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「任せるというのは、私一人でどうにかしろという意味でしょうか?」
「もちろん必要なら手を貸す。それは、お前が考えている作戦次第だな」
「……」
彼は意地悪だ。
もしかして、最初から私に丸投げするつもりで連れてきたんじゃ……。
「無理か? それなら強制はしない。お前でも解決できないとなると、俺が先陣を切って魔物と戦うしかなさそうだなー」
何ですかその言い方は。
まるで私じゃ力不足みたいなことを……。
少しムカついた私は、勢いで口を動かす。
「っ……わかりました。やればいいんですね」
「おっ、じゃあ頼む」
「くっ……」
なんだかうまく乗せられた気がする。
私ってこんなにも負けず嫌いだったっけ?
女王時代は煽られ……ること自体あまりなかったけど、ここまで悔しいとか思ったことないのに。
どうして彼の前だと、感情が隠せないのだろう?
「作戦は?」
「……要は、この地域から追い出せばいいのですよね?」
「ああ」
「必ずしも、殲滅する必要はありませんね?」
「ないな。問題になっているのは、彼らがここを新しい棲家にしてしまうことだ。人里から離れた場所を縄張りにするなら、そこに近づかなければいいだけだ」
「わかりました」
私はレントに背を向けて、一人で湖のほうへと歩き出す。
レントが背後から声をかける。
「手助けは?」
「必要ありません。皆様はそこで待機をお願いします」
「わかった。気をつけてな」
「……はい」
魔物たちは警戒している。
こちらの動きは見ながら、今のところの森の中に潜んだままだ。
聖人であるレントの気配に気圧されているのか。
それとも……。
「私の魔力に怯えているのかな?」
魔物たちに視線を向ける。
一歩下がったのが気配でわかった。
彼ら魔物の肉体には魔力が流れている。
私の身体にも、彼らと同じ魔力が流れていた。
通常、人間に魔力はない。
だからこそ、精霊と同調してその力を行使できる者もいる。
彼らが警戒しているのは、私が何者なのか計りかねているからだろう。
人の形をしながら、自分たちと同じ気配を持つ存在に、今まで出会ったことがないのかもしれない。
ある程度の距離まで近づくと、さすがに殺気を感じる。
「これ以上は……襲ってくるわね」
限界ギリギリまで近づいた。
ここから一歩でも近づけば、彼らも意を決して襲ってくるだろう。
ここはすでに、彼らの縄張りとして認識されつつある。
「魔物も生きるために必死なのね」
私は魔物を警戒しつつ、彼らがいるほとりとは逆方向へと歩いて行く。
もちろん逃げるわけではない。
大事なのは方角だ。
「もちろん必要なら手を貸す。それは、お前が考えている作戦次第だな」
「……」
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もしかして、最初から私に丸投げするつもりで連れてきたんじゃ……。
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「おっ、じゃあ頼む」
「くっ……」
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「わかりました」
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「……はい」
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それとも……。
「私の魔力に怯えているのかな?」
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通常、人間に魔力はない。
だからこそ、精霊と同調してその力を行使できる者もいる。
彼らが警戒しているのは、私が何者なのか計りかねているからだろう。
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ある程度の距離まで近づくと、さすがに殺気を感じる。
「これ以上は……襲ってくるわね」
限界ギリギリまで近づいた。
ここから一歩でも近づけば、彼らも意を決して襲ってくるだろう。
ここはすでに、彼らの縄張りとして認識されつつある。
「魔物も生きるために必死なのね」
私は魔物を警戒しつつ、彼らがいるほとりとは逆方向へと歩いて行く。
もちろん逃げるわけではない。
大事なのは方角だ。
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