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森の中をひた走る。
脱獄もとっくにバレているだろう。
少しでも早く、この国を抜ける。
「はぁ……そろそろ国境かしら」
脱獄して一週間が経とうとしていた。
服はボロボロ、顔も汚い。
逃げるのに必死で、まともに食事や睡眠もとっていなかった。
元の私ならとっくに倒れている。
魔力があるおかげなのか、いつもよりも元気だ。
「さすがに疲れたわね……」
腰を下ろす。
逃げたはいいものの、これからどうするべきか。
何も定まっていない。
自由に生きる。
それができるようになったけれど……。
「自由って、どうすればいいのかな……」
今の私は空っぽだ。
空っぽの自分に、何ができるのかわからなかった。
そこへ脅威が迫る。
「魔物の気配!」
即座に立ち上がる。
すでに囲まれていて、唸り声が響いていた。
「レッドアイ……ウルフ系の魔物ね」
この辺りは魔物も多い。
すでに魔物とは何度かぶつかり、魔力のおかげで退けられた。
今回も同じだ。
魔力を扱い、炎をイメージ!
「燃えなさい!」
手のひらから放たれた炎がウルフを燃やす。
魔力の扱いにもだいぶ慣れた。
空っぽと言ったけど、この力を手に入れられたのは幸運だった。
「呪いに感謝なんて変な……」
身体に力が入らない。
まさか……。
「魔力切れ?」
ここにきて、魔力が尽きてしまった。
回復までには時間がかかる。
体力もないのに、無理矢理走ってきた弊害だ。
まずい。
本当にまずい。
まだウルフは残っている。
「っ……」
ダメだ。
上手く力が入らない。
動かない身体を、魔力で無理やり動かしていただけなんだ。
もう私の身体はボロボロで、今にも意識が飛びそうになる。
「逃げ……ないと……」
食われてしまう。
そんな終わり方は一番嫌だ。
こんなことなら、牢獄にいたほうが安全だった?
情けないことを考えてしまう。
人は死に際に多くのことを思い出し、後悔を募らせる。
ああ……結局私は、何のために生まれ変わったのだろう?
「伏せろ!」
「――!」
私は言われるまま、頭を下げた。
襲い掛かるウルフ。
それを刃が斬り裂き、退ける音がした。
「間一髪、だな」
「……あなたは……」
「俺か? 通りすがりの騎士だ」
「――!」
振り向いた横顔には、見覚えがあった。
懐かしさすら感じる。
私は彼を知っている。
そうか。
ここはもう、彼の国の領土なのだ。
いつの間にか私は国境を越えて、隣国アルザードに入っていた。
彼の名は――
「レント・アルザード」
脱獄もとっくにバレているだろう。
少しでも早く、この国を抜ける。
「はぁ……そろそろ国境かしら」
脱獄して一週間が経とうとしていた。
服はボロボロ、顔も汚い。
逃げるのに必死で、まともに食事や睡眠もとっていなかった。
元の私ならとっくに倒れている。
魔力があるおかげなのか、いつもよりも元気だ。
「さすがに疲れたわね……」
腰を下ろす。
逃げたはいいものの、これからどうするべきか。
何も定まっていない。
自由に生きる。
それができるようになったけれど……。
「自由って、どうすればいいのかな……」
今の私は空っぽだ。
空っぽの自分に、何ができるのかわからなかった。
そこへ脅威が迫る。
「魔物の気配!」
即座に立ち上がる。
すでに囲まれていて、唸り声が響いていた。
「レッドアイ……ウルフ系の魔物ね」
この辺りは魔物も多い。
すでに魔物とは何度かぶつかり、魔力のおかげで退けられた。
今回も同じだ。
魔力を扱い、炎をイメージ!
「燃えなさい!」
手のひらから放たれた炎がウルフを燃やす。
魔力の扱いにもだいぶ慣れた。
空っぽと言ったけど、この力を手に入れられたのは幸運だった。
「呪いに感謝なんて変な……」
身体に力が入らない。
まさか……。
「魔力切れ?」
ここにきて、魔力が尽きてしまった。
回復までには時間がかかる。
体力もないのに、無理矢理走ってきた弊害だ。
まずい。
本当にまずい。
まだウルフは残っている。
「っ……」
ダメだ。
上手く力が入らない。
動かない身体を、魔力で無理やり動かしていただけなんだ。
もう私の身体はボロボロで、今にも意識が飛びそうになる。
「逃げ……ないと……」
食われてしまう。
そんな終わり方は一番嫌だ。
こんなことなら、牢獄にいたほうが安全だった?
情けないことを考えてしまう。
人は死に際に多くのことを思い出し、後悔を募らせる。
ああ……結局私は、何のために生まれ変わったのだろう?
「伏せろ!」
「――!」
私は言われるまま、頭を下げた。
襲い掛かるウルフ。
それを刃が斬り裂き、退ける音がした。
「間一髪、だな」
「……あなたは……」
「俺か? 通りすがりの騎士だ」
「――!」
振り向いた横顔には、見覚えがあった。
懐かしさすら感じる。
私は彼を知っている。
そうか。
ここはもう、彼の国の領土なのだ。
いつの間にか私は国境を越えて、隣国アルザードに入っていた。
彼の名は――
「レント・アルザード」
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