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 カイノス王立学園は、身分関係なく誰でも入学資格を得られる。
 在学中は学園性として平等。
 貴族でも平民でも、等しく扱われる。
 ということになっているのだが、現実はそこまで簡単じゃない。
 実際のところ、身分による差はある。

 その際たる問題が、いじめだ。

 平民で学園に入学した者は、貴族から目をつけられいじめられるケースが多い。
 特に優秀だと、僻みや妬みからいじめの対象となる。
 入学前、学園に関する資料は読んだ。
 いじめ問題には、レントも頭を抱えていた。

「さっそくね」
「おい、返事しろよ。優秀な編入生は会話もできねーのか?」
「……この後も講義があります」
「だから、そんなもん一回くらいサボれよ。お前、確か一学年だろ?」
「はい」

 編入後は等しく一学年生となる。
 年齢ではなく、いつ入ったのかというのが重要だ。
 彼らは見たところ、私よりは学年が上らしい。
 どうでもいいけど。

「今の講義は、普通三学年が受ける内容だったぜ」
「え?」 

 そうだったの?
 テキトーに選んだのに、まさかの上級講義を選んでいたことに驚く。

「そんな講義で寝てたんだ。よほどお勉強には自信があるんだよなぁ」
「……」

 言い訳できない。
 実際、つまらない授業で眠ってしまったわけだし。
 内容も知っていることばかりだった。

「だったらサボって俺らと遊んでも問題ないだろぉ?」
「先輩方はいいのですか? 講義を受けなくて」
「俺たちも優秀なんだよ。こんな講義なんて受けなくてもな」
「……」

 だったらどうして学園に通っているのか。
 家の方針で、学園は卒業しておいたほうがいいから、とかそういう理由だろう。
 大した志も、将来の展望もなく、ただ通っているだけ。
 私も他人のことはいえないけど、将来ロクな大人にならなそうだ。

「すみませんが、講義は受けたほうがいいと思いますよ」
「生意気言ってんじゃねーよ。いいから来い」
「……」
 
 誰か助けてくれないかな?
 担当の教員は……もういなくなっているし。
 他の生徒もチラッと見るだけで、憐みの視線以外は感じない。
 彼らも巻き込まれたくないのだろう。
 気持ちはわかる。
 こんなあからさまに面倒そうな男たちと関わるなんて、時間の無駄だ。
 今度は自分がいじめの標的になるかもしれない。
 
 私は小さくため息をこぼす。

「わかりました」
「はっ、ようやく素直になったか。こっちだ」
「……」

 ここで無理に突破しても、またちょっかいをかけてくる。
 なら、一度しっかり話し合いをすべきだ。
 二度と、関わらないでくれるように。
 説得しようじゃないか。
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