは思わない。
 交友関係などなくとも、貴族として振る舞い、理想とする令嬢を演じることで、多くの人が彼女を支持するのだから。
 そう、彼女は根本的に、他者を見下していた。

 そんな彼女を変えるきっかけとなったのは、とあるパーティーだった。
 珍しく彼女は体調を崩していた。
 それを表は出さず、最後まで乗り切るつもりでいた。
 しかし、肉体の限界には抗えない。
 誰も彼女が苦しんでいることなど気づかない中で、たった一人、手を差し伸べてくれた人がいた。

「大丈夫かい? 顔色が優れないようだけど」
「――! レント殿下」

 それこそが、アルザード王国第二王子、レント・アルザードだった。
 彼女は初めて、他人の優しさに触れた。
 握った手は温かく、凍っていた心に沁み込むようだった。
 瞬間、彼女の中で何かが弾けた。

(決めたわ! 私は、この人のために生きよう)

 自身が持つ能力の全てを、捧げるべき相手だと確信した。
 他人など無能の集団だと思っていた彼女にとって、レントとの出会いは奇跡だった。
 そう、彼女を変えてしまったのは……。

 レントへの恋心の爆誕である。

 その日以来、彼女はレントのことを想い続けた。
 レントの前で理想の女性を演じ続けた。
 いつか彼が、自分の気持ちに気づいてくれる日を信じて……。
 彼の一番になれる日を夢想して。

 それなのに――

「リベル……リベルリベルリベル!」

 許せない。
 私の大切な王子様に女の色香を用いた不届きもの。
 
 彼女の心は怒りに燃えていた。
 リベルがレントを紹介し、レントは彼女に手を回しながら、一番信頼している女性だと口にした。
 信頼している、女性だ。
 その一言が、フレーリアの自尊心を傷つけた。
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