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「大変よね。国を導くのは」
「お前はよく知っているだろうな。たぶん、俺よりも」
「どうかしらね」
「謙遜しないでくれ」
「謙遜じゃなくて、私自身そこまで自分のやり方が正しかったと思っていないだけよ」
結果的に上手く行っていただけだ。
私は女王を演じているだけで、中身はただの一般人に過ぎない。
レントのように特別な才能があるわけじゃなかった。
しいていえば、前世の知識が有効活用できていただけで、いつだってギリギリだった。
「重荷がとれて、今は清々しい気分よ」
「ははっ、それは羨ましいな」
「レントも逃げてみる?」
「それは無理だ。俺がいなくなると、今度は兄上一人に背負わせることになるからな。そんなことはさせたくない」
「真面目ね」
「アリエルだって、陥れられなければ、今でも女王として働いていただろ?」
「……そうかもね」
期待に応えるために。
私はいつまでも、女王の仮面をかぶっていただろう。
レントの意見は正しい。
「だけどもう、私は女王じゃないわ」
「そうだな」
「アリエルでもない」
「俺の中では、お前はまだアリエルなんだけど?」
「それはレントだけよ」
見た目も、声も違っている。
たとえ今、ユーラスティアの国民の前で演説しても、誰も耳を傾けないだろう。
「そうだ。明日からお前の居場所を作る。そのためにも、名前は改めないとな」
「あー、そうだったわね」
「希望はある?」
「適当でいいわよ」
「やる気ないな」
難しい話が終わった空気を感じて、私は伸ばしていた背筋をだらけさせ、そのままベッドに倒れ込んだ。
仰向けになると、見慣れない天井が映る。
ここが私の、新しい居場所になるのだろうか。
「名前なんてなんでもいいわよ」
「よくはないと思うが……じゃあ俺が決めてもいいか?」
「いいわよ。変な名前にはしないでよね」
「テキトーでいいんじゃなかったのか?」
「適当とテキトーは別物よ」
やれやれとため息をこぼす彼に、少しだけ視線を向けた。
何でもいいと言いながら、ちょっと興味がある。
私の新しい名前を、彼がなんとするか。
「そうだな……よし、リベルだ」
「リベル? なんかちょっと男っぽくないかしら」
「そうか? そうでもないと思うけど」
「ちなみに理由は?」
「この国の古い言葉で、自由――囚われからの解放を意味する」
その名を聞いて、心に風が吹く。
私は両手を広げ、大の字で寝そべりながら、満足気に言う。
「ピッタリじゃない」
「だろ?」
こうして私は女王アリエルから、ただのリベルへと生まれ変わった。
「お前はよく知っているだろうな。たぶん、俺よりも」
「どうかしらね」
「謙遜しないでくれ」
「謙遜じゃなくて、私自身そこまで自分のやり方が正しかったと思っていないだけよ」
結果的に上手く行っていただけだ。
私は女王を演じているだけで、中身はただの一般人に過ぎない。
レントのように特別な才能があるわけじゃなかった。
しいていえば、前世の知識が有効活用できていただけで、いつだってギリギリだった。
「重荷がとれて、今は清々しい気分よ」
「ははっ、それは羨ましいな」
「レントも逃げてみる?」
「それは無理だ。俺がいなくなると、今度は兄上一人に背負わせることになるからな。そんなことはさせたくない」
「真面目ね」
「アリエルだって、陥れられなければ、今でも女王として働いていただろ?」
「……そうかもね」
期待に応えるために。
私はいつまでも、女王の仮面をかぶっていただろう。
レントの意見は正しい。
「だけどもう、私は女王じゃないわ」
「そうだな」
「アリエルでもない」
「俺の中では、お前はまだアリエルなんだけど?」
「それはレントだけよ」
見た目も、声も違っている。
たとえ今、ユーラスティアの国民の前で演説しても、誰も耳を傾けないだろう。
「そうだ。明日からお前の居場所を作る。そのためにも、名前は改めないとな」
「あー、そうだったわね」
「希望はある?」
「適当でいいわよ」
「やる気ないな」
難しい話が終わった空気を感じて、私は伸ばしていた背筋をだらけさせ、そのままベッドに倒れ込んだ。
仰向けになると、見慣れない天井が映る。
ここが私の、新しい居場所になるのだろうか。
「名前なんてなんでもいいわよ」
「よくはないと思うが……じゃあ俺が決めてもいいか?」
「いいわよ。変な名前にはしないでよね」
「テキトーでいいんじゃなかったのか?」
「適当とテキトーは別物よ」
やれやれとため息をこぼす彼に、少しだけ視線を向けた。
何でもいいと言いながら、ちょっと興味がある。
私の新しい名前を、彼がなんとするか。
「そうだな……よし、リベルだ」
「リベル? なんかちょっと男っぽくないかしら」
「そうか? そうでもないと思うけど」
「ちなみに理由は?」
「この国の古い言葉で、自由――囚われからの解放を意味する」
その名を聞いて、心に風が吹く。
私は両手を広げ、大の字で寝そべりながら、満足気に言う。
「ピッタリじゃない」
「だろ?」
こうして私は女王アリエルから、ただのリベルへと生まれ変わった。
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