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翌日。
私とルイスはとある部屋に招かれていた。
それは学園内でも特別な場所。
というのも、誘ってくれたのはフレーリアだった。
「こ、ここです!」
「なんでそんなに緊張しているのよ」
「だ、だって緊張しますよ! ここはあの月下会の会議室ですよ!」
あのとか言われても、私には馴染みがないから凄さがまったく伝わらない。
学園の最上階フロアの一室に、それは設けられていた。
学園生の代表が集う場所、月下会。
その会長であるフレーリアの許可がなければ、職員ですら簡単には入れない聖域。
「なんですよ!」
「……要するに無法地帯ってことね」
生徒会が学園と同等の権力を持って好き放題しているとか。
そういう設定はフィクションの中だけだ。
実際にそんな力はない。
ただしここは異世界、フィクションが現実になる。
私は小さくため息をこぼし、ノックをする。
「――どうぞ」
中からフレーリアの声がして、私たちは部屋に入る。
そこは学園の一室とは思えないほど豪勢で、眩しいくらいに金色がたくさんある部屋だった。
長いテーブルの先に、仰々しい椅子に座った彼女がいる。
「おおー」
「いらっしゃいませ。待っていました」
「凄いですねここ! キラキラしていますよ!」
「成金の部屋みたいね」
「ちょっ、リベルさん!」
つい本音が口から出てしまった。
誤魔化すのも無意味なので、開き直って笑って見せる。
すると、フレーリアも笑顔を返す。
「私もそう思います」
「え?」
「ここの内装は、私が会長になる前に作られたものです。私はもっと地味で落ち着いた雰囲気のほうが好きですので」
「そうだったんですか!」
よかった。
彼女の趣味で成金部屋になっているわけじゃないのか。
先代はきっと、お金と権力が大好きな、ザ、貴族みたいな人だったに違いない。
「こちらにお座りください。今、お茶を淹れます」
「え? フレーリアさんが淹れてくれるんですか?」
「ふふっ、こう見えて得意なんですよ」
「意外ですね。貴族のご令嬢なら、御付きの方でもいらっしゃるのかと思いました」
紅茶を淹れる手を止めないフレーリアに質問した。
彼女はニコッと笑いながら答える。
「この学園に所属している間は、私も一人の生徒です。身の回りのこともできないようでは、立派な大人になれません。一通りのことは自分でやれるようにしているのです」
「おお……凄いですね」
「あまり貴族らしくない考え方ですね」
「ふふっ、そうかもしれませんね」
彼女は淹れた紅茶を私たちに提供した。
「自らを律し、自らの力で道を切り開く。それがエリーシュ公爵家が代々継承する考え方なのです」
「そうなのですね」
貴族らしくないと言ったけど、訂正しておこう。
他人に頼らず、自分一人の力で成立させる。
その傲慢さたるや、まさに貴族らしい考え方だ。
私とルイスはとある部屋に招かれていた。
それは学園内でも特別な場所。
というのも、誘ってくれたのはフレーリアだった。
「こ、ここです!」
「なんでそんなに緊張しているのよ」
「だ、だって緊張しますよ! ここはあの月下会の会議室ですよ!」
あのとか言われても、私には馴染みがないから凄さがまったく伝わらない。
学園の最上階フロアの一室に、それは設けられていた。
学園生の代表が集う場所、月下会。
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「なんですよ!」
「……要するに無法地帯ってことね」
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そういう設定はフィクションの中だけだ。
実際にそんな力はない。
ただしここは異世界、フィクションが現実になる。
私は小さくため息をこぼし、ノックをする。
「――どうぞ」
中からフレーリアの声がして、私たちは部屋に入る。
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「おおー」
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つい本音が口から出てしまった。
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すると、フレーリアも笑顔を返す。
「私もそう思います」
「え?」
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「そうだったんですか!」
よかった。
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「こちらにお座りください。今、お茶を淹れます」
「え? フレーリアさんが淹れてくれるんですか?」
「ふふっ、こう見えて得意なんですよ」
「意外ですね。貴族のご令嬢なら、御付きの方でもいらっしゃるのかと思いました」
紅茶を淹れる手を止めないフレーリアに質問した。
彼女はニコッと笑いながら答える。
「この学園に所属している間は、私も一人の生徒です。身の回りのこともできないようでは、立派な大人になれません。一通りのことは自分でやれるようにしているのです」
「おお……凄いですね」
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「ふふっ、そうかもしれませんね」
彼女は淹れた紅茶を私たちに提供した。
「自らを律し、自らの力で道を切り開く。それがエリーシュ公爵家が代々継承する考え方なのです」
「そうなのですね」
貴族らしくないと言ったけど、訂正しておこう。
他人に頼らず、自分一人の力で成立させる。
その傲慢さたるや、まさに貴族らしい考え方だ。
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