冷徹女王の中身はモノグサ少女でした ~魔女に呪われ国を奪われた私ですが、復讐とか面倒なのでのんびりセカンドライフを目指します~

日之影ソラ

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 リベルが上級生四名をボコボコにした現場は、普段はあまり人が通らない。
 しかし学園の敷地内で、見えないというわけではかった。
 とある講義を受けていた生徒の一人が、窓の外を見ていた。
 すると、木の影で女子生徒が男子生徒と向かい合っている。

(あれって確か……いつも威張ってるボンボン連中)

 彼らは悪い意味で有名だった。
 自分より格下を見つけていびったり、断れない女子生徒に関係を迫ったり。
 影でやりたい放題していたから。

(可哀想に、知らない顔だけどターゲットにされたのね)

 リベルが男たちに弄ばれる。
 それを察してしまった彼女は、窓から視線を外した。
 しかし多少の興味はある。
 十秒ほど経ったところで、チラッと見た。

「……え?」

 思わず小さな声になって漏れた。
 男の一人が倒れている。
 女子生徒は堂々と立ったまま、次々に襲い掛かる男子生徒を返り討ちにしていた。
 彼女は目が離せなくなる。
 相手は四人で、精霊術まで扱うのに。
 それを軽々と圧倒し、全員を地に伏せた。

(すごい……)

 彼女は純粋に感動した。
 元から彼らのことは嫌いだったので、スカッとした気分だった。
 それを講義後に友人に伝えたが信じてもらえず。
 与太話だと勘違いされたが、翌日から男子生徒たちの態度が変わり、リベルの命令に従うようになった。
 それを見た友人は、彼女の話が嘘ではなかったことを知る。
 噂は更に広まり、あっという間に学園中の伝説となった。

 これを見ていた生徒は、あと二人いる。
 うち一人は……。

(は、はわわわわわ!)

 割と近くにいた。
 藍色の髪が特徴的な小柄な女子生徒。
 彼女の名前はルイス・チャーベス。
 中流貴族の娘であり、いたって平凡な成績の学園生なのだが……。

(見ちゃった……見ちゃったよぉ。あれどうみても魔法じゃないですかぁ)

 それは仮の姿。
 彼女こそ、セミラミスの命令で隣国アルザードに潜入していた魔女である。
 子供がいなかったチャーベス子爵家に養子という形で迎え入れられ、その後は試験に合格し、昨年から学園に通っている。
 セミラミスから与えられている命令は一つ、情報だ。
 世界でも有数の教育機関に潜り込み、情報を得ることが主の目的。
 それ以外に命令がある場合は、セミラミスから連絡がくる。

(聞いてませんよセミラミス様! 私以外に魔女がいるとか。しかもめっちゃ強いし!)

 セミラミスからの連絡は、ここ半年ない。
 一方的に、毎週報告書を送っているが、返事もなかった。

(別に返事ないのはいつもだしいいですけどね? 魔女を新しく送り込むなら教えてもら……え?)

 彼女は耳がいい。
 多少距離が離れていても、魔力で聴力を強化することで聞き取ることができる。
 その地獄耳は聞いてしまった。
 リベルの正体を。

(お、王子の側役!? しかも魔女を探してるぅ!?)

 驚きすぎて失神しそうになるルイスだが、なんとか正気を保っていた。
 これで彼女が仲間の魔女ではないことが確定する。
 
(と、とにかくセミラミス様に報告しなきゃ)

 ルイスは慌ててその場から逃走し、すぐにセミラミスへ報告書と使い魔を送った。
 それから一週間後。
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