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お昼前からだろう。
私の後ろをついて回る生徒がいる。
朝の講義で、寝ている私を起こしてくれた女子生徒だ。
何やら熱心に私を観察していた。
(敵意は感じないわね)
一先ず泳がせることにした。
しかし放課後になっても、こっそり後ろについてくる。
私はふと思い出した。
上級生をボコった噂を、誰が流したのか。
ひょっとして彼女かもしれない。
後をつけているのも、同じ現場を目撃しようと考えているのか。
敵意はないなら、好奇心だろうか。
それなら放置してもいいのだけど、明日もずっと見られているのは窮屈だ。
ここで一度、直接話をしてみよう。
そう思って彼女を人気のない場所に誘導し、声をかけたのだけど……。
「あなたが魔女だったのね」
まさかの展開だった。
てっきりただのマスコミ的なあれかと思ったら、彼女こそが学園に潜んでいた魔女だったらしい。
いきなり土下座謝罪され、魔女であることをカミングアウトされ。
もう何が何だかさっぱりわからない。
混乱している脳を正常に戻すため、私は深呼吸をする。
落ち着いて、彼女に問いかける。
「あなたが、魔女セミラミスの部下なのね?」
「え? あ、えっと……誰かなぁ」
「自分でさっき魔女だって言ったわよね?」
「はい……そうです。セミラミス様は私の上司です」
あっさり白状した。
名前はルイス。
彼女はどうやら、本当に魔女らしい。
こうして接近しても、未だに魔力を一切感じない。
私は自分の眼を疑う。
「本当に?」
「ほ、ホントです! 信じてください!」
「信じていいの? 魔女だったらあなた、私の敵よ?」
「うぅ……やっぱり忘れてください!」
なんだろう……。
想像していた魔女と全然違う。
セミラミスの部下だから、もっとクールで狡猾な魔女を想像していたのに。
「うぅ……お願いですから殺さないでぇ……」
号泣している。
演技には見えないほどに。
これじゃ、私が弱い者いじめをしているみたいじゃないか。
私はため息をこぼす。
「はぁ……詳しい話を聞きたいから、一緒に来てもらえるかしら?」
「ご、拷問するんですか?」
「しないわよ。ちゃんと話すならね」
「話します! 全部話します!」
「……」
この魔女、本当に大丈夫なのだろうか?
私の後ろをついて回る生徒がいる。
朝の講義で、寝ている私を起こしてくれた女子生徒だ。
何やら熱心に私を観察していた。
(敵意は感じないわね)
一先ず泳がせることにした。
しかし放課後になっても、こっそり後ろについてくる。
私はふと思い出した。
上級生をボコった噂を、誰が流したのか。
ひょっとして彼女かもしれない。
後をつけているのも、同じ現場を目撃しようと考えているのか。
敵意はないなら、好奇心だろうか。
それなら放置してもいいのだけど、明日もずっと見られているのは窮屈だ。
ここで一度、直接話をしてみよう。
そう思って彼女を人気のない場所に誘導し、声をかけたのだけど……。
「あなたが魔女だったのね」
まさかの展開だった。
てっきりただのマスコミ的なあれかと思ったら、彼女こそが学園に潜んでいた魔女だったらしい。
いきなり土下座謝罪され、魔女であることをカミングアウトされ。
もう何が何だかさっぱりわからない。
混乱している脳を正常に戻すため、私は深呼吸をする。
落ち着いて、彼女に問いかける。
「あなたが、魔女セミラミスの部下なのね?」
「え? あ、えっと……誰かなぁ」
「自分でさっき魔女だって言ったわよね?」
「はい……そうです。セミラミス様は私の上司です」
あっさり白状した。
名前はルイス。
彼女はどうやら、本当に魔女らしい。
こうして接近しても、未だに魔力を一切感じない。
私は自分の眼を疑う。
「本当に?」
「ほ、ホントです! 信じてください!」
「信じていいの? 魔女だったらあなた、私の敵よ?」
「うぅ……やっぱり忘れてください!」
なんだろう……。
想像していた魔女と全然違う。
セミラミスの部下だから、もっとクールで狡猾な魔女を想像していたのに。
「うぅ……お願いですから殺さないでぇ……」
号泣している。
演技には見えないほどに。
これじゃ、私が弱い者いじめをしているみたいじゃないか。
私はため息をこぼす。
「はぁ……詳しい話を聞きたいから、一緒に来てもらえるかしら?」
「ご、拷問するんですか?」
「しないわよ。ちゃんと話すならね」
「話します! 全部話します!」
「……」
この魔女、本当に大丈夫なのだろうか?
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