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 了承を得たことで、山積みになった資料に手を伸ばす。
 生徒一人あたり、大体十枚くらいの冊子になっていた。
 身分の高い生徒ほど、家柄のことや記入内容が多いため、分厚くなるのだろう。
 これに全て目を通すのはかなり時間がかかる。
 一旦、卒業生は除外しよう。
 セミラミスの口ぶりと、ルイスの存在を加味しても、彼女より上の学年は考えにくい。

「今年の一年生と二年生に絞って探すわ」
「了解しました!」

 まずは仕分け作業だ。
 最上級生と、卒業生の資料は取り除いていく。
 これで資料の量は半分程度になるだろう。

「うーん……」
「まずは仕分けが先よ」
「わかっているんですけど、自分のがないかなーって気になって」
「そういうのも後で……いえ、見つけたら教えて」
「はい!」

 彼女は、曲がりなりにも学園に潜入していた魔女だ。
 資料に彼女のことがどこまで記入されているのかが気になる。
 そもそも、どうやってこんな資料を作ったのかが疑問なのだが……。

「ありました!」
「見せて」

 二人でルイスの資料に目を通す。
 記されているのは家族構成から、彼女が養子になった経緯。
 さらには養子になる前、ユーラスティア王国で暮らしていたことも記されている。

「うわぁ、なんか恥ずかしいです」
「そういうのはいいから。これ、全部当たっているのね」
「はい。私はここに来るまで、ユーラスティア王国にいました。両親はいなくて、私のことを拾ってくれた老夫婦に育ててもらったんですけど、二人も病気と寿命で亡くなって……」
「そう」

 魔女がどうやって生まれるのか興味があった。
 彼女の場合は、両親の記憶がないらしい。
 思っていたより悲しい過去を持っていて、反応に困る。

「当てもなくて困っていた時に、あの人に拾われたんです」
「それについては書いてないわね」
「ですね。魔法を使ったからだと思います」

 資料には辻褄が合うように、偽の情報が記載されていた。
 ただし完全に偽者偽物、というわけでもない。
 一部を改ざんし、大枠の流れは沿っている。
 当然だが、ルイスが魔女であることも記載されていなかった。

 それに……。

「私の資料はないのね」
「それはこれから作成するところですので」

 そう言いながら、フレーリアさんがちょうど戻ってきた。
 会話は二人にしか聞こえない声量だったが、近づいたことで今の発言だけ聞こえたのだろう。

「これからといことは、作っているのはフレーリアさんですか?」
「ええ。いろんな方や、実家にも協力してもらっています」
「す、凄いですね!」
「ふふっ、これもよき学園作りのためですよ。だから、リベルさん」

 フレーリアさんは笑顔のまま、私に顔を近づける。

「あなたのことも、たくさん教えてくださいね」
「――そうですね」

 直感的に思う。
 この人は……敵にしないほうがいいと。
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