77 / 80
8-7
しおりを挟む
フレーリア・エリーシュは天才である。
王国内政を担う大臣の一角を任されたエリーシュ公爵家の長女として生まれた彼女は、物心つく以前から頭角を現していた。
一才になる前から言語を理解し、物事の理解を始めていた。
勉学は努力ではなく、空気のようにあって当然。
彼女はあらゆる分野の知識、技術をあっという間に身につけてしまう。
学園に通う生徒たちの頂点。
月下会の会長になることは必然だった。
本来ならば会長を支える役員数名が存在し、彼らがあってこそ運営は成立する。
しかし彼女には不要だった。
不必要、足手まといでしかなかったのだ。
なんでも完璧に熟す彼女にとって、他人の助けなど邪魔でしかなかった。
故に彼女は孤高の存在としてあり続ける。
そんな彼女に欠点あるとすれば、他人を信用していないこと。
他者は自身よりも劣っている。
故に関わる必要も、仲良くする価値などない。
だから彼女には、およそ友人と呼べる存在はいなかった。
それを悲しいとは思わない。
交友関係などなくとも、貴族として振る舞い、理想とする令嬢を演じることで、多くの人が彼女を支持するのだから。
そう、彼女は根本的に、他者を見下していた。
そんな彼女を変えるきっかけとなったのは、とあるパーティーだった。
珍しく彼女は体調を崩していた。
それを表は出さず、最後まで乗り切るつもりでいた。
しかし、肉体の限界には抗えない。
誰も彼女が苦しんでいることなど気づかない中で、たった一人、手を差し伸べてくれた人がいた。
「大丈夫かい? 顔色が優れないようだけど」
「――! レント殿下」
それこそが、アルザード王国第二王子、レント・アルザードだった。
彼女は初めて、他人の優しさに触れた。
握った手は温かく、凍っていた心に沁み込むようだった。
瞬間、彼女の中で何かが弾けた。
(決めたわ! 私は、この人のために生きよう)
自身が持つ能力の全てを、捧げるべき相手だと確信した。
他人など無能の集団だと思っていた彼女にとって、レントとの出会いは奇跡だった。
そう、彼女を変えてしまったのは……。
レントへの恋心の爆誕である。
その日以来、彼女はレントのことを想い続けた。
レントの前で理想の女性を演じ続けた。
いつか彼が、自分の気持ちに気づいてくれる日を信じて……。
彼の一番になれる日を夢想して。
それなのに――
「リベル……リベルリベルリベル!」
許せない。
私の大切な王子様に女の色香を用いた不届きもの。
彼女の心は怒りに燃えていた。
リベルがレントを紹介し、レントは彼女に手を回しながら、一番信頼している女性だと口にした。
信頼している、女性だ。
その一言が、フレーリアの自尊心を傷つけた。
王国内政を担う大臣の一角を任されたエリーシュ公爵家の長女として生まれた彼女は、物心つく以前から頭角を現していた。
一才になる前から言語を理解し、物事の理解を始めていた。
勉学は努力ではなく、空気のようにあって当然。
彼女はあらゆる分野の知識、技術をあっという間に身につけてしまう。
学園に通う生徒たちの頂点。
月下会の会長になることは必然だった。
本来ならば会長を支える役員数名が存在し、彼らがあってこそ運営は成立する。
しかし彼女には不要だった。
不必要、足手まといでしかなかったのだ。
なんでも完璧に熟す彼女にとって、他人の助けなど邪魔でしかなかった。
故に彼女は孤高の存在としてあり続ける。
そんな彼女に欠点あるとすれば、他人を信用していないこと。
他者は自身よりも劣っている。
故に関わる必要も、仲良くする価値などない。
だから彼女には、およそ友人と呼べる存在はいなかった。
それを悲しいとは思わない。
交友関係などなくとも、貴族として振る舞い、理想とする令嬢を演じることで、多くの人が彼女を支持するのだから。
そう、彼女は根本的に、他者を見下していた。
そんな彼女を変えるきっかけとなったのは、とあるパーティーだった。
珍しく彼女は体調を崩していた。
それを表は出さず、最後まで乗り切るつもりでいた。
しかし、肉体の限界には抗えない。
誰も彼女が苦しんでいることなど気づかない中で、たった一人、手を差し伸べてくれた人がいた。
「大丈夫かい? 顔色が優れないようだけど」
「――! レント殿下」
それこそが、アルザード王国第二王子、レント・アルザードだった。
彼女は初めて、他人の優しさに触れた。
握った手は温かく、凍っていた心に沁み込むようだった。
瞬間、彼女の中で何かが弾けた。
(決めたわ! 私は、この人のために生きよう)
自身が持つ能力の全てを、捧げるべき相手だと確信した。
他人など無能の集団だと思っていた彼女にとって、レントとの出会いは奇跡だった。
そう、彼女を変えてしまったのは……。
レントへの恋心の爆誕である。
その日以来、彼女はレントのことを想い続けた。
レントの前で理想の女性を演じ続けた。
いつか彼が、自分の気持ちに気づいてくれる日を信じて……。
彼の一番になれる日を夢想して。
それなのに――
「リベル……リベルリベルリベル!」
許せない。
私の大切な王子様に女の色香を用いた不届きもの。
彼女の心は怒りに燃えていた。
リベルがレントを紹介し、レントは彼女に手を回しながら、一番信頼している女性だと口にした。
信頼している、女性だ。
その一言が、フレーリアの自尊心を傷つけた。
9
お気に入りに追加
390
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~
きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。
洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。
レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。
しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。
スキルを手にしてから早5年――。
「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」
突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。
森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。
それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。
「どうせならこの森で1番派手にしようか――」
そこから更に8年――。
18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。
「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」
最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。
そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
スキルで最強神を召喚して、無双してしまうんだが〜パーティーを追放された勇者は、召喚した神達と共に無双する。神達が強すぎて困ってます〜
東雲ハヤブサ
ファンタジー
勇者に選ばれたライ・サーベルズは、他にも選ばれた五人の勇者とパーティーを組んでいた。
ところが、勇者達の実略は凄まじく、ライでは到底敵う相手ではなかった。
「おい雑魚、これを持っていけ」
ライがそう言われるのは日常茶飯事であり、荷物持ちや雑用などをさせられる始末だ。
ある日、洞窟に六人でいると、ライがきっかけで他の勇者の怒りを買ってしまう。
怒りが頂点に達した他の勇者は、胸ぐらを掴まれた後壁に投げつけた。
いつものことだと、流して終わりにしようと思っていた。
だがなんと、邪魔なライを始末してしまおうと話が進んでしまい、次々に攻撃を仕掛けられることとなった。
ハーシュはライを守ろうとするが、他の勇者に気絶させられてしまう。
勇者達は、ただ痛ぶるように攻撃を加えていき、瀕死の状態で洞窟に置いていってしまった。
自分の弱さを呪い、本当に死を覚悟した瞬間、視界に突如文字が現れてスキル《神族召喚》と書かれていた。
今頃そんなスキル手を入れてどうするんだと、心の中でつぶやくライ。
だが、死ぬ記念に使ってやろうじゃないかと考え、スキルを発動した。
その時だった。
目の前が眩く光り出し、気付けば一人の女が立っていた。
その女は、瀕死状態のライを最も簡単に回復させ、ライの命を救って。
ライはそのあと、その女が神達を統一する三大神の一人であることを知った。
そして、このスキルを発動すれば神を自由に召喚出来るらしく、他の三大神も召喚するがうまく進むわけもなく......。
これは、雑魚と呼ばれ続けた勇者が、強き勇者へとなる物語である。
※小説家になろうにて掲載中
勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!
石のやっさん
ファンタジー
皆さまの応援のお陰でなんと【書籍化】しました。
応援本当に有難うございました。
イラストはサクミチ様で、アイシャにアリス他美少女キャラクターが絵になりましたのでそれを見るだけでも面白いかも知れません。
書籍化に伴い、旧タイトル「パーティーを追放された挙句、幼馴染も全部取られたけど「ざまぁ」なんてしない!だって俺の方が幸せ確定だからな!」
から新タイトル「勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!」にタイトルが変更になりました。
書籍化に伴いまして設定や内容が一部変わっています。
WEB版と異なった世界が楽しめるかも知れません。
この作品を愛して下さった方、長きにわたり、私を応援をし続けて下さった方...本当に感謝です。
本当にありがとうございました。
【以下あらすじ】
パーティーでお荷物扱いされていた魔法戦士のケインは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことを悟った彼は、一人さった...
ここから、彼は何をするのか? 何もしないで普通に生活するだけだ「ざまぁ」なんて必要ない、ただ生活するだけで幸せなんだ...俺にとって勇者パーティーも幼馴染も離れるだけで幸せになれるんだから...
第13回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞作品。
何と!『現在3巻まで書籍化されています』
そして書籍も堂々完結...ケインとは何者か此処で正体が解ります。
応援、本当にありがとうございました!
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
嫌味なエリート治癒師は森の中で追放を宣言されて仲間に殺されかけるがギフト【痛いの痛いの飛んでいけぇ〜】には意外な使い方があり
竹井ゴールド
ファンタジー
森の中で突然、仲間に追放だと言われた治癒師は更に、
「追放出来ないなら死んだと報告するまでだ、へっへっへっ」
と殺されそうになる。
だが、【痛いの痛いの飛んでけぇ〜】には【無詠唱】、【怪我移植(移植後は自然回復のみ)】、【発動予約】等々の能力があり·······
【2023/1/3、出版申請、2023/2/3、慰めメール】
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~
夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。
しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。
とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。
エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。
スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。
*小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
さんざん馬鹿にされてきた最弱精霊使いですが、剣一本で魔物を倒し続けたらパートナーが最強の『大精霊』に進化したので逆襲を始めます。
ヒツキノドカ
ファンタジー
誰もがパートナーの精霊を持つウィスティリア王国。
そこでは精霊によって人生が決まり、また身分の高いものほど強い精霊を宿すといわれている。
しかし第二王子シグは最弱の精霊を宿して生まれたために王家を追放されてしまう。
身分を剥奪されたシグは冒険者になり、剣一本で魔物を倒して生計を立てるようになる。しかしそこでも精霊の弱さから見下された。ひどい時は他の冒険者に襲われこともあった。
そんな生活がしばらく続いたある日――今までの苦労が報われ精霊が進化。
姿は美しい白髪の少女に。
伝説の大精霊となり、『天候にまつわる全属性使用可』という規格外の能力を得たクゥは、「今まで育ててくれた恩返しがしたい!」と懐きまくってくる。
最強の相棒を手に入れたシグは、今まで自分を見下してきた人間たちを見返すことを決意するのだった。
ーーーーーー
ーーー
閲覧、お気に入り登録、感想等いつもありがとうございます。とても励みになります!
※2020.6.8お陰様でHOTランキングに載ることができました。ご愛読感謝!
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる