冷徹女王の中身はモノグサ少女でした ~魔女に呪われ国を奪われた私ですが、復讐とか面倒なのでのんびりセカンドライフを目指します~

日之影ソラ

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「いいの? 私の相手なんかして」
「心配するな。これは俺にとっても夢みたいなものだ。現実の俺は今も仕事中」
「そうなの? じゃあ覚えていないのかしら?」
「夢が晴れたら記憶は共有される。ここにいる俺は意識の一部が分離した状態だと思ってくれ」

 つまり本体とは無関係に、意識の一部だけ切り離して他人の夢に入り込めるのか。
 相変わらず出鱈目な性能だ。
 まさにチート能力。
 どうして転生者の私じゃなくて、彼に宿っているのやら。
 もしこの世界が漫画やアニメなら、彼が主人公で違いない。

「リベル、あまり他人を信用しすぎるなよ」
「急にどうしたの?」
「心配なんだよ。ルイスのこともある」
「あの子は大丈夫だって」

 以前にも一度、彼女の隣で眠ってしまった。
 あの時はまだ寝返っていない。
 魔法が使える彼女なら、音もなく、周囲に気づかれることなく、私を殺すことだってできたはずだ。
 そうしなかったのは、彼女が臆病……いいや、優しかったからだと思う。

「あなただって、本気で危ないと思ったら牢獄に入れていたんじゃないの?」
「そうだな。その通りだ」
「やっぱり。私からしたら、レントのほうが心配よ」
「俺が信じているのは肉親と、お前だけだよ」
「私は肉親と同列?」
「不服か?」
「別に」

 ちょっと嬉しいと思ってしまった。
 彼に信頼されていることが。

「じゃあ代わりに、私もあなただけは信じてあげてもいいわよ」
「なんで上から? まぁ嬉しいけど」
「ふふっ、ん? 世界が薄らいできたわね」
「目が覚める頃合いだ」

 レントが立ち上がる。

「じゃあな。ゆっくり話せてよかったよ」
「そうね。偶にはいいでしょう? のんびりするのも」
「そうだな」
「あなたもサボったりすればいいのに」
「ははっ、そんな余裕があったらいいな」

 少し寂しそうに笑う彼の表情は印象的で、私の心に残された。

  ◇◇◇

「リベルさん、もう終わりましたよ」
「……」

 目が覚めると講義が終わっている。
 すでに生徒たちは移動を開始していた。

「ぐっすりでしたね」
「……」
「リベルさん?」
「ルイス、次の講義は参加しないわ」
「え?」

 私は立ち上がり、歩き出す。

「どうしてですか? 何か予定でも?」
「ちゃんと探すための作戦を考えるわ。あなたも知恵を貸して」
「は、はい!」

 柄にもない。
 でも、私ばかり楽をしているのは、なんだか申し訳ないと思ってしまった。
 私が寝ている間にも、彼は働いている。
 その大変さは、女王だったからこそわかるから。

「仕方ないわね」

 信頼してもらっている分は、ちゃんと働こう。
 彼が堂々と休めるように。

 
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