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「……」

 彼女はいつものように学園に通う。
 だが、その表情は曇っていた。

(まったく連絡がない。どうすればいいんですか? セミラミス様)

 今回の報告は、これまでの定時報告とはわけが違う。
 自分の陣営とは異なる魔女の介入。
 しかも自身を探している。
 明確な敵の出現に、彼女は焦っていた。
 無視し続けているセミラミスも、こんな大事なら速攻で連絡が来ると見込んでいた。
 しかし現実は、一週間経過しても連絡なし。

「どうしよう」

 上級生四人を使って、魔女の情報を集めているのはわかった。
 幸いまだ見つかってはない。

(魔力を隠すのは得意だから、バレない自信はあるけど……)

 それでも不安だった。
 いつか見つかってしまうかもしれない。
 もし見つかれば、牢獄行きだけではすまないだろう。
 尋問は確定。
 その果てに……。

「こ、殺される」

 上級生をボコボコにしていた光景が脳裏に過る。 
 彼女は覚悟した。
 そして決意する。

(よし! あの人とは絶対に関わらない! これだけ人がいるんだし、普通にしていれば出会うこともないよね)

 前向きに考えることにしたルイス。
 そのまま講義を選んで席に着く。
 彼女は純粋に、学園での生活を楽しんでいた。
 普通にしていれば魔女だとバレない。
 周りの人も、一人の生徒として接してくれる。
 魔女は忌み嫌われるが、バレなければ平凡な日々を送れる。
 それでいいと思っていた。

「隣、いいかしら?」
「はい。どう――ぶっ!」

 ルイスは絶句する。
 出会うはずがないと思っていた相手が、偶然隣の席にきた。

(な、なんでぇ!?)
「大丈夫ですか?」
「あ、はい。なんでもないです! どうにょ!」
「にょ?」
「どうぞ!」

 周りを見ると席が埋まっていて空いていない。
 偶々、自分の席の隣が空いていたから、そこに座ったのだと理解する。
 魔女だとバレたわけではない。
 しかし、偶然に恐怖した。

(最悪だ……もう会っちゃった)

 彼女はいつになく魔力を隠すことに集中した。
 万が一にもバレたら終わりだ。
 講義に集中などできるはずもない。
 相手は魔女だ。
 今も、目的を果たすために目を光らせ……。

「すぅ……」
「ね、寝てる……」 
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