冷徹女王の中身はモノグサ少女でした ~魔女に呪われ国を奪われた私ですが、復讐とか面倒なのでのんびりセカンドライフを目指します~

日之影ソラ

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 本格的な行動を開始する前に、私たちは作戦を考えることにした。
 講義は元より自由参加だ。
 いつ、どの講義を受けるかは個人の裁量で決められる。
 それでもほとんどの生徒は真面目で、必ずどの講義かには参加している。

「さすがです! 堂々と講義をサボるなんて大胆なこと普通思いつきませんよ!」
「誰でも思いつくでしょ」

 ルイスは相変わらずテンションが高い。
 彼女を仲間にしたことは進展だが、今のところ良くも悪くも機能していない。
 むしろ目立つようになってしまった。
 このままじゃダメだ。
 講義中なら誰かに見られる心配も薄まる。

「どこか適当に場所を探して、先のことを考えましょう」
「だったらあそこはどうですか? リベルさんがよく先輩をボコボコにしてるところ!」
「言い方……あの一回だけよ。でもいい案ね。そうしましょう」
「了解です!」

 私たちは学園の裏手に向かう。
 道中、人だかりができていた。
 人だかりの中心にいるのは、淡いピンク色の髪を持つ綺麗な女子生徒だった。

「あれは何の集まり?」
「え? リベルさん知らないんですか? あの方は月下会のフレーリア様ですよ!」
「月下会? ああ、そんな名前の組織あったわね」

 学園についてまとめられた資料の中に、月下会の名前があった。
 月下会とは端的に言うと、前世における生徒会みたいな組織だ。
 学園の生徒だけで構成され、生徒の意見をまとめる代表。
 何か学園への意見があった際、それを学園側に伝え、交渉したりする。
 あとは行事の運営など、やっていることは生徒会だが、前世の生徒会よりも権限が多い。
 そのトップにいるのが……。

「エリーシュ公爵家のご令嬢! フレーリアお姉様です!」
「お姉様って……」
「みんなそう呼んでます! とっても優しくて、綺麗で、なんでもできるので憧れの対象になっているんですよ?」
「へぇ、憧れね」

 さしずめ、この学園のアイドルみたいな存在のようだ。
 集まっている生徒も男女問わず、みんなが目を輝かせている。
 まるでアイドルのコンサートだ。
 
「エリーシュ公爵家はこの国でも有力な貴族の家系で、王家とも関わりがあるんです! よくパーティーなんかでも、レント王子と話している姿を見られますよ!」
「よく知っているわね」
「私も一応、貴族家系の出身ということになっているので、パーティーにも参加します。あとは毎日観察して、調べました!」

 彼女はノートを堂々と見せてくる。
 日々の生活を記録したノートは、ただの日記でしかないと思っていたら、ちゃんとした情報も仕入れているようだ。
 まだ残りのノートも見ていないし、時間を見つけて読んだほうがいいかもしれない。

「レントと知り合いなら、後で聞いてもいいわね」
「そうですね! でも凄いですよねー。学園のトップで、何でもできて、王子様とも仲がよくて。私も憧れちゃいますよ」
「……」

 この子は、自分が情報収集のために送り込まれたスパイだということを忘れているのだろうか?
 普通に一介の生徒の視点に、少し呆れる。
 ハッと気づいたルイスが弁明する。

「――はっ! ち、違いますよ! 勘違いしないでくださいね?」
「そうね」
「今の私の憧れはリベルさんです! リベルさん最高です!」
「……」

 そういうのは求めてないから。
 私は盛大にため息をこぼし、その場を後にする。
 学園の人気者である彼女とは、きっと今後関わることはないだろう。
 これ以上目立ってたまるか。

「……」
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