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 二つ目は護衛。
 側役は常に、主である彼の元にいる。
 不測の事態が起こった際に、彼を守るのも仕事の一つとなる。

「あなたに護衛なんている? 魔物も簡単に倒せるのに?」
「いてくれたほうが、俺は安心だぞ」
「私より、あなたのほうがたぶん強いわよ?」
「今はね。けど、君は魔女の力を手に入れている。その力を使いこなせるようになれば、この国で一番強い存在になるよ」

 レントはそう断言した。
 私は自分の手を見つめ、流れる魔力を感じ取る。
 魔女や魔人が恐れられている理由は、ひとえに魔法が扱えるからだ。
 魔法は万能。
 思い描いた空想を体現する力すらある。
 彼が言う通り、私が魔女としての力を掌握し、魔女として完成したら……。

「でも人前で使えないでしょう?」
「基本的にはね? ただ、誤魔化す方法はいくらでもある」
「それもそうね」

 この世界には女神の加護があるし、精霊の力を借りる術も存在する。
 魔法だけが特別、というわけじゃない。
 魔法が他より優れているのは、自己完結できるからだ。
 何かの、誰かの力を借りることなく、ただ一人で奇跡すら起こせることが重要なのだ。
 もっとも私の場合は不完全で、まだうまく扱えない。

「面倒だけど、扱えるように訓練はしたほうがいいわ」
「同感だな」
「で、三つ目は?」
「俺の身の回りの世話だ」
「……それこそ必要なの?」

 使用人の役割じゃないか。

「あのな? 側役の仕事は、あらゆる面において俺の補佐をすることだ。それには日常生活も含まれている」
「つまり私に奉仕してほしいということね」
「ちょっと違うが大体それだ」
「残念ながら無理ね。私、その辺りは全部やってもらっていたから」

 女王だった頃は仕事に集中するために、身の回りのお世話は使用人に任せていた。
 服を着替えたりする程度はできるけど、それ以上のことを期待されても困る。
 前世ではそれなりに家事もしていたけど、この世界に生まれ直してからはやっていないから、自分がこれまでどうやって生活していたのかも忘れてしまった。

「自慢じゃないけど、お茶も淹れられないわよ」
「本当に自慢じゃないな。じゃあちょっと待っててくれ」

 そう言って彼は席を外し、数分後に戻ってきた。
 手にはプレートと、その上にポット一つとカップが二つ。
 彼は手慣れた手つきでカップにそそぐ。

「ハーブティーだ。疲れがとれるぞ」
「これ、あなたが淹れたの?」
「まぁな」

 一口貰う。
 普通に美味しい。

「自分で淹れられるのね。王子なのに」
「うちの方針でな? 子供の頃に一通り教え込まれたんだ。もしも一人になっても、ちゃんと生きていけるように」
「現実的ね」
「正しいと思うよ。現に、こうして役に立っている」

 確かにそうだ。
 私も同様の指導を受けて育ったなら、今みたいに誰かに頼る必要もなかったのかも……。
 ふと思う。
 一人で何でもできるのなら、いよいよ私って不要じゃないのか、と。

「やっぱり私、必要な時以外は寝てたほうがいいんじゃない?」
「教えるから。これくらいやれるようになってくれ」
「……はい」

 面倒だけど仕方がない。
 彼の厚意で居場所があるのだから、それくらいは頑張ろう。
 これから一人になった時、役に立つかもしれないし。
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