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「まったく、周りに俺がいることを忘れないでほしかったな」
「謝ったじゃない。それに、他を見たいって言い出したのはレントでしょ?」
「そうはそうだけど、おかげでずぶ濡れだ」
レントは濡れた服を脱いで、水が落ちるようにぎゅっと絞っていた。
立っていた位置が悪かったのだろう。
思いっきり水を被り、全身ずぶ濡れだ。
「なんで濡れたのが俺だけなのか……作為的な何かを感じるんだが?」
「偶然よ」
「本当か?」
「本当よ」
「……ならいいけど」
実際、彼が濡れたのは本当に偶然。
ただ私が濡れなかったのは、水を生み出した張本人だし、自分にはかからないように多少の制御はできていたからだろう。
レントから見れば、ただのとばっちりだ。
彼は絞った服を大きく扇ぎ、乾かしている。
「手伝うわ」
私は濡れた服に左手をかざす。
魔法はイメージだ。
炎や水を生み出すだけじゃなく、イメージさえ明確なら何でもできる。
濡れた服を乾かすイメージで、手のひらから温かい風を発生させる。
「おお、温かいな」
「身体が冷えたら困るでしょう?」
「そうだな。助かるよ。まぁもとはと言えばお前のせい――ってうお! 急に風を強くするなよ!」
「吹き飛んだら拾ってあげないわよ」
レントは服が飛ばされないようにしっかり両手で握っている。
乾くまで少しこのまま待機だ。
「左手が疲れたわ」
「我慢してくれ」
「えぇ……じゃあ気がまぎれる話をしてくれる?」
「我がままだなぁ。そうだ! 忘れるところだった」
レントは服から片手を外し、乾かしている服をごそごそとあさる。
何かを探している様子だった。
取り出したのは、半透明の水晶がハマった腕輪だ。
「これをやる」
「これ、精霊の腕輪じゃない」
精霊の腕輪とは、身に付けることで精霊の力を借りることができる道具。
この世界には精霊がいる。
目に見えないだけで、私たちの周りにもたくさんいるらしい。
この腕輪を身に付けると、装着者と相性がいい精霊が水晶に宿り、精霊の力を行使することできる。
「私には不要よ? 前に試したけど、精霊は寄ってこなかったわ」
精霊の腕輪は、誰でも使えるというわけじゃない。
むしろ貴重品かつ、精霊の力を使える人間は少ない。
魔女や魔人、聖人ほどではないけど、貴重な人材として重宝される。
私には相性のいい精霊はいなかったようで、女王時代に試した時は何も起こらなかった。
「いいんだよ。ただのカモフラージュだ」
「ああ、そういうことね」
私は魔女だ。
魔女は精霊の力など借りずとも、炎や水を生み出すことができる。
腕輪もなしに魔法を使えば、私が魔女だとバレるだろう。
そうならないように、精霊の腕輪を身につけておけば、私は精霊使いだと誤認される。
レントのような聖人でもない限り、私の正体は見破れない。
「でも確か、この腕輪って高価なものでしょう? 簡単にあげていいの?」
「リベルには必要なものだからな。いらないならいいが」
「貰うわよ。有難くね」
「謝ったじゃない。それに、他を見たいって言い出したのはレントでしょ?」
「そうはそうだけど、おかげでずぶ濡れだ」
レントは濡れた服を脱いで、水が落ちるようにぎゅっと絞っていた。
立っていた位置が悪かったのだろう。
思いっきり水を被り、全身ずぶ濡れだ。
「なんで濡れたのが俺だけなのか……作為的な何かを感じるんだが?」
「偶然よ」
「本当か?」
「本当よ」
「……ならいいけど」
実際、彼が濡れたのは本当に偶然。
ただ私が濡れなかったのは、水を生み出した張本人だし、自分にはかからないように多少の制御はできていたからだろう。
レントから見れば、ただのとばっちりだ。
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「手伝うわ」
私は濡れた服に左手をかざす。
魔法はイメージだ。
炎や水を生み出すだけじゃなく、イメージさえ明確なら何でもできる。
濡れた服を乾かすイメージで、手のひらから温かい風を発生させる。
「おお、温かいな」
「身体が冷えたら困るでしょう?」
「そうだな。助かるよ。まぁもとはと言えばお前のせい――ってうお! 急に風を強くするなよ!」
「吹き飛んだら拾ってあげないわよ」
レントは服が飛ばされないようにしっかり両手で握っている。
乾くまで少しこのまま待機だ。
「左手が疲れたわ」
「我慢してくれ」
「えぇ……じゃあ気がまぎれる話をしてくれる?」
「我がままだなぁ。そうだ! 忘れるところだった」
レントは服から片手を外し、乾かしている服をごそごそとあさる。
何かを探している様子だった。
取り出したのは、半透明の水晶がハマった腕輪だ。
「これをやる」
「これ、精霊の腕輪じゃない」
精霊の腕輪とは、身に付けることで精霊の力を借りることができる道具。
この世界には精霊がいる。
目に見えないだけで、私たちの周りにもたくさんいるらしい。
この腕輪を身に付けると、装着者と相性がいい精霊が水晶に宿り、精霊の力を行使することできる。
「私には不要よ? 前に試したけど、精霊は寄ってこなかったわ」
精霊の腕輪は、誰でも使えるというわけじゃない。
むしろ貴重品かつ、精霊の力を使える人間は少ない。
魔女や魔人、聖人ほどではないけど、貴重な人材として重宝される。
私には相性のいい精霊はいなかったようで、女王時代に試した時は何も起こらなかった。
「いいんだよ。ただのカモフラージュだ」
「ああ、そういうことね」
私は魔女だ。
魔女は精霊の力など借りずとも、炎や水を生み出すことができる。
腕輪もなしに魔法を使えば、私が魔女だとバレるだろう。
そうならないように、精霊の腕輪を身につけておけば、私は精霊使いだと誤認される。
レントのような聖人でもない限り、私の正体は見破れない。
「でも確か、この腕輪って高価なものでしょう? 簡単にあげていいの?」
「リベルには必要なものだからな。いらないならいいが」
「貰うわよ。有難くね」
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