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少し前まで女王だった私は、いろいろあって隣国の王子の側役になりました。
なーんて、説明したところで?マークが浮かぶだろう。
私だって驚いているし、なぜこうなったのかと問われたら……。
「成り行き?」
「ん? どうかしたか?」
「なんでもないわ。ところで……」
ここは彼の執務室だ。
テーブルの上には、山のような書類が積まれている。
王族というのはどこの国も書類と睨めっこするのが得意らしい。
私は彼の作業を、傍らで見ているだけだった。
「私は何をすればいいわけ?」
「何って、言っただろう? 俺の補佐だよ」
「だから、具体的に何をすればいいのよ」
今日のところは見学を言い渡された。
異なる国で働くのだから、その国の風習や習慣を知る必要がある。
同じ王族であっても、国が違うだけで仕事の勝手が違うかもしれないから。
ということで、現在見学中なのだが……。
さすがに見ているだけ、というのはもどかしい。
「ユーラスティアじゃ側役を置いてなかったのか?」
「私にはいなかったわよ」
「珍しいな。普通は一人くらい、日々の仕事を補佐する役割を置くものだけど」
「そうなの? そういえば、女王になったばかりの頃はいた気がするわね」
先代国王、すなわち私の父親の代から補佐をしてくれている執事がいた。
とても優秀な人で、父も頼りにしていた。
父から王位を継承した後は、新たに女王になった私の補佐をしてくれていたのだけど。
彼は高齢だった。
「私が女王になった時点で七十を超えていたのよ。そんな人をいつまでも働かせるのはよくないと思って、すぐ引退してもらったわ」
「その後は新しく雇わなかったんだな」
「必要なら雇うつもりだったわよ。でも、補佐役がほしいなんて思ったことなかったわ」
「強いな、お前は」
「そういうことじゃなくてね」
私はただ、自分のことを誰かに委ねることができなかった。
完璧な女王であれ。
そう自分に言い聞かせて、仮面を守り続ける日々。
気を許せる相手なんていなくて、誰かと一緒にいるよりも、一人でいるほうが気が楽だった。
一人でいる時なら、仮面をかぶる必要がないから。
「思えば私は、他人との関わりをずっと避けていたのよ。だから裏切りにも最後まで気づけなかったのね」
そう言いながら私は笑う。
なんて滑稽なのか。
自分一人で何でもできる。
完璧な女王を演じていたつもりだけど、裏切られた時点で完璧からは程遠かった。
結局私には、他人の気持ちが理解できていなかったのだろう。
なーんて、説明したところで?マークが浮かぶだろう。
私だって驚いているし、なぜこうなったのかと問われたら……。
「成り行き?」
「ん? どうかしたか?」
「なんでもないわ。ところで……」
ここは彼の執務室だ。
テーブルの上には、山のような書類が積まれている。
王族というのはどこの国も書類と睨めっこするのが得意らしい。
私は彼の作業を、傍らで見ているだけだった。
「私は何をすればいいわけ?」
「何って、言っただろう? 俺の補佐だよ」
「だから、具体的に何をすればいいのよ」
今日のところは見学を言い渡された。
異なる国で働くのだから、その国の風習や習慣を知る必要がある。
同じ王族であっても、国が違うだけで仕事の勝手が違うかもしれないから。
ということで、現在見学中なのだが……。
さすがに見ているだけ、というのはもどかしい。
「ユーラスティアじゃ側役を置いてなかったのか?」
「私にはいなかったわよ」
「珍しいな。普通は一人くらい、日々の仕事を補佐する役割を置くものだけど」
「そうなの? そういえば、女王になったばかりの頃はいた気がするわね」
先代国王、すなわち私の父親の代から補佐をしてくれている執事がいた。
とても優秀な人で、父も頼りにしていた。
父から王位を継承した後は、新たに女王になった私の補佐をしてくれていたのだけど。
彼は高齢だった。
「私が女王になった時点で七十を超えていたのよ。そんな人をいつまでも働かせるのはよくないと思って、すぐ引退してもらったわ」
「その後は新しく雇わなかったんだな」
「必要なら雇うつもりだったわよ。でも、補佐役がほしいなんて思ったことなかったわ」
「強いな、お前は」
「そういうことじゃなくてね」
私はただ、自分のことを誰かに委ねることができなかった。
完璧な女王であれ。
そう自分に言い聞かせて、仮面を守り続ける日々。
気を許せる相手なんていなくて、誰かと一緒にいるよりも、一人でいるほうが気が楽だった。
一人でいる時なら、仮面をかぶる必要がないから。
「思えば私は、他人との関わりをずっと避けていたのよ。だから裏切りにも最後まで気づけなかったのね」
そう言いながら私は笑う。
なんて滑稽なのか。
自分一人で何でもできる。
完璧な女王を演じていたつもりだけど、裏切られた時点で完璧からは程遠かった。
結局私には、他人の気持ちが理解できていなかったのだろう。
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