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 極力関わらないほうがいい。
 そう思っていた相手と、こんな場所で遭遇する。

「ふ、フレーリアさん!」
「……」
「こんにちは。こんな場所で人とお会いするなんて思いませんでした」

 フレーリアはニコリと微笑む。
 ルイスは驚いているだけだが、当然私は警戒する。

「偶然とでも言うおつもりですか?」
「信じてはもらえませんか?」
「無理ですね」

 偶然であるはずはない。
 ここは普段なら誰も通らないような場所だ。
 だからこそ、上級生たちが私を襲うためにチョイスした。
 何の目的もなく、こんな場所に足を踏み入れるか?
 否だ。
 それに……。 

「今は講義中ですよ? 月下会の会長が、堂々と講義をサボっていいんですか?」
「――!」

 ルイスは若干怯えてオドオドしているが、私は強気に出る。
 ここで慌てたり、怯えたら相手のペースだ。
 対するフレーリアも動じず、ニコリと微笑みながら言う。

「私は特待生ですので、講義の一部を免除されています」
「そうだったんですね。編入したばかりなので知りませんでした」
「お気にならさないでください。リベルさんの思っていることもわかります」
「……どうして、私の名前を?」

 まだ名乗っていないのに。

「ふふっ、あなたは有名人ですよ?」
「……」

 あまり嬉しくないな。

「月下会の会長様に認知してもらえるなんて光栄ですね」
「私は一介の生徒です。少し要領がよくて、学園生の代表になれただけですから」
「ご謙遜を」
「そんなことありませんよ? きっと私より、あなたのほうが優れているはずです。ね? あなたもそう思いませんか? ルイスさん」
「ひゃい! わ、私の名前……」
 
 ルイスは動揺して変な声が出てしまっていた。
 フレーリアは相変わらず笑顔だ。 
 
「私は会長ですので、この学園に通う生徒の名前と顔は、全て記憶しております」
「は、はわ……う、嬉しいです!」
「……」

 まるで犬みたいに尻尾を振って……眼を輝かせる。
 これがフレーリアの持つカリスマ性なのだろう。
 時折いる。
 ただそこにいるだけで、人を惹きつける人間が……。
 彼女はまさに、そういう類の人間だ。
 フレーリアが視線を私に戻す。

「確かに、偶然ではありません」
「……」
「お二人が講義を受けず、どこかへ歩いていく姿が見えましたので、つい気になってしまいました」
「そうでしたか。ご心配をおかけしました」

 私は丁寧に頭を下げる。

「何やら私の話をされていたようですが、何かご要望がございますでしょうか?」
「いえ、先ほど生徒たちに囲まれていた様子を見て、それに驚いていただけです。人気者ですね」
「人気者だなんて、お恥ずかしい」
「……」
「私は同じ生徒です。ただ、生徒の代表として皆様の悩みを一緒に考え、解決したいと思っています」

 澄んだ瞳で見つめながら、訴えかけてくる。
 私はあなたの味方ですよ、と。
 なるほど。
 この眼と語り口調で、多くの生徒を虜にしたのだろう。
 素でやっているなら天性のカリスマだ。

「ですから、何か困ったことがあるのでしたら、どうか私にもお手伝いしていただけませんか?」
「……」

 さて、どうしたものか。
 断ってもいいのだけど、一度見られてしまった以上、動きにくくなる。
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